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第1部   我が国の科学技術の創造力
(参考)  主要国の科学技術振興方策

 我が国の第2期科学技術基本計画は,{1}重点的な資源配分,{2}世界水準の優れた成果の出る仕組みの追求とそのための基盤への投資の拡充,{3}科学技術の成果の社会への一層の還元,{4}我が国の科学技術活動の国際化の推進,を基本方針としている。

 これらの諸点は欧米主要国においても,戦略的に取り組んでいる事柄であり,とりわけここ数年,以下に見るように基礎研究の強化や科学技術の重点化,競争力の強化,産学官の連携の強化などを目指して,ライフサイエンス(生命科学)や情報技術(IT,インフォメーションテクノロジー)といった重要科学技術に対する投資を増加するとともに,大学と産業界の連携を強化し,イノベーションに結び付けようとしている。

(米国)

 米国の科学技術行政は,連邦政府の各省庁・機関がそれぞれ行政目的に応じた研究開発を行うとともに,大学等に研究委託や助成金の交付を行う形で実施されている。このような機関には,国防総省 (DOD* ),保健・社会福祉省( HHS* ),エネルギー省 (DOE* ),農務省( USDA* ),商務省( DOC* )などの省と航空宇宙局( NASA* )や国立科学財団 (NSF* )がある。保健・社会福祉省内の国立衛生院( NIH* )はライフサイエンス分野で重要な役割を果たしている。

 また,大統領行政府に科学技術政策局( OSTP* )が置かれており,同局の長は科学技術担当大統領補佐官として大統領に対して助言等を行っている。また大統領を議長とし関係閣僚によって構成され,省庁間の連携を図る国家科学技術会議( NSTC* )と,民間の有識者により構成される大統領科学技術諮問委員会( PCAST* )が1993年に設置されており,大統領のイニシアティブで重点的に政策が展開されることが特徴になっている。

 1998年の下院科学委員会報告書(「未来への扉を開く:新しい国家科学政策」)は科学技術の重要項目として,{1}基礎研究の促進,{2}科学技術成果の新産業技術への活用と社会・環境問題の解決への応用,{3}科学教育の充実を挙げている。このうち,基礎研究の重視については,その研究費の伸び率が応用研究,開発よりも大きく,予算に反映されている。また,米国では,科学技術は経済発展のための牽引力であると位置付けられており,研究開発からその成果の製品化を推進するために,産学官の連携を強化し,技術移転を推進する様々なプログラムが実施されている。科学教育については,2001年1月にブッシュ大統領が発表した「No Child Left Behind」においても,理数科教育の改善が重要な柱の一つとなっている。

 科学技術の重点分野についてみると,ライフサイエンス分野では1988年にNIHが中心となってヒトゲノムの解読が本格的に開始され,1990年には「脳研究10か年計画」が提唱された。NIHの予算は2001年度に1996年度の1.7倍と大幅に伸びており,さらに2000年度からの5年間で予算の倍増を目指している。情報通信分野では,1993年(平成5年)に「全米情報通信基盤イニシアティブ( NII* )」が提唱され,2000年度予算からは「21世紀のための情報技術イニシアティブ( IT2 * )」が開始された。ナノテクノロジーの分野では,1999年9月にNSTCから出されたレポート等を踏まえ,2001年度予算において「国家ナノテクノロジーイニシアチブ( NNI* )」が開始されている。


*DOD:

United States Department of Defense


*HHS:

United States Department of Health and Human Service


*DOE:

United States Department of Energy


*USDA:

United States Department of Agriculture


*DOC:

United States Department of Commerce


*NASA:

National Aeronautics and Space Administration


*NSF:

National Science Foundation


*NIH:

National Institutes of Health


*OSTP:

Office of Science and Technology Policy


*NSTC:

National Science and Technology Council


*PCAST:

President's Committee of Advisors on Science and Technology


*NII:

National Information Infrastructure


*IT2:

Information Technology for the Twenty-first Century


*NNI:

National Nanotechnology Initiative

(イギリス)

 科学技術に関しては貿易産業大臣のもと,閣外大臣である科学技術大臣が担当している。また,首相が任命する政府主席科学顧問( CSA* )を長とする科学技術庁( OST* )が1992年(平成4年)内閣府に設置され,1995年(平成7年)に貿易産業省 (DTI* )に移管されている。また,経済界や学界など各界の有識者によって構成される首相の諮問機関として科学技術会議( CST* )が1993年(平成5年)に設置されている。

