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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第3章  研究活動の推進
第2節  重要研究開発分野の推進
2.  人類の共存のための科学技術


 人間活動の拡大に伴い,地球環境問題その他の地球の有限性に起因する問題が顕在化している。これらの問題を解決し,地球と調和しつつ,人類が共存し得る新たな手段を提供するため,平成4年4月に閣議決定された科学技術政策大綱において,「地球・自然環境の保全」,「エネルギーの開発及び利用」,「資源の開発及びリサイクル」,「食料等の持続的生産」の各分野を,人類の共存のための科学技術と位置付け,その積極的な振興を図っている。


(1) 地球・自然環境の保全

 近年,地球温暖化などの地球的規模での環境問題が顕在化しつつあり,国際的に協力してこれらの問題の解決を図っていくことが強く求められている。また,潤いのある生活環境を整備するため,地域において公害を防止するとともに自然環境を保全していくことが重要である。このため,地球的規模の環境問題への対応,公害の防止,自然環境の保全のための研究開発を推進していくことが必要である。

{1}地球環境保全にかかわる法制面の整備等

 我が国としては,地球規模で深刻な影響を与える環境問題に対応するための施策に関し,関係行政機関の緊密な連絡を確保し,その効果的かつ総合的な推進を図るため,「地球環境保全に関する関係閣僚会議」を設置し,地球環境問題に積極的に取り組んでいる。

 平成元年10月に開催された「地球環境保全に関する関係閣僚会議」(平成元年5月設置,平成5年8月廃止,平成5年12月閣議了解により再設置)において,「地球環境保全に関する調査研究,観測・監視及び技術開発の総合的推進について」の申合せが行われ,この申合せに基づき,以降毎年度,同会議において「地球環境保全調査研究等総合推進計画」を策定している。また,平成2年10月に開催された同会議において二酸化炭素排出量等の温室効果ガスの排出抑制目標等を定めた「地球温暖化防止行動計画」が決定された。

 平成5年11月,地球化時代に対応し,今日の環境問題に対し適切な対策を講じていくために「環境基本法」が公布,施行された。同法においては,環境の保全に関する科学技術の振興を図ること及びそのための試験研究の体制の整備,研究開発の推進及びその成果の普及,研究者の養成等の措置を講じること及び地球環境保全等に関する監視,観測等に国際的連携の確保等が定められている。また,平成6年12月,同法に基づき環境保全に関する総合的・長期的な施策の大綱等を定める政府全体の計画である環境基本計画が閣議決定された。本計画では,環境への負荷の少ない循環を基調とする経済社会システムの実現,自然と人間との共生,あらゆる人々の環境保全の行動への参加,国際的取組を長期的な目標として掲げ,その実現のための施策の大綱等を定めている。調査研究,監視・観測等の充実,適正な技術の振興等については1節を設け定めている。特に地球環境問題の解決に向け,十分な科学的知見の蓄積による解明の推進が必要であるとしている。

 また,環境基本法の制定を契機に,平成9年6月に「環境影響評価法」が成立した。同法には,規模が大きく,環境影響が著しいものとなるおそれのある事業について,その実施前に事業者自らがその環境影響を調査・予測・評価することを通じ,環境保全対策を検討するなど,その事業を環境保全上より望ましいものとしていくための具体的な手続き等が規定されている。

 また,地球温暖化対策に関し,国,地方公共団体,事業者及び国民の責務を明らかにすること等が盛り込まれた「地球温暖化対策の推進に関する法律」が平成11年4月より施行されている。

 その他,南極の環境保護を図るため,原則として南極でのすべての活動に対し,事前に環境への影響を検討することを義務付ける等の「環境保護に関する南極条約議定書」が平成3年に採択され,同10年1月に発効した。同時にその国内担保法である「南極地域の環境保護に関する法律」も施行されている。

{2}地球環境保全にかかわる国際的取組等

 近年における国際的な地球環境問題についての取組としては,1992年(平成4年)6月に,ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された国連環境開発会議(UNCED:地球サミット)が挙げられる。同会議においては,21世紀に向けての国家と個人の行動原則である「環境と開発に関するリオ宣言」,同宣言の諸原則を実行するための行動計画である「アジェンダ21」等の採択,気候変動に関する国際連合枠組条約等への多数国による署名等多くの成果が得られた。

 我が国は,アジェンダ21を踏まえ,1993年(平成5年)12月,地球環境保全に関する関係閣僚会議において「『アジェンダ21』行動計画」を決定した。また,1997年(平成9年)6月には国連環境特別総会が開催され,「アジェンダ21さらなる実施プログラム」について採択され,これらの計画等が着実に実施されるようフォローアップを行う場として,毎年,国連持続可能な開発委員会(CSD)が開催されている。

ア.気候変動枠組条約にかかわる取組

 1994年(平成6年)3月に発効した気候変動枠組条約に基づき,同年9月に日本国報告書を,1997年(平成9年)12月には第2回日本国報告書を条約事務局に提出した。

 条約上の明確な規定のなかった2000年(平成12年)以降の取組について,1997年(平成9年)12月に京都において開催された第3回締約国会議において,「京都議定書」が採択された。本議定書において,削減の対象とすべき温室効果ガスの種類(二酸化炭素,メタン,一酸化二窒素及び代替フロン等3種の合計6種),吸収源の扱い,削減の数量目標(先進国及び市場経済移行国全体の対1990年比-5.2%),主要各国の削減率(日本:-6%,米国:-7%,EU:-8%等),削減目標期間(2008年〜2012年の5年間),削減目標の達成のための新たなメカニズム(「京都メカニズム」共同実施,排出量取引,クリーン開発メカニズム),議定書の発効要件等が規定された。

 京都議定書の着実な実施に向けて,地球温暖化防止のための具体的で実効のある対策を総合的に推進するため,1997年(平成9年)12月の閣議決定により,内閣に地球温暖化対策推進本部が設置され,同推進本部は,平成10年6月に「地球温暖化対策推進大綱-2010年に向けた地球温暖化対策について-」を策定した。同大綱には,1.地球温暖化対策の総合的推進,2.エネルギー需給両面の対策を中心としたCO2排出削減対策の推進,3.その他の温室効果ガスの排出抑制対策の推進,4.植林等のCO2吸収源対策の推進,5.革新的な環境・エネルギー技術の研究開発の強化,6.地球観測体制等の強化,7.国際協力の推進とともに,ライフスタイルの見直しに関する施策が盛り込まれている。

 また,1999年(平成11年)11月には,「気候変動枠組条約第5回締約国会議(COP5)」がボンで開催され,COP6(2000年11月に開催予定)で京都メカニズム等の主要論点について合意することを目標とした「ブエノスアイレス行動計画」の実施が閣僚レベルで再確認された。閣僚級会合をはじめとしたあらゆる機会に,我が国をはじめ多くの国が交渉の進展の重要性,特に2002年までの議定書発効の必要性を強く訴え,COP6に向けた政治的弾みの維持・強化が図られた。

