ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   知による新時代の社会経済の創造に向けて
第2章  「知」の大競争時代において
第1節  イノベーションによる社会経済の発展に力を入れる諸外国
1.  イノベーションをめぐる国際的な競争の激化とイノベーションシステム



(1) 大競争時代の到来

 今日,ITの発達や国境を越えた企業活動の活発化等に伴い,今や世界経済は大競争時代を迎えている。米国では,近年に例を見ない長期間の好景気状態が続き,欧州では冷戦終結に伴い,西欧と東欧の市場の統合がEUという形で結実し,一大市場を築いている。また,特筆すべきは,アジア諸国の発展である。アジアの多くの国は,1997年に起こった経済危機を乗り越え,先進国を上回る速度で経済成長を続けている。

 2001年には,WTO( )閣僚会議において,中国のWTOへの加盟が承認された。これは,13億人,世界人口の20%という巨大市場が自由貿易経済に参加したことを意味する。また,世界の輸出入に占める中国及び東アジアのシェアはこの10年間でほぼ倍増するなど,世界は先進国中心の競争から,途上国までを含めた競争へとシフトし,国際競争がさらに激化する時代に突入した( 第1-2-1図 )。

第1-2-1図 主要国・地域の世界輸出入に占める割合

 このように新しい地域や国が世界経済に進出してきている動きの中で,企業は,最適な活動環境を求め,資本や人をドラスティックに移動させている。さらに,国境を越えた企業間提携や企業買収など,企業のグローバルな活動も活発化している。


■注 WTO:World Trade Orgarization(世界貿易機関)


(2) イノベーションシステム

 イノベーションで中心的な役割を果たすのは企業であるが,イノベーションのもととなる知識は別の場所で創造される場合もあるし,その知識を活用しイノベーションを創出する人材も企業が一から育成するわけではない。このように,イノベーションの発生の過程には,企業の外の様々な要素がかかわっており,それらを組み合わせたものをイノベーションシステムという。平成10年度の年次報告においては,イノベーションシステムを,イノベーションの過程に関係する機関(主役となる企業,知識を提供する公的研究機関,大学等)の活動,これらの機関の相互間での資源(知識,人材等)の流れ及びそれぞれの活動に影響を与える外的要因(例:政府による規制・奨励策,金融政策,雇用政策,教育・人材育成政策等)の総体として定義付けている。

 イノベーションの在り方は,その国の社会経済体制に密接に関連する。一国の社会経済体制は,様々な経済活動に影響を及ぼし,イノベーションの方向をも左右していく。逆にイノベーションは,生産様式と生活様式を変容させ,社会経済の体質に影響を及ぼしていくことになる。このように,技術が製品化し,市場に出ていく過程には,国ごとに異なる社会経済体制が大きな影響を及ぼすことから,国全体としてのイノベーションシステムを,特にナショナル・イノベーション・システムという( 第1-2-2図 )。

第1-2-2図 ナショナル・イノベーション・システムの概念図

 今日,世界的な競争の激化を背景に,各国においては,イノベーションを効果的に創出するため,単に研究費,研究人材等の研究開発資源の量を増加させるのではなく,イノベーションシステムが機能することを妨げ,知識と技術の流れを阻害し,研究開発努力の相対的効率を下げているようなシステム的欠陥を正していくという認識を持って,取組が行われている。その際,ナショナル・イノベーション・システムは,企業,大学,政府といった基本的な構成要素については各国とも同様であるが,その国の文化や経済,法制度や行政機構,それらを形づくった歴史など,それぞれの要素の在り方が各国とも大きく異なることから,互いに他国のイノベーションシステムの優れた部分を取り入れつつ,それぞれの国に最も適したナショナル・イノベーション・システムを確立する必要がある。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