 OST傘下には,7つの研究会議( RCs* )があり,傘下の研究所での研究を推進するとともに,大学等へプロジェクト・ベースの研究委託や助成金の交付を行っている。このほか,各省庁が行政目的に応じた応用研究・開発を所轄研究所等で行っている。大学に対しては,RCsを通じた競争的資金とは別に,約4年ごとに学科ごとを対象として実施されている研究アセスメント活動( RAE* )の結果に基づいて教育雇用省( DfEE* )等の傘下にある高等教育資金配分会議( HEFCs* )を通じて基盤的・経常的な資金が配分されている

 1998年7月,2002年度末までの3年間で毎年約20%の基礎研究予算を増額する計画が発表され,同年12月の「競争力白書」では,大学等の科学技術の知識を産業の成功に転換等する企業の役割と情報通信等における起業促進等の政府の役割が提示されている。

 2000年7月には「卓越性と機会:21世紀に向けた科学・イノベーション政策」が発表され,イギリスの科学の卓越性を維持・向上させるため,ゲノム,e-サイエンス,基礎技術の3分野を重点分野に設定するとともに,産学連携については,大学を知識経済の構築を目指す上での中心的役割を担う機関と位置付け,教育と研究の質を高めながら企業や社会に対して知識移転を促進することとし,大学の基盤整備や産学連携についての支援策が講じられている。


*CSA:

Government's Chief Scientific Advisor


*OST:

Office of Science and Technology


*DTI:

Department of Trade and Industry


*CST:

Council for Science and Technology


*RCs:

Research Councils


*RAE:

Research Assessment Exercise


*DfEE:

Department for Education and Employment


*HEFCs:

Higher Education Funding Councils

(ドイツ)

 連邦政府においては,1994年に教育科学省と研究技術省を統合した教育科学研究技術省が設置されたが,1998年(平成10年)には,研究及び技術の分野での省庁間協力の強化により,研究成果が早急に製品化に結びつくよう,同省と経済省との間で再編成が行われ,教育研究省と経済技術省とに再編され,間接的な研究推進,技術主導による企業設立及びエネルギー応用研究は経済技術省の所管となった。

 1998年12月に連邦教育研究大臣が,教育及び研究への投資を倍増させるための総合的戦略が必要であるとし,科学技術政策の重点として,産学官連携による技術移転促進,健康及び予防的な環境保護など人間のための研究の強化,世界全体の持続的成長への貢献を掲げている。また,2000年(平成12年)9月の「ドイツ連邦政府研究報告書」は,{1}教育及び研究に対する投資の増額,{2}研究環境の一層の整備,{3}プロジェクト助成の強化,{4}政府研究機関,大学及び経済界(特に中小企業)の協力の強化などを掲げており,研究助成の重点事項として,{1}情報通信技術,{2}バイオテクノロジー,{3}保健,{4}環境,{5}ナノテクノロジー,{6}エネルギー,{7}航空・輸送,{8}宇宙開発,{9}社会科学等を示している。なお,同年7月には,ドイツにおけるIT技術者の一時的な需要を補うことを目的としてIT関連の外国人に対する労働許可を認める条例が時限措置として制定されている。

(フランス)

 政権交代に伴って行政組織の再編が行われることが多く,現在は,研究省(2000年に国民教育研究技術省から国民教育省と研究省に再編)等を通じて大学及び研究機関に研究費等が配分・助成されている。

 1998年7月に首相を議長とする科学的・技術的研究関係閣僚委員会( CIRST* )を発足させ,{1}科学全国会議( CNS* )の設置,{2}研究者の流動性の向上,{3}研究機関の評価方法の改善,などの基本方針を決定し,翌1999年6月の同委員会において,{1}ライフサイエンス,{2}情報通信技術,{3}人文社会科学,{4}エネルギー,{5}輸送及び生活環境,{6}宇宙政策,{7}地球・環境科学を研究に関する優先分野と決定している。また,同年7月には,公的機関の研究成果の企業への移転を促進するために「イノベーション及び研究に関する法律」が制定されている。


*CIRST:

Comite Interministeriel de la Recherche Scientifique et Technique


*CNS:

Conseil National de la Science

(EU)