イ.その他

 学術審議会は平成7年4月「地球環境科学の推進について」を建議し,同建議では地球環境に関連する幅広い分野の科学における研究を推進するとともに,地球環境問題の解決を目指し,総合的なプロジェクト研究を推進する中核的研究機関の設置について検討することを提言している。これを受け,文部省では,新たな研究機関の創設に向けた検討を重ね,平成12年4月に総合地球環境学研究所(仮称)創設調査室を設置した。

{3}地球環境保全にかかわるその他の取組等

ア.生物多様性にかかわる取組

 人類は,地球生態系の一員として他の生物と共存している。その一方で,人間活動による生物の生息環境の悪化等を背景として,野生生物の種の絶滅が過去にない速度で進行している。このような状況の下,地球上の多様な生物をその生息環境と共に保全し,生物資源の持続可能な利用を行うことを目的とした「生物の多様性に関する条約」を受けて,関係省庁を中心として,生物の多様性の保全と持続可能な利用を図るための施策を講ずる等,積極的な取組がなされている。なお,同条約に基づき,我が国における生物の多様性の保全とその持続可能な利用という観点から各種施策を体系的に取りまとめた「生物多様性国家戦略」(地球環境保全に関する関係閣僚会議決定)においては,生物多様性に関する情報の的確な把握と研究の充実が必要とされている。

 さらに,環境中で人を含む高等動物から微生物までの多様な生物が変動しつつ共存する秩序の本質を解明する包括的な研究も必要となっている。農林水産省では持続的農業推進のための環境負荷低減に関する技術開発,植物の環境ストレス耐性機構の解明,農耕地,森林等における物質循環機能の解明,森林・農耕地等の気候緩和機能や水質浄化機能等の解明などに関する研究等が進められている。

イ.公害防止にかかわる取組

 公害の防止については,「公害の防止等に関する試験研究の重点的強化を図る必要がある事項について」(毎年度環境庁)等が策定され,研究開発が重点的に推進されている。特に,近年,ダイオキシン,内分泌かく乱物質(環境ホルモン)等化学物質の環境リスク対策に資するための研究に関心が集まってきている。それらの,試験法・測定法の開発等,現在,関係省庁を中心に積極的な調査,研究開発が行われている。

 平成11年度に実施された主な地球・自然環境の保全に関する保全技術の研究課題をまとめると 第3-3-11表 のとおりである。

第3-3-11表 地球・自然環境の保全に関する保全技術の主な研究課題



(2) エネルギーの開発及び利用

 エネルギー研究開発は,広範な分野を対象とし,長期にわたり膨大な研究開発のための資金及び人材を必要とするため,研究開発全般を計画的・重点的・効率的に推進することが重要である。このため,政府が中心となって推進するエネルギー研究開発について,昭和53年8月に「エネルギー研究開発基本計画」が定められ,その後,エネルギーを巡る情勢の変化を踏まえて数度の改定を行い,現在は,平成7年7月に決定された,「エネルギー研究開発基本計画」によって,おおむね10年間に推進すべき,重要研究開発課題等が提示されている。

{1}原子力の研究,開発及び利用の推進

 平成11年9月に株式会社ジェー・シー・オーのウラン加工工場において臨界事故が発生し,この事故により,3人の作業員が重篤な放射線被ばくを受けたほか(うち2人死亡),作業員,防災業務関係者,周辺住民等多数の方々に被ばくが確認された。なお,3名の従業員以外の線量は,晩発性のがん等の確率的な影響の発生の可能性は極めて小さく,影響を検出できないと考えられるレベルと評価されている。今回の事故の教訓を踏まえ,原子炉等規制法の一部改正法及び原子力災害対策特別措置法が可決・成立したことを受け,国においては,安全規制及び防災対策の抜本的強化に取り組んでいる。また,周辺住民の方々に対する健康管理や風評対策等についても万全を期すこととしている。

 原子力発電は,エネルギー供給安定性の面のみならず,発電過程において二酸化炭素,窒素酸化物等を排出しないことから,地球環境保全の面でも優れており,我が国のエネルギー供給構造の脆弱性を克服するための主要なエネルギー源のひとつとして安全性の確保及び平和利用を前提としてこれまで着実にその研究開発利用が進められてきている。また,放射線利用についても,医療,農業,工業,環境保全など広範な分野で普及している。このように我が国の原子力研究開発利用は我々の生活に密着しており,エネルギーの安定確保と国民生活の質の向上に大いに貢献している。

 我が国の原子力の研究開発利用を,総合的かつ計画的に推進するため,原子力委員会は,「原子力の研究,開発及び利用に関する長期計画」(以下「原子力研究開発利用長期計画」という。)を策定している。現行の原子力研究開発利用長期計画の策定(平成6年6月)以来5年以上が経過し,この間に原子力を巡る情勢は大きく変化してきている。このため,原子力委員会は,平成11年5月より,21世紀を見通して,我が国がとるべき原子力研究開発利用の基本方針及び推進方策を明らかにするため,先の臨界事故も踏まえつつ,新たな原子力研究開発利用長期計画の策定のための審議を行っている。

ア.原子力発電の現状

 我が国の原子力発電所は,平成12年3月末現在,52基が運転中で,発電設備容量は4,508.2万kWであり,平成11年度推定実績で一般電気事業用の総発電電力量の34.2%(3,145億kWh)を賄っている。

 我が国で運転中の商業用原子力発電所の立地地点は,16サイト(51基)であり,今後,既存サイトの増設に加えて新規サイトの確保が重要であり,また,核燃料サイクル施設及びその関連施設の立地対策も重要な課題である。

 これら原子力施設の立地促進については,国,事業者及び地方公共団体による立地促進活動を引き続き実施していくとともに,立地円滑化の観点から地元と原子力施設が共生できるような地域振興などを進めている。

 現在の我が国の主流の原子炉である軽水炉については,政府,電気事業者,原子力機器メーカー等が協力して,自主技術による軽水炉の信頼性,稼働率の向上及び従業員の被ばく低減を目指し,技術開発を実施してきたところであるが,現在の軽水炉の技術水準に満足することなく,信頼性,安全性を確保しつつ経済性の向上を目指した軽水炉技術の高度化が進められている。

 原子力発電の燃料である濃縮ウランについては,核燃料サイクル全体の自主性を確保する観点から,経済性を考慮しつつ,国内でのウラン濃縮の事業化を推進している。青森県六ヶ所村においては,民間濃縮工場が1,050トンSWU/年の規模で操業中であり,最終的に1,500トンSWU/年の規模とする計画となっている。

 さらに,今後のウラン濃縮の経済性の向上のため,レーザー法ウラン濃縮技術等の開発を進めている。

イ.安全の確保

 原子力開発利用は,当初から安全性の確保を大前提にして行われてきており,他の産業分野には見られない国による厳しい安全規制をはじめ,環境放射能調査や,万一をも考慮した防災対策等各般の安全確保対策が講じられている。

