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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第2章  科学技術の重点化戦略
第2節  国家的・社会的課題に対応した研究開発の重点化
5.  エネルギー分野



(1) 原子力の研究,開発及び利用について

 我が国の原子力の研究,開発及び利用は,原爆の惨禍から間もない1950年代半ば,平和利用を原点として開始されたが,以来,今日に至るまで,原子力基本法に則り,厳に平和目的に限り行われてきた。

 今日,原子力発電は電力供給の3分の1を越える基幹電源となりエネルギー供給の面で重要な役割を果たすとともに,加速器等原子力科学技術は,基礎科学分野における新たな知見をもたらすのみならず,ライフサイエンスや物質材料系科学技術分野等に欠かせない研究手段を提供している。また,放射線利用についても,医療,農業,工業,環境保全など広範な分野で普及しており,原子力は我が国のエネルギー供給の安定性確保と国民生活の質の向上に大いに貢献している。

 しかし,その一方で平成11年9月に発生した株式会社ジェー・シー・オーのウラン加工工場における臨界事故など一連の事故により,原子力に対する不安や,原子力に携わる関係者への不信感が高まったほか,放射性廃棄物の処分の問題等解決すべき課題も多い。

 原子力委員会は,我が国の原子力研究開発利用に関する施策の計画的な遂行,及び安全の確保,平和利用の堅持等,原子力研究開発利用に当たっての基本的な考え方を示すため,概ね5年ごとに「原子力の研究,開発及び利用に関する長期計画」を策定してきた。そして,前回の長期計画の策定(平成6年6月)以来,5年以上が経過し,このような原子力を巡る社会情勢の変化を踏まえ,原子力委員会は,21世紀を見通して我が国が採るべき原子力研究開発利用の基本方針及び推進方策を国民,国際社会及び原子力関係者に明らかにするため,全て公開のもとで審議を行い,また,国民からの意見募集,ご意見を聞く会の開催を行い,平成12年11月に,新しい「原子力の研究,開発及び利用に関する長期計画」(以下「原子力長期計画」という。)を策定した。

{1}安全確保・防災対策

 原子力研究開発利用に当たっては,安全の確保が大前提であり,厳重な規制と管理の実施,安全研究の実施等を通じて,安全確保に万全を期すことが必要である。また,事故発生の可能性を100%排除することはできないとの前提に立って,事故が生じた場合の周辺住民等の生命,健康等への被害を最小限度に抑えるための災害対策が整備されていなければならない。

 このようなことから,我が国の原子力研究開発利用は,設計,建設,運転の各段階において他の産業分野には見られない国による厳しい安全規制が行われてきたほか,環境放射能調査や万一をも考慮した防災対策等各般の安全確保対策が講じられてきている。

 しかしながら,平成11年9月に発生した株式会社ジェー・シー・オーのウラン加工工場における臨界事故の教訓を踏まえ,安全規制については,第146回国会において可決・成立した原子炉等規制法の一部改正法により,{1}加工事業者に対する施設定期検査制度の追加,{2}事業者及び従業者が守らなければならない保安規定の遵守状況に係る検査制度の創設,{3}原子力保安検査官の設置,{4}事業者による従業者に対する保安教育の義務の明確化,{5}従業者の安全確保改善提案制度の創設等が行われた。

 さらに,原子力防災対策については,同じく第146回国会で可決・成立した原子力災害対策特別措置法により,{1}迅速な初期動作や国,都道府県及び市町村の有機的連携の確保,{2}原子力災害の特殊性に応じた国の緊急時対応体制の強化,{3}原子力事業者の防災対策上の責務の明確化などの法的枠組みが整備されるとともに,情報通信システム,監視機器,緊急輸送手段といったハード面及び防災計画・マニュアルの整備,訓練の実施,人材の育成といったソフト面の充実を図り,原子力防災対策の充実・強化を進めている。

 一方,原子炉等規制法の一部改正に伴う規制行政の体制強化とともに,平成12年4月,原子力安全委員会の事務局機能は総理府本府へ移管され,その事務局機能の独立,強化が図られている。

 原子力の安全確保に当たっては,安全規制等において常に最新の科学技術的知見を反映することが重要である。このため,原子力安全委員会は,安全研究年次計画を5年ごとに策定し,安全研究の総合的・計画的な推進を図っている。

 平成12年度には,現行の原子力施設等安全研究年次計画,環境放射能安全研究年次計画及び放射性廃棄物安全研究年次計画に沿って以下の安全研究が実施されるとともに,次期年次計画(平成13〜17年度)の策定が行われた。

 原子力施設等安全研究については,日本原子力研究所において,軽水炉に関する燃料の高燃焼度化,高経年化,シビアアクシデント,事故・故障の評価分析等の研究が実施されたほか,核燃料施設の臨界安全性の研究等が実施された。また,核燃料サイクル開発機構においては,高速増殖炉(FBR)の事故防止・緩和,事故評価,シビアアクシデント等の研究及び核燃料施設の臨界,遮へい,閉じ込め等の安全性の研究が実施された。さらに,国立試験研究機関においては各種の基礎的研究がそれぞれ実施された。

 環境放射能安全研究については,放射線医学総合研究所を中心に,日本原子力研究所,核燃料サイクル開発機構,国立試験研究機関等において,低レベル放射線の人体に及ぼす影響の研究,環境中に放出される放射性物質の挙動に関する研究等が実施された。

 放射性廃棄物の安全研究は,日本原子力研究所,核燃料サイクル開発機構等において,浅地中処分に関する安全研究,地層処分に関する安全研究並びに規制除外・規制免除及び再利用に関する安全研究が実施された。

