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第3部  科学技術の振興に関して講じた施策
第2章  総合的かつ計画的な施策の展開
第2節  研究開発基盤の整備・充実



1. 研究開発施設・設備の整備

科学技術基本計画においては,研究開発施設・設備,研究開発に関する情報化及び知的基盤を研究開発基盤と位置付け,これらの整備・充実を図ることとされ,各省庁がそれぞれの所要の施策を推進している。

研究開発施設の整備に関して,科学技術基本計画では,我が国の大学,国立試験研究機関については,老朽化対策を進めるとともに狭隘化対策,さらには世界的水準の研究開発の実施を可能とし,産学官の共同利用及び国際的な連携・交流を促進するための高度化を計画的に推進することとしている。


(1) 国立試験研究機関等における施設・設備の整備

研究活動の基盤となる施設・設備の高度化,大規模化が進んでいる中で,これら施設・設備の整備は効率的な研究の推進にとって必要であるのみならず,研究開発の成果そのものを左右する重要な条件となってきている。政府としても重要研究課題を中心に国立試験研究機関における研究開発施設の整備・充実に努めており,平成10年度には,公共投資重点化枠や補正予算を活用して国立試験研究機関の老朽化・高度化等の研究施設の整備に必要な経費を措置し,科学技術庁においてはフロンティア構造材料研究施設の整備等を推進している。

施設・設備の整備については,その施策の一つとして,科学技術庁が世界最高性能の大型放射光施設(SPring-8)整備計画を推進している。日本原子力研究所及び理化学研究所が共同してその整備にあたり,平成9年10月に供用を開始した。大型放射光施設は,光速近くまで加速された電子が,磁場により曲げられた時に発生する光(放射光)を利用し,物質・材料系科学技術,ライフサイエンス,情報・電子系科学技術,医学への応用等幅広い分野で最先端の研究を行うための施設である。欧米においても,同様の大型放射光施設の計画が進められており,欧州では1994年(平成6年),米国では1996年(平成8年)に供用が開始されている( 第3-2-14表 )。SPring-8は,基礎的・創造的研究開発を推進する上での重要な研究開発基盤施設の一つであり,我が国の基礎研究の振興のみならず,国際的な研究交流の一層の推進に貢献することが期待されている。このため,平成6年6月に「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」が制定され,これを受けて当該施設に係る利用課題の募集・選定や技術的支援等,利用者との関係を一元的に扱う指定法人(放射光利用研究促進機構)制度を導入するなど,国内外の研究者に広く開かれた施設とするための体制整備を行っている。同法第11条に基づき,平成6年10月には,財団法人「高輝度光科学研究センター」を放射光利用研究促進機構に指定し,共用の促進を図っている。平成10年度は,共用ビームラインの利用研究課題の募集・選定を行い,国内外の研究者による利用研究を推進した。また,共用ビームラインの建設など,施設の整備を引き続き行った。専用ビームラインについては,既に利用中の1本(兵庫県),整備中の5本(産業利用共同体2本,無機材研1本,大阪大学2本)に加え,新たに台湾が2本のビームラインの整備に着手した。なお,文部省においては,加速器科学分野の中心機関の一つである高エネルギー加速器研究機構が,世界に先駆けて特色ある研究を進めるため,大強度放射光実験設備による研究等を行っている。

科学技術基本計画策定以降の国立試験研究機関における施設の老朽化・狭隘化対策のための予算額の推移,施設の修繕・改善必要な割合及び購入後10年を経過した設備の割合を 第3-2-15 , 16 及び 17図 に示す。

第3-2-14表 世界の大型放射光施設計画

第3-2-15図 国立試験研究機関における施設の老朽化・狭隘化対策のための予算額の推移

第3-2-16図 国立試験研究機関における施設の修繕・改善の必要な施設の割合

第3-2-17図 国立試験研究機関における購入後10年を経過した設備の割合


(2) 大学等における施設・設備の整備

近年,国立学校施設の老朽化・狭隘化が進むとともに,変化する時代に対応した研究基盤の整備・充実を図ることが課題となっている。国立大学における築後20年以上を経過した施設の面積,改善された面積の累計及び購入後10年を経過した設備の割合を 第3-2-18 及び 19図 に示す。

このため,文部省では次のような施策に取り組んでいる。

第一は,施設の老朽化・狭隘化を改善するための施策である。老朽化した施設を今日の教育研究にふさわしい機能を備えたものにするため,建物の改築・改修並びにエネルギー供給設備等の基幹設備の更新等を進めている。また,高度化,多様化する教育研究に必要な実験研究のための十分なスペースを確保するため「施設基準面積」の改定を行っている。

