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第1部   21世紀を迎えるに当たって
第3章  21世紀における科学技術と社会の関係
第4節  国民の手にある科学技術
1.  国民による科学技術への参画



(1) 国民の積極的な参画

 科学技術と社会の関係を構築していくに当たっては,国民の側が科学技術を適切に理解して活用するとともに,社会のニーズを科学技術活動に反映させていくことが必要である。そのために,これからの国民は,自らが科学技術の最終的な受益者であるという自覚のもと,進んで科学技術の知識の涵養に努めるとともに,積極的に科学技術に関する情報を集め,積極的な意思表示や情報発信を行う必要がある。さらに国民は,科学技術政策の企画立案及び決定の過程に参画することによって,社会的ニーズに対応した科学技術活動の健全な発展を促すことが求められる。

 諸外国には,国民参加の仕組みを整備しているところがある。例えば,オランダでは,「コンストラクティヴ・テクノロジー・アセスメント」と呼ばれる市民参加型・利害関係者参加型のテクノロジー・アセスメントの手法が採用されており,デンマークでは,テクノロジー・アセスメントを行う上で,専門家パネルと市民パネルが議論し,その結果を公表する「コンセンサス会議」を開催している。


(2) 国民参加プロジェクト

 21世紀の科学技術は,社会との意思疎通の上に立って進展させることが期待されており,政府は,新たな取組に着手している。新たな千年紀(ミレニアム)を迎えるに当たって,政府は,産学官の連携により情報化,高齢化,環境対応などの人類の直面する課題に応え,新しい産業を生み出す大胆な技術革新に取り組む「ミレニアム・プロジェクト」を実施しており,その中で国民参加のプロジェクトとして,新たな千年紀を切り開くのにふさわしい意見の募集や革新的な技術開発プロジェクトの公募を実施している。

 これは2つのプロジェクトからなり,1つは,小学生から社会人までを対象として「21世紀の科学技術-夢と希望を語ろう」をテーマとした意見公募を,平成11年10月から実施し,優秀作品の発表が平成12年4月に行われた。応募総数は約9,800通と,高い関心を集めたところである。

 もう1つは,革新的な技術開発の提案公募であり,次代の産業を切り拓くとともに,21世紀の我が国の経済社会に明るい夢と希望をもたらす革新性の高い技術開発に関する研究を募り,優秀な提案について助成することとしている。公募対象は,情報化,高齢化,環境対応等の分野について,独創的・先導的な研究としている。募集期間は平成11年12月から平成12年3月末までで,応募総数2,100件,提案の採択発表は平成12年6月の予定である。

 この「ミレニアム・プロジェクト」における取組を好例として,今後とも科学技術行政において国民参加型の施策が展開されることは重要である。

21世紀の科学技術-夢と希望を語ろう

 小学生から社会人までの国民に広く参加を呼びかけた「21世紀の科学技術-夢と希望を語ろう」をテーマとした意見公募については,1万通近くの多くの意見が寄せられ,国民の科学技術に対する関心の高さ,期待の強さが示された。

 応募総数約9,800通(小学生の部5,300通,中学生・高校生の部3,900通,一般の部500通)の中から,審査を経て優秀作品等を選出した。

○最優秀賞(計2人)

小学生の部    :1人
中学生・高校生の部:1人

○優秀賞(計12人)

小学生の部    :5人
中学生・高校生の部:5人
一般の部     :2人

○佳作(25人)

小学生の部    :11人
中学生・高校生の部:12人
一般の部     :2人

☆小学生の部 最優秀賞作品  要旨

「新世紀家族旅行」   外村 碧(ロンドン日本人学校小学部第5学年)

