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第1部   21世紀を迎えるに当たって
第3章  21世紀における科学技術と社会の関係
第2節  知識基盤社会への対応
4.  科学技術教育・教養の充実


 知識基盤社会は,研究者等一部の専門家だけではなく国民すべてが担っていかなければならない。国民が科学技術に関する基礎的な知識を身につける最大の機会は教育である。また,教育課程を終えた大人が絶えず発展する科学技術の知識を得ていくためには,いわゆる教養として科学技術の知識を吸収していく機会を持つことが望まれる。


(1) 若者の科学技術離れ

  第2章第2節 で述べたように,一般国民の科学技術に対する関心は増加しており,一見,知識基盤社会構築に向けた土壌は育ちつつあるように思われるが,21世紀を担う若者に焦点を当てると,最近では学力低下,科学技術離れなどといった問題が頻繁に取り上げられている。

 小学校3・4年生,中学校1・2年生相当の児童,生徒を対象に1995年(平成7年)に国際比較の観点から実施された国際数学・理科教育調査によれば,中学生の数学及び理科の平均的学力において,我が国では依然としてトップレベルにあるが,これらの教科に対する意識は低い状況が示されている。我が国は,理科が好きだとする小学生の割合は国際平均並みにあるものの,算数を好きだとする小学生,理科や数学を好きだとする中学生の割合は,調査実施国中,最低レベルの結果となっている( 第1-3-8表 )。

第1-3-8表 算数または数学,理科が好きだとする児童・生徒の割合

 また,同調査から,理科が生活に必要であると思っている生徒の割合は48%,将来科学を扱う職業に就きたいと思う生徒の割合は20%と,理科や数学に対する意識については国際的に見て軒並み低いレベルとなっていることが分かる( 第1-3-9図 )。さらに,この追跡調査を1999年(平成11年)に国立教育研究所が実施したところによれば,我が国における理科や数学に対する意識は前回に比べ低下している結果となっている( 第1-3-10図 )。

第1-3-9図 数学及び理科に対する生徒の意識の国際比較


第1-3-10図 我が国の数学及び理科に対する生徒の意識

 大学生の学力低下については,現在のところこれを裏付ける実証的なデータは必ずしもないが,現在の大学生全体の平均的な学力水準が以前に比べて低下しているという指摘や,一般的に学ぶことに対する意欲,関心,動機,心構えが以前に比べて劣っているのではないかとの指摘がなされるようになった。

 仮にこのような傾向があるとすれば,将来的に科学技術の知識不足が国民全体に広がる危険性を有しており,今後,知識基盤社会を構築していく上で,憂慮すべき問題として認識する必要がある。


(2) 科学技術を身近なものにするために

 若者の科学技術離れの背景として,ひとつには科学技術の成果である様々なモノが氾濫し過ぎているが故に,それを科学技術の成果であると認識することが難しくなっていること,また,人と自然とのかかわりが希薄化してきているために,科学的な現象を身近に感じることができないことなどが考えられる。

 このような現状を踏まえ,若者を含め,社会全体の科学技術への関心を高め,理解を深めるためには,これまで以上に科学技術を身近なものとして実感できるような多様な場を創出し,社会全体が科学技術に対する関心を持つ土壌を形成することが必要となる。

 このため,博物館や科学館等において,様々な実験や,直に手に触れて動かしながらその原理を理解させる,いわゆるハンズ・オン等の手法を導入するなど,子供の関心を引きつける工夫や,大人にとっても楽しめる高度な展示物を取り入れるなど,国民各層が科学技術を身近に体験できる拠点を,質・量ともに一層整備・充実していくことが必要である。また,大学や研究所などの研究施設の一般への公開等により,最先端の科学技術の情報に触れる機会を拡充していくことも有効である。さらに,科学技術の歴史を実物の展示等により分かりやすく示すなどの方策を含め,このような科学技術関連の施設の魅力を高めていく努力が必要である。大人にとっては,これらの機会が科学技術の実際に触れることのできる機会となるものである。

 子供の頃に科学技術に関心を持たせるためには,初等中等教育に期待される役割が大きい。このため,初等中等教育の授業に,実験や体験型の学習を取り入れ,自ら学び考える力を養い,問題解決能力を育成することが必要である。また,地域の科学者や最先端の研究現場の研究者等と触れあう機会をつくったり,学校の教師が新しい研究成果などの最新の情報を得て,教師自身が常に先端の科学技術に接することのできる状況を作るなどの努力が求められる。また,児童・生徒の興味・関心を高めるためには,教師の指導方法の工夫・改善を図ることが必要であり,教師の研修機会の拡充を図ることが大切である。

 さらに,ますます高学歴化が進展している中にあって,高等教育を受ける国民が増加していること,科学技術の社会に与える影響が大きくなっていることや知識の統合が求められていることを踏まえると,特に大学においては,文理融合型の教育が求められ,自然科学だけでなく,人文・社会科学系の教育活動・組織の充実が不可欠である。特に教養教育の中で文科系学生については科学リテラシーを身につけさせるために,自然科学の基礎を学ぶだけでなく,現在最先端の科学技術の知見についても必須科目に取り込んでいくことも有効であり,理科系学生については自然科学について幅広くかつ深い知見を身につけるとともに,現代社会について広く学ぶことで科学技術と社会とのかかわりを意識していくことが大切である。また,大学教育の質の向上を図るためには,組織的な教育活動及び個々の教員の教育活動について評価を適切に行うことが必要である。それにより,大学における教育活動の改善が図られるものと考えられる。


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