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  付属資料
4.  主要先進諸国における重要技術の設定
(1)  米国


1)位置付け

法律(公法101-189)においては,政府職員及び私的セクターの職員からなるパネルを設けて,国としての重要な技術を選定することとされている。同法では,国家重要技術(National Critical Technologies)を「米国が長期的な国家安全保障または経済的繁栄を更に進めるために,米国が開発していくことが不可欠である技術」と定義付け,官民からなるパネルにそのような技術を30まで同定することを任じている。

同法の規定に従い,これまで,91,93,95年と,大統領に対して国家重要技術報告書を提出している。米国では他にも各省庁ごとにその行政の視点に立つた重要技術リストつくりは行われているが,それらを統合した公式な総合的リストとしてはこれが唯一のものである。

2)選定の組織・プロセス

最新の95年報告書にかかる国家重要技術レビューグループは,議長にジョン・ヤング(ヒューレットパッカード社前会長・最高経営責任者,大統領科学技術諮問委員会(PCAST)議長)を据え,他に産学からいずれもPCAST委員でもある4人,政府からは,エネルギー省次官,NASA次長代行,国家安全保障担当副大統領補佐官,商務省技術行政担当次官,大統領府科学技術政策局(OSTP)技術担当次長,国防省調達・技術担当次官,統合参謀本部副議長,OSTP国家安全保障・国際担当次長の計13人からなる( 付4-1表 )。

作業プロセスとしては,まず,91年報告の国家重要技術,各省庁(商務省,国防省,エネルギー省,NASA)の重要技術リストから,候補リストを作成した。次いで,国家科学技術会議(NSTC)の全委員会(国家安全保障委員会,民生産業技術委員会が中心)に参加している省庁に同候補リストをレビューさせ,コメントを徴した。レビューの観点は,最近の状況,様々な技術の相対的重要性を反映させることと,もっとも重要な応用が欠落していないことを確保することとした。NSTCのレビューの後,国家重要技術レビューグループがレビューし,承認した。

付4-1表米国国家重要技術レビューグループ

3)「技術」の定義

他の形態の知識と峻別するため,技術を以下の性格を持つものとして定義付けている。

○実験または科学理論に基づき,システム化された実際的なものである。
○新しい発見,現在の知識,または両者の組み合わせのいずれかを含む。
○単に理解することだけではなく,応用あるいは目標達成を指向している。
○素材,生物系を直接いじること,または数学的アルゴリズムの実施を含む。
○再現性があり,移転できる。

したがって,自然現象の理解を指向した非常に基礎的な科学は除外されている。

4)重要さの判断にかかる基準

95年報告では,法における定義で用いられている「経済的繁栄」,「国家安全保障」について,それぞれ,以下のように,具体的な選定基準を対応させている。

ア. 経済的繁栄

〇96年研究開発優先度に関する政権のメモランダムにおいて述べられている,以下の主要な科学技術目標を,直接的,実質的に支える。

・健康で教養のある国民
・雇用創出及び経済成長
・科学,数学及び工学における世界の主導的立場
・環境の質の改善
・情報技術の利用
・国家安全保障の強化

○米国産業の国際競争力の維持向上に不可欠な科学技術ベースに直接的,実質的に貢献する。
○漸進型技術については短期的な,ブレークスルー技術については長期的,潜在的な経済的重要性を有する。
○高い率で新しい発見に結びつく(電気通信のインフラ・機器のような進歩の速い技術集約産業にインパクトがある。)
○産業界にニーズがありながら,必要な投資の大きさ,投資回収にかかる期間の長さ,技術開発のリスク,技術が一般的でありー社以外にも利益を享受できる可能性等から,連邦政府の支援無しには産業界が十分な研究開発投資をしない。

イ. 国家安全保障

○将来の戦闘における要求事項を満たし,またその能力を発展させる上で本質的な貢献をする。
〇96年研究開発優先度に関する政権のメモランダムにおいて述べられている,国家安全保障優先研究開発の下でのミッションエリアに本質的な貢献をする。
〇94年国防科学技術計画から辿れるような,他の国防要件を満たすのに本質的なものである。

技術の重要性の具体的意味としては,その技術が一構成要素となっているシステムのアウトプットがどれだけ重要であるかと,その技術がそのシステムを可能とするについてどれだけ重要であるかの2つの点から判断している。

重要技術のリストでは優先付けは行っていない。これは,経済的繁栄と国家安全保障という二つのまたがる目標に照らして優先度を決定することはできないと考えているためである。

なお,最初の91年の報告では,候補技術から重要技術に絞り込む際に,総体的な枠組みとして以下の基準を用いている。

〇国家的ニーズ(産業競争力,国防,エネルギーセキュリティ,生活の質)
〇重要性(市場をリードする機会,成績・質・生産性の改善,民間投資の誘発,他技術の成功の誘発)
○市場規模・多様性(他国に占有された際の脆弱性,他の技術の基礎をなす,究極的市場の規模)

5)国家重要技術の設定

上述の基準に照らして,候補技術リストから国家重要技術を設定している( 付4-2表 )。すなわち,国家重要技術を,技術区分(7区分),技術領域(27領域),技術下位領域(91領域),具体的技術(289技術)の階層で整理している( 付表「米国における国家重要技術リスト」参照 )。さらに,各具体的技術について,経済,国防への貢献の有無,応用例を掲げている。また,各技術領域について,日欧との比較で,米国の開発程度,世界の最先端技術に対する米国の競争的地位をを評価している。その際,市場で優位に立つかは技術レベルだけでは決まらないものであるので,技術の普及には触れていない。

ここで,技術の区分は,技術の応用分野に着目して設定したものではなく,以下のように,技術の開発過程で関係する技能,問題の性質に応じた区分を行うことにより,基盤的な技術の設定に注力している。

○材料:物体の実質
○製造:物体の生産
○情報・通信:情報の生産,記憶,処理,伝達
○輸送:人および物を物理的に移動
○生体系:生物学的過程の創製・改良
〇エネルギー:他のカテゴリーの動力
○環境の質:過去・現在・将来の活動の環境への影響
付4-2表 国家重要技術:米国の技術力の位置付け及び1990〜94年の動向


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