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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第2章  科学技術の重点化戦略
第2節  国家的・社会的課題に対応した研究開発の重点化
4.  ナノテクノロジー・材料分野


 広範な科学技術分野の飛躍的な発展の基盤を支える重要分野であるとともに,我が国が他国に比べ優勢であるナノテクノロジー・材料分野は,第2期科学技術基本計画において,国家的・社会的課題に対応した研究開発の重点化4分野の1つとして,特に重点を置き,優先的に研究開発資源を配分するべき分野と位置付けられている。特に,ナノテクノロジーは,21世紀においてあらゆる科学技術の基幹をなし,21世紀の産業革命を導くものとして大いに期待されている。

 平成12年2月に米国クリントン大統領がナノテクノロジーに関する国家的戦略(ナショナル・ナノテクノロジー・イニシアティブ)を発表した他,各国政府においても,近年,ナノテクノロジーへの取組の強化が図られている。我が国においても,ナノテクノロジー・材料についての取組の強化が開始されている。具体的には,平成12年6月には科学技術会議政策委員会による「平成13年度科学技術振興に関する重点指針」において,重点的かつ緊急に推進することが必要な分野の1つとして,「物質・材料分野」が位置付けられ,本分野における重点項目として,「ナノ融合物質・材料」,「安全材料」及び「環境・循環型材料」が示された。

 また,ナノテクノロジーについては,科学技術の中でも,特に展開が急速に進んでいること,従来から我が国が世界をリードしている分野であるが,国際的にも戦略的に推進する動きがある中,我が国としての戦略の構築を緊急に行う必要性にかんがみ,平成12年9月には,科学技術会議政策委員会において「ナノテクノロジーの戦略的推進に関する懇談会」が開催され,同年12月にナノテクノロジーの戦略的推進に当たっての基本的な考え方を示した中間的な報告書が取りまとめられたところである。


(1) 物質・材料

{1}総合的な物質・材料系科学技術の推進

 物質・材料系科学技術については,従来,科学技術会議,航空・電子等技術審議会等の答申に沿って各般の物質・材料系科学技術施策が進められてきた。特に,物質・材料系科学技術の全般的推進については,科学技術会議の答申を受け昭和62年10月に閣議決定された「物質・材料系科学技術に関する研究開発基本計画」に基づき,政府として取り組んできたところである。

{2}物質・材料系研究開発の推進

 広範多岐にわたるニーズを背景として,各府省において様々な物質・材料系科学技術に関する研究開発が活発に進められている。

(総務省)

 平成12年2月から,「量子力学的効果の情報通信技術への適用とその将来展望に関する研究会」(座長:榊 裕之 東京大学教授)を開催し,21世紀の革命的な情報通信技術と期待されている量子力学的効果を適用した情報通信技術(以下,量子情報通信技術)について,その将来展望を明らかにするとともに,実現に向けて取り組むべき研究課題や研究開発の推進方策等について検討を実施し,同年6月に報告書を取りまとめた。

(文部科学省)

 物質・材料系科学技術全体にかかる共通的・基盤的分野を推進するため,金属材料技術研究所において「新世紀構造材料(超鉄鋼材料)の研究」等,無機材質研究所において「超常環境を利用した新半導性物質の研究」等の研究開発を推進するとともに,戦略的基礎研究推進制度(科学技術振興事業団),フロンティア研究システム(理化学研究所),科学技術振興調整費等各種制度により物質・材料系科学技術に関する研究を実施している。また,平成12年度から,金属材料技術研究所,無機材質研究所において,ミレニアム・プロジェクトにおける環境対応の一環として,「資源循環型社会を指向する環境低負荷型の新材料の研究開発」を開始した。さらに,平成13年4月には,金属材料技術研究所及び無機材質研究所が統合し,独立行政法人物質・材料研究機構が設立され,物質及び材料全般にかかる科学技術に関し,基礎研究及び基盤的研究開発を総合的に推進することとなった。さらに,東北大学に附置されている全国共同利用施設である金属材料研究所等を中心として,独創的・先端的な物質・材料研究を展開するとともに,研究者の自由な発想と研究意欲を源泉として,大学等における独創性豊かな学術研究を推進すべく,物質・材料系科学技術の基礎的研究が行われている。

(農林水産省)

 「新需要創出のための生物機能の開発・利用技術の開発に関する総合研究」の一環として,バイオプラスチック,シルクレザー等の生物素材にかかる研究開発を実施している。「中核的拠点育成制度(COE)による昆虫機能利用研究」の一環として,絹タンパクの一種であるフィブロインを加工し抗血栓性,抗HIV活性を持つ各種素材や,絹の骨成分との複合化性を利用した人工骨,人工靱帯用素材の開発等の生物素材の利用拡大を目指した研究開発を実施している。

(経済産業省)

 産業科学技術研究開発制度により,「独創的高機能材料創製技術」,「シナジーセラミックス」等の研究開発が実施されている。また,物質・材料系科学技術水準の国際的向上を図るため,国際共同研究助成事業(NEDOグラント)により,国際共同研究チームが行う基礎的先導的研究開発を推進している。

