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第3部  科学技術の振興に関して講じた施策
第2章  総合的かつ計画的な施策の展開
第5節  民間の研究開発の促進と国等の研究開発の成果の活用



1. 民間の研究開発の促進

民間研究開発は,我が国研究開発投資の約8割を占めており,その果たす役割は大きい。民間の研究活動の円滑な推進を図り,研究開発水準の向上を図るため,研究活動を促進する種々の施策が講じられている。


(1) 税制による民間研究活動の振興

科学技術振興のための税制上の措置としては,増加試験研究費の特別税額控除制度があり,民間における自由な創意工夫に基づく研究活動の展開に大きな役割を果たしている。増加試験研究費の特別税額控除制度については平成11年度税制改正において制度を改組するとともに,適用期限を2年間延長した。具体的には,これまでは試験研究費が過去最高額を超える部分の20%を税額控除していたが,これに変えて,過去5年間のうち多い方から3年間の試験研究費の平均額を超える部分の15%を税額控除することとした。また控除限度額については法人税額の10%から12%とする変更がなされた。こうした見直しを通じて,民間企業における研究開発の促進が期待される。

また,その他の主要な措置としては,研究交流促進法に基づき,財団法人,社団法人が国の機関との共同研究に必要な施設を当該研究機関の敷地内に整備した場合,当該施設に係る不動産取得税について課税の特例(課税標準を1/2)を設ける研究交流促進税制の創設を行った。

上記制度を含む平成11年4月現在の科学技術振興関係税制の一覧を第3-2-30表に示す。


(2) 出融資等による民間研究活動の振興

民間研究活動を促進するため,様々な政府系機関により,技術開発に対する出融資等の制度が講じられている。以下,主なものを紹介する。

第3-2-30表主な科学技術振興関係税制



(基盤技術研究促進センター)

基盤技術研究促進センターは,民間において行われる鉱業,工業,電気通信業,放送業に係る基盤技術に関する試験研究を促進することを目的として,昭和60年10月に設立され,産業投資特別会計からの出融資,日本開発銀行及び民間からの出資等を資金として,出資,条件付無利子融資,共同研究のあっせん等の事業を行っている。平成10年度の産業投資特別会計の出融資額は,260億円である。

(生物系特定産業技術研究推進機構)

生物系特定産業技術研究推進機構は,民間において行われる生物系特定産業技術に関する試験研究を促進することを目的として,昭和61年10月に設立され,産業投資特別会計からの出融資及び民間からの出資等を資金として,条件付無利子融資,出資,共同研究のあつせん等の事業を行っている。平成10年度の産業投資特別会計の出融資額は,32億円である。

(医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構)

医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構は,民間において行われる医薬品技術等に関する試験研究を促進することを目的として,昭和62年10月に業務を開始し,産業投資特別会計からの出融資及び民間からの出資等を資金として,条件付無利子融資,出資,共同研究のあっせん等の事業を行っている。平成10年度の産業投資特別会計の出融資額は,22億円である。

(その他の融資制度)

我が国産業の技術水準の著しい向上に寄与すると認められる新技術の開発を図るため,企業の行う新技術に係る技術開発資金に対して日本開発銀行が新技術開発融資制度により低利かつ円滑な資金の融資を行っている。

平成10年度は,経済構造改革に特に寄与する分野に対する誘導力の強い低利融資という観点から,新技術開発枠・新規事業育成枠に,1,010億円を確保した。


(3) 補助金等による民間研究活動の振興

民間の事業化へ向けた研究開発を支援するため,研究開発活動に対する補助金制度が講じられている。以下,主なものを紹介する。

(希少疾病用医薬品等の助成金交付事業)

我が国で極めて患者数が少ない疾病の治療薬等の研究開発を支援するために,当該医薬品等の試験研究に係る費用の助成を行っている。

(農林水産業・食品産業等先端産業技術開発事業)

農林水産・食品分野の体質強化を図るとともに,経済構造改革に資する新産業・新技術の創出を推進していくため,バイオテクノロジー分野における民間研究開発を促進するとともに,国立試験研究機関の優れた研究成果の実用化を図る民間の研究開発を促進する助成を行っている。

(創造技術研究開発費補助金)

