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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第2章  科学技術の重点化戦略
第2節  国家的・社会的課題に対応した研究開発の重点化
3.  環境分野


 環境分野は,多様な生物種を有する生態系を含む自然環境を保全し,人の健康の維持や生活環境の保全を図るとともに,人類の将来的な生存基盤を維持していくために不可欠な分野である。

(地球サミット)

 1992年(平成4年)6月,ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された国連環境開発会議( UNCED* :地球サミット)においては,21世紀に向けての国家と個人の行動原則である「環境と開発に関するリオ宣言」,同宣言の諸原則を実行するための行動計画である「アジェンダ21」等の採択,気候変動に関する国際連合枠組条約等への多数国による署名等多くの成果が得られた。


*UNCED:

United Nations Conference on Environment and Development

(環境基本法)

 平成5年11月,地球化時代に対応し,今日の環境問題に対し適切な対策を講じていくために「環境基本法」が公布,施行された。同法においては,環境の保全に関する科学技術の振興を図ること及びそのための試験研究の体制の整備,研究開発の推進及びその成果の普及,研究者の養成等の措置を講じること及び地球環境保全等に関する監視,観測等に国際的連携の確保等が定められている。また,同法に基づき,平成12年12月に閣議決定された新しい環境基本計画においては,21世紀初頭における環境政策の展開の方向として,現在の大量生産,大量消費,大量廃棄型の社会から持続可能な社会への転換を図ることを掲げ,それを実現するための長期的目標として,「循環」,「共生」,「参加」及び「国際的取組」の4つを掲げている。これを具体的に実現するための政策手段の一つとして,科学技術が位置付けられており,環境に関する調査研究及び監視・観測等の充実,環境保全に関する技術の振興について,国は,自らこれを推進するとともに,地方公共団体,民間団体における取組の支援を行うこととしている。


(1) 地球科学技術

 近年の人工衛星を用いたリモートセンシング技術等の観測技術の発達や,スーパーコンピュータによる数値シミュレーション技術の発達は,地球に関する科学技術の研究に進歩をもたらすこととなった。また,人類の長年にわたる地球に対する探求を通じ,近年,地球及び地球の諸現象に関する知見の蓄積が気圏,水圏,地圏及び生物圏の各分野において急速に進んでおり,地球を一つのシステムとして把握することが可能な段階になっている。このため,これらの成果を地球の諸現象の予測や人類の持続的発展に利用するとともに,多くの未知の領域への探求を一層活発に行うべきとの要請が高まってきている。

 地球科学技術に関する研究開発を進めるに当たっての基本的考え方は,内閣総理大臣決定された「地球科学技術に関する研究開発基本計画」に示されている。我が国の地球科学技術は,本基本計画の下,関係府省の連携の下にそれぞれの所掌に応じて研究開発の推進が図られている。本基本計画のフォローアップ報告書では,特に地球温暖化への取組が社会的に重要な問題となっていることを踏まえ,地球温暖化にかかる現象予測解明,温暖化対策技術に関する研究を一層推進すべきであるとの提言を取りまとめた。さらに,「地球科学技術分野に関する検討会」において,21世紀に向けた地球科学技術分野に関する研究開発の方向性や展開についての検討を行い,平成12年12月に「地球科学技術における今後の重点化すべき研究課題-地球環境問題の解決に向けて-」を取りまとめた。

 地球で生じている複雑な現象とそのメカニズムをより詳細に解明し,健全な環境を維持しつつ持続的発展を図るためには,関連する科学技術を統合した研究開発を推進することが必要である。また,常に地球全体に目を向けた巨視的な観点と,長期的な展望に基づいた研究開発を行うことが必要である。

 地球科学技術を推進するに当たり,地球に関する科学的知見を深めるだけでなく,科学的知見を得るために観測・解析・予測技術の開発の進展を図るなど,科学的知見の蓄積と技術の開発を密接な連携の下で進めること等が必要である。また,一国で対応できないものが非常に多く,高度な科学技術水準を要するものが多いため,各国の協力の下に実施するとともに,我が国に対する国際的期待を踏まえ,我が国にふさわしい国際的活動を引き続き積極的に実施することが必要である。

