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第1部   21世紀を迎えるに当たって
第3章  21世紀における科学技術と社会の関係
第3節  科学技術に対する信頼回復
1.  科学技術者の社会的責任意識の高揚と倫理観の徹底


 最近の調査では,科学技術者は倫理面の問題をかなり意識していることが示されている( 第1-3-11 , 12図 )。また,約半数の研究者は研究成果に対する責任意識も持っているものの,1割強の研究者は自らの研究成果が世の中に悪影響を与えても,それは使用者責任と考えているという低い責任意識が示されている( 第1-3-13図 )。

第1-3-11図 研究者が意識する自らの研究上倫理等の問題が発生する可能性

第1-3-12図 倫理等の問題に対する研究者の日常の意識

第1-3-13図 研究者の研究成果に対する社会的責任意識

 科学技術は,社会的な行為として社会の中にあり,社会生活の隅々にまで大きな影響を及ぼしていることに加え,科学技術が国家や社会から予算を配分され公的支援を受けているということから,社会との関係を構築していく上で,まず,科学技術者には社会的な責任意識の高揚が問われなければならない。

 世界的に見ても,科学技術者の責任や倫理について規範となる宣言や憲章では,科学技術の行使における科学技術者と一般社会の関係が重要視されている。例えば,前述の世界科学会議で採択された「科学と科学的知識の利用に関する世界宣言」には,「社会における科学と社会のための科学」という項目が設けられ,その中で,科学者に対して,高度な倫理基準を自らに課し,科学的に誠実に物事に取り組み,社会との意思疎通を十分に図ることなどの社会的責任を持つことを求めている。これは,そのまま,我が国の科学技術者への指針として用いることのできる内容である。これまでの伝統であった日本人の高い倫理観を維持し,また,科学技術立国日本の信頼を取り戻すためにも,科学技術者一人一人は,自らの研究等に対する社会の負託や自らの行為が社会に与える影響の予測を徹底し,それに対する社会的責任の認識や倫理観の徹底に努めていくことが必要である。

 また,本来,科学技術者は国民に説明する責任を負っている。これまで,このような説明責任はあまり意識されることはなかったが,研究者に対するアンケート調査に見られるように,現在では,社会に対して自分の専門分野や社会が関心をもっている分野を説明したいと考える科学技術者の割合が多い( 第1-3-14 , 15図 )。一方, 第2章第2節 において見てきたように,国民の側も,特に生活に密接に関係する「地球環境問題」,「生命に関する科学技術や医療技術」及び「エネルギー問題」を中心に,科学技術者の話を聞きたいと考えている人が年々増加し,約6割に上っている。

第1-3-14図 自身の研究を一般国民に説明することへの研究者の意識

第1-3-15図 国民の関心のある科学技術分野について説明することへの研究者の意識

 このような状況の中で,今後は,実際に科学技術者が行動を起こし,一般社会へ語りかけていくことが求められている。科学技術者は,科学技術が社会の発展の基盤となる知識を生み出し,それが社会にどのような影響をもたらすかを伝える努力をすることが求められる。その伝達に当たっては,説明さえすれば分かるはずという考え方ではなく,社会との対話を通じ,できるだけ分かりやすく説明するという考え方に立って,共通理解を深める必要がある。

 また科学技術者が直接社会に知識を伝達できる機会の創出については,政府においても積極的に取り組んでいくことが望まれる。そのような機会を通じて,科学技術を担う専門家である科学技術者が,一般社会との信頼関係を構築し尊敬されるような存在となることも期待できる。

 さらに,科学技術者が行う理解増進活動は,社会のために説明責任を果たすという消極的な姿勢ではなく,社会との交流を持つことによって,自らの研究活動の社会的意義,役割等について認識を深めるとともに,自分の研究に対する社会からの要請を汲みとり,今後の研究の展開の示唆や刺激を得ることができることから,自らの研究成果の向上に繋げるという積極的な認識をもって取り組むことが重要である。

 平成11年に発生した事故等により,ものづくり能力が懸念されるようになったが,近年,経済のソフト化・サービス化の流れの中で,生産を担ってきた製造現場は,3K(危険,きつい,汚い)職場というような捉え方がされていた。このことが現場の技術者等の士気に影響を与え,倫理観の低下をもたらす懸念がある。今後,そういった現場に陽のあたる対応がとられ,技術者等の士気向上が図られることが期待される。


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