中小企業の技術開発,技術力向上等の観点から,中小企業の行う創造的な技術研究開発のための費用に対する補助を行っている。

(エネルギー関係技術実用化開発費補助金)

民間のエネルギー使用合理化,新発電,石油代替エネルギー関係技術の実用化を促進するため,実用化開発費用の補助を行っている。

(先端技術型研究開発助成金)

将来的にニュービジネスの創出に結びつくような通信・放送技術に関連する先進的な研究開発を行うベンチャー企業等に通信・放送機構を通じ研究開発費の助成を行っている。

(高齢者・障害者向け通信・放送サービス充実研究開発助成金)

高齢者・障害者向けの通信・放送サービスの開発に必要な技術の研究開発を行う民間企業等に対し,通信・放送機構を通じ,研究開発費の助成を行っている。

(中小企業技術革新制度による補助金・委託費等)

研究開発への資金的支援として,積極的に研究開発に取り組む中小企業を対象とした施策を積極的に展開している。平成11年2月,新事業創出促進法が施行され,同法に基づく中小企業技術革新制度(SBIR)を開始した。同制度は,中小企業の技術開発能力を活性化し,その独自性ある事業活動を支援するため,関係省庁が連携し,新産業の創出につながる新技術の開発に関する補助金・委託費等の支出の機会を増やすとともに,その事業化を一貫して支援するため債務保証枠の拡大や,担保・第三者保証人が不要な融資の特別枠の新設などを行うものである。これを受けて,平成10年度第3次補正予算において,科学技術庁,通商産業省,郵政省関係の12の研究開発補助金等を特定補助金等として指定した。

(新規産業創造技術開発支援(補助金)制度)

新規産業創造に資する技術について,地域の視点から特に有望な研究開発を支援し,世界に通じる技術力を有する企業群を育成するため,民間企業等に対して研究開発費の補助を行っている。


(4) その他

創造的ベンチャー企業に事業展開の機会を付与するため,政府の研究開発予算の一部を中小ベンチャー企業に重点的に配分することや,新規産業の創出に即効的効果のある応用段階の技術の研究開発推進,民間企業等への研究開発委託,また,地域経済の再生や経済構造改革の加速的推進のため,民間企業が行う新規産業創造に即効性のある研究開発への補助などの施策が盛り込まれた産業再生計画が平成11年1月に閣議決定された。

また,産学官における研究開発業務に係る人材の円滑な確保の社会的要請を踏まえ,研究開発環境をより一層整備することが重要になってきていることから,中小企業,ベンチャー企業など,特に開業間もない企業においても,優秀な人材を確保するため,起業家精神にあふれる人材の育成・輩出を図るための産業界と大学等との人的交流の促進,大学等の先導的な起業家育成講座等に関する実証研究の実施,ベンチャー企業等へのインターンシップ(学生の就業体験制度)をより一層促進し,大学新卒者のベンチャー企業等への就業意欲を喚起するなどの施策も盛り込まれている。

企業内起業・分社化等による新事業創出を支援するため,分社化,持株会社化等の企業組織の変更が円滑に行われるよう株式交換・株式移転制度を導入する。また,会社分割法制の整備についても検討に着手する。

新事業創出促進法は,技術・人材等の地域の産業資源を活用した新事業創出の促進を目的とし,中小企業者の新技術を利用した事業活動の支援,研究開発から事業化までの総合的支援体制の整備,研究成果を活用した事業展開を促進する施設整備等を図るものである。

上記のほかに,民間の研究開発を促進するため,国立試験研究機関,大学等との共同研究や産学官の連携などが実施されており,詳細については, 第3部第2章第1節2 研究開発システムの整備に記述されている。

また,民間による整備が困難な大型で,かつ高価な共同利用施設及び設備については,国により整備がなされ,民間との共同利用施設・設備として提供されている( 第3-2-31表 )。

第3-2-31表民間には整備が困難な大型かつ高価な共同利用施設・設備の整備状況


2. 国等の研究開発成果の活用

大学や国立試験研究機関,特殊法人のような公的部門における研究開発の成果については,研究開発の更なる進展を図るとともに,民間企業を含め広く一般に活用されるようにするため,各機関において成果発表会の開催,年報等の定期刊行物の刊行等が行われているほか,各種学会や学術刊行物への研究論文の発表,国有の特許の公開等により,成果の公開,情報提供が行われている。