{1}地球的規模の諸現象の解明にかかる研究開発等

 地球温暖化,オゾン層破壊,異常気象,地震,火山噴火等の地球に関する諸現象は,我々人類の社会生活と極めて密接な関連を有し,重大な影響を及ぼすおそれがあることから,その現象を科学的に解明し,適切な対応を図ることが強く要望されている。

 また,地球科学技術が対象とする事象は,地球温暖化,地殻変動等,時間的にも空間的にも広がりを有し,一国のみの問題にとどまらないものである。このため,研究開発を進めるに当たっては,グローバルパートナーシップを確保することが極めて重要であり,世界気候研究計画( WCRP* ),地球圏・生物圏国際協同研究計画( IGBP* )等の国際的な研究計画に積極的に参加するとともに,外国の研究機関等と共同研究を進めることが重要である。特に,我が国はアジア太平洋地域に位置し,経済的にも域内の各国と密接な関係を有することにかんがみ,本地域に重点を置いた研究開発を推進することが必要である。

 我が国においては,各府省が自らの予算によって地球的規模の諸現象の解明等にかかる研究開発を実施するとともに,科学技術振興調整費,海洋開発及地球科学技術調査研究促進費,地球環境研究総合推進費により,関係府省の国立試験研究機関や大学,さらには海外の研究機関等の広範な分野の研究能力を結集し,エルニーニョ南方振動現象等の地球的規模の諸現象の解明,人間活動が地球環境に及ぼす影響の評価等総合的,国際的な研究開発を積極的に実施している。

 文部科学省が,宇宙開発事業団及び海洋科学技術センターの共同プロジェクトとして実施する「地球フロンティア研究システム」は,地球を一つのシステムと捉えその変動と予測に関する研究を行うもので,気候変動予測,水循環予測,地球温暖化予測,大気組成変動予測,生態系変動予測研究領域モデル,統合化領域の6領域について研究を行っている。また,既存の観測研究を有機的に結びつけるとともに,長期的観測データの乏しい地域において関係府省・大学等と協力して,流動研究員を用いて集中的,機動的に観測研究を行うことを目的に「地球観測フロンティア研究システム」を発足させ,気候変動観測,水循環観測研究領域の2領域において,各地域での本格的な観測研究を開始した。海外との研究協力については,ハワイ大学の国際太平洋研究センター( IPRC* )及びアラスカ大学の国際北極圏研究センター( IARC* )において,本分野の研究を進めている。通信総合研究所においては,日米科学技術協力協定の枠組みのもとでアラスカ大学を中心とする米国との国際共同研究として,北極域での対流圏から熱圏までの地球大気の総合的な観測・計測技術の研究を進めている。

 また,地球規模の諸現象の解明のためには,地球観測情報の国際的な流通を促進することが重要である。我が国は地球観測情報ネットワーク( GOIN*) を積極的に推進してきたが,これを,今度は,地球観測衛星委員会( CEOS* )に発展的に引き継いでいくことを目指すこととなった。

 一方,国際的な場では,地球科学技術や地球観測関連の国際機関が集い地球規模の組織的かつ効果的な地球観測計画の調整を行うため,統合地球観測戦略( IGOS* )が組織された。我が国はこれに積極的に参加し,貢献している。また,気候変動に関する最近の科学的知見を取りまとめ,各国政府に提供するため,1998年(昭和63年)に気候変動に関する政府間パネル( IPCC* )が設立され,これまでに3次にわたる報告を行っており,我が国はこれに積極的に参加し,貢献している。

 地球規模の環境変動に関する研究を促進するため,地球を南北アメリカ,欧州・アフリカ,アジア太平洋の3極に分け,各地域における地球変動研究を推進するための政府間ネットワークが設けられている。このうち,アジア太平洋地域については,「アジア太平洋地球変動研究ネットワーク( APN* )」が設けられ,神戸市に開設した「APNセンター」を中核として地域内の研究活動等に対し支援を行っている。

