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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第3章  科学技術システムの改革
第2節  産業技術力の強化と産学官連携の仕組みの改革
1.  産学官連携の強化のための情報流通・研究交流の仕組みの改革



(1) 情報発信の充実

 産学官連携の強化を促進するためには,産業界と公的研究機関の共通認識の醸成を図ることが不可欠である。このため,公的研究機関においては,各機関において成果発表会の開催,年報等の定期刊行物の刊行等を行っているほか,各種学会や学術刊行物への研究論文の発表,国有の特許の公開等により,成果の公開,情報提供が行われている。

 文部科学省においては,新産業創出に寄与することを目的として,科学技術振興事業団において様々な研究開発支援情報及び研究成果情報をデータベース化し,インターネットを通して広く情報提供を行っている。具体的には,公的研究機関に関する,機関情報,研究者情報,研究課題情報,研究資源情報をデータベース化した情報提供システム(ReaD)や,国の研究プロジェクト等で得られた研究成果を,関連の特許及び報告書紹介情報と合わせて分かりやすく技術シーズ情報に加工してデータベース化した情報提供システム(J-STORE)がある。なお,ReaDでは,大学等の情報を提供している国立情報学研究所との連携システムも構築し,利用性の向上を図っている。

 農林水産省においては,研究成果等をはじめ農林水産業の技術開発等に資する各種情報のデジタル化等の整備を行いインターネットを通じて広く提供している。具体的には,国公立試験研究機関の研究報告等の全文デジタル情報データベース,試験研究機関で実施中の研究課題データベース等を含む農学情報資源システム( Agropedia* )として整備し,一元的に提供している。


*Agropedia:

農(Agriculture)に関する知の泉(Encyclopedia)を意味する合成語。


(2) 研究交流の促進

 近年の研究開発は,高度化かつ複雑化し,境界領域,複合領域に拡大してきており,今後,創造的な科学技術の振興を図るためには,研究組織の枠を越えた人的・物的研究交流及びそれを可能とする体制の整備を積極的に推進し,限られた研究資源の効率的かつ効果的な活用を図ることが重要である。さらに,研究交流は,公的研究機関の研究成果の企業等への移転と公的研究機関の研究への企業等のニーズの反映を促すという点でも重要である。

(共同研究及び受託研究)

 産学官の研究交流の促進を図るため,各府省において共同研究制度等が実施されている。国立大学等と民間等との共同研究の実施件数は着実に増えている( 第3-3-14図 )。文部科学省では,国立大学等と民間との共同研究を推進するため,大学の研究者と民間の研究者とが共通の研究課題に取り組む民間等との共同研究制度,民間等からの研究を受託する受託研究制度,企業等に在籍する研究者に国立大学や大学共同利用機関が研究指導を行う受託研究員制度を実施している。また,共同研究や受託研究を実施する場としてばかりではなく,企業等の技術者に対する研修や研究開発の技術相談を行い,産業界と連携・協力していく全学的な窓口として,国立大学への共同研究センターの設置等を行っており,平成12年度までに56大学に設置されている( 第3-3-15図 )。

第3-3-14図 国立大学等と民間等との共同研究の実施件数の推移

第3-3-15図 共同研究センターを設置している大学数の累計

 各府省における産学官の連携による共同研究の推進については,例えば,科学技術振興調整費による総合研究等,農林水産省における官民交流共同研究事業,経済産業省におけるエネルギー・環境領域総合技術開発推進計画(ニューサンシャイン計画),産業科学技術研究開発,中小企業地域産学官共同研究事業,官民連帯共同研究事業,経済産業省,文部科学省におけるベンチャー・中小企業支援型共同研究推進事業,総務省における情報通信ブレークスルー基礎研究21,通信・放送機構を実施法人とした先導的研究開発などの制度により産学官の連携による総合的なプロジェクト研究が推進されている。

(研究交流促進法の整備等)

 国が行う研究開発については,国家公務員制度,財産管理制度等の制約があり,民間や外国等の国以外の者との研究交流の促進を図る上での条件が十分に整っていなかった。このため,法制度上の不備を改善すべく,研究交流促進法が施行されるとともに,運用上の障害を改善するため,「産学官及び外国との研究交流の促進に関連する諸制度の運用に関する基本方針について」が閣議決定された。

 研究交流促進法は,科学技術面での国際貢献の必要性が高まるとともに,基礎的・創造的研究の推進が内外から強く求められてきている状況の下,国の研究活動を取り巻く種々の制度的制約を一層緩和するために,適宜改正を行ってきた。平成10年5月には,国立大学・国立試験研究機関等の構内に共同研究施設を建てる場合の敷地の廉価使用を可能とすべく同法の一部改正を行い,現在までに2件の適用がある。


(3) 人的交流

 現在,研究者の交流に関する制度としては,各府省の客員研究官制度や国立試験研究機関における研究者の流動的かつ独創的な研究活動を推進する流動研究員制度等により,外部の研究者が国の試験研究機関において研究に参加しているほか,科学技術振興事業団の異分野研究者交流促進事業をはじめとする研究交流促進事業により,研究者の交流が推進されている。

 また,大学,国立試験研究機関及び企業等が互いに補い合いつつ,人的交流の促進に貢献しているのが,産官の研究機関と大学院が連携を図る連携大学院制度であり,最近では,この制度の活用も広がってきている( 第3-3-16図 )。

