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第1部   我が国の科学技術の創造力
第1章  我が国の科学技術の成果と水準
第3節  総合的な水準


 科学技術活動は,社会の理解と合意を前提に資源が投入され,人材養成及び基盤整備がなされ,研究開発活動が行われ,その成果が還元されるというシステムから成り立っている。したがって,科学技術を創造する力は,論文や特許などの研究成果に加え,長期的に成果を生み出すための基盤である人材,資金などのインプットから技術輸出やハイテク製品生産額などのアウトプットに至る多数の指標で表されることになる。

 このような多数の指標を集約・合成して,国の科学技術の水準を総合的に示す指標として文部科学省科学技術政策研究所は, 科学技術総合指標* を開発している。これによれば,主要5か国の科学技術総合指標のうち,米国の値が最も大きく,また基本的に増加している。次いで我が国が米国の約半分程度であり,ドイツがそれに続き,フランスとイギリスはほぼ同水準にある。我が国の値は,1980年代の後半に順調に増加した後,1990年代前半は停滞し,1990年代後半に再び増加の傾向にある( 第1-1-7図 )。

第1-1-7図 主要国の科学技術総合指標の推移

 主要5か国の科学技術総合指標の値は,人口やGDPで表される国の大きさをほぼ反映しているが,各国の規模の相違を考慮して科学技術活動を比較するために,GDP当たりの科学技術総合指標の値を見ると,日本は主要5か国の中間に位置し,また横ばいに推移している。1990年代にはイギリスの値が大きく増加しており,米国,フランスも増加傾向にある( 第1-1-8図 )。

第1-1-8図 主要国のGDP当たり科学技術総合指標の推移

 同様の比較を行ったものとして,スイスの非営利団体である国際経営開発研究所( IMD* )は毎年,「世界競争力年鑑」において,それぞれの国において企業の活動を支援する環境がどの程度整っているかの観点から,調査,評価を行い,それを各国の競争力として順位を発表している。「世界競争力年鑑2000」は,国内経済,国際化,政府,金融,社会資本,経営,科学技術,人材の8分野290項目の調査,評価を行っている。これによると日本の競争力の総合評価は1996年の4位から2000年には47か国・地域中17位と,1990年代後半に低下したとされているが,科学技術の分野に関しては,1996年から2000年まで,米国に次いで2位と高く評価されている。


*科学技術総合指標:

科学技術政策研究所において,米国,日本,ドイツ,イギリス,フランスの5か国を対象にして,毎年の理学士・工学士の取得者数,研究者数,研究開発費,技術の輸出・入額,論文数・論文被引用回数,国内・国外特許出願件数,工業製品付加価値額・ハイテク製品付加価値額の12種類の指標から,各国の科学技術活動の水準を主成分分析法(ある対象がいくつかの変量によって表されているとき,その総合的特性を少数個の新たな変数によって要約して表現する方法)によって経年的に求めている


*IMD:

International Institute for Management Development

(科学技術の水準の内訳)

 科学技術政策研究所による「科学技術総合指標」を構成している12種類の各要素を分解し,その寄与度を分析してみると,米国は国外特許件数,技術輸出額,論文被引用回数の寄与度が比較的高い。我が国は,工学士数の寄与度が最も高く,研究者数,工業製品付加価値額,ハイテク製品付加価値額がそれに続く。論文被引用回数については,他の4か国に比べて寄与度が低い( 第1-1-9図 )。

第1-1-9図 科学技術総合指標に対する要素別寄与度

 このように,我が国の科学技術の水準は全体として非常に高い位置にあるが,それには主に研究人材,研究開発費など研究開発活動のインプット(入力)面における量的な面が貢献している。一方で,研究開発活動のアウトプット(出力)面で見ると,論文数,特許件数ともに高水準にあるものの,論文被引用回数や,国外特許件数,技術輸出額など対外的な影響力については必ずしも高水準であるとは言えない。

 我が国の場合,研究費における民間部門による貢献が大きいことや,研究者数が多めに計測されている(第2部参照)ことなどからインプットの貢献度が高くなる傾向はあるが,質的及び内容面での水準について,その向上に向けた取組が必要であることには変わりがない。

 IMDの「世界競争力年鑑2000」では科学技術分野について5領域26項目の指標を用いている。我が国はやはり研究開発資金,研究人材,知的財産権の領域では1位又は2位と非常に高い競争力が認められる。しかし,主として当該国における意識調査に基づく比較であるが,研究人材領域のうち情報技術者の確保の項目については34位,科学環境領域は23位(うち若者と科学技術の項目は39位),技術マネジメント領域は19位(うち産学連携の項目は25位)となっている。

 このように,今後,我が国は研究成果の質的貢献の面の努力や,研究環境の改善,重要分野への重点投資や競争的資金の充実などによる水準の向上に向けた取組が求められる。


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