{2}信頼確保に向けた取組と立地地域との共生

 原子力研究開発利用の円滑な推進のためには,まず国及び原子力事業者に対する国民の信頼を得ることが極めて重要である。そのためには,第一に原子力関係者が安全運転の実績を積み重ねていくとともに,国民の理解を得るための努力が不可欠である。さらに,普段から原子力に関する積極的な情報公開を行うとともに,政策決定過程に対する国民参加を進めていくことが重要である。

 情報公開については,核不拡散,核物質防護,外交交渉等に関する情報など慎重に取り扱わざるを得ないものを除き,原子力委員会及び原子力安全委員会の本会議及び専門部会等の会議を原則公開するとともに,情報公開請求に対しても原子力公開資料センター等において対応を行っている。

 さらに,従来より,インターネット等を活用した情報提供,勉強会への講師派遣等の「草の根」的な広報,簡易放射線測定器の貸出し等,体験型の広報など実効性のある事業の体系的な実施も行っている。

 一方,核不拡散や原子力の安全確保に関する関心は国際的にも高く,我が国の原子力研究開発利用の円滑な推進にとって国際的な理解と信頼を得ることは重要である。そのため,我が国の原子力の平和利用や安全確保に関する情報などを積極的に広く海外に発信している。

 また,原子力施設立地地域の住民の理解と協力を得るためには,原子力施設の安全確保や防災対策が適切になされていることや適切な情報公開等に加え,原子力施設の運転を通じて事業者と地域社会が共に発展し共存共栄するという「共生」を図っていくための取組が重要である。

 このため,国及び事業者は原子力施設の立地促進活動を引き続き実施していくとともに,国においては,立地円滑化の観点から地元と原子力施設が共生できるよう,立地地域の要望を踏まえ,福祉の向上等を目的とした各種支援措置等を講じ,地域振興を進めている。

 さらに,平成12年12月に,原子力発電施設等の周辺地域について生活環境,産業基盤等の総合的かつ広域的な整備に必要な特別措置を講ずること等により,これらの地域の振興を図ることを目的とする原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法が議員立法により成立した。

{3}原子力発電と核燃料サイクル

 原子力発電は,既に国内総発電電力量の3分の1を超える電力を供給し,我が国のエネルギー自給率の向上及びエネルギーの安定供給に貢献するとともに,エネルギー生産あたりの二酸化炭素排出量の低減に大きく寄与しており,引き続き基幹電源に位置付け,最大限に活用していくこととしている。さらに,核燃料サイクル技術は,原子力の我が国のエネルギー供給システムに対する貢献を一層確かなものにすることから,今後も,国民の理解を得つつ,使用済燃料を再処理し,回収されるプルトニウム,ウラン等を有効利用していくこととしている。また,原子力施設から発生する放射性廃棄物の安全な処理処分への取組を着実に進めていくことが重要である。

ア.原子力発電

 原子力発電は,エネルギー供給安定性の面のみならず,発電過程において二酸化炭素,窒素酸化物等を排出しないことから,地球環境保全の面でも優れており,我が国のエネルギー供給構造の脆弱性を克服するための主要なエネルギー源のひとつとして安全性の確保及び平和利用を前提としてこれまで着実にその研究開発利用が進められてきた。1966年に最初の商業用原子力発電所の運転が開始されて以来,今日に至るまで,原子力発電の導入が積極的に進められ,その結果,平成13年3月末現在,我が国の原子力発電所は,52基が運転中で,発電設備容量は4,508.2万kWとなり,平成11年度実績で一般電気事業用の総発電電力量の34.5%(3,165億kWh)を賄うに至っている。

 現在の我が国の主流の原子炉である軽水炉については,政府,電気事業者,原子力機器メーカー等が協力して,自主技術による軽水炉の信頼性,稼働率の向上及び従業員の被ばく低減を目指し,技術開発を実施してきたところであるが,現在の軽水炉の技術水準に満足することなく,信頼性,安全性を確保しつつ経済性の向上を目指した軽水炉技術の高度化が進められている。また,原子力発電及び核燃料サイクルの安全性,経済性を向上させるため,提案公募方式により革新的,独創的な実用原子力技術開発を行っている。

イ.核燃料サイクルの技術開発等

 エネルギー資源の大部分を輸入に依存する我が国は,将来の世界のエネルギー需給を展望しながら,長期的なエネルギー安定供給の確保を図るとともに,環境への負荷の低減を図っていくため,使用済燃料を再処理し,回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの確立に向けた取組を進めてきた。今後とも,研究開発を進めるとともに,六ヶ所再処理事業,プルサーマル計画,使用済核燃料中間貯蔵対策等について着実な展開を図ることが重要である。

 プルトニウム利用を進めるに当たっては,核不拡散についての国際的な疑念を生じないよう,核物質管理に厳重を期すことはもとより,利用目的のない余剰のプルトニウムを持たないとの原則を一層明らかにする観点から,プルトニウム在庫に関する情報の管理と公開の充実を図るなどプルトニウム利用の徹底した透明化を進めることにしている。具体的には,毎年の我が国のプルトニウム管理状況を公表するとともに,プルトニウム利用の透明性向上のための国際指針を採択している。

 原子力発電の燃料である濃縮ウランについては,核燃料サイクル全体の自主性を確保する観点から,経済性を考慮しつつ,国内でのウラン濃縮の事業化を推進している。青森県六ヶ所村においては,民間濃縮工場が1,050トンSWU/年の規模で操業中であり,今後民間事業者は,これまでの経験を踏まえ,より経済性の高い遠心分離機を開発,導入し,同工場の生産能力を1,500トンSWU/年規模まで着実に増強していくこととしている。また,この開発を国内において一元的な体制で進めるため,民間事業者は平成12年11月「ウラン濃縮技術開発センター」を設置し,核燃料サイクル開発機構,メーカー等我が国のウラン濃縮技術者の集結を図ったところである。さらに,今後のウラン濃縮の経済性の向上のため,レーザー法ウラン濃縮技術等の開発を進めている。

