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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第3章  科学技術システムの改革
第1節  研究開発システムの改革
1.  優れた成果を生み出す研究開発システムの構築



(1) 競争的な研究開発環境の整備

 第2期科学技術基本計画においては,優れた成果の創出・活用のための科学技術システム改革を重要政策の一つとして掲げ,競争的な研究開発環境の形成に貢献する競争的資金を引き続き拡充することとしている。

{1}主な競争的資金

(文部科学省)

 文部科学省では,科学技術会議の方針に沿って科学技術の振興に必要な重要業務の総合推進調整を行う科学技術振興調整費等の拡充により,国の研究開発の振興を図っている。

 科学技術振興調整費の平成12年度予算は,324億円,対前年度比7.3%増であった( 第3-3-1図 )。

第3-3-1図 科学技術振興調整費の予算額の推移

 また,ミレニアム・プロジェクトの一環として,「革新的な技術開発の提案公募」を平成12年度から開始し,平成12年度は約2,100件の応募に対し77件の課題を採択した。

 大学等における優れた独創的・先駆的な研究を格段に発展させることを目的とし,学術研究の動向に即して特に重要なものを取り上げ,研究費を助成する科学研究費補助金の拡充を図っている。科学研究費補助金の平成12年度予算は,1,419億円,対前年度比8.0%増であった( 第3-3-2図 )。このうち,文部科学省においては特別推進研究や特定領域研究等の大型あるいは学術振興上の政策的要請の強い研究種目を,日本学術振興会においては基盤研究等の研究種目を中心に審査・交付業務を行っている。

第3-3-2図 科学研究費補助金の予算額の推移

(厚生労働省)

 厚生労働省では,厚生科学研究費により厚生科学研究の振興を促し,国民の医療,福祉,生活衛生等に関し,行政施策の科学的な推進を確保し,技術水準の向上を図っている。

(環境省)

 環境省では,地球環境研究総合推進費により,地球環境保全に関する関係閣僚会議において策定される地球環境保全調査研究等総合推進計画に基づく,地球温暖化等地球環境保全のための研究を推進している。

 その他,次に記すような特殊法人等による基礎研究推進制度がある。

 平成12年度における主な競争的資金の一覧を, 第3-3-3表 に示す。

第3-3-3表 主な競争的資金制度

{2}特殊法人等における政府出資金を活用した基礎研究推進制度

 特殊法人等への政府出資金等を活用し,基礎研究の主要な担い手である大学,国立試験研究機関等を対象に研究テーマを公募する方法等により,競争的で研究者の独創的な研究開発能力が最大限発揮し得る基礎研究推進制度が, 第3-3-4表 のとおり関係府省で実施されている。

第3-3-4表 特殊法人等による基礎研究推進制度

(総務省)

 総務省では,我が国の社会経済活動のあらゆる局面において情報通信技術が急速に浸透している現状に対応するとともに,将来の情報通信技術のシーズを生み出すためには,独創性のある研究開発を充実・強化することが重要であることから,平成12年度においては,通信・放送機構が,独創性・新規性に富む研究課題,地域ニーズに応じた研究課題,国際標準化を目的とした研究課題等を公募し,委託研究等を実施する「情報通信分野における基礎研究推進制度」を実施した。

(文部科学省)

 戦略的基礎研究推進事業は,文部科学省が設定した戦略目標の下に科学技術振興事業団が研究領域を設け,それぞれの領域において国立試験研究機関,大学等の産学官を問わず研究テーマを公募して重点した基礎研究を実施するものである。平成12年度は,「大きな可能性を秘めた未知領域への挑戦」,「分子レベルの新機能発現を通じた技術革新」,「環境にやさしい社会の実現」,「資源循環・エネルギーミニマム型社会システムの構築」及び「技術革新による活力に満ちた高齢化社会の実現」という5つの戦略目標の下に研究領域を定め,重点的な基礎研究を推進した。また,同事業団においては,柔軟な発想とチャレンジ精神を持った若手研究者による基礎研究を積極的に推進するため,若手研究者研究推進事業及び個人研究推進事業(さきがけ研究21)において,新たな科学技術の芽を生み出すと期待される領域について,広く国内外の研究者から研究テーマを募り,その中から真に独創的な発想を持つ優れた若手研究者を厳選して研究を行わせる事業を実施している。