 株式会社ジェー・シー・オーのウラン加工工場における臨界事故の教訓を踏まえ,安全規制については,第146回国会において可決・成立した原子炉等規制法の一部改正法により,{1}加工事業者に対する施設定期検査制度の追加,{2}事業者及び従業者が守らなければならない保安規定の遵守状況にかかる検査制度の創設,{3}原子力保安検査官の設置,{4}事業者による従業者に対する保安教育の義務の明確化,{5}従業者の安全確保改善提案制度の創設,が制度化された。

 さらに,原子力防災対策については,同じく第146回国会で可決・成立した原子力災害対策特別措置法により,{1}迅速な初期動作や国,都道府県及び市町村の有機的連携の確保,{2}原子力災害の特殊性に応じた国の緊急時対応体制の強化,{3}原子力事業者の防災対策上の責務の明確化などの法的枠組が整備され,情報通信システム,監視機器,緊急輸送手段といったハード面及び防災計画・マニュアルの整備,訓練の実施人材の育成といったソフト面の充実を図り,原子力防災対策の充実・強化を進めている。

 一方,原子炉等規制法の一部改正に伴う規制行政の体制強化とともに,原子力安全委員会の事務局機能の総理府本府への移管等により,その事務局機能の独立,強化のための作業を進めている。

原子力の安全確保に当たっては,安全規制等において常に最新の科学技術的知見を反映することが重要である。このため,原子力安全委員会は,安全研究年次計画を5年ごとに策定し,安全研究の総合的・計画的な推進を図っている。

 平成11年度には,現行の原子力施設等安全研究年次計画,環境放射能安全研究年次計画及び放射性廃棄物安全研究年次計画に沿って以下の安全研究が実施されるとともに,次期年次計画(平成13〜17年度)の策定が行われた。

 原子力施設等安全研究については,日本原子力研究所において,軽水炉に関する燃料の高燃焼度化,高経年化,シビアアクシデント,事故・故障の評価分析等の研究が実施されたほか,核燃料施設の臨界安全性の研究等が実施された。また,核燃料サイクル開発機構においては,高速増殖炉(FBR)の事故防止・緩和,事故評価,シビアアクシデント等の研究及び核燃料施設の臨界,遮へい,閉じ込め等の安全性の研究が実施された。さらに,国立試験研究機関においては各種の基礎的研究がそれぞれ実施された。

 環境放射能安全研究については,放射線医学総合研究所を中心に,日本原子力研究所,核燃料サイクル開発機構,国立試験研究機関等において,低レベル放射線の人体に及ぼす影響の研究,環境中に放出される放射性物質の挙動に関する研究等が実施された。

 放射性廃棄物の安全研究は,日本原子力研究所,核燃料サイクル開発機構等において,浅地中処分に関する安全研究,地層処分に関する安全研究並びに規制除外・規制免除及び再利用に関する安全研究が実施された。

 また,原子力施設の老朽化,安全性向上対策も重要な課題であり,核燃料サイクル開発機構をはじめ,日本原子力研究所,放射線医学総合研究所においても安全性についての総点検が行われた。これらの結果を受けて,安全上重要な機器の更新等が重点的に行われている。

ウ.国内外の理解の促進と情報の公開

 原子力研究開発利用の円滑な推進のためには,まず国及び原子力事業者に対する国民の信頼感・安心感を得ることが極めて重要である。

 このため,平和利用の前提の下,安全確保や核不拡散の実績を着実に積み重ねることが第一であるが,国民参加型の意見交換の場等を通じた国民の理解が得られる形での行政運営に努めるとともに,国民が判断する際の基礎となる情報を適時的確に提供するよう努めることとしている。情報公開については,核不拡散,核物質防護,外交交渉等に関する情報など慎重に取り扱わざるを得ないものを除き,原子力委員会及び原子力安全委員会の本会議及び専門部会等の会議を原則公開するとともに,情報公開請求に対しても原子力公開資料センター等において対応を行っている。

 さらに,従来より,インターネット等を活用した情報提供,勉強会への講師派遣等の「草の根」的な広報,簡易放射線測定器の貸出し等の体験型の広報など実効性のある事業の体系的な実施も行っている。

 また,核不拡散や原子力の安全確保に関する関心は国際的にも高く,我が国の原子力研究開発利用の円滑な推進にとって国際的な理解と信頼を得ることは重要である。そのため,我が国の原子力の平和利用や安全確保に関する情報などを積極的に広く海外に発信している。

エ.核燃料サイクルの技術開発

 エネルギー資源に恵まれない我が国は,将来を展望しながらウラン資源の有効利用を図っていくという観点及び放射性廃棄物の環境負荷を低減する観点から,使用済燃料を再処理し,回収されるプルトニウム等を再び燃料として使用する核燃料サイクルの実用化を目指して着実に研究を進めてきた。

 核燃料サイクルを進めるに当たっては,核不拡散についての国際的な疑念を生じないよう,核物質管理に厳重を期すことはもとより,我が国において計画遂行に必要な量以上のプルトニウム,すなわち余剰のプルトニウムを持たないとの原則を堅持しつつ,合理的かつ整合性のある計画の下でその透明性の確保に努めていくこととしている。具体的には,毎年の我が国のプルトニウム管理状況を公表するとともに,プルトニウム利用の透明性向上のための国際指針を採択している。

 原子力発電所から生じる使用済燃料の再処理については,これまで,核燃料サイクル開発機構の東海再処理施設並びに英国核燃料会社(BNFL社)及び仏国核燃料会社(COGEMA)への再処理委託契約により実施している。また,青森県六ヶ所村に民間再処理施設(年間再処理能力800トン)を2005年(平成17年)7月の竣工を目指し建設しており,その順調な建設,運転により商業規模での再処理技術の着実な定着を目指している。

 平成9年3月に発生した動燃東海再処理施設アスファルト固化処理施設の火災爆発事故については,科学技術庁の事故調査委員会において,事故原因等について検討を行い,同年12月に報告書が取りまとめられた。その後,報告書において指摘された教訓と提言等について具体的対応が進められ,その結果を平成11年2月に取りまとめ,原子力安全委員会に報告した。一方,原子力安全委員会においては,事故発生直後より,事故に関する調査審議等を独自の立場から積極的に実施するとともに,平成9年12月には,事故調査委員会の報告書を踏まえて,本事故と安全規制(安全審査,設計及び工事方法の認可等)との関係,事故の教訓等について原子力安全委員会としての考え方を委員会見解として取りまとめ,さらに,本報告を受け,調査審議を進め,本施設の安全性の確保に問題が無いものと判断する等の確認結果を平成11年5月に原子力安全委員会見解として取りまとめた。現在,計画停止中の東海再処理施設の運転再開に向けて,地元を始めとした国民の理解を得るため,科学技術庁においては,地方公共団体,議会関係者への説明等を行い,核燃料サイクル開発機構においては,地元理解促進のためのフォーラムの開催等を行っている。