 昭和32年の国際地球観測年を契機に開始された我が国の南極地域観測事業は,文部科学省に「南極地域観測統合推進本部」(本部長:文部科学大臣)を置き,関係各省庁の協力を得て,国立極地研究所が中心となって実施している。南極での観測活動は南極条約に基づいて行われており,国際協力の要素を強く持っている。我が国は昭和31年に第1次観測隊が出発して以来,オゾンホールの発見,オーロラ発生機構の解明,生命起源・惑星起源の解明につながる南極隕石の発見等多くの成果を上げているほか,過去30数万年間の地球環境変動を明らかにする深さ約2,500mの氷床コアの掘削等を行ってきた。平成12年度は,第41次観測隊(越冬隊)及び第42次観測隊が,昭和基地を中心に,電離層,気象,海洋,地理・地形等の定常的な観測のほか,地球規模での環境変動の解明を目的とした,大気,海洋,生物,地学等のモニタリング研究観測等を行った。第42次観測隊は平成12年11月に南極観測船「しらせ」で出発し,平成13年2月に第41次観測隊と交代し,第41次観測隊(越冬隊)及び第42次観測隊(夏隊)は平成13年3月に帰国した。


*WCRP:

World Climate Research Programme


*IGBP:

International Geosphere-Biosphere Programme


*IPRC:

International Pacific Research Center


*IARC:

International Arctic Research Center


*GOIN:

Global Observation Information Network


*CEOS:

Committee On Earth Global Observation Satellites


*IGOS:

Integrated Global Observing Strategy


*IPCC:

Intergovernmental Panel on Climate Change


*APN:

Asia-Pacific Network for Global Change Research

{2}地球観測技術等の研究開発

 地球的規模の諸現象の解明を図る上で必要な情報を集積するためには,地球観測により地球に関する情報を得ることが必要であり,地球観測技術の研究開発が重要である。そのため,平成5年1月に,航空・電子等技術審議会より第17号答申「地球環境問題の解決のための地球観測に係る総合的な研究開発の推進方策について」が取りまとめられている。

 現在,我が国では,この答申等に基づき人工衛星による地球観測に関する技術の研究開発,海洋観測研究船,深海潜水調査船等による海洋観測技術の研究開発等地球観測のために必要な技術の研究開発を実施している。

ア.人工衛星による地球観測に関する技術

 人工衛星による地球観測は,広範囲にわたる様々な情報を繰り返し,連続的に収集することを可能とするなど,極めて有効な観測手段であり,現在,特に地球環境問題の解決に向けて,国内外の関係機関と協力しつつ,総合的な推進を行っている。

(総務省)

 通信総合研究所においては,国際宇宙ステーションの日本の実験棟( JEM* )の曝露部に搭載される超伝導サブミリ波リム放射サウンダの開発を進めているほか,宇宙からの地球環境変動計測技術に関する検討を行っている。


*JEM:

Japanese Experiment Module

(文部科学省)

 宇宙開発事業団においては,平成9年11月に打上げられた熱帯降雨観測衛星( TRMM* )からのデータを取得しているほか,環境観測技術衛星( ADEOS-II* ),陸域観測技術衛星( ALOS* )の開発,米国航空宇宙局(NASA)の極軌道プラットフォーム衛星( EOS-PM1* )に搭載する改良型高性能マイクロ波放射計( AMSR-E* )の開発,降水観測技術衛星,地球環境変動観測ミッション及び国際雲・放射ミッションの実現に向けた研究を関係機関との協力の下に進めている。


*TRMM:

Tropical Rainfall Measuring Mission


*ADEOS-II:

Advanced Earth Observing Satellite-II


*ALOS:

Advanced Land Observing Satellite


*EOS-PM1:

Earth Observing System PM1


*AMSR-E:

Advanced Microwave Scanning Radiometer-E

(経済産業省)

 米国航空宇宙局(NASA)の地球観測衛星である極軌道プラットフォーム1号(Terra)に搭載している資源探査用将来型センサ( ASTER* )の運用及びALOSに搭載する次世代合成開口レーダ( PALSAR* )の開発を進めている。


*ASTER:

Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflectance radiometer


*PALSAR:

Phased array type L-band Synthetic Aperture Radar

(国土交通省)

 気象庁では,現在運用している静止気象衛星( MTSAT* )の整備を進めている


*MTSAT:

