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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第2章  科学技術の重点化戦略
第2節  国家的・社会的課題に対応した研究開発の重点化
7.  社会基盤分野


 社会基盤分野は,国民生活を支える基盤的分野であり,豊かで安心・安全で快適な社会を実現するために,社会の抱えているリスクを軽減する研究開発や国民の利便性を向上させ,質の高い生活を実現するための研究開発を推進している。


(1) 防災科学技術

 我が国はこれまで数多くの自然災害を経験し,これに対し各種の防災対策を講じてきているところであり,災害から人命・財産を守り,被害を軽減していくためには,災害の未然防止,災害が発生した場合における被害の拡大防止,災害復旧という一連の過程において,科学技術上の知見を十分活用することが重要である。このため,各研究機関において「防災に関する研究開発基本計画」(昭和56年内閣総理大臣決定,平成5年改定),「阪神・淡路大震災を踏まえた地震防災に関する研究開発の推進について」(平成7年5月科学技術会議政策委員会決定)等に沿って研究開発が進められている。

 各府省における防災科学技術分野の研究課題は 第3-2-10表 に示すとおりであり,その内容は地震防災対策,火山災害対策,雪氷災害対策,気象・水象災害対策,地球科学技術など多岐にわたり,かつ,宇宙開発技術,海洋開発技術等先端科学技術を駆使しているものもかなりある。特に,地震防災研究については,科学技術振興調整費を活用した「構造物の破壊過程解明に基づく生活基盤の地震防災向上に関する研究」等を実施しているほか,文部科学省防災科学技術研究所において,実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)の整備等を実施している。また,平成12年度に科学技術振興調整費による緊急研究「神津島東方地域の海底下構造等に関する緊急研究」を実施した。

第3-2-10表防災科学技術分野(自然災害を中心とした)の主な研究課題(平成12年度)

 国際協力については,米国,ロシア,イタリア等との間の科学技術協力協定,日米包括経済協議,天然資源の開発利用に関する日米協力( UJNR* )の枠組みの下で,防災科学技術に関する二国間の研究協力が進められている。特に,地震防災に関しては,平成8年4月にコモン・アジェンダに新たに追加された自然災害軽減の分野の枠組みの下,日米地震被害軽減パートナーシップによる協力が推進されている。平成12年5月には第3回共同調整委員会が米国で開催され,双方がそれぞれのプロジェクトについて現状報告等を行った。また,平成12年11月に米国において第3回日米地震防災政策会議が開催され,地震防災対策について意見交換がなされた。

 さらに,科学技術振興調整費により「アジア・太平洋地域に適した地震・津波災害軽減技術の開発とその体系化に関する研究」をAPECの16エコノミー及び1国連機関と共同で行っている。

 このほか,国際協力事業団(JICA)を通じ,研修員の受入れや専門家の派遣等の技術協力を実施している。

 さらに,特に途上国における自然災害による人的損失・物的損失及び社会的混乱を国際協調行動により軽減することを目的として,1990年代が「国際防災の10年( IDNDR* )」とされてきたが,2000年以降も国連において引き続き,同様の取組を継続することが国連総会において決定され,2000年(平成12年)より ISDR* として取組が行われているところである。この一環として,平成12年12月に文部科学省(科学技術庁)が「地震防災研究施設とそのネットワークに関するワークショップ」を開催した。


*UJNR:

U.S.-Japan Cooperative Program in Natural Resources


*IDNDR:

International Decade for Natural Disaster Reduction


*ISDR:

International Strategy for Disaster Reduction


(2) 地震調査研究等

 平成7年に発生した阪神・淡路大震災を契機に,地震に関する調査研究の一元的な推進のための体制の整備等を目的とした地震防災対策特別措置法が成立し,同法に基づき,地震調査研究推進本部(本部長:文部科学大臣)が設置されている。

 同推進本部を中心に,文部科学省,経済産業省,国土交通省等の関係府省が,密接な連携・協力を行いつつ,地震調査研究を推進する体制となっている( 第3-2-11図 )。

第3-2-11図 地震調査研究推進本部の構成

 地震調査研究推進本部には,政策委員会及び地震調査委員会を設置している。政策委員会は,予算小委員会を設置し,関係府省の地震調査研究に関係する予算等の事務の調整を実施している。また,政策委員会における検討を受け,地震調査研究推進本部が平成9年8月には「地震に関する基盤的調査観測計画」を,また,平成11年4月には,今後10年程度にわたる地震調査研究推進の指針となる「地震調査研究の推進について-地震に関する観測,測量,調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策-」(以下,「総合的かつ基本的な施策」という。)を決定した。さらに,政策委員会では成果を社会に生かす部会を設置し,地震調査研究の成果を社会に生かしていくための検討を進めている。

 地震調査委員会は,平成12年度において19回の会合を開催し,各地域の地震活動について総合的な評価を取りまとめ,防災活動に役立つよう,これを即日公表してきた。特に,臨時の会合においては,平成12年6月以降の三宅島付近から新島・神津島付近にかけての地震活動,平成12年10月に発生した鳥取県西部地震及び平成13年3月に発生した芸予地震について評価し公表した。

 また,同委員会では,その下に長期評価部会を設け,基盤的調査観測の対象活断層(98断層帯)について,地震発生の可能性に関する長期的な評価を順次行っている。平成12年度は,4つの断層帯について評価結果を公表した。さらに,海域の大地震の発生についての長期的な評価の一環として初めて,宮城県沖地震についての評価結果を公表した( 第3-2-12表 )。これらの評価結果は,地方公共団体等に説明するとともに,報道機関,インターネット等を通じて広報している。