第二は,時代の変化に対応した施設整備を推進するための施策である。

現在,全国の国立大学では時代の変化に対応して,積極的に大学改革を進めており,大学院の拡充や学部学科の改組など国立大学が大きく変化している。また,国際化・情報化の進展など大学をめぐる状況も大きく変化しており,このような変化に伴って生じる新たな施設整備の需要に対応する必要がある。

第3-2-18図 国立大学における施設の老朽化・狭隘化の対応

第3-2-19図 国立大学における購入後10年を経過した設備の割合

これらの施策を行うため,国立学校施設整備関係の予算額は,約2,065億円を計上している。

また,国立大学等における研究設備については,平成10年度当初予算に約186億円を措置するとともに,補正予算で約332億円を措置し,新しい研究分野の開拓・発展をもたらすような研究に必要な先導的研究設備の充実等を図っている。

特に,大型光学赤外線望遠鏡(国立天文台),Bファクトリー計画(高エネルギー加速器研究機構)等の世界最先端の設備の整備を進めている。

私立大学等の研究施設,研究設備の整備に関する助成としては,私立大学等の学術研究及び情報処理教育等の振興を図るとともに,高等教育を活性化するため,私立の大学・大学院の大型の「研究装置」及び私立の大学,短期大学,高等専門学校,専修学校(専門課程)の大型の「教育装置」の整備に必要な経費について補助し,逐年その充実を図ってきている。

関係予算として従来から補助している基礎的な研究に必要な機械・器具である「研究設備」や「情報処理関係設備」の整備に必要な経費を含めて,平成10年度には,当初予算及び補正予算を合わせて総額545億円を計上している。

そのうち,我が国の学術研究の振興を図り,情報化など高等教育の高度化を推進するため,特色ある教育研究プロジェクトに着目した助成を重視し,私立大学等における大型の教育研究装置などの整備に関する経費について補助している。

平成10年度においては,1)私立大学における中核的な研究拠点に対する支援を行う「学術研究フロンティア事業」において,新たに,環境,生命科学,情報通信等の学際的な分野の共同研究を支援するための「学際領域共同研究推進プログラム」を創設するとともに,2)最先端の研究開発プロジェクトに対する支援を行う「ハイテク・リサーチ・センター整備事業」や,3)衛星通信等のマルチメディアを活用した「ジョイント・サテライト事業」を拡充することとし,当初予算及び補正予算を合わせて総額374億円を計上した。

なお,国立大学や国立試験研究機関の敷地内に民間等による共同研究施設の整備の推進を図るため,施設の設置者に廉価で国有地を使用させることができるようにするための,研究交流促進法の一部を改正する法律が平成10年8月に施行された。


2. 研究分野の情報化と科学技術情報流通の促進

21世紀をにらみ,新たな社会革命ともいわれる高度情報通信社会の構築に向けた動きが始まる中,資源に乏しい我が国が,将来にわたり持続的な経済発展を遂げていくためには,科学技術振興のための基盤を「未来への発展基盤」として整備していくことが重要である。このためには,研究分野の情報化を推進することにより研究開発環境を整備・維持することの必要性が指摘されている。国立試験研究機関の定員1人当たりの情報通信付きコンピュータの保有台数は,科学技術基本計画策定以降,着実にのびている( 第3-2-20図 )。

また,科学技術情報は,高度の知識と多額の研究投資が集約された研究開発の成果であるとともに,科学技術の振興を支える重要な基盤の一つでもある。年々増え続ける科学技術情報の中から的確な情報を迅速に入手するため,情報を収集・整理して,検索しやすい形に加工した上,個々の利用者の要求に応じて適切な形で提供するという情報流通の促進の重要性がますます高まっている。

このため,高度情報通信社会に対応し研究開発活動の高度化を図るとともに,研究開発活動の現状や成果等を広く内外に発信していくため,各研究開発機関における情報通信基盤の整備,大学間,国立試験研究機関間等の情報ネットワークの整備,科学技術に関するデータベースの整備等を進めている。また,研究開発活動や研究の企画立案,評価等に活用できる研究者,研究資源及び研究成果に関する案内情報のデータベース化を促進する必要がある。

第3-2-20図 情報通信基盤の整備状況(国立試験研究機関の定員1人当たりの情報通信付きコンピュータ保有台数)


(1) 研究分野の情報化の促進

近年,研究開発活動の学際化や国際化が著しく,その内容や手段が急速に高度化していることから,今後とも我が国の研究開発活動を国際レベルで展開していくためには,21世紀に向けての「先行投資」として研究分野の情報化の推進を図ることが不可欠である。

研究分野の情報化は,時間・空間の制約,所属・専門分野の枠を越え,世界規模での知的資源の効率的利用,国際協力活動の効果的な展開等を可能にするとともに,新たな研究領域や研究手法の創造,研究活動の質的な変革をもたらすものである。