従来,国に帰属していた国立試験研究機関の研究者の発明等に係る特許権等知的財産権については,科学技術庁,環境庁,厚生省,農林水産省,通商産業省,郵政省及び運輸省において国と研究者との共有とする等の措置を講じている。これにより,研究者の権利の持分を企業に売却することや,当該特許等に係る研究者自らの民間への技術指導等を通じて,国の研究開発成果の技術移転や製品化の促進が期待されるものである。また,国立大学における特許権等については,原則として発明等した教員個人に帰属するようになっている。

第3-2-32図 国の研究者への特許権個人帰属の状況

第3-2-33図 国立試験研究機関と民間機関との共同研究等における民間機関への特許権の優先的実施権の付与件数

国の研究者への特許権の個人帰属の状況を 第3-2-32図 に示す。また,国立試験研究機関と民間機関との共同研究によって得られた特許の民間機関への優先的実施権の付与件数は,年々増加している( 第3-2-33図 )。

大学や国公立試験研究機関等の研究開発成果の実用化については,科学技術振興事業団において,調査・収集を行い,優れた研究成果を発掘し,企業化が著しく困難なものについては,企業等に開発を委託する委託開発制度を設け,積極的に新技術の企業化を図っている。さらに,委託開発の結果得られた開発成果については,産業界において実施されるよう,広く普及を図っている。また,開発に伴うリスクが比較的少なく,企業独自で開発を進めることが可能な新技術については,開発あっせん制度によって企業等への技術移転を推進しており,諸外国に対しても,あっせん可能な技術を英文紹介誌により紹介するなどして,開発あっせんの促進を図っている。

平成10年度末までの委託開発及び開発あっせんの結果をみると,委託開発は成功課題が332件となっており,また,開発あっせんは,あっせん成立課題552件(延べ880社)となっている。

さらに,科学技術振興事業団において,大学・国立試験研究機関等で得られた研究成果に基づく,新規事業を生み出す可能性のある新技術コンセプトを,研究機関の技術指導,評価を得つつ,ベンチャー企業をはじめとした研究開発中堅・中小企業の活力を活用して試作品として具体的な形とすること(モデル化)により,独創的な研究成果の育成を促進する独創的研究成果育成事業,国等の研究開発成果の活用及び研究開発活動に関する情報の公開を推進し,新規事業の創出等の円滑化を図るため,研究成果の技術評価及び研究開発活動に関するデータベース(研究成果の概要,展開可能な技術用途・利用分野,関連技術の概要等)の拡充を行う新産業創出総合データベース構築を行っているほか,大学,国立試験研究機関等の研究成果のうち新産業創出,企業化開発等が期待されるものについて,特許化を支援し,技術移転を促進するため,特許主任調査員等を派遣し,大学,国立試験研究機関等の特許化促進のためのアドバイス,研究開発の発掘・特許化等を行う特許化支援事業を開始した。

また,理化学研究所においては,自らの研究成果をより一層効果的に実用化に結びつけるため,平成10年1月に研究者の兼業許可,共同研究における優遇措置策の制度を創設している。

通商産業省特許庁では,国公立試験研究機関及び大学の研究成果の適切な保護と産業界への円滑な移転を支援するため,筑波研究学園都市にて無料で特許セミナー及び特許相談会を実施するとともに,全国13都市で技術導入を希望する産業界との出会いの機会となる特許流通フェアを開催した。

文部省では,特に,各国立大学が地場産業など地域の産業界と密接に連携し,活発な共同研究を進めるため,地域共同研究センター等の整備を進めること,新産業創出のための独創的な研究開発の推進と高度な専門的職業能力を持つ創造的な人材育成を目的としたベンチャー・ビジネス・ラボラトリーを多数の理工系大学院生を擁する国立大学に整備するなどして,国立大学の持っている研究能力などの活用を図っている。

また,大学等で生じた技術に関する研究成果を,これを活用しようとする民間事業者へ移転する事業を実施する者への支援措置等を講ずる「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」が公布され,平成11年3月31日現在,4つの技術移転機関が支援措置を受けることができる対象として承認を受けている。


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