Multi-functional Transport SATellite

(環境省)

 平成9年6月に機能停止した地球観測衛星「みどり」に搭載した,オゾン層等監視センサ( ILAS* 及び RIS* )から取得した貴重な観測データを,地球環境の観測,監視やその原因解明等に活用している。また,環境観測技術衛星に搭載するオゾン層等の後継監視センサ( ILAS-II* )の最終試験を行うとともに,温室効果ガス及びオゾン層破壊物質の観測を主目的とするセンサの開発に着手した。さらに,リモートセンシング情報を活用した地域の保水能力の把握手法の開発に着手した。


*ILAS:

Improved Limb Atmospheric Spectrometer


*RIS:

Retroreflector In Space


*ILAS-II:

Improved Limb Atmospheric Spectrometer II

 また,人工衛星を用いた地球環境の観測と処理手法を確立するため,文部科学省において関係機関との協力の下に地球環境遠隔探査技術等の研究等,農林水産省においてリモートセンシング技術を活用した土地利用・作付け状況・生育状況・森林や海洋の資源量の把握等に関する研究開発及び国土交通省において人工衛星リモートセンシング技術を活用した全国土地利用図の作成等を推進している。

 また,こうして得られた人工衛星からのデータの利用促進を図ることが重要であることから,宇宙開発事業団の地球観測データ解析研究センター等において,地球観測データを利用した研究や地球観測情報ネットワークの整備を関係機関と密接に連携をとりながら推進している。

 このような地球観測衛星の開発,観測データの流通及び利用の推進は国際協力の下に行うことが重要であり,このため世界中の地球観測衛星開発機関や国際地球科学技術機関等が集う地球観測衛星委員会( CEOS* )等の国際調整の場に積極的に参加し,貢献している。


*CEOS:

Committee on Earth Observation Satellites

イ.海洋観測技術

 海洋は,地球的規模の諸現象に大きくかかわっており,その果たす役割の解明が重要な課題となっている。このため,海洋科学技術センターにおいて,中高緯度トライトンブイの実証試験や次世代型氷海用自動観測ブイ(J-CAD)等海洋観測技術の研究開発を推進するとともに,海洋地球研究船「みらい」を用い,西部太平洋,北極海等で観測研究を実施した。

 総務省では東シナ海を流れる黒潮の流速場の長期連続観測を行うために,石垣島,与那国島に設置予定の遠距離海洋レーダの開発を進めている。

 文部科学省は国土交通省と共同で全世界の海洋の状況をリアルタイムで監視,把握するため,水深2000m程度の中層域での水温・塩分データを観測する中層フロートを国際協力の下,全世界で約3000個を展開する高度海洋監視システムの構築( ARGO*計画 )に平成12年度から着手した。

 また,経済産業省においては太平洋における二酸化炭素の循環メカニズムの調査研究を推進している。

 環境省は,国連環境計画(UNEP)が推進している日本海及び黄海を対象海域とする北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)の一環として,海洋環境の特殊モニタリング手法の一つである人工衛星を利用したリモートセンシング技術の活用について研究を推進している。


*ARGO:

当初はArray for Real-time Geostrophic Oceanographyの略であったが,現在はギリシャ神話の英雄Jasonの乗った船Argoにちなんだものとされ,Jason衛星との連携をなぞらえている。

ウ.成層圏プラットフォームの研究開発

 文部科学省は総務省と共同で成層圏に滞空させ,搭載する観測センサ,無線局等により,地球観測,通信・放送等に利用するための成層圏プラットフォームの研究開発に着手している。

 現在,関係府省において進められている地球科学技術分野の主な研究課題は 第3-2-4表 のとおりである。

第3-2-4表 地球科学技術分野の主な研究課題(平成12年度)