 EUでは欧州連合条約に基づき,EUにおける研究開発活動全般を規定する第5次フレームワーク計画(1998〜2002年)が進行中であるが,2000年(平成12年)1月に欧州研究圏構想が取りまとめられ,2001年(平成13年)2月には,欧州研究圏の構築を目指すための一翼を担う,第6次フレームワーク計画(2002〜2006年)に関する提案が欧州委員会より提出された。そこでは,優先事項として{1}保健のためのゲノム学とバイオテクノロジー,{2}情報社会の技術,{3}ナノテクノロジー,新材料の開発,新しい生産方法,{4}航空学と宇宙,{5}食物安全性と保健リスク,{6}持続可能な発展と地球環境,{7}欧州委員会における市民と統治,の7項目が提案されている。

 欧州における新たな政策策定の背景には,欧州でも研究者が米国に渡り,米国で定着して研究を続けるという傾向が強まっていることから,若い優秀な研究者を引き付けさらに外国からも研究者や技術者を呼び込み,欧州の科学技術力を高め,競争力強化につなげようという政策が必要とされていることがある。

(中国及び韓国)

 中国は,2000年までの第9次5か年計画において急速に科学技術の水準を上げており,さらに2001年(平成13年)からスタートした第10次5か年計画においても,「科学技術の発展の加速と国民の資質の向上」は国防力と経済力の増強などとともに,「総合国力を増強するための決定的要素」として21世紀の国家発展戦略の4本柱の一つとして掲げられている。2005年(平成17年)までの数値目標としては,{1}基礎研究の水準を世界の5〜10位以内までに向上させる,{2}研究開発費の対GDP比を現在の0.7%から1.5%までに引き上げる,{3}ハイテク企業の研究開発費を総売上収入の5%以上にする,{4}研究開発要員者数を現在の約50万人から90万人にまで増加させる,などがあげられている。

 また,近年,中国人の米国における博士号取得者数が急速な伸びを示しているが,本5か年計画でも「科教興国」として人材育成に力を入れるとともに,海外技術の導入・消化が極めて不足していることから科学技術協力の一層の推進を図ることとしている。

 韓国では,1997年に制定された科学技術革新特別法に基づき,科学技術革新を国家レベルで総合的,体系的に推進することを目的とする1998年から2002年までの科学技術革新5か年計画が策定された。1999年1月には同法を改正し大統領を委員長とする「国家科学技術委員会」を設立して,重要政策と総合計画の策定等,科学技術総合調整を通じて国家研究開発投資の効率性と生産性を向上することになった。また,第3回国家科学技術委員会で決定(1999年12月3日)された「2025年に向けた科学技術発展長期ビジョン」では,2025年までに世界の科学技術競争力7位に到達するために,{1}政府主導開発中心から民間主導へ,{2}投資の供給拡大重視の拡大戦略から効率的活用を重視する配分戦略へ,{3}研究開発体制の国内完結型からグローバル・ネットワーキング型へ,{4}技術開発の短期需要対応型から長期市場創出型へ,の大きく4つの転換を政策基調に打ち出している。

-世界屈指のソフトウェア生産国,インド-

 インドにおけるソフトウェア産業は,その規模はまだ大きくはないものの,近年輸出を中心に急速に成長している。インド国内の1998年〜1999年のソフトウェア産業売上げの半分以上は輸出によるものであり,少なくとも1993年以降,毎年50%近くの伸び率で輸出額が増加している。

 インド政府は「第2のシリコンバレー」と呼ばれるマドラス地区にサイエンス・テクノロジー・パーク( STP* ),輸出加工区( EPZ* )などを設け,税制面の優遇措置や通信ネットワークの整備などを積極的に進め,IT産業を戦略的な産業として位置付けている。

 また,専門技能保持者の米国をはじめとする海外への進出も目覚ましく,米国シリコンバレーで起業したベンチャー企業の40%にインド人技術者がかかわっている。

 このようなインド人ソフトウェア技術者の活躍に,世界各国がインドとのIT関連の結びつきを強めようとしている。我が国では平成13年2月9日,インドIT省が実施するIT技術者試験(DOEACC:ドアック)と経済産業省が実施するIT技術者試験である情報処理技術者試験との相互承認を行い,DOEACCの合格者(Aレベル以上)に対し,日本への入国ビザの発給要件を緩和する措置を取ることとした。これらの措置により,例えば,日印のソフトウェア企業同士の連携を促進する効果が期待されるほか,日印間でのIT技術者の交流の活性化も期待される。


*STP:

Science Technology Parks


*EPZ:

Export Processing Zone


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