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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第3章  科学技術システムの改革
第6節  科学技術振興のための基盤の整備
5.  研究情報基盤の整備


 科学技術の研究開発は,人類の歴史の中で蓄積された広範な知識をもとに新たな知のフロンティアを見いだす営みであり,蓄積された科学技術情報を有効に活用することは研究開発に不可欠である。また,近年の科学技術の高度化に伴い,データベースやネットワーク等の研究情報基盤の整備は研究開発を進める上でますます重要なものとなっている。

 また,米国において研究情報ネットワークとして始まったインターネットが,その後様々な分野における利用へと発展した例に見られるように,研究分野における先駆的な情報化は社会全般のIT化を先導する役割を果たすものである。

 これらを踏まえ,科学技術基本法においては,研究開発に係る情報化の促進に関する政府の義務が明確に位置付けられ,第2期科学技術基本計画においても,研究情報基盤の整備の重要性が指摘されている。

 その具体的取組として,政府は,各研究機関におけるコンピュータの配備やLANの整備,研究機関間のネットワークの整備・高度化,データベースの構築・提供やネットワークを活用した研究情報の共有,大学図書館等における電子図書館的機能の強化等を進めている

 なお,平成12年度の主な研究情報基盤関連施策の概要は 第3-3-38表 のとおりであり,さらに詳細を以下に述べる。

第3-3-38表 主な研究情報基盤関連施策の概要(平成12年度)


(1) ネットワーク及びコンピュータの整備

 現代社会の基幹システムを構成しているコンピュータ・ネットワークは研究開発の現場において開発された後,様々な分野に応用されてきたものであり,先端的な研究開発を進めるに当たりコンピュータ及びネットワークの性能の一層の向上が求められている。

 ネットワークの整備については,科学技術振興事業団が府省の枠を越えて研究機関間を結ぶ研究情報ネットワークとして,平成8年度より省際研究情報ネットワーク( IMnet* )を運用しており,平成13年1月末現在で163機関が接続している。また,国立情報学研究所においては,大学・大学共同利用機関等を相互に接続する学術情報ネットワーク( SINET* )を構築・運営しており,平成13年1月末現在で753機関が接続している。農林水産省においては農林水産関連の研究機関を相互に接続する農林水産省研究ネットワーク( MAFFIN* )を構築・運営しており,平成13年1月末現在で105機関が接続している。省際研究情報ネットワーク(IMnet)は米国及び韓国と,学術情報ネットワーク(SINET)は米国,英国及びタイと農林水産省研究ネットワーク(MAFFIN)はフィリピンと接続しており,海外との研究情報流通のバックボーンともなっている。また,平成10年7月に,各省のネットワークの相互利用により,米国をはじめAPEC地域を接続するアジア太平洋高度研究情報ネットワーク( APAN* )が設立されている。

 さらに,文部科学省では,大学等の学内の各種コンピュータや通信機器間を接続するキャンパス情報ネットワーク(学内LAN)の整備を進めるとともに,ATM(非同期転送モード)システムやギガビット級ネットワークの導入によりその高度化を図っている。また,私立大学等に対しては,学内LANの整備に必要な経費に対し助成を行っている。

 総務省では,通信・放送機構への出資により,全国規模の超高速光ファイバー通信網及び共同利用型研究開発施設等からなる「研究開発用ギガビットネットワーク( JGN* )」を整備している。平成15年度末までの間,ネットワークの高度化のために必要な技術や,高速ネットワークを活用するアプリケーションに関する研究開発のためのテストベッドとしてこれを活用・開放しており,IPv6にも対応することとしている。

 一方,航空宇宙,環境,ライフサイエンス,物質・材料等の先端的な分野における研究開発を進める上で,「理論」「実験」に次ぐ第三の研究手段として「計算」によるコンピュータシミュレーションが欠かせないものとなっている。このため,大学,研究機関等においてスーパーコンピュータをはじめとした高性能なコンピュータの導入を進めている。また,平成12年度より,文部科学省が中心となり,国内の研究機関のスーパーコンピュータ及びデータベースを高速ネットワークで結合し,高度な研究を展開する仮想研究環境ITBL(IT-Based Laboratory)構想を推進するとともに,筑波研究学園都市において,スーパーコンピュータを有する研究機関間を高速ネットワークで連結する「つくばWAN」を構築し,筑波研究学園都市における計算科学技術分野の共同研究の推進等を図ることとしている。


*IMnet:

Inter-Ministry Research Information Network


*SINET:

Science Information Network


*MAFFIN:

Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries Research Network


*APAN:

Asia-Pacific Advanced Network Consortium


*JGN:

