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第1部   21世紀を迎えるに当たって
第3章  21世紀における科学技術と社会の関係
第1節  科学技術が社会に果たす役割
1.  21世紀社会に期待される科学技術


 21世紀にはどのような科学技術の社会への貢献が求められるであろうか。以下,社会背景とともにいくつか概観してみたい。

{1}循環型社会

 上で述べたように,21世紀,人類社会は循環型社会の構築を図っていくことを余儀なくされている。循環型社会では,我々を取り巻くモノの流れを抜本的に変え,社会のあらゆる仕組みが変革されることとなる。科学技術においては,省エネ,省資源化や,資源制約,環境制約を受けないエネルギーの導入を目指し,これまでとは異なった新たな技術体系の確立等が求められている。

 例えば,循環型社会に適合した産業の実現のため,地球環境への排出をゼロに近付けていくゼロエミッションや,生産の段階においてその解体物や循環を考慮していくインバース・マニュファクチュアリングといった概念を導入していくために,設計手法から生産工程に至るまで,これまでとは発想を異にした総合的な取組が不可欠であり,それを支える広範な科学技術の新たな知識が必要とされる。また,二酸化炭素の発生を抑制するために,主要な発生源である化石エネルギーの消費について,エネルギー利用効率向上のための技術開発や,二酸化炭素を排出しない原子力発電技術の開発と導入が旺盛になされてきたが,21世紀において,資源制約等を受けない,核燃料サイクル技術や核融合発電技術,自然エネルギーの利用技術等新たな技術体系の確立が求められる。

{2}高度情報通信社会

 20世紀の終盤にさしかかり,コンピュータの発達やインターネットの普及等により,情報科学技術が急速に発展し始め,高度情報通信社会の扉をたたく状況にまで来た。情報科学技術の発展は,「知識」の流通を飛躍的に発展させ,情報産業やハイテク産業など知識集約的な産業を拡大させ,社会経済に大きな変革をもたらしてきている。21世紀には,産業の知識化がより一層進むことが予想される。このような情報科学技術は,21世紀において,一層の進展が求められる。高度情報通信社会は,在宅勤務,遠隔地医療,電子商取引などを実現し,社会・経済活動に大きな変革をもたらすとともに,「時間」,「空間」,「エネルギー」という資源を節約することのできる循環型社会の構築に資することが期待される。また,コンピュータの高速化技術,シミュレーション技術等の計算機科学技術の進展は気候変動などの複雑な現象の解明や予測を可能とし,人類に対して適切な対応手段を提供する観点から,その取組が求められるところである。

{3}ライフサイエンス

 20世紀はライフサイエンスの分野が目覚ましい進展を見せ,医療手段の進歩,新薬開発などにより,平均寿命の飛躍的な伸長をもたらしたことを見てきた。しかしながら,難病の克服等未解決な課題が依然存在しており,特にがん,エイズなどの予防・治療法の確立が求められている。また,ヒトゲノムの解析はその全体像が明らかとなる段階に至り,まさに21世紀にその成果が開花し,新薬開発,遺伝子診断,オーダーメイド医療へと飛躍的な展開が期待されている。

 さらに,遺伝子組換え技術やクローン技術の進展により,病気に強く収穫の多い農作物による食料の増産や優良形質を持った家畜の大量生産,機能性の高い食品の生産等,農業分野における生産の向上等が可能となることから,食料の増産や食生活の向上が期待されている。これらの期待に対して,21世紀においてもライフサイエンスの成果が大きく貢献する。

{4}基礎科学

 上に例示したもののように,21世紀の科学技術は社会の実利面への応用にだけ期待がかけられるものではない。20世紀には,素粒子の発見,宇宙の起源への理解の深まりなど,社会に実利的な恩恵を及ぼすことはないものの,人類の知的好奇心や探求心を満たし,時代を彩る非常に大きな業績が残された。また,量子力学,相対性理論などのように基礎研究の成果が半世紀の時を経て,予想もされない形で社会での応用を生み出し,開花していくものもあった。したがって,このような基礎科学の分野での研究成果は,人類社会の共通の知的資産として21世紀においても一層生み出されていくことが望まれるものである。

 ここでとりあげたものは,21世紀に求められる科学技術への期待の一部である。従来から技術発展の動向を長期的な観点から展望する体系的な取組として,技術予測調査が科学技術庁科学技術政策研究所によって行われてきている。現在,第7回目の調査が進められているところである。また,政府においては,現在,平成13年度(2001年度)からの我が国の科学技術政策の枠組みを示す新たな科学技術基本計画策定のための検討を進めている。これらによって,21世紀初頭に取り組むべき我が国の具体的な科学技術の方向性が順次示されていくことであろう。21世紀に取り組むべき具体的な科学技術の課題については,新たな科学技術基本計画の策定を待つこととして,以下では,21世紀の科学技術を進める上での土台となる科学技術と社会との関係の在り方を考えていきたい。


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