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第1部   知による新時代の社会経済の創造に向けて
第1章  社会経済発展の原動力となる「知」の創造と活用
第2節  イノベーションによる社会経済の発展
2.  最近の情報通信分野におけるイノベーション


 ITの活用は,情報流通の費用と時間を劇的に低下させることから,世界規模での大きな社会経済構造の変化を生じさせつつあるといわれている。産業革命が農業社会を工業社会に移行させたように,IT革命は世界を工業社会から高度情報通信ネットワーク社会へと導き,知識基盤社会に移行させることとなる。その結果,経済構造改革の実現,産業活動の効率化や生活の利便性の向上,多様な生活スタイルの実現といった国民生活全般の変化をもたらすこととなる。イノベーションが経済等に与える影響をより具体的に示すものとして,IT革命といわれる最近の情報通信分野におけるイノベーションを取り上げる。


(1) IT革命が経済に及ぼす影響

 ITが経済に与える影響の代表的なものとしては,IT化に伴う投資と企業経営の効率化による生産性の向上などが考えられる。

 IT化が経済に及ぼす影響について,米国商務省の調査では,IT投資とその利用が1990年代後半の労働生産性上昇率の半分以上に寄与しているとしており,平成12年度の年次経済報告によれば,我が国でも1990年代後半からIT化が労働生産性の押上げ効果に3分の1程度寄与していることが確認できたとしている。

 OECDは,1990年代のGDP年平均成長率に占めるIT投資の寄与度を分析して,ITと経済成長の関係に見解を示している。それによると,同期間を通じてIT投資の寄与度が高かった米国,オーストラリアや同期間後半に高い寄与度を記録しているフィンランド等は,同時にGDP成長も高かったとしている( 第1-1-3図 )。また,安定して高い成長率を示した米国が,IT投資を中心として発展したのはよく知られているが,有力な電子機器産業を持つ日本経済が失速し,同じような産業を持たないオーストラリアが上昇している。

第1-1-3図 国内総生産(GDP)年平均成長率に占めるIT投資の寄与度

 これに関してOECDは,IT製造業を有することは必ずしも早い経済成長をもたらすわけではなく,もっと重要なのはITを生産性の向上と革新のためにどのように利用していくかということであるから,利用を増加させるような政策努力をとるべきであるとしている。


(2) IT革命が雇用に及ぼす影響

 雇用に及ぼす影響としては,日米の情報通信関連産業雇用者の推移を比較してみると,米国では著しい増加傾向を示しているが,我が国の現状では横這い状況にある( 第1-1-4図 )。

第1-1-4図 日米の情報通信関連産業雇用者数の推移

 米国では,1980年には260万人であった雇用者数が,2000年には460万人に増加した。その間の増加率は,1.74倍で,農業事業所を除く事業所雇用者全体の増加率1.49倍を上回っている。この結果,農業事業所を除く事業所雇用者全体に占める比率は,3.5%から4.1%に上昇した。

 また,米国商務省は,IT労働者の主要職種に対する将来需要に関した労働統計局の予測を公表している。この予測では,コンピュータ科学者及び技術者,システムアナリスト,コンピュータプログラマーについて1996年から2006年の間に,130万人を超える新たなIT労働者が必要になるとしている( 第1-1-5表 )。

第1-1-5表 米国における主要IT職種の雇用予測

 なお,IT革命による雇用への影響としては,一方で労働生産性向上による雇用の減少も想定される。我が国においては,厚生労働省がIT化の雇用効果を推計したところ,平成2年(1990年)から平成11年(1999年)までの累計として,200万人以上の創出効果があったとしている。この推計では,産業全体に及ぼす影響を見る立場から,他産業への波及効果も含めており,労働生産性の向上による雇用減があっても,ITの活用部門や,提供部門における需要増による雇用増がこれを上回り,さらに雇用者所得を通じた効果も引き起こすとしている( 第1-1-6表 )。

第1-1-6表 IT革新によって引き起こされた雇用者の推計増減数


(3) 新たな分野のイノベーション

 今後,IT革命は,個人の生活スタイルにまで波及して,さらに大きな社会変革を生じさせると考えられるが,IT以外の分野の科学技術も急速に進歩しているところであり,特にライフサイエンスの分野においては,ITに匹敵するような社会経済の変革を起こすものと考えられている。

 特に,近年では,ライフサイエンスとIT等複数分野の融合領域(バイオインフォマティクス等)の進歩が急速であり,このような新領域から新産業が創出されることが期待される。


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