{3}超伝導に関する研究開発の推進

 IBMチューリッヒ研究所における発見を契機として,金属材料技術研究所におけるビスマス系超伝導体の発見など,高い温度でも超伝導現象を生じる酸化物系の新しい超伝導物質が相次いで発見された。この新超伝導物質は,それらが実用化されれば経済社会に大きなインパクトを与えるものとして,世界的に大きな期待が寄せられている。しかしながら,これら酸化物系超伝導体はまだ材料以前の段階であり,実用材料として利用されるようになるためには今後,理論の解明,新物質の探索,材料化等の基礎的・基盤的研究開発が重要である。このような点にかんがみ,科学技術会議政策委員会の下に開催された超電導に関する懇談会が取りまとめた「超電(伝)導研究開発の基本的推進方策について」等を踏まえ,関係府省において本分野の研究開発が推進されている。

(総務省)

 通信総合研究所を中心に産学官の連携により推進している情報通信ブレークスルー基礎研究21の一環として,「情報通信デバイスのための新機能・極限技術の研究」において,低損失性,高速動作性などの超伝導体の優れた特性を活用した高速の情報通信素子を実現するための研究開発を実施している。

(文部科学省)

 金属材料技術研究所,無機材質研究所,日本原子力研究所等が有するポテンシャルを最大限に活用し,研究基盤を整備するとともに,当該ポテンシャルを核として,国内外に開かれた研究者主体の柔軟な共同研究,研究者交流及び情報交換並びに技術展開を推進する「超伝導材料研究マルチコアプロジェクト」により,超伝導材料の基礎的・基盤的研究を推進している。また,科学研究費補助金等により基礎的研究が行われている。

(経済産業省)

 エネルギー・環境領域総合技術開発推進計画(ニューサンシャイン計画)等により,新エネルギー・産業技術総合開発機構を中心に産学官の連携の下に超電導応用基盤技術の研究開発などを行っている。

(国土交通省)

 将来の高速輸送を目的とする超電導磁気浮上式鉄道の実用化に向けて研究開発を促進するため財団法人鉄道総合技術研究所への助成等を行っている。

{4}物質・材料系科学技術の国際協力の推進

 日米科学技術協力協定に基づく協力課題となった「強磁界マグネットの開発のための研究」(金属材料技術研究所-米国国立科学財団)等の二国間国際協力や,「新材料と標準に関するヴェルサイユプロジェクト( VAMAS* )」等の多国間科学技術協力などにより,数多くの共同研究,研究者交流などを推進している。

 また,標準の分野でも国際電気標準会議( IEC* )に超電導専門委員会(TC90)が新設され,我が国が幹事国となった。


*VAMAS:

Versailles Project on Advanced Material and Standards


*IEC:

International Electrotechnical Commission


(2) ナノテクノロジー

 第2期科学技術基本計画においては,ナノテクノロジーの推進に当たり,基礎的・先導的な研究開発と産業化を視野に入れた研究開発をバランスよくかつ重点的に推進することが重要であること及び,異分野間や研究者間の融合及び情報交換を促進する研究ネットワークの構築や新たな融合領域における人材育成などが重要である旨の指摘がなされている。

{1}ナノテクノロジーにかかる主な政策提言

 平成12年9月に科学技術会議政策委員会において開催された「ナノテクノロジーの戦略的推進に関する懇談会」においては,従来の学問分野を越えた広範な分野において急激な進展を遂げているナノテクノロジー研究開発の現状について,産学官の研究者からのヒアリングを含め5回にわたる検討が重ねられた。その結果,同年12月に取りまとめられた報告書では,目標設定の基本的考え方として,研究開発を{1}5〜10年後の実用化・産業化を目指したニーズ対応研究及び産業技術の基盤構築を図る研究開発,{2}10〜20年先を展望した挑戦的な研究開発及び{3}個人の独創性を重視した萌芽的研究の3つのタイプに分け,{1}及び{2}については,具体的な研究開発目標及びその達成時期を設定して実施すること,{3}については,独創的,創造的な基礎研究を推進することが指摘されている。また,研究推進体制として,基礎から実用化まで繋げる産学官連携の重視,独創性発揮のための競争的環境の重視が指摘されている。

{2}ナノテクノロジー研究開発の推進

 総務省においては,情報通信に係る基礎研究の一環として,光機能性デバイス,情報記憶素子等の実現のための研究開発を実施している。

 文部科学省においては,金属材料技術研究所及び無機材質研究所において金属材料,無機材質を中心としたナノ材料研究,理化学研究所において原子スケール・サイエンジニアリング研究等の基礎的・基盤的な研究,日本原子力研究所においてイオンビームやレーザーを活用した研究を推進するほか,大学等において広範な分野にわたり基礎的な研究を実施している。また,ナノ領域の分析,解析ツールとしてSPring-8が貢献している。さらに,戦略的基礎研究推進制度(科学技術振興事業団),創造科学技術推進事業(科学技術振興事業団),科学研究費補助金等,各種制度の活用により,ナノテクノロジーの研究テーマが実施されている。

 農林水産省においては,食品総合研究所において,ナノ領域の計測に関する研究を推進している。

 経済産業省では,原子・分子一個一個を自在に操作する技術のための研究開発(アトムテクノロジープロジェクト)やカーボンナノチューブの大量合成技術の開発(フロンティアカーボンプロジェクト)等ナノスケールにおける制御技術,材料・プロセス技術に取り組んでいる。

 なお,平成12年度に実施されたナノテクノロジー・材料系科学技術分野の主な研究課題は 第3-2-8表 に示すとおりである。

第3-2-8表 ナノテクノロジー・材料系科学技術分野の主な研究課題(平成12年度)



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