 原子力発電所から生じる使用済燃料の再処理については,これまで,核燃料サイクル開発機構の東海再処理施設に委託された一部を除いて,英国核燃料会社(BNFL社)及び仏国核燃料会社(COGEMA)への再処理委託契約により実施してきた。今後,我が国は使用済燃料の再処理は国内で行うことを原則としていることから,青森県六ヶ所村に民間再処理施設(年間再処理能力800トンU)を平成17年7月の竣工を目指し建設しており,その順調な建設,運転により商業規模での再処理技術の着実な定着を目指している。さらに,本再処理施設の操業開始に向けて,平成12年12月には,使用済燃料の六ヶ所再処理施設への本格搬入が開始され,核燃料サイクルを推進するための着実な展開が図られている。また,平成9年3月のアスファルト固化処理施設の火災爆発事故により運転が停止していた,核燃料サイクル開発機構東海再処理施設については,平成12年11月,地元の了承を得て運転を再開した。本施設においては,今後,従来の軽水炉使用済燃料の再処理に加え,高燃料度燃料や軽水炉使用済 MOX* 燃料等の再処理技術の実証試験等を行うこととしている。

 再処理によって回収されるプルトニウムを軽水炉においてウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料として利用すること(プルサーマル)については,ウラン資源の有効利用を図る手段であるとともに,原子力発電に係る燃料供給の代替方式であり,燃料供給の安定性向上の観点から有用である。プルサーマルは,海外では既に1980年代から利用が本格化されており,我が国でも国内での基礎研究や1980年代後半から実用炉で行われた実証試験の成果等を踏まえて,2010年までに累計16〜18基において順次プルサーマルを実施していくことが電気事業者により計画されており,実現の緒についたところである。また,平成11年に発生した英国核燃料会社(BNFL社)におけるMOX燃料の品質管理データ改ざんについては,今後,このような問題が再び起こらぬよう,経済産業省(通商産業省)は,関係する電気事業者に対し,詳細な報告を求めるとともに,所要の措置を講じることとしている。

 なお,プルサーマル計画を進めるために必要な燃料は,海外において回収されたプルトニウムを原料とするものについては,海外のMOX燃料加工工場で製造されているが,国内において回収されたプルトニウムを原料とするものについては,国内で加工されることが合理的である。そこで,平成12年11月,六ヶ所再処理工場の操業開始(平成17年)から3〜4年後頃の操業開始を念頭に,電気事業者によりMOX燃料加工の事業化が決定されたところである。また,我が国のMOX燃料加工の研究開発は,核燃料サイクル開発機構を中心として実施されており,その加工実績も平成12年12月末までの累積で約167トンMOXに達している。

 使用済燃料の中間貯蔵に関しては,使用済燃料が再処理されるまでの間の時間的な調整を行うことを可能にするので,核燃料サイクル全体の運営に柔軟性を付与する手段として重要である。平成11年には,中間貯蔵に係る法整備が行われ,民間事業者は平成22年までに操業を開始するべく準備が進められているところである。

 新型転換炉は,プルトニウム,回収ウラン等を柔軟かつ効率的に利用できるという特長を持つ原子炉として自主開発が進められてきたが,平成7年8月,原子力委員会において,青森県大間町における実証炉建設計画は中止が妥当との結論が得られ,実証炉に代わる計画として,全炉心にMOX燃料の利用を目指す改良型沸騰水型軽水炉( ABWR* )が適切であると判断された。新型転換炉原型炉「ふげん」については,「立地地元自治体等とも協議し,適切な過渡期間をおいて運転を停止し,廃炉研究に活用する」とした動燃改革検討委員会報告書を受け,地元とも調整した結果,平成15年に運転を終了することとなり,今後,研究開発成果の集大成を行った後,廃止措置を円滑に行うため,「ふげん」の原子炉システム固有の廃止措置技術の研究開発を行う。また,新型転換炉開発同様,動燃改革の際に整理事業とされた,核燃料サイクル開発機構におけるウラン濃縮技術開発及び海外ウラン探鉱の業務については,適切な過渡期間をおいて廃止することとしており,遠心分離機や探鉱技術等に関する開発成果や知見,人的資源については,民間事業者等への移転を着実に進めていく。ウラン濃縮については,平成12年度で終了したウラン濃縮原型プラントの役務運転により得られた技術成果の取りまとめを行うとともに,濃縮プラントの廃止措置に係る技術の研究開発を行う。海外ウラン探鉱の権益については,国内民間企業への譲渡が着実に進められており,残る権益についても平成14年中に移転・売却を行うこととしている。


*MOX:

Mixed Oxide


*ABWR:

Advanced Boiling Water Reactor

ウ.放射性廃棄物の処理及び処分

 放射性廃棄物の処理,処分及び原子力施設の廃止措置は,整合性のある原子力利用の推進及び国民の理解と信頼を得る観点から最も重要な課題のひとつである。放射性廃棄物は,放射能レベルの高低,含まれる放射性物質の種類等が多種多様であることから,発生源にとらわれず処分方法に応じて区分し,具体的な対応を図ることとしている。

 再処理の過程で使用済燃料からプルトニウム,ウラン等の有用物質を分離した後に残存する高レベル放射性廃棄物は,安定な状態に固化した後,30〜50年間程度冷却のための貯蔵を行い,その後,数百メートル以深の安定した地下に埋設する「地層処分」をすることにしている。現在,既にガラス固化された高レベル放射性廃棄物の貯蔵が青森県六ヶ所村で開始されており,第147回国会にて可決・成立した,「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき,平成12年10月には,最終処分を実施する主体として,原子力発電環境整備機構が設立された。今後,情報公開を徹底し透明性を確保し,関係住民の理解と協力を得ながら,本実施主体により,最終処分地の選定及び平成40年代後半を目途に最終処分事業の実施がおこなわれることとなる。