 また,日本学術振興会においては,我が国の未来の開拓につながる知的資産の形成が期待される大学主導型の学術研究を推進する未来開拓学術研究推進事業を実施している。

(厚生労働省)

 厚生労働省では,医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構において,公募方式等により保健医療水準の向上に資する医薬品,医療機器等の開発に向けた基礎的研究を行う「保健医療分野における基礎研究推進事業」を実施している。

(農林水産省)

 農林水産省では,生物系特定産業技術研究推進機構に出資を行い,提案公募方式により生物機能の高度利用等を促進する基礎研究を強化するための共同研究等の施策を実施している。

(経済産業省)

 経済産業省では,新エネルギー・産業技術総合開発機構に出資等を行い,将来の産業技術のシーズとなることが期待される研究開発を行う「新規産業創造型提案公募制度」を実施し,平成12年度には若手研究者へ研究資金を助成する「産業技術研究助成事業」を創設し,基礎的・独創的な研究開発の推進を図っている。

(国土交通省)

 国土交通省では,運輸施設整備事業団に出資を行い,運輸分野における公募型基礎的研究推進制度を設けて,画期的な技術革新をもたらす可能性を有する新たな発想に立った新技術を創出するための独創性,革新性のある基礎的研究の推進を図っている。

{3}経常研究費

 大学及び国立試験研究機関等において経常研究を遂行するために必要不可欠な共通基盤的経費である教育研究基盤校費及び研究員当積算庁費の充実が図られた。

 なお,第2期科学技術基本計画では,競争的資金の倍増を図っていく中で,基盤的経費については,競争的な研究開発環境の創出に寄与すべきとの観点から,その在り方を検討することとされている *


*第2期科学技術基本計画においては,この際,{1}教育研究基盤校費については,教育を推進する経費であるとともに大学の運営を支えるために必要な経費としての性格を有すること,{2}研究員当積算庁費については,研究機関の行政上の業務遂行に必要な研究費としての性格を有することに留意することとされている。


(2) 任期制の広範な普及等による人材の流動性の向上

活力ある研究開発環境を目指すため,任期制の広範な定着に努め,人材の流動性を向上させることが重要である。

 このため,国立試験研究機関については,「一般職の任期付研究員の採用,給与及び勤務時間の特例に関する法律」において,特に優れた研究者を円滑に結集・採用するための「招へい型」と,高い資質を有する研究者を採用し,創造的な研究能力をかん養するための「若手育成型」の2種類の任期付任用制度が導入された。採用状況は 第3-3-5表 のとおりである。

第3-3-5表 「一般職の任期付研究員の採用,給与及び勤務時間の特例に関する法律」に基づく任期制の導入状況

 また,平成9年度より科学技術振興調整費を活用して,国立試験研究機関における任期付任用制度の導入を促進するため,任期付研究員が限られた期間内に密度の高い研究活動を行うための経費を措置する「流動促進研究制度」を実施している。

 大学及び大学共同利用機関については,「大学の教員等の任期に関する法律」において,各大学等の判断により任期制の導入が可能となっている。この法律に基づく任期制の導入状況は 第3-3-6表 のとおりである。

 なお,第2期科学技術基本計画においては,国の研究機関等は,任期制及び公募の適用方針を明示した計画を作成するよう努めるものとされており,今後,国の研究機関等において計画の策定が進むことが期待される。

第3-3-6表 「大学の教員等の任期に関する法律」に基づく任期制の導入状況


(3) 若手研究者の自立性の向上

 優れた若手研究者がその能力を最大限発揮できるように,若手研究者の自立性を確保することが重要である。

ア.ポストドクター等1万人支援計画

 第1期科学技術基本計画等において提唱された「ポストドクター等1万人支援計画」に基づき,ポストドクター等の若手研究者の支援を図るとともに,若手研究者を積極的に登用して独創的な基礎的研究を推進する制度を創設,推進してきたところであり,その数値目標については,提唱されてから4年目の平成11年度に達成され,その後も着実に支援者数が増加している。

