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第1部   21世紀を迎えるに当たって
第3章  21世紀における科学技術と社会の関係
第4節  国民の手にある科学技術
2.  国民への科学技術情報提供の充実


 現代の科学技術は日進月歩であり,今や複雑・高度化した科学技術の正しい知識を一般国民が何の助けも借りずに獲得することは非常に困難になっている。このため,NPO, NGOが研究者の生の知識を吸収する一定の役割を果たし得るとしたところであるが,より広く国民に最新の科学技術情報を提供することのできる仕組みの構築とそれを担う人材に期待されるところは大きい。


(1) 科学技術情報提供の仕組みの構築とそれを担う人材(インタープリター)の養成

 科学技術に関する情報を国民に伝える者として,これまでは科学ジャーナリスト,教育関係者等がその役割を担ってきた。しかし,科学技術を専門とする教育関係者は量的にも活動範囲も限られており,一方,科学ジャーナリズムは広範な国民への情報提供を担うものであることから,一般国民の多様な関心に柔軟に対応できるものではなかった。

 このため,国民の求めに応じて,科学技術の知識や最先端の科学技術の研究成果とその社会的な意義について,より専門的,随時に,場合によっては個別に,国民へ解説する仕組みを導入することが求められる。さらに,今まで科学技術に関心を持たなかった人に対しても,関心を喚起するような機会を設定していくことが必要である。

 また,この仕組みにおいて,科学技術と国民との橋渡し役を務める「インタープリター」の養成が必要となっている。

  第2章第2節 でも述べたように,研究者は国民の理解増進に必要な取組として,従来のマスコミや教育制度に加えて,研究者自身がインタープリターとなり,情報発信を行うことが重要であると考えていることがわかる。

(情報伝達の仕組み)

 近年の情報通信技術の急速な進展に伴い,インターネット等のコンピュータネットワークや多チャンネルの衛星放送など,新たな情報伝達媒体を活用した効率的,効果的な情報流通が可能となってきている。また,従来から行われている手段として書籍やまんが等の出版や,講演会の開催,さらには,電話,面談等による伝達も含め,あらゆる可能性から情報の伝達に効果的な手法を模索していくことが求められる。

 このため,第3部で詳述するように,現在科学技術振興事業団において科学技術情報発信のための拠点整備や科学番組の提供,最先端の研究現場を直接体験できる機会の提供等の取組が進められている。

 このような試みは,民間にも広がっており,企業が独自に実験教室を開催したり,研究者・技術者を小中学校等に派遣して出前授業を開催するなど,子供達に科学に対する夢や興味を持つきっかけを与える試みが広がりつつある。

 今後,このような取組をさらに進め,国民各層がより科学技術に接する機会を,質・量ともに充実させていくことが必要である。

(インタープリターに求められること)

 インタープリターは,科学技術に関する専門的な内容が分かり,最新の知見を理解する能力を有していることが求められる。

 したがって,インタープリターを担う人材としては,研究者はもちろんのこと,技術者等の科学技術に関する専門的な知識を有する人材,学校の教師,さらには現役から退いた教師などを活用することが有効であると考えられる。研究者に対するアンケート調査においては,研究職以外に興味のある職種として,研究開発の企画部門に次いで,科学技術の普及・啓発に関する仕事を挙げる者が多く,インタープリターの供給源として期待されている( 第1-3-17図 )。

第1-3-17図 研究者が研究職以外に興味を持つ職種

 また,科学技術を国民に分かりやすく伝えるためには,大量の情報の中から国民の欲するものを適切に選別することや,それを効果的に提供することが求められる。そのために,そのような手法を身につけたインタープリターを養成することが必要である。例えば,最先端の科学技術の動向や専門外の科学技術に関する知識等を身につけて幅広い視点を持たせるため,様々な分野の研究機関等において開設する見学会や講座等の研修を充実することが有効な方法である。あるいは,意思疎通の効果的な手法を修得するため,科学ジャーナリストや教育関係者等を講師に招いた養成講座を設置したり,実際に国民に説明する際の模範となる分かりやすい実験や講演を紹介したビデオやテキスト等をインタープリターに提供するといった方法が考えられる。

(情報の質)