 処分の技術的側面については,平成9年4月に原子力バックエンド対策専門部会において取りまとめられた「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について」に従い,核燃料サイクル開発機構を中核的推進機関として,日本原子力研究所,産業技術総合研究所,大学等の関係研究機関の密接な協力の下,研究開発が進められている。平成11年11月,核燃料サイクル開発機構は,地層処分の技術的信頼性を明示し,処分予定地選定及び安全基準の策定に資する技術的拠り所を提示する技術報告書「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ-」を原子力委員会へ提出し,平成12年10月に,原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会において本報告書の評価が取りまとめられた。また,今後の研究開発を進める上で,特に技術的,社会的に重要な施設として早期実現が望まれている深地層の研究施設については,核燃料サイクル開発機構が,岐阜県瑞浪市における超深地層研究所計画を着実に推進しており,さらに,北海道幌延町における深地層研究所(仮称)計画については,平成12年11月,北海道,幌延町及び核燃料サイクル開発機構の間で協定を締結したところである。今後,深部地質環境特性の把握等の研究開発を計画に沿って実施していくこととなる。

 また,安全規制面に関しては,平成12年10月に原子力安全委員会放射性廃棄物安全規制専門部会において,「高レベル放射性廃棄物の処分に係る安全規制の基本的考え方」に関する報告書が取りまとめられたところである。

 原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物については,平成4年12月から青森県六ケ所村の日本原燃株式会社低レベル放射性廃棄物埋設センターにおいて埋設処分を安全かつ円滑に実施しており,平成12年12月末までに200リットルドラム缶約13万本が同センターに受け入れられている。原子力発電所から発生する廃棄物以外の低レベル放射性廃棄物については,今後,処分の実現に向けた具体的取組を進めることが必要である。RI・研究所等廃棄物については,平成10年5月,原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会において,「RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的考え方について」が取りまとめられた。これを受けて,処理処分事業の具体化に向け,RI・研究所等廃棄物の処分場の立地等処理処分事業に関する具体的な調査等を行うため,財団法人原子力研究バックエンド推進センターが平成12年12月に既存法人の改組により設立された。

 原子力施設の廃止措置に関しては,その設置者の責任において,安全確保を大前提に,地域社会の理解と支援を得つつ進めることが重要である。我が国では,日本原子力発電株式会社の東海発電所が,商業用の原子炉としては初めて平成10年3月に営業運転を停止したことを受けて,国民の関心が高まっている。廃止措置にかかる技術開発については,日本原子力研究所の動力試験炉( JPDR* )の解体実施試験(平成8年終了)により,解体に必要な技術等大きな成果を得ている。また,解体に伴い発生する放射性廃棄物について,JPDRの解体に伴い発生した極低レベルのコンクリート廃棄物を地中に埋設し,その安全性を実証する埋設実地試験が実施されている。


*JPDR:

Japan Power Demonstration Reactor

{4}高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術の研究開発

 高速増殖炉及び関連する核燃料サイクル技術(以下,「高速増殖炉サイクル技術」という。)は,ウラン資源の利用効率を飛躍的に高めることができ,将来実用化されれば,現在知らされている技術的,経済的に利用可能なウラン資源だけでも数百年にわたって原子力エネルギーを利用し続けることができる可能性や,高レベル放射性廃棄物中に長期に残留する放射能を少なくして環境負荷をさらに低減させる可能性を有するものであり,不透明な将来に備え,将来のエネルギーの有力な選択肢を確保しておく観点から着実にその開発に取り組むことが重要である。

 高速増殖炉サイクル技術の研究開発については,その技術の多様性に着目し,研究開発に柔軟性を持たせることが重要であり,平成11年7月から,高速増殖炉サイクル技術として適切な実用化像とそこに至るための研究開発計画を提示することを目的に,炉型選択,再処理法,燃料製造法等,高速増殖炉サイクル技術に関する多様な選択肢について,核燃料サイクル開発機構を中心として電気事業者等,関連する機関の協力を得つつ「実用化戦略調査研究」を実施している。

 高速増殖炉については,発電しながら消費した以上の核燃料を生成することができる原子炉であり,軽水炉などに比べてウラン資源の利用効率を飛躍的に高めることができることから,その開発を官民協力して着実に行ってきた。実験炉「常陽」は,昭和52年4月の初臨界以来運転を続けており,現在,高速中性子照射炉として照射性能向上を目的に,高中性子束化と照射場の拡大等を図るための炉心高度化計画(MK-III)が進められている。

 高速増殖原型炉「もんじゅ」は,高速増殖炉サイクル技術のうち最も開発が進んでいるMOX燃料とナトリウム冷却を基本とする技術を用いた原子炉でかつ発電設備を有する我が国唯一の高速増殖炉プラントである。平成7年12月のナトリウム漏えい事故に関して,文部科学省(科学技術庁)は「もんじゅナトリウム漏えい事故調査・検討タスクフォース」を設置し,事故の原因究明等を行い,平成9年2月に報告書を取りまとめた。一方,原子力安全委員会は「もんじゅ安全性確認ワーキンググループ」を設置し,原因究明及び再発防止策等について調査・審議し,平成12年9月に「もんじゅ」の安全性の確認について報告書が取りまとめられたところである。

 他方,「もんじゅ」の扱いを含む将来の高速増殖炉開発の在り方については,平成12年11月に原子力委員会が策定した「原子力長期計画」において,発電プラントとしての信頼性の実証とその運転経験を通じたナトリウム取扱技術の確立という所期の目的を達成することは他の選択肢との比較評価のベースともなることから,同目的の達成にまず優先して取り組むことが今後の技術開発において特に重要とされ,「もんじゅ」は我が国における高速増殖炉サイクル技術の研究開発の場の中核として位置付けられたところである。