 再処理によって回収されるプルトニウムを軽水炉においてウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料として利用すること(プルサーマル)については,既存の軽水炉への追加的な設備投資をほとんど伴うことなく貴重なエネルギー資源であるプルトニウムを利用できる方法であり,エネルギー資源の乏しい我が国がウラン資源の有効利用を図っていく上で重要な位置づけを持つものである。プルサーマルは,既に海外において多くの実績があり,我が国において実施された少数体規模での実証試験においても良好な成果が得られていること等から,特段の技術的問題はなく,また,実際のプルサーマルの実施に当たっては,厳格な安全審査が行われる。平成9年2月に公表された電気事業者の計画においては,海外再処理で回収されたプルトニウムを用い,平成22年頃までにすべての電気事業者において16〜18基程度の軽水炉で順次実施していくこととしている。なお,プルサーマルの実施に必要となるプルトニウムについては,基本的には,当初は海外再処理により回収されるプルトニウムをあて,その後,国内再処理工場で回収される予定のプルトニウムも用い,計画的にプルサーマル利用を進めていくこととしている。

 我が国電気事業者は,海外再処理で回収されるプルトニウムを用いたMOX燃料製造の一部を,英国核燃料会社(BNFL社)で行っているが,平成11年9月以降,BNFL社のMOX燃料製造にかかる検査データに不正が見つかった。通商産業省は,関係する電気事業者に対し,詳細な報告を求めるとともに,所要の措置を講じることとしている。

 我が国のMOX燃料加工の研究開発は,核燃料サイクル開発機構を中心として実施されており,その加工実績も平成11年12月末までの累積で約161トンMOXに達している。

 また,軽水炉用MOX燃料については,海外再処理で得られたプルトニウムを基本的に欧州でMOX燃料に加工して返還して利用するとともに,国内においても六ヶ所再処理工場の操業等に合わせ年間100トン弱程度の国内MOX燃料加工の事業化を図ることが必要であり,電気事業者が中心となって加工事業体制を早急に確定することとしている。

 高速増殖炉は,発電しながら消費した以上の核燃料を生成することができる原子炉であり,軽水炉などに比べてウラン資源の利用効率を飛躍的に高めることができることから,その開発を官民協力して着実に行ってきた。実験炉「常陽」は,昭和52年4月の初臨界以来運転を続けており,今後,照射性能を向上させ,引き続き燃料・材料開発等の開発のための高速中性子照射炉として活用していく。高速増殖炉原型炉「もんじゅ」については,平成7年12月,使用前検査中に発生した2次系ナトリウム漏えい事故に関し,現在,原子力安全委員会の下に「もんじゅ安全性確認ワーキンググループ」を設置し,ナトリウム漏えい事故を受けたもんじゅの安全性の確認に積極的に取り組んでいるところである。

 他方,「もんじゅ」の扱いを含む将来の高速増殖炉開発の在り方については,原子力委員会に設置された高速増殖炉懇談会が,平成9年12月に報告書「高速増殖炉研究開発の在り方」を取りまとめ,高速増殖炉を,将来の非化石エネルギー源のひとつの有力な選択肢として,その実用化の可能性を追求するために研究開発を進めることを妥当とし,「もんじゅ」をその研究開発の場のひとつとして位置付けた。同年12月,原子力委員会は,今後の高速増殖炉開発について,本報告書を尊重して進めていく旨を決定した。

 現在,「もんじゅ」の運転再開に向けて,地元を始めとした国民の理解を得るため,科学技術庁においては,地元説明討論会の開催等を行い,核燃料サイクル開発機構においては,関係市町村での説明会の実施,もんじゅ見学会の実施等を行っている。

 平成11年7月には核燃料サイクル開発機構を中心に電気事業者や国内研究開発機関等が結集し,高速増殖炉及びこれに関連する核燃料サイクルについて幅広い技術選択肢の評価を行い,革新的技術を取り入れ競争力のある実用化候補概念の構築等を行う実用化戦略調査研究を行っている。

 また,高速増殖炉の使用済燃料の再処理については,核燃料サイクル開発機構において,このための技術実証等を行うリサイクル機器試験施設の建設を進めている。さらに,経済性の向上や,環境への負荷の低減,核不拡散性等に配慮した先進的な核燃料リサイクル技術について,長期的な研究開発に取り組むこととしている。

 新型転換炉は,プルトニウム,回収ウラン等を柔軟かつ効率的に利用できるという特長を持つ原子炉として自主開発が進められてきたが,平成7年8月,原子力委員会において,青森県大間町における実証炉建設計画は中止が妥当との結論が得られ,実証炉に代わる計画として,全炉心にMOX燃料の利用を目指す改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)が適切であると判断された。新型転換炉原型炉「ふげん」については,「立地地元自治体等とも協議し,適切な過渡期間をおいて運転を停止し,廃炉研究に活用する」とした動燃改革検討委員会報告書を受け,地元とも調整した結果,運転期間を5年間とすることとなった。

 原子力委員会は,平成10年2月,運転期間の活用方策として,過去20年間の技術開発成果を含め,現在実施中のプルトニウム利用技術やプラント管理技術の研究開発成果の集大成を行うとともに,海外のニーズに応じ,圧力管型炉の運転管理技術の取得の場として活用していくことが適当とし,また,廃止措置技術の開発及びそれに必要な研究等を実施し,得られた成果については,効果的に技術移転を行っていく旨決定した。現在,核燃料サイクル開発機構においては,新型転換炉技術の集大成を図るべく成果の取りまとめを行っている。

オ.バックエンド対策

 放射性廃棄物の処理,処分及び原子力施設の廃止措置(バックエンド対策)は,整合性のある原子力開発利用の観点から残された最も重要な課題のひとつであり,原子力発電による便益を享受する現世代として,責任ある対応をしていくことが重要である。

 原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物については,平成4年12月より青森県六ケ所村の日本原燃(株)低レベル放射性廃棄物埋設センターにおいて埋設処分を安全かつ円滑に実施しており,平成11年12月末までに200リットルドラム缶約13万本が同センターに受け入れられている。

 一方,使用済燃料の再処理に伴い発生する高レベル放射性廃棄物については,安定な形態に固化し,30年から50年程度の間冷却のための貯蔵をした後,地下深い地層中に処分(地層処分)することを基本方針としている。処分の技術的側面については,平成9年4月,原子力バックエンド対策専門部会においてとりまとめられた「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について」に従い,核燃料サイクル開発機構を中核的推進機関として,日本原子力研究所,工業技術院の研究所,大学等の関係研究機関の密接な協力の下,研究開発が進められている。平成11年11月,核燃料サイクル開発機構は,地層処分の技術的信頼性を明示し,処分予定地選定及び安全基準の策定に資する技術的拠り所を提示する技術報告書「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ-」を原子力委員会へ提出した。現在,原子力委員会において本報告書の評価を行っているところである。また,今後の研究開発を進める上で,技術的,社会的に重要な施設として早期実現が望まれている深地層の研究施設については,核燃料サイクル開発機構が,岐阜県瑞浪市における超深地層研究所計画を着実に推進しており,さらに,北海道幌延町における深地層研究所(仮称)計画について,北海道及び幌延町に対して申入れを行っている。

