ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   我が国の科学技術の創造力
第2章  我が国の科学技術システムの現状と課題
第5節  産学官のネットワーク
3.  産業界の大学等に対する意識


 このように,我が国の産学官連携の現状については,産学官の共同研究数や共著論文数の増加がみられるなど,近年の我が国の取組を反映して徐々に進展している様子が窺えるものの,大学等の研究成果の産業界への移転状況等から示されるように海外との比較,特に米国との比較においては産学官連携に対して一層の取組が必要である。

 このような現状のもと産業界は大学等についてどのように考えているのだろうか。そこで,産業界と大学等の関係をみる一つの指標として,大学等で使用される研究費に占める産業界からの資金の割合をみると,我が国は,他の主要国に比べその値は低く,各国に比べて資金面での結びつきが少ないことが分かる。また,これについて主要国の推移をみると,近年,ドイツ,イギリス,米国は増加傾向にあるのに対し,日本は2%代前半で推移しており,その差は拡がりつつあるものと考えられる( 第1-2-42図 )。

第1-2-42図 大学研究費に占める産業界負担研究費の割合の推移

 さらに,我が国の民間企業における社外の研究機関へ支出される研究費の推移についてみれば,国内の大学等に支出される研究費が横ばいで推移しているのに対し,外国の研究機関へ支出される研究費が近年大きく増加してきている状況が分かる( 第1-2-43図 )。このような状況からみれば,我が国の企業と国内の大学等の結びつきは薄く,近年の国際的な競争の激化や研究開発のアウトソーシング化が進む中で,企業は研究開発の成果を海外の研究機関に求めていることが推測される。

第1-2-43図 民間企業の研究費支出先別推移

 以上のような傾向に関して,民間企業に対し海外の研究機関と国内の研究機関との違いについて実施した調査では,「知的財産権取得の意識が高い」,「研究内容に関する情報公開が進んでおりコンタクトがとりやすい」,「研究のレベルが高い」,「素早く研究成果を上げられる」など全体的に国内の研究機関に比べ海外の研究機関が優れているとの認識が示されているところであり,このような認識が影響しているものと考えられる( 第1-2-44図 )。

第1-2-44図 国内外の研究機関の比較

 また,我が国の大学や国研等の最近(5年程度)の研究活動に対する民間企業の認識について実施した調査によれば,「研究内容や研究成果に関する情報公開が進んできた」(回答企業の32%),「成果を実用化することまで考慮した研究が増えてきた」(同:23%),「知的財産に対する意識が高まってきた」(同:22%)との認識が示されており,大学等における研究活動への取組の変化に対して企業側から一定の評価を得てきていることが窺える反面,「成果が出るまでのスピードが遅い」(同:39%),「成果の実用化が考慮されていない」(同:38%),「研究内容や研究成果に関する情報が少ない」(同:34%)といった項目については活動を評価する意見を上回る認識が多くの企業で示されており,我が国の産業界が持つ国内の大学等に対する認識が厳しいものであることが分かる。

 近年のグローバルな経済活動の進展とともに,先進諸国間での経済競争が激化し,ライフサイエンスや情報通信などの分野で見られるように科学技術がその鍵を握ってきている中で,我が国が今後とも国際競争力を確保していくためには,公的研究機関の研究成果が産業界に活用されるとともに,産業界のニーズ等が公的研究機関へ伝達される環境を創り出していく必要があり,産業界と公的研究機関の共通認識の醸成を図ることが不可欠であることから,公的研究機関においては,研究成果に関する情報発信,社会的なニーズを考慮した研究の実施等へのより一層の取組が望まれるところである。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