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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第3章  研究活動の推進
第1節  基礎科学の振興


 新しい現象の発見,その現象を解明する独創的な理論の構築,各種の理論を用いた未知の現象の予測などを目指す基礎科学は,人類の知的なフロンティアを拡大し,次世代の科学技術に新たな発想や指針を与えるとともに,その成果は人類の知的共有財産として,それ自体優れた文化的価値を持つものである。

 経済力と科学技術力が向上し,国際的な地位が高まった我が国は,世界に対する独創的な研究成果の発信源となることを目標に,基礎科学の振興に積極的に取り組む必要がある。

 基礎科学の振興に当たっては,その研究が集団よりはむしろ個人の才能に依存することに配慮し,個々の研究者が自由な発想により,創造性豊かな研究を遂行できるように支援する必要がある。また,専門分野の異なる研究者が分野を越えて交流し,その中から新しい発想を生み出すことができるよう,分野横断的な研究も積極的に振興する必要がある。

 基礎科学の振興を図るための主な施策は,以下のとおりである。

 科学技術庁では,基礎研究の抜本的な強化を図るため,戦略的基礎研究推進事業を重点的に推進している。

 これは,科学技術振興事業団が研究テーマを公募し,国立試験研究機関,大学等と共同研究等を実施するもので,平成11年度は,戦略目標として科学技術庁が設定した「大きな可能性を秘めた未知領域への挑戦」,「分子レベルの新機能発現を通じた技術革新」,「脳機能の解明」,「環境にやさしい社会の実現」及び「資源循環・エネルギーミニマム型社会システムの構築」に基づき,科学技術振興事業団が研究領域を定め,重点的に基礎研究を推進した。

 また,同事業団において,柔軟な発想とチャレンジ精神を持った若手研究者が裁量権を持って研究できる体制を整備するため,若手研究者を対象に優れた研究提案を公募し,小規模な研究チームにより研究を推進する制度として,若手研究者研究推進制度を平成11年度に創設している。さらに,同事業団の個人研究推進事業(さきがけ研究21)において,独創的な発想を持つ優れた研究者個人の基礎的研究を積極的に推進するため,21世紀に向け,新しい科学技術の芽を生み出すと期待される領域について,広く国内の研究者を募り,その中から真に独創的な発想を持つ優れた研究者を厳選し,自由に研究を行わせる事業を実施している。

 加えて,同事業団の創造科学技術推進事業において,我が国独自の科学技術の芽を創出するため,卓越したプロジェクトリーダーの下に,産学官及び海外の優れた研究者を組織化して,創造的,基礎的研究を推進している。

 さらに,理化学研究所のフロンティア研究推進事業において,従来の研究組織体制を越えて多分野の研究者を結集し,国際的に開かれた体制により,21世紀の技術革新の根幹となるような,新たな知見の積極的な発掘を推進している。

 また,科学技術会議の方針に沿って科学技術の振興に必要な重要研究業務の総合推進調整を実施するための科学技術振興調整費については,その活用の基本方針として,先端的,基礎的研究の推進を掲げており,独創的な自主技術を総合的かつ積極的に開発していくため,革新的技術のシーズ探索等の研究を推進している。

 文部省では,科学技術振興の中核・基盤となる大学等における学術研究を推進している。大学等における学術研究は,人文・社会科学から自然科学までのあらゆる分野において,研究者の自由な発想と研究意欲を源泉として創造性豊かな新しい知見を生み出すことを本質としており,その中心的な担い手である大学等は,我が国の基礎科学の振興を図る上で極めて重要な役割を果たしている。大学等においては,そのシステム全体として研究活動と教育活動が一体不可分のものとして総合的に展開されており,文部省においては,これらの活動に必要な様々な経費の確保に努力してきている。また,基礎研究のうち,特に組織的,国際的に推進を図る必要がある分野,社会的要請が極めて高い分野,科学フロンティア拡大のために大型の施設設備を必要とする分野などについて,世界的な研究動向や我が国の現状を考慮しつつ,研究の積極的な推進を図るとともに,平成8年度から,日本学術振興会への政府の出資制度を設けて,我が国の未来の開拓につながる知的資産の形成が期待される学術研究を推進する「未来開拓学術研究推進事業」を実施している。学術研究を格段に発展させることを目的とした科学研究費補助金については,従来に引き続きさらに予算の拡充を図り,大学等における基礎的研究のうち,特に重要なものを取り上げ,研究費の助成を行っている。また,創造性豊かな世界の最先端の学術研究を推進する卓越した研究拠点(COE)を目指す研究機関や研究組織に対する支援等の施策を実施している。

 通商産業省では,平成5年度に開始した産業科学技術研究開発制度において,基礎的・独創的領域や公共・社会・福祉領域の研究開発を推進し,こうした研究開発により生まれる技術的ブレークスルー等を通じて,産業フロンティアの拡大を図っている。また,プロジェクト前段階の予備的・基礎的研究等を行う先導調査研究を実施している。

 平成8年度においては,新エネルギー・産業技術総合開発機構が行う,将来の産業技術のシーズとなることが期待される基礎的・独創的な研究開発を推進するため公募方式による新規産業創造型提案公募制度を実施した。

 さらに,農林水産省では,急速に進歩しているバイオテクノロジー研究の推進に当たって必要な次世代の技術展開を先導するシーズの培養を図るため,国内及び海外の大学の先端的な研究者の頭脳を結集することにより,将来この分野を先導する可能性の高い基礎的,学際的研究を実施している。また,平成8年度から,生物系特定産業技術研究推進機構に出資を行い,提案公募方式により生物機能の高度利用等を促進する基礎研究を強化するための共同研究等の施策を実施している。

 郵政省では,我が国の社会経済活動のあらゆる局面において情報通信技術が急速に浸透している現状に対応するとともに,将来の情報通信技術のシーズを生み出すためには,独創性のある研究開発を充実・強化することが重要であることから,平成11年度においては,通信・放送機構が,独創性・新規性に富む研究課題,地域ニーズに応じた研究課題,国際標準化を目的とした研究課題等を公募し,委託研究等を実施する「情報通信分野における基礎研究推進制度」を実施した。

 また,厚生省においては,平成8年度から,医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構において,公募方式により保健医療水準の向上に資する医薬品,医療機器等の開発に向けた基礎的研究を行う「保健医療分野における基礎研究推進事業」を実施している。

運輸省では,平成9年度から,運輸施設整備事業団に出資を行い,運輸分野における公募型基礎的研究推進制度を設けて,画期的な技術革新をもたらす可能性を有する新たな発想に立った新技術を創出するための独創性,革新性のある基礎的研究の推進を図っている。


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