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第2部   海外及び我が国の科学技術活動の状況


 先進主要国は,経済のグローバル化とそれに伴う世界経済の競争の激化,エネルギー,食料,地球環境問題等地球的規模の課題の重要性の高まりなどの中,競争力と雇用の確保,地球的規模の課題の解決などに向けた積極的な科学技術政策を展開している。

 我が国では,国内総生産(GDP)が前年割れするという厳しい経済状況の中であるにもかかわらず,積極的な科学技術活動を展開し,政府の研究開発投資の拡充と民間企業の研究開発投資への旺盛な意欲を反映して,研究開発投資全体は,平成10年度も増加した。これは,平成7年度から4年連続の増加である。我が国が今後とも,経済の安定的成長,国民生活の質の向上,さらには,地球規模の諸課題への対応を図っていくためには,厳しい財政事情等を踏まえつつ,研究開発活動をより一層強化,充実していかなければならないと考えられる。

 第2部では,研究費,研究人材など科学技術に関する指標による主要国と我が国の比較等を行うことにより,我が国の科学技術活動の特色を概観し,それを踏まえて我が国の研究活動の動向を述べることとする。 (注1)


(注1)本第2部では,主として自然科学の研究活動について述べており,人文・社会科学を含む場合はその旨注記している。人文・社会科学と自然科学の区分は,研究実施機関(大学の場合は学部)を単位として区分している。

(科学技術指標の国際比較に際して)

 統計データについての国際比較のためには,対象となる各国統計データが統一的な基準に基づいて測定されることが前提となる。経済協力開発機構(OECD)は,科学技術活動に関するデータの収集・分析のためのガイドラインとして,フラスカッティ・マニュアルを取りまとめており,加盟国は本マニュアルに基づいて科学技術指標を測定するよう求められている。

 フラスカッティ・マニュアルでは,研究者数の勘定方法については,頭数と,実際に研究業務に専従した時間割合を勘案した専従換算(FTE換算)値 (注2) の2種類のデータがあるとしながらも,後者が研究人材の本当の量的測定法であり,正確な国際比較のため,すべてのOECD加盟国が専従換算値を支持すべきとしている。

 我が国においては,総務庁統計局が平成4年に大学等の教員を対象にして実施した標本調査結果から推計した専従換算係数と,平成11年科学技術研究調査の大学等における研究者数,使用研究費から,専従換算値を試算しておりその結果は次のとおりである。なお,専従換算により頭数から変化するのは,特に教育活動にも従事している大学等の研究者数であり,これに伴って大学等における使用研究費が変化する。

 第2部では,最近の年度での研究者数及び研究費に係る国際比較の際には,頭数と専従換算値を並記する。


注2)専従換算(FTE換算)値

FTEとは,Full Time Equivalentの略であり,研究に従事している実働時間の換算値である。専従換算値は,1人・年として計算され,平均して勤務時間の30%を研究開発業務に費やし,残りを他の活動(例えば,教育,大学の管理及び学生のカウンセリング)に費やしている者は,0.3FTEであるとする。同様に専従の研究者が,6か月間だけ研究職に雇用された場合は,0.5FTEとなる。

頭数と専従換算値の比較(平成10年度)

(欧州連合の研究開発)

 欧州における経済及び通貨連合の設立,欧州諸国共通の市民権の創設,外交及び安全保障政策の実行,さらには欧州統合を促進させることを目指して,1992年に欧州連合条約(通称:マーストリヒト条約)が調印され,欧州連合(通称EU。以下EUという。)が設立されている。これを受けて,1999年1月には通貨統合が実施に移されている。このような状況の下,近年,WTO交渉など様々な国際舞台においてEUはその存在感を発揮しており,EUの世界的位置付けは急速に高まっている。GDPで見れば,EUは米国に次ぐ存在であり,今後,日本が世界の中で国際競争力を有していくという観点からは,EUとの関係を無視することはできない。

 これは,科学技術政策においても例外ではない。EC条約の第163条には研究開発政策の全般的な目標として,「共同体産業の科学的及び技術的基盤を強化し,かつその国際競争力の発展を促進し,また,この条約の他の章を理由に必要とされるすべての研究活動を支援する」ことが掲げられており,これに基づき,EUの科学技術政策が展開されている( コラム 参照)。それは,加盟国の研究開発を補完するとともに,加盟国全体の研究開発の底上げに通じるものである。EUは,第2部で国際比較を行う際に対象としている国家とは異なり,構成する国家の連合体であるが,EUとしてのまとまった活動が顕著になってきている。このため,この第2部では,EU諸国における科学技術指標を合計したEUに関する指標 (注3) を可能な限り取り入れていくこととする。

世界の3極の比較

欧州連合(EU)における科学技術政策

1.科学技術政策の目的

 全般的な目標として,「共同体産業の科学的および技術的基盤を強化し,かつその国際競争力の発展を促進し,またこの条約の他の章を理由に必要とされるすべての研究活動を支援する」(EC条約第163条)が掲げられており,研究開発が重要であるとの認識の下,科学技術活動を推進。

2.フレームワーク計画

 EUにおける科学技術政策は,EUにおける研究開発活動の基本的な枠組みを示したフレームワーク計画に集約される。この計画は,欧州連合条約に基づき,EUにおける研究開発活動全般を規定するもので,活動の目的や優先順位を規定するとともに,5年間にわたる予算の大枠を示すものである。1984年に最初の「フレームワーク計画」が策定され,現在,1998年12月に欧州理事会,欧州議会において共同決定された「第5次フレームワーク計画」(1998〜2002年)が進行中である(予算総額は150億ユーロ(第4次計画に比べ約14%増))。

 第5次フレームワーク計画は,第4次までの計画に比べ,社会経済目標の達成を強く意識しているのが特徴である。本計画の目的は,EU産業の科学技術基盤を強化し,国際レベルでより競争力のあるものにすること,EU市民の生活の質を向上させること及び環境の側面も含めたEUの持続的成長全体に貢献することとされている。

 この計画は,次の4つの活動分野を対象としている。

第1の活動「研究,技術開発及び実証に関する計画の実施」

4つのテーマを対象とした研究活動

{1}生活の質及び生物資源の管理
{2}利用者に優しい情報社会
{3}競争による持続可能な成長
{4}エネルギー,環境及び持続可能な発展


第2の活動「第3国及び国際機関との協力の推進」

第3の活動「研究成果の普及及びその最大限の活用」

第4の活動「研究者の養成及び流動の促進」

第2〜4の活動分野は,EU域内の研究開発体制をより効率的なものへと導くことを目指すもの。

3.科学技術の行政組織

 EUの機構には,理事会,欧州委員会,欧州議会等があるが,このうち各国の行政機関に対応する欧州委員会では,その研究総局が主に科学技術政策に関与している。


(注3)本第2部で使用するEUの科学技術指標は,基本的に,研究費についてはEurostat(欧州委員会統計局)から報告されるデータを,研究者数についてはOECDから報告されるデータを,特許出願・登録件数についてはWIPO(世界知的所有権機関)のデータを使用している。

なお,研究費及び研究者数については,各機関が独自に推計した値であり,特許出願・登録件数については当庁でEU加盟15ヶ国のデータを合計した値である。


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