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第1部   我が国の科学技術の創造力
第2章  我が国の科学技術システムの現状と課題
第6節  科学技術に対する国民の理解
2.  科学技術に対する国民の関心


(成人の科学技術に関する関心)

 科学技術について関心がある者の割合についてOECDが14か国について国民の科学技術上の関心について比較した結果をみると,{1}科学上の新発見,{2}新技術の発明・開発,{3}医学上の新発見,{4}環境汚染問題の全ての項目で,調査方法の違いに留意する必要があるが,我が国は最下位である( 第1-2-47図 )。

第1-2-47図 OECD加盟国民の科学技術への関心の比較指数

 この国際比較における日本のデータは1991年のものであるが(科学技術庁科学技術政策研究所「日・米・欧における科学技術に対する社会意識に関する比較調査」),その後の平成7年及び平成10年の総理府の科学技術に関する世論調査によると,我が国の成人の科学技術についてのニュースや課題に対する関心は,回答選択肢の違いや標本誤差に注意する必要があるが,20歳代の若年層を含めほぼ各年齢層とも高まっている( 第1-2-48図 )。

第1-2-48図 科学技術に関する関心の推移

 この傾向が安定したものかどうかは不明であり,また,欧米と比べると依然低い状態にあると考えられる。また,科学技術の内容ではなく,その成果物に対する関心に留まっていることも考えられる。今後とも,広く国民一般に対して科学技術の基本原理や新たな動向などに対する理解増進を図る必要がある。

(国民の科学技術に対する信頼の涵養)

 これまで見てきたように,我が国の国民の科学技術に対する関心は高まりつつあるものの諸外国に比べて必ずしも高いと言えない実態にあり,科学の進歩についていけなくなる,あるいは科学の進歩に不安や不信を抱くなど,科学技術にネガティブなイメージを持つ人々の増加につながることが懸念される。このような状況においては,科学技術の発展についての支持も得られにくく,科学技術に貢献しようと志す若者も減少することとなって,国際的に魅力ある研究環境の構築が困難となるなら,我が国の社会経済の進展にとって大きなマイナスである。科学技術の振興や高度な技術社会を生き抜く力を育成するためには,適切な科学技術情報の流通と生活者の科学技術リテラシーの向上が必要である。

 従来,科学技術への無関心の原因は,一般市民の科学技術への理解不足にあるとして,専門家による教育・啓発を図る活動を重視する傾向があったが,科学技術の成果は何を追求すべきか,専門家も気付いていない問題点として何を考慮すべきかなど,市民の側に積極的な観点も含まれていることがある。このため,一般市民に対し,科学技術に対する「受け手」としての興味関心の喚起だけでなく,専門家との「協同の作り手」としての参加意識を喚起することも重要となっている。こうした活動を通じて,国民の科学技術に対する信頼の涵養に努めることが求められている。

 また,国民が科学技術への関心を常に持ち,科学技術関係の問題に対して十分な情報量に基づいて自己の判断を下せるようになるためには,最新・難解な科学的問題を国民生活と結び付けて平易に解説・評論することが重要であり,科学技術を国民に分かりやすく伝え,科学技術に対して提言する科学ジャーナリズムの役割は大きい。

 さらに,国民の科学技術の理解増進を図っていく上では,NPO等が様々な役割を果たしていくことが期待できる。例えば,NPO等が博物館や科学館との連携のもと,自主的な体験型イベントや館外における学校との連携などを行っている事例や,子ども達が参加する科学実験教室等の開催を通じて科学技術の理解増進を目指している事例のほか,研究者を中心とするNPO等が自分たちが研究を進めるとともに,積極的に社会に対して科学技術の理解増進を働きかけているNPO等の例があり,このような活動が促進されることが望ましい。NPO等の活動については,国民に密着した活動を通じて,科学技術に対する国民の意見の集約を図り,科学技術行政に対して反映させていくことも期待される。

 一方,今日の科学技術は人間の活動と密接なかかわりを持っていることから,科学技術が価値観や倫理,社会や環境に及ぼす影響について,特に留意する必要がある。このため,科学技術と社会との関係に常に配慮し,科学技術を常に人間や社会と関連付けて考え,様々な分野の知識を結集しなければならない。科学技術・研究開発の振興に当たっては,自然科学分野と,人文・社会科学分野とを融合した総合的な広い視点で推進することが重要である。

「21世紀の科学技術の展望とその在り方」

 科学技術政策研究所では,科学者・技術者に自由記述のアンケートを行い,21世紀に科学技術がどのような進展を見せるかを展望するとともに,科学技術の在り方について検討を行った。

 回答した約1,200人の意見をみると,21世紀の百年に,遺伝子技術や医療技術の発展による疾病の減少や,細胞の培養による臓器再生,体内に入って行けるマイクロロボットによる検査・治療,神経に直結して制御できる義手・義足等,人間の生活にとって最も大きな影響を及ぼす病気や障害を克服する技術が進歩すると予測されている。また安全な核融合発電の開発,太陽光発電の拡大,燃料電池の普及により,クリーンなエネルギー源が一般的となることや,地球温暖化防止やオゾン層の修復等の環境に対する技術も大幅に進歩すると考えられている。情報・通信技術の発達は,ネットワークや自動翻訳を介して多様な言語間でのコミュニケーションを実現し,いずれ言語を介さない脳と脳の直接交信も実現するとされ,航空・宇宙技術の進展は,個人用超小型飛行機の普及や宇宙旅行の一般化を実現すると予測されている。

 しかしこのような夢に満ちた明るい未来が予測されている一方,科学技術が無思慮に発展すると,例えば人々が疾病の少ない遺伝子構造を持つことが可能になる反面,多型性の欠如を呼ぶというパラドックスが生じることや,再生医療が脳に適用されると本当の自分とは何なのかというアイデンティティの問題が生じることなど,人類に対する新たな課題の出現を予測する意見も少なからず見受けられる。


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