 一方,社会的・経済的側面については,平成10年5月,高レベル放射性廃棄物処分懇談会がとりまとめた「高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的考え方について」の中で,実施主体の在り方,事業資金確保方策,処分地選定プロセス等について基本的な考え方が提言されている。当該報告書を踏まえ,処分費用の見積もりや処分事業の在り方については,総合エネルギー調査会原子力部会において検討が進められ,平成11年3月に中間報告がまとめられた。これを受け,平成12年3月に,処分実施主体の設立等を内容とする「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律案」を第147回国会に提出したところである。

 また,平成10年6月から,原子力安全委員会放射性廃棄物安全規制専門部会において,「高レベル放射性廃棄物の処分に係る安全規制の基本的考え方」に関する検討が進められているところである。

 今後とも,2000年(平成12年)目途の実施主体設立,2030年代から遅くとも2040年代半ばまでの操業開始に向けて,政府一体となって積極的に取り組んでいくこととしている。

原子力施設の廃止措置に関しては,日本原子力発電(株)の東海発電所が,商業用の原子炉としては初めて平成10年3月に営業運転を停止したことを受けて,国民の関心が高まっている。廃止措置にかかる技術開発については,日本原子力研究所の動力試験炉(JPDR)の解体実施試験(平成8年終了)により,解体に必要な技術等大きな成果を得ている。また,解体に伴い発生する放射性廃棄物について,JPDRの解体に伴い発生した極低レベルのコンクリート廃棄物を地中に埋設し,その安全性を実証する埋設実地試験が実施されている。

カ.核不拡散へ向けての国際的信頼の確立

 原子力平和利用を円滑に推進していくためには,国際的な核不拡散体制の維持・強化が極めて重要であり,核兵器の不拡散に関する条約(NPT)に基づき,核不拡散へ向けた国際的信頼の確立に努めることが不可欠である。我が国は,原子力基本法にのっとり,厳に平和の目的に限り原子力開発利用を推進しているところであり,従来から,国際原子力機関(IAEA)と締結した保障措置協定,核物質の防護に関する条約,米国をはじめとする各国との二国間原子力協力協定などに基づき,すべての核物質について平和利用を担保するための「保障措置」及び「核物質防護」を実施しているほか,これに必要な技術開発を進めるとともに,平成11年12月,IAEA保障措置の強化・効率化のための追加議定書を締結したところである。また,NPT上要求される義務に加えて,余剰プルトニウムを持たないとの原則を堅持しつつ,合理的かつ整合性のある計画の下でその透明性の確保に努めることが重要であり,我が国のプルトニウムの管理状況について公表しているほか,核燃料サイクル計画の透明性をより高めるための国際プルトニウム指針を採択している。さらに,核不拡散関連の技術開発を積極的に進め,先進的リサイクル技術の研究開発など,核不拡散にも配慮した研究開発に取り組んでいる。

 このほか,我が国は,平成9年7月,核兵器のない世界に向けた歴史的な一歩となる包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期批准を行っており,現在,同条約の発効に向けて国際監視制度の整備等に取り組んでいる。

キ.原子力科学技術の多様な展開と基礎的な研究の強化

 核融合は,将来の有力なエネルギー源のひとつとなる可能性を有していることから,国内外において積極的な取り組みが行われている。我が国の核融合の研究開発は,平成4年に原子力委員会が策定した「第三段階核融合研究開発基本計画」及び平成6年に原子力委員会が策定した「原子力の研究,開発及び利用に関する長期計画」に基づいて進められており,現在,日本原子力研究所の臨界プラズマ試験装置JT-60による臨界プラズマ条件の達成(平成8年10月)等の成果を踏まえ,次のステップとして実験炉の開発を行うことを主な目標としている。

 日本,EU及びロシアの3極により推進されている国際熱核融合実験炉(IETR)計画は,そのような実験炉の開発を目指した研究開発を国際協力の下で進めるものであり,我が国は日本原子力研究所を実施機関として,主体的かつ積極的に取り組んでいる。

また,IETRにかかる研究開発に加え,日本原子力研究所,大学,国立試験研究機関等においては,様々な形態・連携の下に核融合研究開発を行っており,二国間,多国間の国際協力も積極的に進められている。

 日本原子力研究所は,IETRに関しては,国際設計チームである共同中央チームと日本国内の設計チームの活動との連携・協力による設計活動やプラズマ閉じこめのための超伝導コイル,プラズマ加熱のために必要とされる負イオンビームや高周波発振器の開発等の工学R&Dに主体的に参画している。また,JT-60に関しては,新しい運転方式と新方式のダイバータ(プラズマ純化装置)等の知見により,プラズマの総合性能を表す指標であるエネルギー増倍率(外部からの加熱入力エネルギーと核融合反応により生じる出力エネルギーの比)の世界最高記録1.25を達成するなど世界に先駆けた成果を挙げており,更なるプラズマ閉じ込めの性能向上によるトカマク定常運転を目指した炉心プラズマ研究を行っている。さらに,中規模装置JFT-2Mを用いた先駆的な実験研究,理論・シミュレーション研究,核融合炉材料研究や核融合炉の安全性にかかる試験等を実施している。

 文部省核融合科学研究所においては,全国の研究者の交流,研究の場を提供するとともに,共同研究・共同利用を積極的に推進している。平成10年度から本格的な実験を開始した大型ヘリカル装置(LHD)に関しては,平成11年12月にはヘリカル方式としては世界最高性能の閉じ込めと最高水準の温度(5,000万度)を達成している。この他,大学・国立試験研究機関等においては,各種磁場閉じ込め方式及び慣性閉じ込め方式による基礎的研究,炉工学にかかる要素技術等の研究が進められている。

 各種分野における放射線利用の状況としては,医療分野において,X線CT等による診断やX線,ガンマ線等を利用したがん治療が既に実用化されており,現在,陽子線,重粒子線等によるがん治療の研究が行われている。特に,放射線医学総合研究所においては,がんに対する高い治療効果が期待される重粒子線によるがん治療の研究に取り組んでおり,平成6年6月より,患者に照射治療を行う臨床試行が開始され,おおむね良好な成果が得られている。大学においても,筑波大学陽子線医学利用研究センター等において陽子線等によるがん診断・治療の研究を行っている。農林水産業の分野では,品種改良,害虫防除,食品照射等に放射線が利用されている。

 工業分野では,非破壊検査,各種高分子材料の改質などに放射線が用いられている。研究利用では,日本原子力研究所のイオン照射研究施設において,バイオ技術や新機能材料等に関する研究が進められている。

 また,平成9年10月に,日本原子力研究所と理化学研究所が兵庫県播磨科学公園都市に建設した大型放射光施設(SPring-8)が供用を開始し,国内外の研究者による利用研究を推進した。

 理化学研究所においては,すべての核種についての放射性同位元素(RI)を世界最大強度,最高エネルギーでビーム化する次世代加速器施設「RIビームファクトリー」の建設を進めている。

また,日本原子力研究所と高エネルギー加速器研究機構が共同で大強度陽子加速器施設を整備する計画について,原子力委員会と学術審議会が合同で評価を行っている。

 日本原子力研究所では,高温工学試験研究炉(HTTR)の出力上昇試験を行い,高温熱供給など,エネルギー供給の多様化の可能性を探る高温ガス炉技術の確立,水素製造等の熱利用の研究開発等を推進している。