 私は,自宅のパソコンで遠隔教育を受けているため毎日学校へ行く必要がなく,図工や音楽,チームプレイが必要な時だけ学校に行きます。放課後,英語を話す友達と遊ぶときにはヘッドホン式の自動通訳機があるので言葉の心配はいりません。この前は,日本のいとこの結婚式に出るために,磁気浮上式の自家用キャンピングカーで,大陸横断高速道路を使って自動運転で行きました。夏休みにはちょっと足を伸ばし,今度の引っ越し先になる月に行きます。月では,重力をコントロールして,ほとんど地球と変わりない生活が出来ます。地球人学校には,200を超える民族が集まっているので,地球語で授業が行われています。引っ越しまでに地球語をマスターしなければなりませんが,睡眠学習できるので大丈夫です。これが私の21世紀の夢です。

☆中学生・高校生の部 最優秀賞作品  要旨

「未来理想図」     黒田 阿紗子(佐賀県立伊万里高等学校2年)

 人類は科学技術の発達によって,宇宙開発,インターネットなど多くの空想を現実のものとしたが,「ロボット」はまだつかみきっていない。各種工場ではロボットは結構な量が活躍中だが,地雷の撤去など人間にとって危険すぎる作業にロボットパワーを推薦する。簡単ラジコンの「お遣いロボット」で,自宅のテレビの前で買い物を楽しめるようになるだろう。安心して介護の受けられる,年齢,性別を自由に選べる「介護ロボット」はどうだろう。少子化問題も解決するかもしれない。そんなロボット社会の未来は明るい反面,人は運動不足で肥満化し,失業率は増加し,人々は働く喜びを失ったり,友達ロボットによって他人とのコミュニケーションがとれない子供が多くなるといった問題が起こらないか。新しいものには必ず問題が伴う。私は,技術の変化についていくのではなく,科学技術を地球の生態系にうまく適応させていく社会を期待する。何が進歩で何が退歩か見極める目を,私達が持つことが重要である。


(3) NPO等の活用

 国民は,組織的に研究者から生きた知識を学習する機会が得られれば,科学技術に関する知識を吸収することができ,また,多様な活動を通じて適切な判断力を身につけるとともに,そこから集約された意見を公表することによって,行政の決定に一定の役割を担うことができるものと考えられる。

 そこで,国民の科学技術の知識の涵養や社会的ニーズの集約のためには,政府や民間の既存のシステムに加え,新たな取組が期待される。

 民間非営利組織であるNPO(nonprofit organization)や非政府組織のNGO(non-governmental organization)は,個人の自発的な社会参加によって誕生し,ネットワークによる社会的協力関係を築く中で,異なる価値観に応じた多様な公共活動を行っている。

 科学技術に関連した海外のNPO活動として,例えば,オランダには,大学研究者による「サイエンス・ショップ」があり,市民などから持ち込まれた問題について,簡単な質問に答えたり,地域の環境汚染の原因究明や環境保全の検討を行うなど,地域の実情に合わせた活動を行っている。このような活動例は,次第に欧米各国等に広がっている。

 我が国の市民活動団体は,経済企画庁の調査によると全国で86,000(平成8年9月現在)を数えるが,そのうち,「学術研究の振興」を目的とした団体数は,全体の0.3%(300団体弱)に過ぎず科学技術に関係するものはさらにその一部に含まれるため,我が国ではまだ十分に根付いていない状況にある。

 しかしながら,環境負荷の少ない製品やサービスを購入するグリーンコンシューマー運動,生ごみリサイクル,ダイオキシン問題,古紙リサイクルなど個別のテーマを持った市民団体には,科学的知見に立って活動している例もある。

 平成10年12月施行の「特定非営利活動促進法」において,市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動を促進するために,任意団体として活動しているボランティア団体等のNPO(民間非営利組織)が,簡易・迅速な手続のもとで法人格(特定非営利活動法人)を取得する途が開かれることとなっており,NPO活動の拡大が期待されている。我が国においても,科学技術にかかわる活動を行うNPOやNGOがその活動を活発化し国民生活に密着した科学技術活動を行っていくことによって,科学技術に対する国民の意見の集約を図り,科学技術行政における意思決定に対してそのような意見を反映させていくことが期待される。


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