 平成12年12月には,「もんじゅ」の運転再開に向けて,核燃料サイクル開発機構が地元自治体に対し,安全協定に基づく「もんじゅ」の改造工事等に係る事前了解願いを提出したところであり,さらに,地元を始めとした国民の理解を得るため,核燃料サイクル開発機構は,関係市町村での説明会の実施,もんじゅ見学会の実施等を行っている。

 また,現在,核燃料サイクル開発機構は電気事業者等との協力により,高速増殖炉サイクル技術として適切な実用化像とそこに至るための研究開発計画を提示するため「実用化戦略調査研究」を推進しており,経済性の向上や,環境への負荷の低減,核不拡散性等に配慮した先進的な核燃料リサイクル技術について,長期的な研究開発に取り組むこととしている。

{5}原子力科学技術の推進

 原子力に関する科学技術は,核融合を始めとする新たなエネルギー技術発展の基盤であるとともに,レーザー,加速器,原子炉等,未踏の領域へ挑戦するための有効なツールを提供するものであり,物理学等,基礎科学分野における新たな知見をもたらす一方,ライフサイエンスや物質・材料系科学技術等の分野における最先端の研究手段を提供するなど,大きな可能性を秘めている。これら原子力科学技術の発展は,21世紀の人類の知的フロンティアの開拓と我が国の新産業の創出等に貢献するものと考えられる。また,加速器,原子炉,核融合等の技術は,様々な分野における先端技術を総合した巨大システムであり,その開発は,他の科学技術分野への波及効果も考えられる。これらの研究開発を進めるに当たっては,創造性豊かな研究を育む環境を整備し,これらを支える基礎・基盤研究との均衡ある発展を図りつつ,効率的に進めることが重要である。

 加速器科学については,常に国際的競争状態におかれており,技術主導の性質を持つことから,提案・評価後,遅滞なく評価結果を反映させることが重要である。日本原子力研究所と高エネルギー加速器研究機構が共同で,世界最高レベルのビーム強度を持った陽子加速器を建設し,生命科学,物質・材料科学,原子核・素粒子物理学等の広範な研究分野の新展開を目指す大強度陽子加速器計画については,原子力委員会及び学術審議会加速器科学部会が設置した大強度陽子加速器施設計画評価専門部会において,平成12年8月に大強度陽子加速器計画に関する評価報告書が取りまとめられた。その評価結果を踏まえ,平成13年度から大強度陽子加速器の建設に着手することとなったところである。また,理化学研究所においては,すべての核種についての放射性同位元素(RI)を世界最大強度,最高エネルギーでビーム化する次世代加速器施設「RIビームファクトリー」の建設を進めている。

 核融合研究開発の推進については,未来のエネルギー選択肢の幅を広げ,その実現可能性を高める観点から重要であり,核融合燃焼状態の実現,核融合炉工学技術の総合試験等が今後解明すべき主な課題である。また,核融合科学を広げる研究については,適切なバランスを考慮しつつ進めることが重要である。我が国の核融合の研究開発は,平成4年に原子力委員会が策定した「第三段階核融合研究開発基本計画」及び新しい「原子力長期計画」に基づき,日本原子力研究所,大学等及び国立試験研究機関間の整合性に留意し,相互の連携・協力により,進められている。

 日本原子力研究所においては,トカマク方式について実用化を目指した研究開発を進めている。特に,世界三大トカマクの一つである臨界プラズマ試験装置(JT-60)に関しては,新しい運転方式と新方式のダイバータ(プラズマ純化装置)等の知見により,平成10年6月にはプラズマの総合性能を表す指標であるエネルギー増倍率(外部からの加熱入力エネルギーと核融合反応により生じる出力エネルギーの比)の世界最高記録1.25を達成するなど世界に先駆けた成果を上げており,さらなるプラズマ閉じ込めの性能向上によるトカマク定常運転を目指した炉心プラズマ研究を行っている。さらに,中規模装置JFT-2Mを用いた先駆的な実験研究,理論・シミュレーション研究,核融合炉材料研究や核融合炉の安全性にかかる試験等を実施している。

 大学においては,大学共同利用機関である核融合科学研究所が,我が国独自のアイデアに基づくヘリカル方式による世界最大の大型ヘリカル装置を建設し,全国の関連分野の研究者の共同研究・共同利用に供するとともに,新しいプラズマ領域の研究を世界に先駆けて行っている。同装置は,平成10年度から本格的な実験を開始し,平成11年12月にはヘリカル方式としては世界最高性能の閉じ込め時間(0.3秒)と最高水準の温度(5,000万度)を達成しており,今後の動向について世界から注目を集めている。また,筑波大学プラズマ研究センター,大阪大学レーザー核融合研究センター,九州大学応用力学研究所等においては,将来の核融合炉に向けて様々な課題を克服していくため,ミラー,レーザー等の各種方式の先駆的・基礎的研究を実施している。この他,その他の大学・国立試験研究機関等においては,各種磁場閉じ込め方式及び慣性閉じ込め方式による基礎的研究,炉工学にかかる要素技術等の研究が進められている。なお,二国間,多国間の国際協力も積極的に進められている。