Japan Gigabit Network


(2) データベースの構築・提供

{1}文献情報

 閲覧・複写・貸出等による一次情報(論文等の原文献)の提供サービスは,図書館のほか,様々な情報サービス機関において行われている。

 一次情報のデータベース化については,我が国で発行されるすべての出版物が納本される国立国会図書館において,収集・保管資料に関するデータベースが作成され,オンラインで提供されている。文部科学省では,国立情報学研究所が全国の国公私立大学等の協力を得て,大学図書館等が所蔵している学術図書・雑誌の目録所在情報データベースを作成・提供している。農林水産省においては,農林水産省の試験研究機関等が所蔵している図書資料類の所在情報データベースを含むシステム(図書資料管理システム)を作成している。

 また,コンピュータを利用して二次情報をデータベース化することにより,増大する情報の迅速,正確かつ容易な検索が可能となっている。科学技術振興事業団においては,世界の50数か国から科学技術全分野に関する資料を収集し,科学技術文献データベースを構築(年間71万件)して,JSTオンライン情報システム(JOIS)を通じて提供しており,インターネットからのアクセスも可能になっている。また,国立情報学研究所においては,学術研究に関するデータベースを作成し,学術情報ネットワーク(SINET)を通じて提供している。

 さらに,科学技術振興事業団と国立情報学研究所が連携し,学協会等の論文誌等をオンラインで投稿・編集・出版するための共同利用システムを構築し,運用を行っている。

 特許庁ではインターネット上での特許広報等の検索・抽出を可能にする特許電子図書館( IPDL* )の整備・運用を行っている。農林水産省では,国際連合食糧農業機関( FAO* )が作成している国際科学技術情報システム( AGRIS* 及び ASFA* )の我が国における入力センターとして,農学全般,動・植物学,林学,水産学,食品関係などの分野に関する文献情報を共同構築・提供している。


*IPDL:

Industrial Property Digital Library


*FAO:

Food and Agriculture Organization of the United Nations


*AGRIS:

International Information System for the Agricultural Sciences and Technology


*ASFA:

Aquatic Sciences Fisheries Abstracts

{2}基盤情報

 科学技術振興事業団においては,シミュレーション機能などの高度な機能を付加した化合物・合金などの物質情報や遺伝子情報のデータベース(高機能基盤データベース)の開発や,国立試験研究機関等に蓄積されている知的ストックをデータベース化しネットワーク上で広く流通させる研究情報データベース化支援事業を実施している。

 また,文部科学省では,国立大学や国立情報学研究所などにおける各種学術データベースの作成・提供を推進するとともに,大学の研究者や学会によるデータベース作成に対して,科学研究費補助金により助成を行っている。

{3}研究課題・研究者情報

 研究課題・研究者情報の提供に関しては,国立試験研究機関等については科学技術振興事業団が,また,大学等の研究機関については国立情報学研究所が,研究機関,研究課題,研究者,研究資源に関する情報をインターネット上でそれぞれ提供している(科学技術振興事業団:ReaD,国立情報学研究所:NACSIS-DiRR)。平成11年10月からは,双方のシステムによる統合検索を開始し,国内20万件以上の膨大な研究情報の検索を可能とすることにより,利用者の利便性の向上を図っている。


(3) 大学図書館等における電子図書館的機能の整備

 大学図書館は大学などの教育研究活動を支える基盤施設として重要な役割を果たしている。また,近年におけるマルチメディア技術の進展やインターネットの普及などに対応した,多様で高度な情報サービスの提供が期待されている。

 このため文部科学省では,奈良先端科学技術大学院大学におけるモデル的な電子図書館の整備をはじめ,国立5大学における先導的電子図書館プロジェクトを推進するとともに,引き続き各大学の情報発信機能の高度化やCD-ROMサーバの整備など,大学図書館における情報サービスの充実を図っている。


(4) 研究情報の国際流通

 科学技術振興事業団は,米国のケミカル・アブストラクツ・サービス(CAS),ドイツのFIZ-カールスルーエとの間で1987年(昭和62年)に構築した国際科学技術情報ネットワーク(STN International)を年々拡充し,現在200種以上のデータベースをサービスしている。また,米国との協力については,商務省と協力し,科学技術日本文献機械翻訳センターを米国に開設し,日英機械翻訳システムの運用を行っている。一方,対アジア協力に関しては,マレーシア事業所を開設し,科学技術情報の国際流通促進を目指した協力業務を展開している。さらに,日本,韓国,オーストラリア共同提案でAPECプロジェクト「科学技術情報流通促進」を進めており,インターネットによる各国の研究情報に関するディレクトリーの作成や,研究情報のCD-ROMによる提供等を,科学技術振興事業団,韓国の研究開発情報センター(KORDIC)及びオーストラリアの産業科学資源省の三者を中心に実施している。

 国立情報学研究所では,学術情報ネットワーク(SINET)と接続している研究ネットワークを通じて,海外の研究機関等との情報交換,情報検索サービスの提供を行うなど,学術情報の国際的な流通の促進を図っている。


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