ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   知による新時代の社会経済の創造に向けて
第2章  「知」の大競争時代において
第2節  我が国の社会経済とイノベーション
2.  世界をリードした我が国のイノベーション



(1) これまでの我が国の経済成長の原動力

 我が国は,これまで,プロセスイノベーションを中心として,世界市場に影響を与えてきた。例えば,自動車産業におけるいわゆるカンバン方式( 注1 )や鉄鋼業のプロセス改良(連続鋳造法( 注2 )の導入等)等は,生産性を飛躍的に向上させることにより,大量生産を可能とし,高度成長期の需要に対応することによって,世界市場のシェアを獲得していった。これらは我が国のイノベーションが成功した一例であるとともに,諸外国からも手本とされてきたものである。

 このように,我が国は,プロセスイノベーションを中心とした漸進的な技術革新等により,経済成長を実現してきた。一方で,社会や経済に大きな影響を与えるような製品やサービス(例えば,コンピュータ,ソフトウェアや携帯電話等の通信機器)は,大半はその原型が欧米で生み出され,世界市場をリードしているのが現状である(いわゆるプロダクトイノベーション)。


■注1 トヨタが開発した生産方式で,生産ラインの中で,部品の見込生産をせず(在庫を持たず),部品が必要になればその都度前工程で生産して補充していくというもの。補充が必要な際は「カンバン」という生産指示票が前工程に渡されるため,「カンバン方式」と呼ばれるようになった。これにより多種少量生産の飛躍的な効率化が図られ,トヨタの競争力の源泉となった。


■注2 転炉等で製錬された溶鋼から直接連続的に鋼片をつくる技術であり,鋼材歩留りの向上,作業の機械化,省力化が図れる上,省エネルギーであるという特長を有している。元の技術は米国で開発されたもので,昭和30年には我が国に技術導入されていたが,生産性,品質,設備費等の解決すべき点があり,研究開発の末,昭和40年代後半から急速に普及し,昭和47年には世界に先駆けて全連続鋳造法による一貫製鉄所が我が国に建設された。これにより,我が国の鉄鋼業は生産方式の優位を確保し,強い国際競争力を獲得した。


(2) 従来型イノベーションの限界

 このような日本的イノベーションは世界を席巻していたが,近年,アジア各国は,人件費などのコストの優位性と外資や技術の導入による品質や生産性の向上により,世界の生産拠点として工業製品の輸出を増加させ,世界経済にも大きな影響を及ぼしている。これらの国々では,1990年代後半に起こったアジア通貨危機により,いったん経済は停滞したものの,再び活性化してきている。このような産業のグローバリゼーション化の中,日本は新たなイノベーションにより国際競争力を強化していくことが必要である。

 多くの企業では,ITの導入による合理化や生産拠点の海外移転を行い,コストの削減を図っている。また,新たな競争優位を生み出すための新製品開発を目指し,「選択と集中」によりコアコンピタンス(核となる優位性)を創り出し,企業内の組織・構造変革を追求しているところである。現下の経済状況の停滞が需要不足に大きな要因があるため,企業は,従来の製品への改善・改良ではなく,顧客のニーズをいかに創り出していくかということに価値を置き,新規市場を創出するという企業戦略をとっていこうとしている。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