 日本,EU及びロシアの3極により推進されている国際熱核融合実験炉(ITER)計画については,核融合エネルギーの科学的及び技術的可能性の実証を目指し,研究開発を国際協力の下で進める国際プロジェクトであり,我が国は日本原子力研究所を中心として,主体的かつ積極的に取り組んでいる。現在は,平成4年より工学設計活動を実施しており,国際設計チームである共同中央チームと日本国内の設計チームの活動との連携・協力による設計活動や,プラズマ閉じこめのための超伝導コイル,プラズマ加熱のために必要とされる負イオンビームや高周波発振器の開発等の工学R&Dに主体的に参画している。平成13年2月にはITERの最終設計報告書のドラフトが完成し,各極のレビューを経た後,了承され,平成13年7月には工学設計活動は完了する予定である。また,今後,現在の工学設計活動参加極及び他の関心を持つ国による公式政府間協議が開始され,平成13年中頃には誘致を希望する極からサイトの提案がなされる見通しである。

 また,21世紀を展望すると次世代軽水炉とともに,高い経済性と安全性をもち熱利用等の多様なエネルギー供給や原子炉利用の普及に適した革新的な原子炉が期待される。日本原子力研究所では,高温工学試験研究炉(HTTR)の出力上昇試験を行い,高温熱供給など,エネルギー供給の多様化の可能性を探る高温ガス炉技術の確立,水素製造等の熱利用の研究開発等を推進している。さらに,日本原子力研究所,理化学研究所,大学,国立試験研究機関等において,炉物理・核物理,燃料・材料等に関する研究開発を幅広く行っている。

 原子力科学技術の基礎・基盤的研究は,原子力の多様性,将来の技術革新につながるようなシーズを生み出し,原子力分野のプロジェクト研究及び他の科学技術分野の発展にも寄与するものである。日本原子力研究所においては,先端基礎研究センターにおける放射場科学等の先端基礎研究や,関西研究所(関西学術文化研究都市)において平成11年度に本格的な研究を開始したX線レーザー開発等の光量子科学研究等を中心に,原子力の新たな展開を図るための基礎研究の充実を図っている。また,平成9年10月に,日本原子力研究所と理化学研究所が兵庫県播磨科学公園都市に建設した大型放射光施設(SPring-8)が供用を開始し,国内外の研究者による利用研究を推進している。基盤技術開発としては,放射線生物影響,ビーム利用,原子力用材料技術,ソフト系科学技術及び計算科学技術の計5技術領域について,日本原子力研究所,理化学研究所及び独立行政法人等において研究開発を進めている。

{6}放射線利用の普及

 放射線は,取扱を誤れば健康に影響を及ぼす危険な道具であるが,管理しながら使うことで社会に多くの便益をもたらし,活力を与えるものである。したがって,今後も医療,工業,農業等の幅広い分野で活用できるように,研究開発を進めつつ放射線利用の普及を図っていくことが重要である。

 各種分野における放射線利用の状況としては,医療分野において,X線CT等による診断やX線,ガンマ線等を利用したがん治療が既に実用化されており,現在,陽子線,重粒子線等によるがん治療の研究が行われている。特に,放射線医学総合研究所においては,がんに対する高い治療効果が期待される重粒子線によるがん治療の研究に取り組んでおり,平成6年6月から,患者に照射治療を行う臨床試行が開始され,おおむね良好な成果が得られている。大学においても,筑波大学陽子線医学利用研究センター等において陽子線等によるがん診断・治療の研究を行っている。農林水産業の分野では,品種改良,害虫防除,食品照射等に放射線が利用されている。工業分野では,非破壊検査,各種高分子材料の改質などに放射線が用いられている。研究利用では,日本原子力研究所のイオン照射研究施設において,バイオ技術や新機能材料等に関する研究が進められている。

{7}核不拡散対策と原子力国際協力

 我が国の原子力研究開発利用を円滑に進めるには,国際社会の一部にある我が国におけるプルトニウム利用が,国際的な核拡散につながるなどのような懸念に対して,我が国の原子力政策の考え方を国際社会に明確に伝え,国際社会の理解と信頼を得ることが必要である。また,原子力の安全問題,放射性廃棄物処分の問題等,原子力を取り巻く様々な国際的課題に対する適切な取組が極めて重要で,主体的に,また能動的に取り組むなど戦略的に行うことが必要である。

ア.核不拡散対策

 原子力平和利用を円滑に実施していくためには,核不拡散体制の維持は,安全確保とともに極めて重要であり,核兵器の不拡散に関する条約( NPT* )や,それに基づく国際原子力機関( IAEA* )による包括的保障措置,包括的核実験禁止条約( CTBT* )等,種々の国際的枠組みが創設されてきた。これらの枠組みに加え,我が国の持つ原子力平和利用技術と人材能力をもって,今後とも核不拡散体制の強化を目指して主体的に取り組んでいくことが重要である。同時に,原子力の平和利用を行っている国として,核兵器廃絶を目指し,2000年(平成12年)にNPT運用検討会議で合意された「全面的核廃絶に向けた明確な約束」を含む核軍縮・核不拡散における将来に向けた「現実的措置」の実施に向けて積極的に働きかけていく。

 我が国では,原子力基本法にのっとり,厳に平和の目的に限り原子力開発利用を推進しているところであり,従来から,IAEAと締結した保障措置協定,核物質の防護に関する条約,米国を初めとする各国との二国間原子力協力協定などに基づき,核物質について平和利用を担保するための「保障措置」及び「核物質防護」を実施しているほか,これに必要な技術開発を進めるとともに,1999年(平成11年)12月,IAEA保障措置の強化・効率化のための追加議定書を締結したところである。

 また,NPT上要求される義務に加えて,利用目的のない余剰のプルトニウムを持たないとの原則を堅持しつつ,合理的かつ整合性のある計画の下でその透明性の確保に努めることが重要であり,我が国のプルトニウムの管理状況について公表しているほか,核燃料サイクル計画の透明性をより高めるための国際プルトニウム指針を採択している。さらに,核不拡散関連の技術開発を積極的に進め,先進的リサイクル技術の研究開発など,核不拡散にも配慮した研究開発に取り組んでいる。