 平成12年度においても,政府全体として関連施策の拡充を図り,補正予算分を含め計10,618人のポストドクター等を支援するための予算を計上し,引き続き1万人規模の支援を行ったところである( 第3-3-7図 )。

第3-3-7図 ポストドクター等1万人支援計画の推移

(文部科学省)

 日本学術振興会の特別研究員制度等により,創造性豊かな優れた若手研究者4,510人への支援を行うとともに,科学技術振興事業団が創造性豊かな若手研究者を国立試験研究機関等に派遣する科学技術特別研究員制度により320人,理化学研究所が独創性に富む若手研究者に同研究所において自発的かつ主体的に研究できる場を提供する基礎科学特別研究員制度により222人を受け入れるなど,計9,626人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。

(厚生労働省)

 厚生科学研究推進事業により,計299人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。

(農林水産省)

 生物系特定産業技術研究推進機構が実施する新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業において240人の若手研究者の活用を行うなど計275人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。

(経済産業省)

 新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施する新規産業創造型提案公募事業,産業技術フェローシップ制度, AIST* フェローシップ制度, ITIT* 特別研究員制度等により,補正予算分を含めて計418人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。


*AIST:

Agency of Industrial Science and Technology(旧工業技術院)


*ITIT:

Institute for Transfer of Industrial Technology(国際産業技術研究)

イ.若手研究者の積極的な登用による独創的な基礎研究の推進

 世界的に優れた研究成果を上げた研究者の多くは,30歳代にその後の研究の基盤となる研究を行っているが,我が国は年功序列による処遇が一般的であり,若手研究者の能力を活かす環境は大きく立ち後れている。このため,関係府省が連携しつつ,それぞれ若手研究者を積極的に登用して,独創的な基礎研究を推進する制度を創設・推進している。

(総務省)

 平成12年度から,通信・放送機構において,新事業の創出につながる産学の連携や若手研究者の自立を目的とした研究課題を公募し委託研究を実施する「産学連携・若手研究者支援型研究開発制度」を実施している。

(文部科学省)

 科学技術振興事業団が,柔軟な発想とチャレンジ精神を持った若手研究者が裁量権を持って研究できる体制を整備するため,個人研究推進事業(さきがけ研究21)及び若手研究者研究推進事業を実施してきた。また,日本学術振興会は,大学主導型の学術研究をプロジェクト的に進める未来開拓学術研究推進事業により若手研究者を活用するとともに,科学研究費補助金についても平成12年度に若手研究者向けの制度を拡充した。

(農林水産省)

 生物系特定産業技術研究推進機構が実施する新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業において,若手研究者支援型事業を推進している。

(経済産業省)

 新エネルギー・産業技術総合開発機構が平成12年度に若手研究者を活用して研究を推進する産業技術研究助成事業を創設し,研究を推進している。


(4) 評価システムの改革

 研究開発活動の効率化・活性化を図り,より優れた成果を上げていくためには,研究者の実績等を適切に評価するとともに,研究開発課題及び研究開発機関について厳正な評価を実施し,評価結果を予算・人材などの資源配分など適切に活用することが重要である。

 研究開発の評価については,第1期科学技術基本計画を受けて,科学技術会議の意見具申に基づき,平成9年8月「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法のあり方についての大綱的指針」が内閣総理大臣決定され,同指針に沿って関係府省において研究開発の評価が進められていたところである。平成13年度までの評価のための予算額は 第3-3-8図 に示すように大綱的指針の策定に従い,拡充されてきている。

第3-3-8図 研究開発評価のための予算額の推移

 第2期科学技術基本計画においては,競争的な研究開発環境の実現と効果的・効率的な資源配分に向けて,評価における公正さと透明性の確保,評価結果の資源配分への反映ならびに評価に必要な資源の確保と評価体制の整備に重点を置いて研究開発の評価について改革を進めることとし,また,この方向性に沿って,研究開発評価に関する大綱的指針を改定することとしている。

 今後は,第2期科学技術基本計画等を踏まえ,研究開発課題の評価,研究開発機関の評価,研究者の業績評価,それぞれにおいて従来以上の評価の公正さと透明性を確保するとともに,評価結果については,課題の継続,拡大・縮小,中止等の資源配分,研究者の処遇に適切に反映することが重要である。

