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第2部   海外及び我が国の科学技術活動の状況
第3章  研究成果関連の動向
第1節  論文


 論文は研究開発,特に基礎研究の成果の現れのひとつといえる。論文については,研究者の常用している言語,執筆された言語等により,単純な比較はできないが,米国科学情報研究所(Institute for Scientific Information:ISI)の作成したデータベース (注10) を基に,発表数及び被引用回数の各国比較を行う。


(注10)ISIデータベースに収録されている論文誌数は約8,500誌。うち自然科学論文誌は約5,500誌,社会科学論文誌は約1,800誌,人文芸術学論文誌は約1,200誌である。

なお,ISIのデータベースにおける論文誌収録の選択基準は,{1}国際的に流布していること{2}規則的に刊行されていること{3}最低限,タイトル,アブストラクト,キーワードは英語で記されていること{4}ピアレビューの採用などや引用の完全実施など,質が十分保たれていること等とされている。

(主要国の論文数,被引用回数の動向)

 1981年(昭和56年)から1998年(平成10年)の間に世界の主要な科学論文誌に発表された論文のうち,我が国の論文数,引用回数のシェアは 第2-3-1図 に示すとおりである。我が国の論文数は,1981年(昭和56年)には約29,000件で,米国,イギリス,ドイツ (注6) に次いで世界第4位であったが,1988年(昭和63年)にはドイツを抜き世界第3位に,1989(平成元年)にはイギリスを抜いて世界第2位になり,以来,1998年(平成10年)では約73,000件で,世界第2位の地位を守り続けている。この間の論文数の伸び率は約2.5倍であり,主要国の中では最高の伸びを示している( 第2-3-1図 )。

第2-3-1図 主要国の論文数シェアと被引用回数シェアの推移

 また,優れた論文は,他の論文に引用される回数が多くなることから,論文が引用される回数は,その論文の質を表す指標の一つと考えることができる。

 被引用回数(引用される回数)については,全世界の論文が引用される回数のうち我が国の研究者が執筆した論文の引用される回数のシェアが,1981年(昭和56年)の論文では約5.5%であったものが,1998年(平成10年)の論文については,約8.7%のシェアとなっており,被引用回数でのシェアも着実に増加している。しかし,論文数のシェアに比べて低い水準となっている。

(主要国における論文の相対被引用度)

 1論文当たり引用される平均回数が,国際的な平均から見てどのような位置にあるかを示す数値(相対被引用度)は,国際的な平均を1とすると,1998年(平成10年)における我が国の論文全体では,0.84である。他の国は,米:1.48,英:1.36,加:1.21,独:1.19,仏:1.03と我が国を上回っている。また,1981年(昭和56年)以降,我が国や米国,イギリスでは,相対被引用度がほぼ横這いなのと対照的に,ドイツ,フランスでは大きく伸びてきているのが分かる( 第2-3-2図 )。さらに,我が国の相対被引用度を分野ごとに見ると,計算機科学の論文では0.38,ライフサイエンス系の論文では0.7〜0.8,物理,化学,農学,天文物理学,材料科学の論文では,0.9〜1となっている( 第2-3-3表 )。

第2-3-2図 主要国の論文の相対被引用度の推移

第2-3-3表 我が国の分野別相対被引用度

(主要国の分野別論文数の特徴)

 各主要国の論文数の研究分野ごとのシェアの1994年(平成6年)から1998年(平成10年)の平均を 第2-3-4図 に示す。

第2-3-4図 主要国の分野別論文数(1994〜1998年)


 まず特徴として挙げられるのは,いわゆるライフサイエンス分野といわれる医学,生物学,農学,動植物学などの研究分野の論文の割合が,特に米国,イギリスで高く,全体の6割を超えている。一方,日本,ドイツ,フランスにおいては,ライフサイエンス分野の論文は5割程度であり,物理,化学分野の占める割合が合わせて3割程度と高くなっている。

(我が国の分野別論文数の特徴)

 分野別の我が国の論文数のシェアについては,1994年(平成6年)から1998年(平成10年)の平均で,論文数の占める割合が,材料科学(15.1%),物理学(13.6%),薬理学(12.8%),化学(12.0%),農学(11.9%),生物学・生化学(10.9%),計算機科学(10.6%)の分野で全分野の平均(9.9%)より大きく,この分野での研究が相対的に盛んであるといえる( 第2-3-5図 )。

第2-3-5図 分野別の我が国の論文数のシェア

 また,分野別の論文生産の変化をみる指標として,相対比較優位という指標がある。これは,各国の論文数の分野別割合を,世界全体の分野別割合で除した値である。この値が1であれば,その分野に対する特化の程度が世界標準程度であることを意味する。 第2-3-6図 に,我が国の論文の相対比較優位の推移を示した。従来,世界の標準以上に論文数の多い化学分野や物理学/材料科学分野のうち,化学分野の値は大きく減少しているが,物理学/材料科学分野の値は長期的に見て横這い傾向にある。一方,臨床医学分野の値の伸びは著しいが,1998年時点でも世界標準の1に達していない。

第2-3-6図 分野別の我が国の論文の相対比較優位の推移

ネイチャー,サイエンス誌への掲載論文数は世界第4位

 英国ネイチャー誌,米国サイエンス誌はいずれも,論文が掲載されることの難しい,権威のある論文誌であり,掲載された論文は質の高い論文と認識されている。

 1995年(平成7年)から1999年(平成11年)までのネイチャー,サイエンス誌への日本からの掲載論文数は表のとおりである。ISIで収録している約5,500誌の自然科学論文誌全体では,わが国の論文数は89年以降98年まで世界第2位であるが,ネイチャー,サイエンス2誌に限定すると,我が国の順位は96年,97年を除き,世界第4位となる。1位は米国,2位イギリス,3位ドイツとなっており,米国は2位以下を大きく引き離している(表)。

 この傾向は,1998年(平成10年)のISI収録誌全体における被引用数のシェアの傾向に近い。すなわち両誌への掲載数は,その国の研究の質を色濃く反映しているものと考えられる。

表 英国ネイチャー誌,米国サイエンス誌掲載論文数ベスト10


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