(2) 海洋科学技術

 海洋は生物資源や鉱物資源等,膨大な資源を包蔵するとともに広大な空間を有しており,その開発利用は国土が狭小であり四方を海に囲まれた我が国にとって重要な課題である。さらに,海洋は地球環境変動に大きなかかわりを有するとともに,海洋底プレートの動きは地震や火山活動の大きな要因と考えられていることから,その実態解明は急務となっている。このような背景の下,1990年代に入り,海洋の諸現象を全地球規模で総合的に観測・研究するためのシステム構築を目指した全球海洋観測システム( GOOS* )が,国連教育科学文化機関( UNESCO* ),政府間海洋学委員会( IOC* )によって提唱され,世界気象機関( WMO* )等と連携して推進されている。国連環境開発会議(UNCED:地球サミット)で採択されたアジェンダ21においても,同計画の推進が盛り込まれている。これら国際的な動向を踏まえ,地球環境問題に関連する海洋調査研究などの海洋科学技術に関する研究開発の推進が不可欠である。


*GOOS:

Global Ocean Observing System


*UNESCO:

United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization


*IOC:

Intergovernmental Oceanographic Commission


*WMO:

World Meteorological Organization

{1}海洋科学技術の基本的推進方策等

 我が国の海洋科学技術は,内閣総理大臣の諮問機関であり,海洋開発に関する基本的かつ総合的事項について調査審議を行う海洋開発審議会の答申を尊重しつつ,関係府省の連携の下にそれぞれの所掌に応じて研究開発の推進が図られている。各府省における海洋科学技術に関する具体的施策は,海洋開発関係府省連絡会議が毎年取りまとめる海洋開発推進計画に沿って実施されている。

 また,地球規模の海洋の諸現象を解明するため,関係府省・大学等の連携の下,GOOS等の国際的な海洋調査研究プログラムに積極的に参加し,さらに,我が国の主導により中国,韓国,ロシアと協力して,GOOSの地域パイロットプロジェクトである北東アジア地域海洋観測システム(NEAR-GOOS)を推進している。

{2}海洋科学技術に関する研究開発の推進

(総務省)

 通信総合研究所において,海洋油汚染・海流・波浪などの計測手法の確立と地球環境の変化の予測に資する高分解能3次元マイクロ波映像レーダや短波海洋データの研究を行っている。

(文部科学省)

 海洋科学技術センターが中心となって海洋科学技術に関する先導的・基盤的な研究開発を進めるとともに,関係各府省・大学等の協力の下,総合的なプロジェクトを推進している。

 このうち,海洋科学技術センターでは,海洋調査技術の開発については,自律型無人潜水機の陸上試験,海域試験を行った。深海調査研究開発については,海洋プレートのダイナミクスを解明し,海底下で起こる様々な地殻活動を研究するため,10,000m級無人探査機「かいこう」・深海調査研究船「かいれい」等を用いて南西インド洋海嶺等,各海域調査を実施した。また,海底変動等の総合的研究に資するため,四国室戸沖及び北海道釧路・十勝沖に設置している海底地震総合観測システムによる観測研究を実施している。海洋観測研究開発については,エルニーニョ現象を初めとする大気と海洋間の相互作用とそれが気候変動に与える影響の解明のため,平成12年6月〜7月にかけては亜熱帯から熱帯にかけての海域で,11月〜12月にかけては西部赤道太平洋で,海洋地球研究船「みらい」を用いて集中観測を行った。深海微生物の極限環境における生理学的な適応機能の解明,極限環境におけるセンシングや細胞内の伝達メカニズムを解明してきた深海環境フロンティア研究において,新たな有用極限環境微生物のゲノム解析,そのゲノム情報を利用しての微生物の高度利用,その利用を通しての新規バイオベンチャーの育成を目指して,「深海バイオベンチャーセンター」の平成13年度設立準備を行った。深海地球ドリリング計画の推進としては,平成11年度から開始している地球深部探査船の建造を推進するとともに掘削孔利用システム等の製作を完了した。

 また,東京大学海洋研究所等が中心となって,海洋環境の変動の解明・予測,保全のための総合的観測システム構築を目的とする全球海洋観測システムに関する基礎研究及び西太平洋海域共同調査への参加,海洋の物質循環の解明に資するオーシャンフラックス研究等の海洋に関する学術研究を引き続き行っている。

(農林水産省)

 平成12年度には,水産関係試験研究機関が中心となって,新技術導入・水産資源の特性の把握等を通じた漁業生産の合理化と資源の持続的利用,養殖業・栽培漁業等つくり育てる漁業の推進,漁場環境の保全,水産物の多面的高度利用のための研究開発等を引き続き行っている。