 国民に対して発信される情報の質としては,対象とする層に対応して多種多様であるべきである。すなわち,科学技術に全く無関心な層の国民の関心を喚起するための情報から,かなりの関心を有した層の知的好奇心に十分応えるだけの情報に至るまでの様々な場合がある。

 科学技術に対し関心が低い人々に対しては,科学技術の専門用語は一般には理解し難いものであることが多く,特に,情報発信の際の表現方法には十分注意し,できる限り平易な日本語で語りかけるよう努めることが重要である。

 これに対して,日頃から科学技術に対して高い関心を有している人々に対しては,学術論文や最先端の研究動向など,加工されていない一次情報がそのまま届くようにすることも重要である。

 つまり,インタープリターは科学技術活動の社会的意義や期待される成果を,説明相手の関心の程度に応じた工夫を講じつつ,バランス良く正確に国民に伝えることが求められている。


(2) 科学ジャーナリズムへの期待

 従来から,科学技術に関するインタープリターとしての機能を果たしてきたものに,科学ジャーナリズムが挙げられる。世論調査の結果では,科学技術に関する情報源としてテレビ,新聞,雑誌などが上位を占めており,また,その割合も高まってきていることから,国民が科学技術の情報源としてマスメディアに大きく依存している様子が分かる( 第1-3-18図 )。また, 第2章第2節 でも述べたように,研究者に対して行ったアンケート調査においても,国民の理解増進におけるマスメディアの努力が最も期待されていることから,科学技術者側からも科学ジャーナリズムに期待するところは大きいことがわかる。

第1-3-18図 国民への科学技術に関する情報源

 このように,科学技術を分かりやすく伝えていく科学ジャーナリズムの役割はますます高まっており,従来にも増して科学ジャーナリズムへの期待は大きい。

 今後,科学技術がより複雑・高度化し,また,ライフサイエンスなどにおける倫理的な側面を孕んだ問題に直面していく中で,科学ジャーナリズムには,科学技術についての情報を分かりやすく,かつ中立的・多面的な視点で,公正な事実を国民に提供することにより,国民の科学技術に対する関心の喚起,理解の増進等を図っていくことが期待される。

 なお,報道に当たり,正確な情報を提供するという観点からは,その科学的根拠や裏付けが重要である。このためには,科学技術に精通したジャーナリストの育成・確保が望まれ,また,科学技術の複雑・高度化が進む中で,専門家等の解説や分析などを積極的に取り入れた報道を展開することなどが望まれる。

 科学ジャーナリズムに対する期待は,世界的にも高まっている。昨年7月には,ハンガリーのブタペストで第2回目となる科学ジャーナリスト世界会議が開催され,科学ジャーナリストの役割が高まる中でその社会的責任を自覚すること,科学技術そのものだけでなく,社会的政治的背景や成果が生まれる過程も報道することなどを盛り込んだ宣言が採択されている。このように,世界的にも科学ジャーナリズムの重要性が確認されていることを踏まえ,今後,我が国の科学ジャーナリズムのより一層の質的・量的な充実が求められる。

第2回科学ジャーナリスト世界会議

 1999年7月2日〜4日,ユネスコ,ハンガリー科学ジャーナリストクラブ,欧州科学ジャーナリスト協会連合などの主催によりブタペストで開催された。世界29ヶ国から約150人の科学ジャーナリスト関係者が集まって,科学ジャーナリストが抱えている問題や果たすべき役割について議論が行われ,最終日には次のような宣言が採択された。

第2回科学ジャーナリスト世界会議宣言
・科学ジャーナリストはますます高まる責任を自覚すること
・科学技術そのものだけでなく,社会的政治的背景や成果が生まれる過程も報道すること
・科学技術の国際性を認識し,他国についての報道にも努めること
・編集者や番組制作者は科学ニュースにもっと時間を割くこと
・英語以外の言語によるインターネット上の情報流通を増やす努力をすべきであること
・インターネット上の情報は正確さや客観性などを常に監視する必要があるということを忘れてはならないこと
・ユネスコならびに他の支援機関に対し,科学ジャーナリストの世界連盟の設立を求めること
・科学ジャーナリスト育成の場づくりへの支援を求めること

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