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第1部   我が国の科学技術の創造力
第2章  我が国の科学技術システムの現状と課題
第1節  科学技術人材
3.  博士号取得者の雇用と研究者の資質の向上


 研究開発の高度化やグローバル化に対応して,博士課程修了者の役割は大きくなるものと考えられるが,文部科学省が資本金10億円以上の民間企業に対して継続的に行っている「民間企業の研究活動に関する調査」の平成10年度結果によると,企業側が博士課程修了者を採用しない理由として,博士課程修了者やポストドクターは「専門分野ではない問題への柔軟な対応力の欠如」が特に指摘されており,さらに「基礎研究や学術研究活動に偏重する傾向」が高いとされている( 第1-2-7図 )。

第1-2-7図 博士課程修了者,ポストドクターを採用する際のマイナス要因

 一方,平成12年度の同調査で,実際に過去3年間に博士課程修了者やポストドクターの採用経験のある民間企業に行った設問では,専門知識,独創的な発想,研究の動向に関する知識,人脈などが研究現場を活性化させたという,プラス面での回答が上位を占めており,実際に採用した企業からは高い評価を受けている( 第1-2-8図 )。

第1-2-8図 博士課程修了者,ポストドクターの評価(過去3年間に採用経験のある企業からの回答)

 科学技術庁科学技術政策研究所「研究開発関連政策が及ぼす経済効果の定量的評価手法に関する調査」(平成11年3月)によると,ある製品について,研究を基礎段階からスタートさせた場合は,開発研究のみを行った場合と比較して,長期間にわたって利益が得られるとしており,その差は平均2年間に及ぶとしている( 第1-2-9図 )。また, 第5節2. でみるように「サイエンス・リンケージ」は近年急激に高まっており,特許の出願にも,論文の対象となるような分野がますます重要になってきている。

第1-2-9図 研究開発段階別の製品の収益期間

 このように,実用化に向けた目的の明確な基礎研究も含め,基礎から製品開発まで幅広い視野をもった研究が重要となっており,このような視点を持ち,かつ高度で学際的な知識を有したポストドクターや博士課程修了者などの役割がますます重要になってくるものと考えられる。さらに,産学官の間の協力体制を発展的に推進していくことも,今後は不可欠になると考えられる。

 民間企業における研究活動においても,製品開発を見据えた基礎研究も含め,様々なタイプの研究を総合的に視野に入れることにより企業の研究開発能力の向上につながるものと考えられる。

 また,研究人材の不足を解消するために,民間企業では研究開発のアウトソーシングを行うとともに,研究者の資質向上の一環として,若い研究者に別の専門分野を学ばせて専門家として育てるなどの対策を行っている。

 特に,"T型人間からπ型人間へ"といったキャッチ・フレーズのもと,複数の専門分野を持つことを研究者に奨励している企業も多い。ここでTやπの―(横棒)は幅広い知識を表し,|(縦棒)は深く掘り下げた知識を示している。したがってT型人間は一つの専門分野を持った研究者,π型人間は2つの専門分野を持った研究者を意味している。

 民間企業において研究者に別の専門分野を学ばせることに関連して,平成11年度の「民間企業の研究活動に関する調査」でも,研究者の資質を高めるための有効な方策として「研究者同士の交流,研究者の流動化」をトップに挙げており,様々な分野を知ることが研究者の資質を高める最善の策であるということが,広く認識されているものと考えられる。


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