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第1部   21世紀を迎えるに当たって


 今年は,西暦2000年である。人類は,20世紀最後の年という大きな節目を迎えた。人類は,その誕生以来,自らの知恵を駆使して,着実に発展を遂げてきた。とりわけ20世紀後半には,人口の急増を始めとして,あらゆる面で人間活動が飛躍的に発展した。医療の進歩は人間の寿命を飛躍的に伸ばし,交通機関の発達は人間の手足の代わりとなって移動空間を地球の隅々にまで拡大した。また,大量に生産されるモノが,人間の社会生活を格段に便利で快適なものにしてきた。さらに,情報通信機器の発達は,人間の神経や頭脳に代わって膨大な情報を収集・処理することを可能とし,居ながらにして瞬時に世界中の人々と情報の共有や交換を行えるようにした。

 20世紀における人間活動の発展に,科学技術が大きく貢献してきたことは言うまでもない。科学技術の成果なくしては今日の目覚ましい人類社会の発展はあり得なかったとさえ言えよう。しかし,一方で,20世紀の科学技術文明は,モノの大量生産,大量消費,そして大量廃棄を伴い,かけがえのない地球の環境破壊や資源の枯渇の懸念を生み出してきている。これからは,科学技術によって得られる知識を活用して,地球と共生できる道を築き上げることが求められている。また,近年,コンピュータと通信の急速な進歩と融合により,高度情報通信社会を目前にしている。そこでは,我々の日常生活から経済活動に至るまであらゆる活動が知識と情報を原動力として展開され,社会が大きく変革することになろう。さらに,生命科学(ライフサイエンス)の著しい進展は,生命にかかる膨大な知識や情報を社会にもたらし,ヒトの生命操作の領域に踏み込むことへの懸念が生じるまでに至っている。21世紀は,科学技術によって生み出される知識や情報が20世紀にも増して社会の発展の大きな鍵となることは間違いない。

 しかしながら,今日の科学技術社会がこのような変革に対応する準備を十分に整えているとは言い難い。今こそ,我々が歩んできた20世紀を振り返り,21世紀を展望して,新たに構築すべき科学技術と社会の関係の在り方を提示していくことが求められている。

 第1章では,20世紀の人類社会の発展と,それに伴う負の側面の発生に関して各種指標を用いて概観する。続く第2章では,そのような人類社会の発展を導いた20世紀の科学技術の変遷をたどるとともに,21世紀へ向けての課題を明らかにする。第3章では,このような20世紀の科学技術を背景とした人類社会の変化の総括を踏まえ,21世紀においてどのような科学技術と社会の関係を構築することが求められるかを検討する。


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