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第1部   21世紀を迎えるに当たって
第2章  20世紀の科学技術の人類社会への貢献と今後の課題
第1節  20世紀の科学技術の展開と社会への浸透


 現在,我が国においては,科学と技術は「科学技術」と一語で語られることが多いが,歴史的に見た場合,「科学」と「技術」はそれぞれ異なる事柄として理解され,発展してきた。科学は,自然の摂理を明らかにしようとする人間の知的好奇心を原動力とする学問として発生した。それは,かつては恵まれた階層の人々の一種趣味的な行為であった。19世紀に入ると次第に科学を職業とする人が増加し,やがて科学者という言葉が生まれた。一方,技術は,人類が自らの生活を便利にし,豊かにするために,経験と工夫によって発展してきたものである。技術の開発を「発明」と置き換えると,「必要は発明の母」という言葉にもあるように,技術はどちらかといえば個人的あるいは社会的(集団的)必要性を原動力として行われてきた行為であった。

 19世紀末になると,科学と技術の距離が少しずつ近付き始めた。科学が純粋な知的好奇心によって行われる学問という性格だけではなく,軍事力の強化に役立つ技術の基礎になるという理解が進んだ。科学が国力の増強に使われるようになったことで,科学の有用性が新たな側面から認識されるようになった。

 科学と技術が国家の存立にとって重要であるとの認識が飛躍的に強まったのは,第二次世界大戦を契機とした20世紀中盤以降と考えられる。原子核物理学と特殊相対性理論という科学的成果から,核兵器へ,さらに原子力発電への道が開かれたことを端的な例とするように,20世紀後半には科学が社会・経済の発展の基盤として注目されるようになってきた。そのため,安全保障等の国家的な観点から国が本格的に取り組むようになった。また,同時に,科学と技術の融合が見られるようになってきた。科学が新しい技術を生み,それがまた科学の発展を推進するようになった。このような時期が, 第1章 で見てきたような人類社会の諸活動が飛躍的に成長した時期と重なっていることは,偶然の一致ではないであろう。

 このような科学と技術の関係の深まりを反映して,特に我が国では,第二次世界大戦中から「科学技術」という言葉が用いられるようになり,現在では「科学・技術」ではなく,「科学技術」という言葉が広く用いられている。

 20世紀の科学技術の主な業績や関連する出来事を概観すると,いくつかの特徴が見えてくる( 第1-2-1表 )。

第1-2-1表 20世紀における科学技術の主な足跡


 まず,20世紀の前半は科学分野における現象が多く,そして後半は技術分野における発明発見や社会現象が多く見られる。また,20世紀の後半に行くほど,科学か技術かのどちらかに区分けし難い融合した出来事が増えてきている。

 上で述べた原子力利用のように,独創的な科学の成果が20〜40年の年月を経て技術革新に結実しているのが見てとれる。さらに,この間隔は時代を下るにつれて短くなってきていると言われている。

 一方,20世紀の後半には科学技術による負の側面も目立ってきている様子がうかがえ,科学技術が社会に与える影響が大きくなってきている。

 本節では,20世紀の科学技術の展開と社会への浸透を,人類社会へ与えた効果の観点から4つに分け,物理学を中心とした「究極像への接近」,生活の利便性向上に物質的な面から寄与し,モノ社会へと導いた「モノの発達」,主に情報伝達の面から生活の利便性向上に寄与した「情報通信の発達」及び健康の維持・増進に寄与した「ライフサイエンスの進歩」とし,各側面から代表的なものを取り上げ,概括的に振り返ってみることにする。


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