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第1部   我が国の科学技術の創造力
第2章  我が国の科学技術システムの現状と課題
第1節  科学技術人材
6.  研究者の流動性の向上


(流動環境に対する研究者の意識)

 外国人の採用に限らず,研究者,特に若手の研究者に対して,任期を付して採用し,流動的な研究環境を創出することは,重要であり,このような制度が一般に定着している米国においては研究開発活動を活性化させるのに大きな役割を果たしていると言われている。我が国の第2期科学技術基本計画においても,競争的環境で研究者が活動できるように,任期付任用制度の定着に努めることや普及することが必要とされている。

 研究者に対するアンケート調査においても研究者の流動化は「異分野の研究者との交流の拡大」,「研究の効率化」,「独立的・自立的研究の遂行」などに効果があると回答している( 第1-2-15図 )。また,研究者の流動の推進が必要であるかどうかの設問では,全体の約3分の2が必要と回答している。一方,流動化の推進のために必要な施策としては,「公正な評価と評価に応じた処遇の実施」等が挙げられており,評価制度の整備及び適切な処遇が不可欠となってきている( 第1-2-16図 )。

第1-2-15図 研究者の流動化が与える影響

第1-2-16図 研究者の流動化推進に必要な施策

(研究者の流動状況)

  第1-2-17図 は,大学院等を卒業後の研究者の経験機関数を年代別に示したものである。若手研究者層の流動経験については,40歳未満までを対象とした場合,年齢とともに経験機関数も増加している。これは,流動環境が整備されるに従い,若手研究者を対象とした流動先が確保されつつある状況を示しているものと思われる。40歳以上60歳未満の研究者層になると,流動状況は活発でなくなり,経験機関数はほぼ一定の割合で推移する。60歳以上の研究者については,所属する研究機関を退職し,他の研究機関に再雇用されることによって経験機関数が加算されていることによると思われる。

第1-2-17図 研究者の年代別経験機関数

(ポストドクター)

 研究者の流動を活発化するためには,若手研究者,特にポストドクター等の支援が重要である。第1期科学技術基本計画において提唱された「ポストドクター等1万人支援計画」に基づき,1万人規模のポストドクター等を支援するため,関係省庁において各種支援制度が充実されてきた。ポストドクター等を支援する制度には,フェローシップ制度や若手研究者を積極的に活用して基礎的研究を推進する制度などがあるが,平成9年度には,国立試験研究機関の研究者の流動性を確保することを目的とした流動促進研究制度(科学技術振興調整費)や国立大学等において民間の研究機関等から優秀な人材を確保する観点から,国立学校特別会計において教育研究活性化促進経費が創設されている。

 今後,これらの制度が整備されるに従い,若手研究者の流動性はより一層活性化されるものと考えられる。

 一方,米国では我が国と比べ流動環境が整備されているため,ポストドクターの流動状況は活発である。 第1-2-18図 は,1993年及び1995年にポストドクターであった者が,それぞれ2年後にどのような状態にあるかを調べた結果である。米国のポストドクターが,大学における研究者となることを目標としているのかどうかは明らかではないが,2年後にポストドクターとして引き続き活動している者の割合は減少し,ポストドクターであった者が,テニュア・トラック(助教授クラスに相当し,最終的な終身雇用の前の段階)に移行できる割合は増加している。

第1-2-18図 1993年及び1995年にポストドクターであった者の2年後の状況

 しかし,1995年のポストドクターが1997年にテニュア・トラックに移行できた割合は全体の16.5%であり,4年制大学等に残留することは,厳しい状況となっている。その一方で,営利団体や公的機関に移動する割合も高く,米国においては大学の研究者以外にも様々なキャリア・パスが,各研究者の資質や志向に応じて用意されているということができよう。今後,我が国においても,ポストドクターの拡充・流動に伴って,多様なキャリア・パスの確保と受入れ機関等の整備が不可欠となるであろう。

(キャリア・パス)

 若手研究者は任期を付して雇用し,その間の業績を評価して任期を付さない職を与える米国等におけるテニュア制は,米国等での研究開発環境の活性化の源と言われる。我が国の第2期科学技術基本計画においては,「我が国も,将来に向けて,このような活躍できる研究開発環境を指向し,30代半ば程度までは広く任期を付して雇用し,競争的な研究開発環境の中で研究者として活動できるよう,任期制の広範な定着に努める。また,研究者がその資質・能力に応じた職を得られるよう,公募の普及や産学官間の人材交流の促進等を図る。」とされている。研究者が多様な経験を積むとともに,研究者の流動性を高めるため,産学官の交流や国際交流を重視しなければならないが,その際,適性に応じて,研究開発のみならず,産業界等幅広い分野で職業を得,そこで活躍できるような多様なキャリア・パスを確保するため,研究開発の企画・管理等のマネージメント,研究開発指標,知的財産権等研究開発に関係する幅広い業務に携わることが重要である。若手研究者が将来の可能性を幅広く選択できるよう行政機関等でも採用の機会を拡大するとともに,民間においても,博士課程修了者やポストドクター経験者等の能力のある若手研究者の採用に積極的に取り組むことが期待されている。


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