 さらに,日本原子力研究所,理化学研究所,大学,国立試験研究機関等において,炉物理・核物理,燃料・材料,放射線等に関する研究開発を幅広く行っている。特に日本原子力研究所においては,先端基礎研究センターにおける放射場科学等の先端基礎研究や,関西研究所(関西学術文化研究都市)において平成11年度に本格的な研究を開始したX線レーザー開発等の光量子科学研究等を中心に,原子力の新たな展開を図るための基礎研究の充実を図っている。また,基盤技術開発としては,放射線生物影響,ビーム利用,原子力用材料技術,ソフト系科学技術及び計算科学技術の計5技術領域について,日本原子力研究所,理化学研究所及び国立試験研究機関において研究開発を進めている。

ク.国際社会への主体的貢献

 原子力の国際協力に当たっては,原子力の開発利用や核不拡散の面で,各国共通の課題への取組を国際協力の下に進めていくとともに,開発途上国等からの期待に積極的に応えていくことが重要である。

 原子力委員会国際協力専門部会では,原子力開発利用を巡る国際協力の一層の推進を図るため検討を行い,平成10年9月に報告を取りまとめており,我が国としては,同報告を踏まえつつ,原子力の平和利用分野における国際的協力を積極的に推進している。

 近隣アジア地域との原子力協力については,平成2年より開催されてきたアジア地域原子力協力国際会議の下,研究炉,放射線の医学利用及び農業利用,PA,放射性廃棄物管理について協力事業を進めている。

 これらの協力については,国際協力専門部会の提言を受け,平成11年度より協力を推進するため,新たな協力活動として人材養成を加え各国国内システムを強化し,アジア原子力協力フォーラムとして活動することとしている。

 他方,旧ソ連,中・東欧諸国との原子力協力については,原子炉廃止措置に関する研究協力,原子炉運転支援システム構築に関する技術的協力,研修事業による運転員の資質向上等の二国間協力,IAEA(国際原子力機関)及びOECD/NEA(経済協力開発機構・原子力機関)への特別拠出金事業などを通じた多国間支援を実施している。ロシアの余剰兵器プルトニウム管理・処分に関しては,核燃料サイクル開発機構がロシアの物理エネルギー研究所や原子炉科学研究所と研究協力を実施している。

 そして,欧米との原子力協力については,原子力の平和利用のための専門家や情報の交換,原子力資機材や役務の受領,供給などの協力を行っており,具体的には,日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構と米国エネルギー省やフランス原子力庁との研究協力,理化学研究所と米国ブルックヘブン国立研究所やイギリス・ラザフォードアップルトン研究所との研究協力等を実施している。

{2}自然エネルギーの研究開発

 エネルギーの安定供給の確保及び地球環境問題への対応の観点から,太陽エネルギー,地熱エネルギー,風力エネルギー,海洋エネルギー,バイオマスエネルギー等の自然エネルギーの利用の拡大を目指した研究開発を推進することが必要である。このため,通商産業省におけるエネルギー・環境領域総合技術開発推進計画(ニューサンシャイン計画),農林水産省におけるバイオマスエネルギーへの取組をはじめ,海洋科学技術センター等で以下のような積極的な研究開発が進められている。

 太陽エネルギーは,枯渇することのないエネルギー源であり,地球環境問題への対応においても重要な役割を果たし得るものである。一方,エネルギー密度が低く,自然条件によって出力が変動するという性質も有しており,このような太陽エネルギーの特性を考慮しつつ,研究開発を進めることが必要である。太陽エネルギーの具体的な利用用途としては,太陽熱利用及び太陽光発電等が考えられ,既に民生用給湯システムについては,技術開発を終了し,一般家庭に普及している。このため,産業用ソーラーシステム等の技術開発を積極的に推進するとともに,太陽光発電については,太陽電池・システムの一層の低コスト化,高効率化等を目指した研究開発を進めている。

 地熱エネルギーは,資源量が豊富な純国産エネルギーであるとともに,非枯渇性であるという特徴を持っており,その利用の拡大に向けて研究開発を進めることが重要である。このため,地熱探査技術,掘削・採取技術,バイナリーサイクル発電の開発,高温岩体発電の要素技術の開発等を進めている。

 風力エネルギーは,環境負荷が少なく,潜在的に資源が広範に賦存するエネルギーである一方でエネルギー密度が低く,変動が大きいことなどから,その実用化のためには,コストの低減,長期安定運転の確保,システム化等を図ることが重要である。欧米においては,既に電力供給の一部を担うものとして導入・普及が進んでいる。我が国においては,集合型風力発電システム及び風力エネルギーの利用拡大の観点から重要となっている大型風力発電システムの研究開発を終了し離島用風力発電システム等の技術開発を進めている。

 海洋エネルギーは,エネルギー密度が低いことなどにより,現状では航路標識等による利用に止まっていることから,経済性と信頼性の向上に向けての研究開発を進めることが重要である。このため,沖合浮体式波力装置「マイティーホエール」等についての研究開発が進められている。

 バイオマスエネルギーは,主として太陽エネルギーを固定化する生物の機能を利用して得られる再生可能エネルギーであり,エネルギーの固定,変換,利用,再生という一連のエネルギー利用システムが確立されれば,大気中の二酸化炭素を増加させることはない。このようなシステムの確立のため,農林水産物等のバイオマス資源の有効活用システムの確立のための研究,二酸化炭素を高効率で固定する植物から炭化水素を製造する研究,微生物を利用して水素を製造する研究等が進められている。

{3}化石エネルギーの研究開発

 一般に,化石燃料といわれているものは,石炭,石油,天然ガス,オイルシェール及びオイルサンドで,炭化水素系の地下資源である。産業革命以降,この化石燃料を利用することによって,人類は現在の高度な文明を築き上げてきたが,一方で,資源の有限性,地球環境問題などの課題に対応することが必要となってきている。このため,地球環境への影響に配慮しつつ,世界的なエネルギー需要の増大の見通しに対応し,エネルギーの安定供給を確保する観点から,通商産業省において,化石エネルギーの高効率な利用技術等の研究開発を推進している。

 石炭は,石油などに比べ供給安定性に優れており,原子力と並ぶ石油代替エネルギーであるが,液体燃料と比較した場合,取扱いが不便な面があることなどから,石炭液化・ガス化技術等の研究開発が推進されている。これらの技術は,石炭の利用分野の多様化や利用の効率化を図り,石油に代替し得る燃料を製造する上での重要な技術であり,かつ,硫黄酸化物等の公害物質,粉塵等の排出の低減のためにも有効な技術である。

 また,石炭は化石エネルギーの中でも燃焼時の単位エネルギー当たりの二酸化炭素の排出量が多いことから,地球環境問題に対応しながら石炭利用の円滑な拡大を図るためには,二酸化炭素等の環境への負荷低減を図るための革新的な技術開発が必要である。このため,高効率石炭燃焼技術を中心とするクリーン・コール・テクノロジーの実用化開発及びより革新的な次世代クリーン・コール・テクノロジーの調査研究が推進されている。