(経済産業省)

 金属鉱業事業団,石油公団,産業技術総合研究所等が中心となって,海底鉱物資源の開発と環境影響予測,海底地質の調査等を引き続き行っている。

(国土交通省)

 平成12年度には,超大型浮体式海洋構造物(メガフロート)の研究開発の推進,全国港湾海洋波浪情報網( NOWPHAS* )の充実等を行っている。海上保安庁においては,水路測量や海象観測技術の高度化の研究,海底観測技術の開発及び漂流予測の精度向上を図るための研究等を実施している。気象庁において気象業務推進のための海洋気象観測やエルニーニョ現象の解明等,海洋気象現象の監視及び気候変動の監視・予測に関する調査・研究等を引き続き行っている。また,船舶技術研究所においては,海洋技術における安全,環境保全に関する研究を行っている。また, NEAR-GOOS* に関連して,気象庁,海上保安庁が,日本周辺海域を中心とした海洋データの交換を促進するためのシステムを運用しており,海洋研究の一層の推進が図られている。

 土木研究所において非均衡状態の海浜過程に関する研究等を実施している。また,国土地理院において,沿岸海域基礎調査等を行っている。


*NOWPHAS:

Nationwide Ocean Wave information network for Ports and HArbourS


*NEAR-GOOS:

North East Asian Regional‐Global Ocean Observing System

(環境省)

 地球環境研究総合推進費等により,東シナ海における長江経由の汚染と生態系への影響の解明や有害化学物質の地球規模の海洋汚染に対する研究等を行っている。

 なお,海洋開発推進計画に基づき関係府省が平成12年度に実施した海洋科学技術分野の主な研究課題は, 第3-2-5表 のとおりである。

第3-2-5表 海洋科学技術分野の主な研究課題(平成12年度)


(3) 地球・自然環境の保全

 近年,地球温暖化などの地球的規模での環境問題が顕在化しつつあり,国際的に協力してこれらの問題の解決を図っていくことが強く求められている。また,潤いのある生活環境を整備するため,地域において公害を防止するとともに自然環境を保全していくことが重要である。このため,地球的規模の環境問題への対応,公害の防止,自然環境の保全のための研究開発を推進していくことが必要である。

{1}地球環境保全にかかわる法制面の整備等

 我が国としては,地球規模で深刻な影響を与える環境問題に対応するための施策に関し,関係行政機関の緊密な連絡を確保し,その効果的かつ総合的な推進を図るため,「地球環境保全に関する関係閣僚会議」を設置し,地球環境問題に積極的に取り組んでいる。

「地球環境保全に関する関係閣僚会議」において,「地球環境保全に関する調査研究,観測・監視及び技術開発の総合的推進について」の申合せが行われ,この申合せに基づき,以降毎年度,「地球科学技術に関する研究開発基本計画」を踏まえ,同会議において「地球環境保全調査研究等総合推進計画」を策定している。また,開催された同会議において二酸化炭素排出量等の排出抑制目標等を定めた「地球温暖化防止行動計画」が決定された。

 また,環境基本法の制定を契機に,平成9年6月に「環境影響評価法」が成立した。同法には,規模が大きく,環境影響が著しいものとなるおそれのある事業について,その実施前に事業者自らがその環境影響を調査・予測・評価することを通じ,環境保全対策を検討するなど,その事業を環境保全上より望ましいものとしていくための具体的な手続き等が規定されている。

 また,地球温暖化対策に関し,国,地方公共団体,事業者及び国民の責務を明らかにすること等が盛り込まれた「地球温暖化対策の推進に関する法律」が平成11年4月より施行されている。

 その他,南極の環境保護を図るため,原則として南極でのすべての活動に対し,事前に環境への影響を検討することを義務付ける等の「環境保護に関する南極条約議定書」が平成3年に採択され,平成10年1月に発効した。同時にその国内担保法である「南極地域の環境の保護に関する法律」も施行されている。