 このほか,我が国は,1997年(平成9年)7月,核兵器のない世界に向けた歴史的な一歩となる,あらゆる核爆発を禁止するCTBTの早期批准を行っており,現在,同条約の発効に向けて国際監視制度の整備等に取り組んでいる。


*NPT:

Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons


*IAEA:

International Atomic Energy Agency


*CTBT:

Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty

イ.原子力国際協力

 原子力の国際協力に当たっては,原子力の研究開発利用や核不拡散の面で,各国共通の課題や研究開発への取組を国際協力の下に進めていくとともに,開発途上国等からの期待に積極的に応えていくことが重要である。

 アジア諸国との原子力協力については,平成2年から開催されてきたアジア地域原子力協力国際会議の下,研究炉,放射線の医学利用及び農業利用,広報,放射性廃棄物管理,人材養成について情報・意見交換,技術交流の場を提供してきた。これらの協力については,政策対話と協力活動のリンク及び各国国内システムを強化し,「アジア原子力協力フォーラム」(FNCA)に改組し,平成12年度から新たな協力活動として展開するに至った。第1回FNCA本会合は,平成12年11月,タイのバンコクにて開催され,各国の原子力担当大臣等により原子力協力の進め方や原子力安全等の意見交換が行われた。

 我が国はまた,1978年からアジア太平洋地域のIAEA加盟国による RCA* (原子力科学技術に関する研究・開発及び訓練のための地域協力協定)に参加し,工業,医療,放射線防護などの分野で拠出金の拠出,我が国専門家の派遣など,積極的な協力を行っている。

 他方,旧ソ連,中東欧諸国との原子力協力については,原子炉廃止措置に関する研究協力,原子炉運転支援システム構築に関する技術的協力,研修事業による原子力関係者の資質向上等の二国間協力,国際原子力機関(IAEA)及び経済協力開発機構・原子力機関( OECD/NEA* )への特別拠出金事業などを通じた多国間支援を実施している。ロシアの余剰兵器プルトニウム管理・処分に関しては,核軍縮・核不拡散への貢献のひとつとして,当事国である米露やその他関係国と緊密な連携を図りつつ,これまで我が国が培ってきた平和利用技術を活用して,余剰兵器プルトニウム処分への協力を行うことにしており,核燃料サイクル開発機構がロシアの物理エネルギー研究所や原子炉科学研究所と研究協力を実施している。

 また,欧米との原子力協力については,原子力の平和利用のための専門家や情報の交換,原子力資機材や役務の受領,供給などの協力を行っており,具体的には,日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構と米国エネルギー省やフランス原子力庁との研究協力,理化学研究所と米国ブルックヘブン国立研究所やイギリス・ラザフォードアップルトン研究所との研究協力等を実施している。


*RCA:

Regional Cooperative Agreement for Research, Development&Training Related to Nuclear Science and Technology


*OECD/NEA:

Organization for Economic Cooperation and Development/Nuclear Energy Agency

{8}原子力利用の推進基盤

 安全の確保を図りつつ原子力の研究開発利用を進めていくためには,これらを支える優秀な人材の育成・確保や技術力の維持・伝承は重要な問題である。このため,人材養成の中核的機関である大学は,国際的視点も含めながら,研究開発機関,民間事業者等の関係諸機関と連携しつつ,多様かつ有能な人材の養成に取り組むことが必要である。また,国の研究機関と民間事業者は,その間で共同研究や人材の交流等,相互の人的・技術的交流を促すような体制をつくり,我が国全体としての人材・技術力の維持・継承,発展を図るよう努力することも重要である。

 現在,大学における人材養成はもちろんのこと,日本原子力研究所等では,原子力技術者を対象とした研修,原子力防災,放射線に関する講習等が行われている。また,各研究機関では,大学と連携して共通の研究課題について協力した研究の実施や,大学教員や大学院生を研究機関へ受け入れて研究活動に従事する等の相互交流を図っている。


(2) 自然エネルギーの研究開発

 エネルギーの安定供給の確保及び地球環境問題への対応の観点から,太陽エネルギー,地熱エネルギー,風力エネルギー,海洋エネルギー,バイオマスエネルギー等の自然エネルギーの利用の拡大を目指した研究開発を推進することが必要である。このため,経済産業省におけるエネルギー・環境領域総合技術開発推進計画(ニューサンシャイン計画),農林水産省におけるバイオマスエネルギーへの取組を初め,文部科学省(海洋科学技術センター)等で以下のような積極的な研究開発が進められている。

(太陽エネルギー)

 枯渇することのないエネルギー源であり,地球環境問題への対応においても重要な役割を果たし得るものである。一方,エネルギー密度が低く,自然条件によって出力が変動するという性質も有しており,このような太陽エネルギーの特性を考慮しつつ,研究開発を進めることが必要である。太陽エネルギーの具体的な利用用途としては,太陽熱利用及び太陽光発電等が考えられ,既に民生用給湯システムについては,技術開発を終了し,一般家庭に普及している。このため,産業用ソーラーシステム等の技術開発を積極的に推進するとともに,太陽光発電については,太陽電池・システムの一層の低コスト化,高効率化等を目指した研究開発を進めている。

(地熱エネルギー)

 資源量が豊富な純国産エネルギーであるとともに,非枯渇性であるという特徴を持っており,その利用の拡大に向けて研究開発を進めることが重要である。このため,地熱探査技術,掘削・採取技術,バイナリーサイクル発電の開発,高温岩体発電の要素技術の開発等を進めている。

(風力エネルギー)