 天然ガスは,他の化石エネルギーと比べて,燃焼時の単位エネルギー当たりの二酸化炭素の排出量が少ないなど,環境負荷が小さいといった特長を持っており,今後とも重要なエネルギー源として,その開発利用にかかる研究開発を進めることが重要である。このため,天然ガスの賦存状況の把握・採取に関する研究とともに,液体燃料等への形態変換により利用範囲の拡大を図ることを目指した天然ガスの液体燃料化等に関する研究が行われている。また,平成7年度からは非在来型天然ガス資源として,我が国周辺に賦存が見込まれているガスハイドレートについて,その探査・掘削・利用技術の研究開発を実施している。

{4}エネルギーの供給及び利用効率の向上のための研究開発

 地球環境問題への対応,有限なエネルギー資源の有効活用などの観点から,個々の機器,要素技術の効率の向上とともに,分散型システムの導入・活用・未利用エネルギーの活用など社会システム全体においてエネルギー供給及び利用の効率の向上等を図るための研究開発を推進することが重要となっている。また,各種製品の生産,利用,再利用,廃棄,各種サービス等で直接・間接に消費されるすべてのエネルギー(ライフサイクルエネルギー)の低減を視点とした研究開発を推進することが必要である。このため,通商産業省等において以下の研究開発を進めている。

 発電効率の高い燃料電池の研究開発,送電系統の安定化や効率の向上が期待される超電導線材・超電導発電機等の超電導電力応用に関する技術,産業部門・民生部門・輸送部門・農林水産部門等でのエネルギー利用における効率の向上を目指した研究開発といった各要素技術の研究開発が推進されている。

 また,工場や都市ビルから捨てられている廃熱,河川水等の未利用エネルギーの有効利用技術の研究開発,中小規模での電力の効率的貯蔵の可能な蓄電池である分散型電池による負荷平準化等のエネルギー貯蔵技術の研究開発が推進されている。

 さらに,高いエネルギー効率で,熱と電力を同時に供給できるコージェネレーションシステム,工場等の産業分野から排出される未利用の低温排熱を高効率で回収し,都市部に低損失で長距離輸送し,民生分野等の需要地で需要形態に応じて種々の温度を供給する広域エネルギー利用ネットワークシステム,水力・太陽光・地熱・風力等の再生可能エネルギーを利用して,水素を製造し,輸送に適した形に転換した後,輸送・貯蔵し,発電・輸送用燃料・都市ガス等の広範な分野で利用する水素利用国際クリーンエネルギーシステムなどの研究開発が進められている。

{5}基礎・基盤科学技術の推進

 エネルギー研究開発の飛躍的な進展を図るためには,独創的な基礎研究の成果によるブレークスルーに期するところが大きい。

 このため,科学技術庁,文部省,通商産業省等において,新材料の開発,生産・加工プロセスの研究開発,及び,プラント等の制御技術の高度化にかかわる研究開発を進めている。

 平成11年度に実施された主なエネルギーの開発及び利用に関する研究課題をまとめると 第3-3-12表 のとおりである。

第3-3-12表 エネルギーの開発及び利用に関する主な研究課題


(3) 資源の開発及びリサイクル

 鉱物資源等の天然資源の有効利用のため,資源の探査,採取・処理,資源量の評価に基づく管理システム等の研究開発を推進するとともに,資源のリサイクルを目指し,廃棄物の資源化,水資源の循環利用,リサイクルしやすい製品の生産等に関する研究開発を推進することが必要である。

 このため,通商産業省では,リサイクル技術の抜本的な促進を図るための研究開発として,{1}廃プラスチックの液化等の容器包装リサイクル関連技術,金属スクラップの高度リサイクル技術等のリサイクル能力の拡大のための技術開発,{2}高効率廃棄物発電,RDF(固形燃料化した廃棄物)の利用拡大等サーマル・リサイクル(廃棄物の焼却熱のエネルギー利用)関連技術開発,{3}都市ごみ焼却灰等のセメント原料としての利用技術開発,{4}廃家電製品,廃自動車等の適正処理・リサイクル技術開発をはじめとして,幅広い分野における廃棄物処理・リサイクル技術の開発を積極的に展開している。その他,有機資源の環境調和型リサイクルシステムを確立するための基礎技術として,再生可能分別不要型プラスチック原料の製造技術の研究開発が進められている。

 科学技術庁においては,波のエネルギーを吸収して,後背海域を静穏化して養殖漁業に利用したり,圧縮空気を作り出し海水が汚濁した湾内において曝気(エアレーション)を行うことにより海域を浄化するなどの特徴を持つ,沖合浮体式波力装置「マイティーホエール」の開発が進められている。

 厚生省においては,廃棄物の減量化を図り,リサイクルを推進する観点から,ごみの固形燃料化施設の標準化に関する調査やプラスチック油化処理実証事業を通じたリサイクルシステムの研究が進められている。また,水道水の安定供給を図るための膜処理等の高度浄水技術や発生汚泥のセメント原料等への利用技術の評価が行われている。

 また,農林水産省においては,環境保全対策及び有機性資源の有効利用を進めるため,家畜排せつ物中の未利用資源の高度回収・利用技術の確立,有機性廃棄物のリサイクル等に生態系の持つ機能を高度に利用した生態系調和型農業システムの開発,食品産業の製造工程全般について,環境への負荷を低減するための食品産業における生物活性利用等再資源化技術の開発,食品容器包装のリサイクル技術の開発が進められている。さらに,建設省においては,植物の維持管理により発生する剪定枝等のリサイクル技術の開発,運輸省においては,各種廃棄物を母材とした土質新材料の開発と港湾施設への適用に関する研究などが進められている。

 平成11年度に実施された主な資源の開発及びリサイクルに関する研究課題をまとめると 第3-3-13表 のとおりである。

第3-3-13表 資源の開発及びリサイクルに関する主な研究課題


(4) 食料等の持続的生産

 食料等の安定的確保は世界各国の共通した重要課題である。また,今後世界人口の増加等を背景として世界の食料需給は,中長期的にはひっ迫する可能性があると考えられる。このような観点から,育種・増殖技術の開発,農用地・林地,漁場等の生産力の増強と施設の開発,栽培・飼養管理技術の高度化,貯蔵・流通システムの合理化,遺伝子資源の収集と保存,未・低利用資源の用途開発等に係る研究開発を推進し,食料をはじめとする農林水産物の安定的・持続的な生産システムを構築していくことが必要である。

