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第1部   我が国の科学技術の創造力
第2章  我が国の科学技術システムの現状と課題
第5節  産学官のネットワーク
2.  大学の研究成果の産業界への利用


(サイエンス・リンケージの比較)

 大学と産業の関係を直接的に表すものではないが,科学研究の成果(論文)と技術(特許)の結びつきについて,米国特許の審査報告書における特許1件当たりの科学論文の引用回数で示されるサイエンス・リンケージを見れば,各国ともその値は増加しており,科学研究と特許の関係が強まってきていることが考えられる。中でも米国における値の増加は著しい。一方で,我が国の値は5か国中最低であり,科学論文の成果があまり利用されていないことを示している( 第1-2-36図 )。

第1-2-36図 米国特許に関する主要国のサイエンス・リンケージ

 サイエンス・リンケージの高い分野について日米比較をしてみると,いずれも米国が大幅に上回っているが,特に「生化学・微生物学等」及び「有機化学」の分野において米国の値は極めて高く,しかも著しく増加している。このことから,米国では,遺伝子工学関係の科学研究の成果に基づく特許の取得が急速に進んでいることが分かる( 第1-2-37図 )。

第1-2-37図 主要分野における日本と米国のサイエンス・リンケージの推移

(大学等で取得された特許の活用状況)

 米国においては,大学における研究成果の産業界への移転の促進を図る取組として,大学に対し政府資金により行われた研究成果に係る特許権を付与し,民間企業へのライセンス供与を奨励する バイ・ドール法* が1980年に制定されている。NSFの「Science and Engineering Indicators」によれば,このバイ・ドール法の制定を機に,特許を取得した大学数は1980年代初めの約75校から1998年には173校へと大幅に増加し,大学において取得された特許件数も1970年代初めの年間約250件から1998年には3,151件へと飛躍的に増加していることがわかる。また大学が取得した特許収入も1991年の1億3千万ドルから97年には4億8千万ドルへと増加しており,米国における大学等の研究成果の実用化が進んでいることが分かる。これらについて同報告書では,大学における技術移転及び特許に関する部門の整備や商業化を意識した研究の重視等が大きく貢献しているとの認識が示されている( 第1-2-38図 )。

第1-2-38図 大学が取得した特許数及び特許使用料(米国)

 このように米国において大学等の研究成果の産業界への積極的な移転が実施される中,我が国においても,平成10年8月「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(大学等技術移転促進法)が施行されるなど,大学等の研究成果の実用化の促進に向けた取組が開始されている。特許庁が集計した日本の大学の特許出願件数(大学名での出願件数)によれば,量的には米国に及ばないものの,近年大きく増加してきており,我が国においても研究成果の特許化への意識の高まりや大学における特許管理の整備等が進んでいることが窺える( 第1-2-39図 (なお,大学による特許出願件数を日米で比較する際には,特許の帰属の在り方が米国においては大学有が大勢であるのに対し,日本では原則個人有であるというシステム自体の違いが存するため,必ずしも単純に比較できる数字ではない,ということにも留意が必要である))。また,大学の研究成果の民間事業者への積極的な移転を図ることを目的に大学等技術移転促進法に基づき承認された技術移転機関(TLO:平成13年4月現在20)が,平成10年末から平成12年12月末までに行った特許出願は700件を超えており,この点からも大学の研究成果の実用化に向けた取組が進んでいることが考えられる。

第1-2-39図 日本の大学の出願件数の推移

 なお,このTLOの活用状況等に関して民間企業を対象に実施した調査によれば,現在TLOを活用している企業は約8%に止まっているものの,今後活用する予定があるという回答を含めると約8割に達していることから,多くの企業がTLOに期待を寄せていることが分かる。また,TLOを活用しない理由については,「TLOの役割がよくわからない」,「TLOの役割が機能するかどうかしばらく様子をみたい」といったものが主であり,民間企業におけるTLOの役割に対する理解の増進を図るとともに,TLOにおける有用な特許の確保などを通じてその活動の充実を図ることが必要である。

 さらに今後は,ライセンス手法の多様化,スピンオフ企業の創出支援等TLOの機能を強化することが重要であり,そのためにも,技術移転に向けた大学等の各機関の主体的取組を促進するための支援等を行うことが必要である。


*バイ・ドール法:

Bayh-Dole University and Small Business Patent Act(1980)連邦政府からのグラントを受けて研究を行った中小企業,大学,非営利研究機関に対して,その研究によって得られた知的財産権を付与することとした。また大学に対して民間部門へのライセンス付与を奨励するとともに,政府が所有・運営する研究所に対して,自らが特許権を有する技術の排他的ライセンスを最高5年間にわたって民間企業に与える権限を付与。

(大学等の研究成果を基とした スピンオフ企業* 数)

 大学等の技術移転を端的に示すものとして,大学等の研究成果を基に設立された企業の数について OECD* により取りまとめられた資料を見ると,波はあるものの全体として増加傾向で推移していることがわかる( 第1-2-40図 )。中でも米国についてみれば1980年から1998年までの期間で1995件の創業があり,特に最近5年間では年平均281件の創業件数となっており,大学における産業に密接した研究を基に相当数の創業が行われていることが分かる( 第1-2-41表 )。これについて,我が国のデータは示されていないが,その相違は大きいものと考えられる。

第1-2-40図 各国のスピンオフ企業設立のトレンド

第1-2-41表 各国のスピンオフ企業の設立状況


*スピンオフ企業:

スピンオフ企業(Spin-offs)とは,以下のとおり定義される。

{1}公的研究機関の従業員(教授やポスドク等を含む)により設立された企業

{2}公的機関の技術を基に設立された企業

{3}公的研究機関の投資により設立又は公的研究機関が直接設立した企業

(出典:OECD Science, Technology and Industry Outlook2000)


*OECDの資料では日本のデータは示されていないが,平成13年3月に筑波大学先端学際領域研究センターがまとめた「大学等発ベンチャーの現状と課題に関する調査研究」によれば,我が国における1999年(平成11年)中に設立された大学等発のベンチャー企業数は26社とされている。


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