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第1部   21世紀を迎えるに当たって
第3章  21世紀における科学技術と社会の関係
第2節  知識基盤社会への対応
2.  知識の創造と活用及び社会への浸透



(1) 我が国における知識の創造と活用及び社会への浸透の現状

 明治以来,我が国は欧米諸国の科学技術に関する知識を活用し,発展してきた。その結果,欧米諸国と肩を並べるようになった。今後知識基盤社会へと移行していく中で我が国が引き続き,最先進国の一国としての地位を確保していくために,我が国独自の強力な知識の開発がなされなければならない。

{1}「知」の創造と活用

 現在,我が国には21世紀社会の実現(例えば,循環型社会)のために必要とされる研究成果(知識)の蓄積が十分ではない。第2部において詳しく触れるが,論文数,特許出願数等から見て,我が国は世界最高水準の高い質の知識の創出,革新的な技術とその応用といった点で特に米国との格差が依然大きい。また,特に米国においては,ベンチャー企業が革新的な技術を実用化し,経済の活性化に役割を果たしているという見方がされている。さらに,今後科学技術はますます急速に変化,進展すると予想されることから,機動性のあるベンチャー企業の役割は増加していくものと考えられる。我が国においても,革新的技術の活用を進めるためにベンチャーの育成が急務である。これらのことをはじめとして,将来の社会の有り様を見据え,先見的にブレークスルーとなる革新的知識を創出し,蓄積するとともに,それを社会において活用していくための取組を強化していくことが必要である。そのための基礎研究振興の必要性については,特に別項において詳述する。

{2}科学技術知識の社会への浸透

 また,今後急速に発展し,複雑化する科学技術について,引き続き国民全体が必要で正しい知識を持てるような土壌が社会にできているのかという懸念がある。例えば,既に原子力エネルギー問題のように,資源の乏しい我が国の現状を踏まえたエネルギー政策という観点と,原子力施設の事故の可能性を踏まえた安全面という観点から,適切に評価するだけの知識が社会全体に十分行きわたっているかは疑問である。

 国民が科学技術に関する知識を得て適切な判断能力を身につける最大の機会は,教育により与えられる。子供の理数科離れが叫ばれるようになって久しいが,その状況は未だ十分に改善されていない。また,学校教育の教育課程を修了した大人にとって,引き続き広く科学技術に関する情報を得,絶えず発展する科学技術についての知識を吸収していく機会があることが大切である。知識基盤社会においては,科学技術に関係する職を持つ持たないに関わらず,広く国民が,自然の成り立ちや生命の営み等を客観的に捉え,そこに潜む原理を解き明かすというような科学について学び,理解するという態度を持つことが望まれる。


(2) 知識の統合

 現在,学問分野は高度に専門化・細分化している状況にあり,前章で述べたように,それぞれの成果が問題の本質を突き詰め,社会発展に大きく貢献してきている。研究者は,客観性の高い説得力のある結論を得るために,自らの研究範囲を限定し,その中でできるだけ単純化した系を選んで研究を進める傾向が強い。そのため,曖昧なもの,数量化しづらいものは,取り残されてきた。しかし,最近では,地球環境問題のように各々の科学技術分野の研究を別々に進めていては調和のとれた解決策を見出し得ないような課題や,エネルギー問題のように成果が社会に脅威をも与える可能性があり,研究を多面的な視点から俯瞰しつつ進めるべき課題が顕在化している。例えば,地球温暖化問題に対しては,従来の学問分野でいうと,地球科学,生物,化学,数学,エネルギー工学,経済学,倫理学,政治学等といった人文・社会・自然科学にわたる多数の学問の参加が不可欠とされる。しかも,各々の学問的な結論は,相互に関係し,時には対立する関係におかれることから,それらを総合し,調整することによって初めて答えを得ることができるものである。

 このように,現下の課題の解決を目指すための新たな知識体系の構築のために,異なる分野,さらには人文・社会科学を含め,20世紀までに蓄積した膨大な知識や今後新たに生み出される知識を整理・統合して,再構築していくことが必要である。そのためには,従来の所属機関の中だけでの研究にとどまらず,広く機関間の垣根を取り払った研究体制,さらには教育体制の変革が必要であろう。研究者に対するアンケート調査では,競争的研究資金による研究で,他の研究機関と共同で行う研究体制を望む者が36%となっており,このことは異なる考え方,異なる分野の知見などを取り入れながら,全く新しい知見を組み上げる知識統合型の研究の必要性が生じている現状が研究者側からも示されているものと考えられる( 第1-3-1図 )。

第1-3-1図 研究者が望む競争的研究資金を受ける場合の研究体制

 次にこのような知識の開発と蓄積に向けて具体的に講じていくべき取組について考察する。


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