 このため,農林水産省においては,生産性向上の観点から,省力的な直播栽培技術の改良や高品質多収品種の育成等次世代の稲作技術の開発,省力化・軽作業化を可能とする形質等をもった果樹・野菜品種の開発,繁殖技術の飛躍的高度化を図る畜産技術の開発,新たな自給飼料給与技術の開発や高度な放牧システムの開発,資源の持続的利用と増養殖のための水産技術の開発,環境と調和した持続性の高い農業生産を推進するための革新的技術の開発等が進められており,高品質農林水産物の生産・流通加工の観点からは,麦・大豆等の実需者ニーズに対応した新用途・高品質開発,病原性大腸菌等の汚染に対する清浄化及び殺菌技術の開発,新しい機能を有する食品素材の開発等が進められている。さらに,これらに関連する基礎的研究開発として,イネ・ゲノムの高密度遺伝地図の作成・利用技術の開発,組換えDNA等の先端技術を活用した育種技術の開発,ルーメン共生微生物の機能や遺伝情報の解析等が進められている。また,先進国と共同で基礎的先導的研究を推進するとともに,開発途上国に対して,国際農林水産業研究センター(JIRCAS)を中心とした共同研究,国際協力事業団(JICA)を通じた研究者の派遣及び研修員の受入れ並びに国際農業研究協議グループ(CGIAR)傘下の国際研究機関に対する研究者の派遣等を行っている。

 平成11年度に実施された主な食料等の持続的生産に関する研究課題をまとめると 第3-3-14表 のとおりである。

第3-3-14表 食料等の持続的生産に関する主な研究課題


(5) 科学技術による世界の原子力平和利用や核不拡散・核軍縮への貢献

{1}包括的核実験禁止条約(CTBT)

 CTBTは,核不拡散・核軍縮の観点から,あらゆる場所における核爆発を禁止する条約である。我が国は,1996年(平成8年)9月にCTBTに署名し,1997年(平成9年)7月に世界で4番目に批准を行った。CTBTの発効には,本条約が指定する44ヶ国の批准が必要で,2000年(平成12年)4月現在,署名国155,批准国55であるが,我が国は,今後,本条約ができる限り多くの国々により署名・批准され,可能な限り早期に発効することを強く希望している。

 また,CTBTにおいては,核爆発の禁止という条約上の義務の実施を確保するための措置として,地震,放射性核種,水中音波及び微気圧振動に関する核爆発の国際的監視網(世界中で337ヵ所の監視施設からなる)を整備することになっている。これらは,現在まで世界中で蓄積されてきた,地震波,放射性核種,水中音波及び微気圧振動の測定技術や遠隔地間のデータ転送技術,そしてデータ解析技術を結集して,核爆発の監視網を構築する取組であり,人類の平和共存のために,科学技術が核不拡散・核軍縮に対して貢献するものであるといえる。我が国としても,これまで培った高度な技術や知見を利用して,地震学的監視のため気象庁の有する地震観測施設のうち6カ所のデータを提供するとともに,放射性核種監視施設を3カ所,微気圧振動監視施設を1カ所整備する予定である。

 具体的には,放射性核種監視施設とは,大気を常時モニタリングし,核爆発に伴い放出される放射性物質を監視する施設であり,我が国では,日本原子力研究所がこれを整備する予定である。地震学的監視施設とは,地震波を常時観測し,核爆発により発生する地震波を監視する施設で,これまでGSETT-3という国際的な地震データの交換の枠組みが関係国の協力により実施されてきたが,今後CTBTの下での国際・監視制度に組み込まれることとなっている。我が国では,気象庁の有する地震データを,CTBTの地震学的監視に活用する予定となっている。水中音波監視観測所とは,水中音波の観測により,主として水中における核爆発を監視する施設であり,我が国において整備される予定はない。微気圧振動監視観測所とは,大気中を伝わる微気圧振動(超低周波音)を常時測定し,核実験による微気圧振動を監視する施設であり,我が国においては,茨城県に整備予定である。さらに,CTBTに基づく,世界中の監視施設から集まるデータ処理や核爆発が実施されたか否かを明らかにする現地査察の運用についても,現在,国際的検討が行われており,我が国はこれらにも参画している。

 このように我が国は,CTBTが実際に機能するよう国内の国際監視制度施設の整備にかかる協力をはじめ,その運用に向けて積極的な貢献を行っていくこととしている。

{2}保障措置技術(微量核物質検出技術の開発)

 1991年(平成3年)のイラクにおける秘密裏の核開発計画の発覚等を契機として,未申告の核物質や原子力活動の探知能力向上の必要性が国際的に認識され,国際原子力機関(IAEA)の保障措置の強化・効率化計画「93+2計画」が取りまとめられた。この中で,原子力施設内外から採取した拭き取り試料,土壌,水,植物等の環境試料中に含まれる極めて微量(例えば10-15gのレベル)のウラン,プルトニウム等を高い精度で分析し,その同位体組成比等から施設の核物質の使用状況を確認する環境試料分析法が,未申告の核物質及び原子力活動の探知に有効とされ,IAEAは,米国,イギリス,欧州原子力共同体(ユーラトム)の分析所とネットワークを構築して,1996年(平成8年)から順次環境試料分析を開始している。

 環境試料分析では,極微量の核物質を対象とするため,試料に核物質等の混入を防ぎ,極めて清浄な状態において分析する高度な技術とそのための施設が必要となる。我が国でも自ら環境試料を分析・検証する能力を確立するとともに,欧米の分析所とともにIAEAのネットワーク分析所として国際的に貢献することを目指し,平成10年度から日本原子力研究所においてクリーン化学分析所を整備している。

{3}余剰兵器プルトニウムの管理・処分への協力

 冷戦の終了と旧ソ連の崩壊は,核不拡散・核軍縮の国際的諸情勢に,非常に大きな影響を与えた。米露の核軍縮交渉により,1994年(平成6年)にはSTARTI(戦略兵器削減条約)が発効し,また,STARTIIについては,今後の発効が期待される他,発効後のSTARTIIIの交渉開始・終了が見込まれている。

 この米露における核兵器の削減・解体に伴い,米露両国では,いわゆる余剰兵器プルトニウムの在庫が相当量生じる。このため,これら核物質が再度軍事目的に転用されないよう適切に管理・処分することが緊急の課題となっており,国際社会の大きな関心を集めている。

 これに関しては,1996年(平成8年)4月のモスクワ原子力安全サミットにおいて議論され,その結果,余剰兵器プルトニウムについては,{1}安全に管理され,核兵器に再利用不可能な形態に変えられ,安全かつ恒久的に処分されることが極めて重要である,{2}安全な管理の責任は各核兵器国が負うが,必要な場合には,他国や国際機関の支援を歓迎する,との国際的共通認識が確認された。

 我が国は,核不拡散・核軍縮への貢献のひとつとして,当事国である米露やその他関係国と緊密な連携を図りつつ,これまで我が国が培ってきた平和利用技術を活用して,余剰兵器プルトニウム処分への協力を行うこととしている。また,このような協力は,これまで我が国が推進してきた高速炉関連の研究開発により蓄積された技術的知見の維持・向上にも資すると考えられる。

 具体的には,核燃料サイクル開発機構において,{1}ロシアの高速炉BN-600の炉心をMOX化するための臨界実験装置(BFS)を用いた炉物理実験,{2}振動充填法により余剰プルトニウムから製造した燃料を用いた,ロシアのBN-600での照射試験,{3}CANDU炉での余剰プルトニウム燃焼にかかるデータを得るための「ふげん」の使用済燃料の照射後試験データの提供,を進めている。


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