第3-3-16図 連携大学院制度の活用状況

 さらに,国立試験研究機関の研究者や国立大学等の教員が,民間等の研究にかかる活動を行うことは,産学官連携による我が国の科学技術振興に資するとともに,自らの能力を涵養し発揮する機会となることから,国の研究者らが勤務時間外に民間等で研究,指導等に従事する場合の兼業許可については,円滑な運用に努める必要がある。従来は,兼業は私立大学の講師などが少数例認められている程度であったため,平成8年度から順次,経済産業省(通商産業省),文部科学省(科学技術庁),厚生労働省(厚生省),農林水産省,総務省(郵政省)及び国土交通省(運輸省)は,勤務時間外の兼業について,兼業先との間に許認可や補助金の交付等のかかわりがなく,かつ,職務の遂行に支障がない場合には,原則として許可できることを明確化した。平成8年度から平成11年度までの兼業許可件数は累積で600件を超える( 第3-3-17図 )。また,国立大学等の教員が,勤務時間外に営利企業において研究開発又は研究開発に関する技術指導に従事する場合の兼業についても,原則として許可できるものとするなど,文部科学省(文部省)では,関係通知を改正し,平成9年度から実施している。さらに,平成12年4月から,TLOが業務として行う他の企業に対する技術指導等に従事する場合の兼業についても認められるようになった。平成8年度から平成11年度までのこれらの兼業を含めた国立大学における兼業許可件数は14万件を超えている( 第3-3-18図 )。

第3-3-17図 国立試験研究機関における兼業許可件数の推移

第3-3-18図 国立大学における兼業許可件数の推移

 さらに,平成12年4月には,国家公務員法第103条に基づく人事院規則が整備されたことに伴い,国立大学等の教員や研究職員の技術移転機関( TLO* )の役員等への兼業,研究成果活用企業の役員等への兼業及び株式会社等の監査役への兼業が可能となっている。


TLO:

TLO(Technology Licensing Organization)は,「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律(大学等技術移転促進法)」に基づいた技術移転事務所で,{1}研究成果に関する特許権等の取得・維持・保全,{2}研究成果に関する技術情報の提供,{3}研究成果に関する企業への移転等(ライセンシング)を主な事業内容としている。


(4) 産業競争力会議及び国家産業技術戦略

 産業競争力会議では,生産性の向上による産業の競争力強化を目指した総合的な検討を行い,これまでに,事業再構築及び国の委託研究開発にかかる特許権等の受託者への帰属等(産業活力再生特別措置法制定),中小企業・ベンチャー企業支援(中小企業基本法改正),ミレニアム・プロジェクトの策定,国立大学教官等の民間企業役員兼業規制の緩和等を含む「産業技術力強化法」の制定等の施策がこの会議での議論を契機として実現されている。

 それまでの産業競争力会議での議論,提言等を踏まえ,平成12年4月に「国家産業技術戦略」が取りまとめられた。

 国家産業技術戦略では,産業技術力強化に向けての今後の大きな方向性を「キャッチアップ型からフロンティア創造型への技術革新システムの改革」であるとし,その達成目標として,{1}技術革新を生み出す真の産学官連携の実現,{2}国際競争力のある大学を目指した改革の推進,{3}創造性豊かな研究・技術人材の育成,{4}世界の技術革新動向に適応できる柔軟な政府の制度の再構築を掲げ,そのための制度改革等,具体的な措置が提言されている。

 さらに,産業技術力強化のために,「政府研究開発投資の重点化」が不可欠とし,{1}市場の創出につながる社会的ニーズをにらんだ研究開発投資,{2}革新性・基盤性を有する萌芽的技術に対する研究開発投資,{3}産業技術の発展ベースとなり,公共財としての側面を有する知的基盤への投資を重点化領域としてあげている。

 また,16の分野別産業技術戦略では,産学官の有識者により分野毎に適切な場で,2010年頃をにらんだ目標を設定し,そのための総合的な戦略を策定している。


(5) 研究施設等の共同利用の促進

 国立大学,国立試験研究機関,特殊法人における先端的かつ高度な研究開発施設等を外部の利用者の共同利用に供することは,研究交流の促進ばかりでなく,施設等の効率的利用の観点からも重要である。

 文部科学省では,日本原子力研究所と理化学研究所の共同事業として整備を進めている大型放射光施設(SPring-8)が供用を開始した。大型放射光施設は,光速近くまで加速された電子が,磁場により曲げられた時に発生する光(放射光)を利用し,物質・材料系科学技術,ライフサイエンス,情報・電子系科学技術,医学への応用等幅広い分野で最先端の研究を行うための施設である。SPring-8は,基礎研究をはじめ,広範な分野の研究に重要な成果をもたらすものであり,研究者の期待が大きい。このため,これを国内外の研究者に広く開放し,その利用の促進を図るため,「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」が制定された。

 また,航空・電子等技術審議会において取りまとめられた「大型放射光施設(SPring-8)の効果的な利用・運営の在り方について」(諮問第20号)を受け,SPring-8の利用促進,施設利用の高度化,施設の適切な管理運営等について本施設の効果的な利用・運営に向けた施策を推進している。

 平成12年度においては,国内外のあらゆる利用者,すべての研究分野に対して,公平な利用機会を提供することを基本として,放射光利用研究促進機構が利用研究課題の募集・選定を行った。平成12年1月から平成13年1月までに実施される利用研究課題として,約760件の課題を採択し,幅広い分野の利用研究を推進した。


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