{2}地球環境保全にかかわる国際的取組等

 我が国は,アジェンダ21を踏まえ,地球環境保全に関する関係閣僚会議において「『アジェンダ21』行動計画」を決定した。また,1997年(平成9年)6月には国連環境特別総会が開催され,「アジェンダ21さらなる実施プログラム」について採択され,これらの計画等が着実に実施されるようフォローアップを行う場として,毎年,国連持続可能な開発委員会( CSD* )が開催されている。


*CSD:

Commission on Sustainable Development

ア.気候変動枠組条約にかかわる取組

 気候変動枠組条約に基づき,日本国報告書を2度条約事務局に提出した。

 条約上の明確な規定のなかった2000年(平成12年)以降の取組について,京都において開催された第3回締約国会議( COP*3 )において,「京都議定書」が採択された。本議定書において,削減の対象とすべき温室効果ガスの種類,吸収源の扱い,削減の具体的数値目標,主要各国の削減率,削減目標期間,削減目標の達成のための新たな国際的仕組み等が規定された。

 京都議定書の着実な実施に向けて,地球温暖化防止のための具体的で実効のある対策を総合的に推進するため,1997年(平成9年)12月の閣議決定により,内閣に地球温暖化対策推進本部が設置され,同推進本部は,平成10年6月に「地球温暖化対策推進大綱-2010年に向けた地球温暖化対策について-」を策定した。同大綱には,1.地球温暖化対策の総合的推進,2.エネルギー需給両面の対策を中心としたCO2排出削減対策の推進,3.その他の温室効果ガスの排出抑制対策の推進,4.植林等のCO2吸収源対策の推進,5.革新的な環境・エネルギー技術の研究開発の強化,6.地球観測体制等の強化,7.国際協力の推進とともに,ライフスタイルの見直しに関する施策が盛り込まれている。

 また,2000年(平成12年)11月には,「気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)」がハーグで開催され,京都議定書を締結するための詳細について合意を得るための議論が行われた。会議は合意に至らず中断されたが,2001年(平成13年)7月に開催されるCOP6再会会合の場で京都議定書の実施のためのルールについて合意できるよう,引き続き国際交渉が行われている。


*COP:

Conference of the Parties

{3}地球環境保全にかかわるその他の取組等

ア.生物多様性にかかわる取組

 野生生物の種の絶滅が過去にない速度で進行しているという状況の下,地球上の多様な生物をその生息環境と共に保全し,生物資源の持続可能な利用を行うことを目的とした「生物の多様性に関する条約」を受けて,生物の多様性の保全と持続可能な利用を図るための施策を講ずる等,積極的な取組がなされている。なお,同条約に基づき,我が国における生物の多様性の保全とその持続可能な利用という観点から各種施策を体系的に取りまとめた「生物多様性国家戦略」(地球環境保全に関する関係閣僚会議決定)においては,生物多様性に関する情報の的確な把握と研究の充実が必要とされている。

 さらに,環境中で人を含む高等動物から微生物までの多様な生物が変動しつつ共存する秩序の本質を解明する包括的な研究も必要となっている。農林水産省では持続的農業推進のための環境負荷低減に関する技術開発,植物の環境ストレス耐性機構の解明,森林・農地・水域を通じる自然循環の機能の解明,森林・農耕地等の気候緩和機能や水質浄化機能等の解明などに関する研究等が進められている。

イ.公害防止等にかかわる取組

 公害の防止等については,「公害の防止等に関する試験研究の重点的強化を図る必要がある事項について」(毎年度環境省が作成)等が策定され,研究開発が重点的に推進されている。特に,近年,ダイオキシン類,内分泌かく乱物質(いわゆる環境ホルモン)等化学物質の環境リスク対策に資するための研究に関心が集まってきている。それらの試験法・測定法の開発等,現在,関係府省を中心に積極的な調査,研究開発が行われている。

ウ.その他

 学術審議会は「地球環境科学の推進について」を建議し,同建議では地球環境に関連する幅広い分野の科学における研究を推進するとともに,地球環境問題の解決を目指し,総合的なプロジェクト研究を推進する中核的研究機関の設置について検討することを提言している。これを受け,文部科学省(文部省)では,新たな研究機関の創設に向けた検討を重ね,平成12年4月に総合地球環境学研究所創設調査室を設置した。また,環境省においては,地球環境研究総合推進費等により,地球温暖化に関する予測・影響・対策に関する研究等を推進している。

