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  付属資料
4.  主要先進諸国における重要技術の設定
(2)  イギリス


1)位置付け・目的

イギリスが1993年(平成5年)5月に発表した科学・工学・技術白書「我々の潜在能力の発現」(Rea1izingourpotential)の中で,政府の基本戦略を,イギリスの科学・工学・技術の優位性を維持することにより,国家の競争力及び生活の質を向上させることとしている。

技術予測作業は,これを受け,イギリスの競争力及び生活の質を向上させるために,今後10〜20年内のイギリスにとって重要な技術分野を選定し,優先度付けをすること,それに加えて,技術開発以外の課題についても優先度付けを行うことを目的とし,1994年(平成6年)3月より始められた。また,作業を通じて,大学,公的研究機関等の,研究開発を実施する側と,産業界,その他研究開発成果のユーザーとの間のコンセンサス・協力関係を構築することも目的としている。

2)組織・運営

この技術予測作業には,イギリス科学技術院(OfficeofScience&Technology:OST)が,中心になって当たり,政府,大学,産業界等から幅広い関係者が参加している。

推進組織としては,作業全体を統括する運営グループとその下に産業セクターに対応した15のパネル(専門委員会)が置かれている( 付4-3表 )。

ア.運営グループ

議長は政府の首席科学顧問が務め,関係省庁,研究会議,研究支援財団,民間企業,大学からのメンバー合計17人で構成されている。民間企業からの参加者は,最高経営責任者・企業戦略責任者クラスであり,また,大学からの参加者には社会科学の専門家も含んでいる( 付4-4表 )。

付4-3表 イギリス技術予測作業(1992-95)におけるパネルと 対応する産業セクターの雇用等

付4-4表 イギリス技術予測作業 運営グループ メンバーリスト イ.各パネル

材料,通信,エネルギー,金融,レジャー・学習など,サービス業も含む15の産業セクターに対応して設置されており,産学の研究者,販売・流通・消費者団体等の代表等10数人から構成されている。

3)各パネルの作業

各パネルは,対応した産業セクターの将来展開について考察し,各産業セクターが今後優先的に推進すべき課題などについて勧告を行うことをその役割としている。

各パネルは,この役割を果たすため,予測の実施に先立って各種予備調査等を行い,パネル会議によって,広い範囲の議論・意見聴取を必要とする問題事項を抽出し,問題事項の種類に応じて,約1,000課題程度の技術開発課題に関し,以下の項目について,デルファイ法による調査により評価を行った。

○その技術が富の創造と生活の質の向上に与える影響がどれだけあるか
○今後20年位の間にどのような技術が生まれると予想されるか
○イギリス国内もしくはヨーロッパや世界との協力の必要性がどの位あるか
○科学技術,イノベーション等について,イギリスが他国と比べてどれ位の位置にあるか
○イギリスの発展を阻害しているもの(技術的問題,規制など)は何か

さらに,地域別ワークショップ,その他面接調査等の意見聴取を行い,その結果,開催されたワークショップは約60地域におよぶなど,総じて約10,000人の意見の聴取を得た。

各パネルの優先事項の検討結果は,報告書にまとめられ,運営委員会に提出された( 付4-5図 )。

付4-5図イギリス技術予測実施段階の流れ(1994年3月- 1995年3月)

4)運営委員会の作業

運営委員会は各パネルから提出された報告書を基に,全パネルを通した優先分野を最終的に設定した。運営委員会は,15の産業セクターそれぞれについて,イギリスが国際競争力を持つための,基礎科学・工学・技術,技術の開発,社会的・政策的・規制的要素,管理・人材の4つの条件の相対的な重要性を評価している( 付4-6図 )。

付4-6図イギリスの15の産業セクターが国際競争力を持つのに 必要な条件の相対的重要度

また,分野を越えた重要技術課題の選出をも行っている。その際,以下の4つの基準に照らして重要度を判断している。

1)経済的・社会的便益
2)イギリスが経済的・社会的便益を捕まえられる能力
3)科学的・技術的ブレイクスルーの可能性
4)イギリスの科学的・技術的基盤の強さ

さらに,1)と2)をまとめて,目標達成への貢献度とし,3)と4)をまとめて,実現可能性としている。この二つの基準を縦軸横軸とする二次元平面に科学技術に関する優先的課題27課題をマップし,原点から遠いものほど重要性が高いと整理している( 付4-7図 )。

また同時に,関連のインフラ(科学技術振興基盤,基礎研究,金融,規制など)の優先課題を18課題抽出している( 付4-8表 )。

付.4-7図科学技術に関する優先的課題(27課題)の相対的優先度 (イギリスの技術予測作業による重要技術分野の優先度付け)

付4-8表関連インフラの優先課題18課題 (イギリス技術予測作業の結果)

5)技術予測作業の結果の活用

技術予測作業の結果は,その後の政府科学技術研究費の重点配分分野の決定や,企業の研究開発投資の方向性の決定などに大きく貢献している。例えば,1999年度以降3年間にわたって基礎研究への投資を14億ポンド(約2,200億円)拡大することとしているが,その中ではライフサイエンス関連研究に厚く配分しようとする意図が見てとれる(配分額等の詳細はイギリスの科学技術政策の動向の項を参照)。

6)今後の動き

1998年(平成10年)12月,貿易産業省は「次回技術予測の青写真(Blueprint-For the next round of Foresight)」を発表した。これは,1999年(平成11年)4月より1年半余りにわたり行われる新たな技術予測作業の計画の要点をまとめたものである。

各パネルやパネルの報告に対し,技術予測参加者全てが自由に情報,意見の交換ができる「知識のプール(The knowledge pool)」を整備。これが新たな技術予測を実施する上での基盤と位置付けている。

パネルの構造としては,前回は産業セクターに対応する形で設けたが,今回は,それに加え,将来における富の創成を進めたり生活の質に影響を及ぼすような幅広い社会・経済問題を扱うテーマ対応型のパネルも設けることとした( 付4-9表 )。テーマ対応型パネルは将来のビジョンを示し,産業セクター対応型パネルは,その将来ビジョンを各パネルのセクターのコンテクストで展開し,見出された機会・挑戦への対応を検討する。

次回の技術予測の主な目標は,

○資源配分等のアクションの確固とした基礎となる,分かりやすい,焦点の絞られた結論を出すこと。
○以前には着目されていなかった課題について検討し,あるいは以前には関連付けて考えられなかった事柄同士の関係を見出すことによって,成果に付加価値を付けること。
○産学官の協力関係のネットワークを拡大・発展させること。

である。

付4-9表 イギリス次回技術予測におけるテーマ対応型パネルと 産業セクター対応型パネル


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