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第1部   21世紀を迎えるに当たって
第1章  人類社会の変化
(3)  成長の限界


 しかし,上述したような人類社会の諸活動が,今後もこれまでの延長としてこのままの形で引き続き成長し続けるとは考え難い。それは,これから見ていくように,天然資源の制約や環境悪化の深刻化があるからである。

 20世紀の人間活動の発展に寄与してきた金属資源,化石エネルギー資源は元来再生不能であり,早晩枯渇する運命にあることは自明である。原料生産に用いられる金属資源に関しては,原理的には製品として活用後に回収して再利用することが可能であるが,化石エネルギー資源に関しては,熱力学の原理を引合いに出すまでもなく,二度と活用できないものである。これらの資源量は,その消費量の伸び率が変化したり,新たな鉱床の発見により埋蔵量が変動する等不確定要素により変化するものの,現在推定されている可採年数は石油や天然ガスなど50年前後のものもあり,21世紀中に枯渇の危機に直面することが懸念される( 第1-1-11表 )。

第1-1-11表 世界のエネルギー資源埋蔵量

 金属資源,化石エネルギー資源の枯渇問題に加えて,生物資源である木材の伐採等による森林の減少や砂漠化の進展も懸念されている。

 さらに,生産活動に伴う有害物質の排出等による自然環境の悪化が地域規模で,さらに,地球規模で無視できない状況に至っている。我が国においては,昭和25年(1950年)以降,工場からの廃水や排気ガスによる,後に四大公害と呼ばれる公害問題が顕在化し,近年ではダイオキシン類,内分泌かく乱物質(環境ホルモン)等の化学物質による人の健康への影響や環境汚染に国民の関心が高まっている。地域規模の環境問題だけではなく,人間活動は今や地球の大気組成を変化させるまでに至っており,二酸化炭素,CFC(クロロフルオロカーボン),窒素酸化物,硫黄酸化物等の排出により,地球温暖化,オゾン層破壊,酸性雨などの地球規模の環境問題を深刻化させている。

 世界的に地上気温は上昇しており,過去100年間に世界全体で約0.6℃,我が国では約1℃上昇した( 第1-1-12図 )。温暖化に大きく寄与している二酸化炭素は,主に化石燃料の消費に起因していると言われている。大気中の二酸化炭素濃度に関しては,ここ1000年ほどは年平均280ppmであったものが20世紀後半に急増し,1997年には363ppmに達した( 第1-1-13図 )。このまま二酸化炭素の排出が続くと,100年後には地上気温は世界全体で約1℃から約3.5℃上昇し,これに伴い100年後の海面水位は世界で平均して約15cmから約95cm上昇すると言われている。

第1-1-12図 世界(全球)の年平均地上気温(陸上)の平年差の経年変化

第1-1-13図 南極氷床コアの分析から得られた過去約1000年間の二酸化炭素濃度の経年変化

 また,太陽光線に含まれる有害紫外線を吸収し,地上の生物を守っているオゾン層は,大気中に放出されたCFC(クロロフルオロカーボン)等のオゾン層破壊物質によって破壊される。オゾン層破壊物質は冷媒,発泡剤,洗浄剤などに含まれている。このような物質については,国際的な取組により製造規制や排出抑制がされるようになってきてはいるが,これまでに大気中に放出されたものによって,低緯度地域を除いた世界のオゾン全量が減少しており,毎年南極でオゾンホールが大規模に発生していることが報告されている( 第1-1-14図 )。他にも,酸性雨など地球規模での環境変化を示す指標を見ると,その多くが急激な悪化を示している。

第1-1-14図 オゾンホールの三要素の経年変化

 以上見てきたように,人類がその誕生以来歩み続けてきた発展の中で,20世紀,特にこの半世紀間の変化は目覚ましいものがあったが,その活動がもたらした負の側面も無視できない規模に拡大してきたことが指摘できる。人類が生活する場である地球は,かつて,人類にとって無限の広さと包容力を持っていると思われてきたが,既に,その広さにおいても,内在する諸資源においても限界があることが明らかになってきた。20世紀に見られた人類社会発展の形を21世紀においてこのまま延長させることが不可能であることは明らかであろう。また,その中において,20世紀に興った大量生産,大量消費,大量廃棄型の発展形態を修正し,地球への負荷の少ない循環型社会を実現していくことは避けて通れない道である。

 同時に,21世紀においては,新たな発展の形に対応して,社会の仕組みを変えていくとともに,我々自身の意識においても,量的な豊かさから質的な豊かさへというように,価値観の転換が求められている。このことは,20世紀の豊かさの象徴であった「モノ社会」から新たな価値観をもった社会への転換を意味する。


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