 また,評価に必要な資源の確保と評価体制の整備という点については,競争的資金の配分機関などにおいて,研究費の一部を評価の業務に充てること,評価部門を設置して研究経験のある人材を国の内外を問わず確保するなど必要な資源を充て,評価体制を充実すること,また,研修等を通じて人材の養成につとめること,国全体として,個々の課題についての研究者,評価者,評価結果をまとめたデータベースを整備すること,評価体制の整備に伴い発生する審査業務等を効率化し,評価をより高度なものとするため電子システムの導入を図ることとされている。

 平成13年1月から,全府省において政策評価の取組が開始され,また,同4月からは,独立行政法人通則法に基づき独立行政法人となる国立試験研究機関等について独立行政法人評価委員会による評価が実施されている。これらの状況に対応して,従来より取り組まれてきた研究開発評価について,既存の取組を踏まえつつ一層の改善・充実が必要である。


(5) 制度の弾力的・効果的・効率的運用

 研究開発の特性を踏まえて,制度を弾力的・効果的・効率的に運用することが必要である。このため,国立試験研究機関においては,研究実績に応じて所長等の裁量で予算を重点配分すること,研究課題に応じた研究者の配置と研究期間の設定等,研究開発の進展や変化に対応するため,機関内の措置により機動的,弾力的に改変できる組織形態を活用する取組が開始されている。

 文部科学省では,平成10年10月の大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」において,学長のリーダーシップの下に適時適切な意思決定を行い実行できる組織運営システムの確立が提言されたのを受け,制度改正をはじめとしてその具体化に取り組んでいるところである。

 また,文部科学省では,平成10年度から科学技術振興調整費を活用して,複数の研究機関が人材面,資金面,設備面で融合した研究グループを形成し,そこに国内外の優秀な研究者を結集させ,研究総括責任者の統一的なマネジメントにより,学際的な研究を遂行する「開放的融合研究推進制度」を実施している( 第3-3-9表 )。

第3-3-9表 開放的融合研究対象課題

 さらに,平成10年度から,国立大学等の教官が企業等外部から委託された研究等を行う場合において,研究の進展や研究計画の変更に伴う費目の変更に柔軟に対応するため,従来3つに分かれていた費目を統合した新たな費目((目)産学連携等研究費)を創設した。これにより,資金の効果的活用が促進されるとともに,国立大学等における研究活動の更なる進展が期待されている。


(6) 人材の活用と多様なキャリア・パスの開拓

 研究活動の活性化及び研究開発の政策立案能力の向上の観点から,多様な人材の登用について,研究機関あるいは研究開発を推進する行政機関が積極的に取り組むことが重要である。

 研究機関における外部人材の登用に関しては,国立試験研究機関において,組織の活性化を図るとともに,学界及び産業界との連携を深める観点から,所長に大学教授を迎える例が多くなっている。

 また,大学においては,教員の採用方法として,人事の流動性を高め,優れた人材を確保するため,公募制を採る大学が増えている。また,多様な経歴・経験を持つ優れた人材を確保するため,社会人や外国人の採用を促進し,国立試験研究機関,民間企業の研究者をはじめとする大学外の人材が積極的に登用されている。

 一方,行政機関における研究人材の活用に関しては,内閣府総合科学技術会議事務局等において,研究者が政策の企画・立案に参画する機会を確保することとしている。


(7) 創造的な研究開発システムの実現

 基礎研究をはじめとする研究活動を一層活性化するため,研究者が創造性を最大限に発揮できるよう柔軟かつ競争的で開かれた研究開発環境を実現するとともに,広く国内外の研究者を引き付けることのできる魅力的な研究開発環境を有する国際的研究開発拠点(=センター・オブ・エクセレンス(COE))を育成することが重要である。

 このため,平成5年度から科学技術振興調整費を活用した中核的研究拠点(COE)育成制度により,世界の優れた研究者が集まる研究環境を有し,優れた研究成果を世界に発信する領域における基礎研究を柔軟で競争的な環境の下で強力に実施することを通じて,具体的構想を持ってCOEの育成を図る国立試験研究機関の取組を支援しており, 第3-3-10表 のとおり,各機関が育成対象機関として選定されている。

第3-3-10表 中核的研究拠点(COE)育成制度対象機関


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