 総務省では,地球環境データの有効な情報流通を行う「地球環境保全国際情報ネットワーク技術」等の研究を進めている。

 このほか,環境省(環境庁)は平成11年7月,環境研究及び環境技術開発の総合的・計画的な推進政策を具体化するものとして「環境研究技術基本計画」を策定し,環境研究・環境技術開発の推進方策として,環境研究プログラムの全体をより戦略的に企画・立案・推進すること,特定の環境問題に対する様々な科学的知見を総合的に検討評価すること等を提言した。

 なお,平成12年度に実施された地球・自然環境の保全に関する主な研究課題をまとめると 第3-2-6表 のとおりである。

第3-2-6表 地球・自然環境の保全に関する保全技術の主な研究課題(平成12年度)


(4) 資源の開発及びリサイクル

 鉱物資源等の天然資源の有効利用のため,資源の探査,採取・処理,資源量の評価に基づく管理システム等の研究開発を推進するとともに,資源のリサイクルを目指し,廃棄物の資源化,水資源の循環利用,リサイクルしやすい製品の生産等に関する研究開発を推進することが必要である。

(文部科学省)

 波のエネルギーを吸収して,後背海域を静穏化して養殖漁業に利用したり,圧縮空気を作り出し海水が汚濁した湾内において曝気(エアレーション)を行うことにより海域を浄化するなどの特徴を持つ,沖合浮体式波力装置「マイティーホエール」の開発が進められている。

 また,生ゴミの再利用・リサイクルを目的に,生ゴミを原料として生分解性プラスチック(ポリ乳酸)を製造する技術システムの開発や,焼酎粕,夏みかん加工滓等から有害物質を除去し,乳酸,クエン酸等を生産する研究等が進められている。

(厚生労働省)

 廃棄物の減量化を図り,リサイクルを推進する観点から,ごみの固形燃料化施設の標準化に関する調査やプラスチック油化処理実証事業を通じたリサイクルシステムの研究が進められている。また,水道水の安定供給を図るための膜処理等の高度浄水技術や発生汚泥のセメント原料等への利用技術の評価が行われている。

(農林水産省)

 環境保全対策及び有機性資源の有効利用を進めるため,家畜排せつ物等の革新的適正処理及びリサイクル技術の開発,食品産業の製造工程全般について,食品廃棄物の肥・飼料化技術の開発,食品容器包装のリサイクル技術の開発が進められている。

(経済産業省)

 リサイクル技術の抜本的な促進を図るための研究開発として,{1}廃プラスチックの液化等の容器包装リサイクル関連技術,金属スクラップの高度リサイクル技術等のリサイクル能力の拡大のための技術開発,{2}高効率廃棄物発電,RDF(固形燃料化した廃棄物)の利用拡大等サーマル・リサイクル(廃棄物の焼却熱のエネルギー利用)関連技術開発,{3}都市ごみ焼却灰等のセメント原料としての利用技術開発,{4}廃家電製品,廃自動車等の適正処理・リサイクル技術開発を初めとして,幅広い分野における廃棄物処理・リサイクル技術の開発を積極的に展開している。その他,有機資源の環境調和型リサイクルシステムを確立するための基礎技術として,再生可能分別不要型プラスチック原料の製造技術の研究開発が進められている。

(国土交通省)

 植物の維持管理により発生する剪定枝等のリサイクル技術の開発,各種廃棄物を母材とした土質新材料の開発と港湾施設への適用に関する研究などが進められている。

(環境省)

 廃棄物処理施設やリサイクル施設において発生する微量汚染物質による環境リスクを低減することを目的に,発生機構の解明・排出制御に関する研究を行っている。

 また,微量汚染物質の埋立層内における長期的挙動を把握し,微量汚染物質のリスクを長期的に制御するための研究を行っている。

 平成12年度に実施された資源の開発及びリサイクルに関する主な研究課題をまとめると 第3-2-7表 のとおりである。

第3-2-7表 資源の開発及びリサイクルに関する主な研究課題(平成12年度)


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