 環境負荷が少なく,潜在的に資源が広範に賦存するエネルギーである一方でエネルギー密度が低く,変動が大きいことなどから,その普及拡大のためには,コストの低減,長期安定運転の確保及び電力変動の安定化等を図ることが重要である。欧米においては,既に電力供給の一部を担うものとして導入・普及が進んでいる。我が国においては,集合型風力発電システム及び風力エネルギーの利用拡大の観点から重要となっている大型風力発電システムの研究開発を終了し離島用風力発電システム等の技術開発を進めている。

(海洋エネルギー)

 エネルギー密度が低いことなどにより,現状では航路標識等による利用に止まっていることから,経済性と信頼性の向上に向けての研究開発を進めることが重要である。このため,沖合浮体式波力装置「マイティーホエール」等についての研究開発が進められている。

(バイオマスエネルギー)

 主として太陽エネルギーを固定化する生物の機能を利用して得られる再生可能エネルギーであり,エネルギーの固定,変換,利用,再生という一連のエネルギー利用システムが確立されれば,大気中の二酸化炭素を増加させることはない。このようなシステムの確立のため,家畜排せつ物,木質系廃棄物等有機性資源のバイオマス交換等革新的リサイクル技術の開発,二酸化炭素を高効率で固定する植物から炭化水素を製造する研究,微生物を利用して水素を製造する研究等が進められている。


(3) 化石エネルギーの研究開発

 一般に,化石燃料といわれているものは,石炭,石油,天然ガス,オイルシェール及びオイルサンドで,炭化水素系の地下資源である。産業革命以降,この化石燃料を利用することによって,人類は現在の高度な文明を築き上げてきたが,一方で,資源の有限性,地球環境問題などの課題に対応することが必要となってきている。このため,地球環境への影響に配慮しつつ,世界的なエネルギー需要の増大の見通しに対応し,エネルギーの安定供給を確保する観点から,経済産業省において,化石エネルギーの高効率な利用技術等の研究開発を推進している。

(石炭)

 石油などに比べ供給安定性に優れており,原子力と並ぶ石油代替エネルギーであるが,液体燃料と比較した場合,取扱が不便な面があることなどから,石炭液化・ガス化技術等の研究開発が推進されている。これらの技術は,石炭の利用分野の多様化や利用の効率化を図り,石油に代替し得る燃料を製造する上での重要な技術であり,かつ,硫黄酸化物等の公害物質,粉塵等の排出の低減のためにも有効な技術である。

 また,石炭は化石エネルギーの中でも燃焼時の単位エネルギー当たりの二酸化炭素の排出量が多いことから,地球環境問題に対応しながら石炭利用の円滑な拡大を図るためには,二酸化炭素等の環境への負荷低減を図るための革新的な技術開発が必要である。このため,高効率石炭燃焼技術を中心とするクリーン・コール・テクノロジーの実用化開発及びより革新的な次世代クリーン・コール・テクノロジーの調査研究が推進されている。

(天然ガス)

 他の化石エネルギーと比べて,燃焼時の単位エネルギー当たりの二酸化炭素の排出量が少ないなど,環境負荷が小さいといった特長を持っており,今後とも重要なエネルギー源として,その開発利用にかかる研究開発を進めることが重要である。このため,天然ガスの賦存状況の把握・採取に関する研究とともに,液体燃料等への形態変換により利用範囲の拡大を図ることを目指した天然ガスの液体燃料化等に関する研究が行われている。


(4) エネルギーの供給及び利用効率の向上のための研究開発

 地球環境問題への対応,有限なエネルギー資源の有効活用などの観点から,個々の機器,要素技術の効率の向上とともに,分散型システムの導入・活用・未利用エネルギーの活用など社会システム全体においてエネルギー供給及び利用の効率の向上等を図るための研究開発を推進することが重要となっている。また,各種製品の生産,利用,再利用,廃棄,各種サービス等で直接・間接に消費されるすべてのエネルギー(ライフサイクルエネルギー)の低減を視点とした研究開発を推進することが必要である。このため,経済産業省等において以下の研究開発を進めている。

 発電効率の高い燃料電池の研究開発,送電系統の安定化や効率の向上が期待される超電導線材・超電導発電機等の超電導電力応用に関する技術,産業部門・民生部門・輸送部門・農林水産部門等でのエネルギー利用における効率の向上を目指した研究開発といった各要素技術の研究開発が推進されている。

 また,工場や都市ビルから捨てられている廃熱,河川水等の未利用エネルギーの有効利用技術の研究開発,中小規模での電力の効率的貯蔵の可能な蓄電池である分散型電池による負荷平準化等のエネルギー貯蔵技術の研究開発が推進されている。

 さらに,高いエネルギー効率で,熱と電力を同時に供給できるコージェネレーションシステム,工場等の産業分野から排出される未利用の低温排熱を高効率で回収し,都市部に低損失で長距離輸送し,民生分野等の需要地で需要形態に応じて種々の温度を供給する広域エネルギー利用ネットワークシステム,水力・太陽光・地熱・風力等の再生可能エネルギーを利用して,水素を製造し,輸送に適した形に転換した後,輸送・貯蔵し,発電・輸送用燃料・都市ガス等の広範な分野で利用する水素利用国際クリーンエネルギーシステムなどの研究開発が進められている。


(5) 基礎・基盤科学技術の推進

 エネルギー研究開発の飛躍的な進展を図るためには,独創的な基礎研究の成果によるブレークスルーに期するところが大きい。

 このため,文部科学省,経済産業省等において,新材料の開発,生産・加工プロセスの研究開発及びプラント等の制御技術の高度化にかかわる研究開発を進めている。

 平成12年度に実施されたエネルギーの開発及び利用に関する主な研究課題をまとめると 第3-2-9表 のとおりである。

第3-2-9表 エネルギー(原子力を除く)の開発及び利用に関する主な研究課題(平成12年度)


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