第3-2-12表 評価結果を公表した断層帯及び海域に発生する大地震

 また,同委員会は,その下に強震動評価部会を設け,総合的かつ基本的な施策において当面推進すべき地震調査研究として掲げられた地震動予測地図の作成に向け,特定の活断層帯を起震断層とした強震動の予測手法について検討を進めている。

 各府省の地震調査研究関係の主な施策は, 第3-2-13表 に示すとおりである。文部科学省では,「地震に関する基盤的調査観測計画」に従い,高感度地震観測施設,広帯域地震観測施設,海底地震観測施設等の整備を進めるとともに,都道府県及び政令指定都市が行う活断層調査等に地震関係基礎調査交付金を交付している。また,文部科学省防災科学技術研究所において,関東東海地殻活動観測網,全国1,000か所の強震計ネットワーク等による地震に関する基礎的な調査研究を実施している。なお,国立大学等においては,測地学審議会建議「地震予知のための新たな観測研究計画の推進について」に基づいた地震予知に関する基礎的研究を推進している。経済産業省産業技術総合研究所では,活断層等による地震発生ポテンシャル評価の研究を推進している。海上保安庁水路部では,海域における測地,海底地形や活断層等の地震調査研究を推進している。

第3-2-13表 各府省の地震調査研究関係の主な施策(平成12年度)

 気象庁では,全国における地震観測等を行うとともに観測施設の整備,地震予知研究等を推進している。国土地理院では,全国約1,000箇所のGPS連続観測のほか,VLBI(超長基線電波干渉計)など最先端の測量技術を用いて地殻変動やプレート運動の観測を行うとともに,観測データを分析し,地震調査研究を推進している。

 火山に関する観測研究については,文部科学省,気象庁及び国土地理院では,平成12年3月からの有珠山(北海道)の火山活動,6月からの三宅島(東京都)の火山活動の観測研究体制を一層強化するため,地震計,空振計,GPS等火山観測施設の増強を行ったほか,国内の火山活動の活発化に伴い駒ヶ岳(北海道)等の活火山における火山観測施設の増強を行った。総務省では電波を用いて有珠山,三宅島の火山活動による地形,火山灰等の観測を行った。


(3) その他の社会基盤の整備

 都市化の進展,交通・運輸や通信システムの発達等社会全体が高度化,複雑化していく一方で,農山漁村地域においては,人口流出や高齢化が進展し,産業・生活両面にわたる活力の低下に加え,公共交通・輸送機能の低下,国土保全,水源かん養,自然環境保全等の多面的で重要な機能の低下等の問題が生じており,また,ゆとりと豊かさを感じられる,より質の高い国民生活を実現するためにも,社会経済基盤の整備が内外から求められている。このため,総合的な国土の利用を図るための技術,公共的施設等の土木・建築に関する技術及び交通・輸送にかかる研究開発,高度な情報通信システムの確立を目指した技術及びデータベースの構築に関する研究開発並びに廃棄物処理技術の研究開発を推進することが必要である。また,環境に対する負荷の低減に留意しつつ,消費者要請の多様化,労働力の不足等に対応するための生産活動に関する技術の研究開発を推進することが重要である。

 本分野については,「運輸省研究計画」(国土交通省(平成12年6月運輸省)),「21世紀を展望した運輸技術施策について」(国土交通省(平成3年6月運輸省運輸技術審議会)),「21世紀初頭の交通技術開発の基本的方向について」(国土交通省(平成12年12月運輸省運輸技術審議会)),「情報通信研究開発基本計画」(総務省(平成12年2月郵政省電気通信技術審議会)),「公害の防止等に関する試験研究の重点的強化を図る必要がある事項について」(環境省(毎年度環境庁))等が策定され,研究開発が重点的に推進されている。

 具体的な研究開発については,先端技術を活用した国土管理技術の開発等の総合的な国土利用や建設事業の品質管理体系,構造物安全性向上技術の開発などの建設技術等に関する研究開発が,国土交通省等により推進されている。また,超電導磁気浮上方式鉄道技術開発,超音速輸送機用推進システムなどの高度な交通・輸送システムの開発のための研究開発が国土交通省等により推進されている。さらに,超高速ネットワーク技術や高度情報資源伝送蓄積技術の研究開発などの高度な情報・通信システムの開発のための研究開発が総務省等により推進されている。また,農業用基幹施設の保全・防災技術に関する研究が農林水産省により整備されている。国土交通省では,将来の高速輸送を目的とする超伝導磁気浮上式鉄道の実用化に向けて研究開発を促進するため,財団法人鉄道総合技術研究所への助成等を行っている。

 平成12年度に実施された社会経済基盤の整備に関する主な研究課題及び安全の確保等に関する分野の主な研究課題をまとめると 第3-2-14表 * , 第3-2-15表 のとおりである。

第3-2-14表 社会経済基盤の整備に関する主な研究課題(平成12年度)


*GIS(地理情報システム)とは,Geographic Information Systemの略で,地図上の位置や場所に結びつけられる地理情報のデータを統一的にデータベース化したものである。

第3-2-15表 安全の確保等に関する分野の主な研究課題(平成12年度)


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