また,研究情報ネットワークとして米国から始まったインターネットが,その後様々な分野における利用へと発展したように,高度情報化における研究者の先駆的活動は,社会全般の情報化を促進し,高度情報通信社会通信社会を実現するための先導的役割を果たすことが期待されている。

国際的には,米国のCIC計画,欧州のESPRIT計画等,国際的競争力を念頭においた情報科学技術分野の開発が進められている。我が国においても,平成9年7月,内閣総理大臣より科学技術会議に対し,諮問第25号「未来を拓く情報科学技術の戦略的な推進方策の在り方について」が諮られ,平成11年2月,情報科学技術部会において円滑な情報流通促進策等を取りまとめた答申案が出された。

我が国では,研究機関,省庁,国の枠を越えて研究機関間を結ぶ研究情報ネットワーク等の効率的・効果的な整備の推進に資するため,平成6年度から平成8年度にかけて科学技術振興調整費の「研究情報整備・省際研究情報ネットワーク推進制度」を設けて取り組んできたが,平成8年度に科学技術振興事業団に運用を移管した。さらに,平成10年度からは,本ネットワーク等大容量ネットワークを活用した研究開発を推進する制度「計算科学技術活用型特定研究開発」を設け,高度なネットワーク利用を促進している。

また,データベース等の情報資源(コンテンツ)についても,これを質的に高度化し,量的にも充実していくとともに,ネットワークを介した高性能コンピュータの利用技術の高度化等の計算科学技術を推進するなど,ハードとソフトのバランスのとれた発展を図っていくことも重要である。

特に,ネットワークを流通するデータベースやソフトウェア等の情報資源については,欧米に依存する状況であり,我が国の科学技術情報を積極的に国際発信する観点からも早急に整備を進める必要がある。

研究分野の情報化を推進するための方策の検討については,科学技術会議情報科学技術部会の下に置かれている科学技術情報流通体制分科会(平成10年3月発足)において,基盤的なデータベースの整備,情報流通に係る基礎的・基盤的な研究開発機能の強化等当面の具体的方策について検討し,平成10年11月に報告書「科学技術情報の円滑な流通のために」を取りまとめた。

また,平成6年8月に内閣に設置された,高度情報通信社会推進本部(本部長:内閣総理大臣,全閣僚が本部員)においては,高度情報通信社会の実現に向けて,公共分野の情報化を推進する際の課題と対応等として,「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」を取りまとめている(平成7年2月策定,平成10年11月更新)。また,同基本方針を推進するための当面の具体的目標について「高度情報通信社会推進に向けた基本方針〜アクション・プラン〜」の策定を行っており,研究分野の情報化についても,検討を進めている。


(2) 研究情報資源の充実

研究情報のオンラインでの流通は,急速に増加しており,ネットワーク上に提供できる研究情報資源(コンテンツ)の充実の必要性はますます高くなっている。特に,

1)質・量の双方の面から見た研究情報資源(コンテンツ)の一層の充実
2)公開・流通のための体制の整備
3)円滑かつ効率的な情報流通体制の整備
4)我が国研究情報資源の積極的な国際発信
5)国民生活に身近な科学技術情報の充実とその提供

が従来より指摘されている。

このうち,コンテンツの一層の充実のための施策として,ネットワークに対応した機能性の高いデータベースの構築が有効であり,科学技術振興事業団において,研究者の優秀なアシスタントとしての高度な知的機能を有するデータベース(高機能基盤データベース)の開発を行っている。さらに,国立試験研究機関等に蓄積されているデータをデータベース化し,ネットワーク上に公開することにより,貴重な知的ストックとしての研究情報を広く流通させる研究情報データベース化支援事業を同事業団で実施している。今後とも,各種研究活動に共通するような基盤的,分野横断的なデータベースについては,公的機関が中心となってその整備を図ることが重要である。データベース化支援事業の予算額の推移を 第3-2-21図 に示す。

また,ネットワーク上に独立に発信され,流通している情報の利用を促進するため,有用情報を案内する機能や複数の関連データベースの同時検索技術の開発及び研究開発活動の評価の指標に資するデータベースの整備を行っている( 第3-2-22表 )。

第3-2-21図 データベース化支援事業の予算額の推移

第3-2-22表 主な研究情報基盤関連施策の概要(平成10年度)


(3) その他の科学技術情報活動

1)一次情報サービス

閲覧・複写・貸出等による一次情報(論文等の原文献)の提供サービスは,図書館のほか,様々な情報サービス機関で行われている。

一次情報のデータベース化について,国立国会図書館には,納本制度によって我が国で発行されるすべての出版物が納本されることになっでおり,収集・保管資料に関するデータベースが作成され,オンラインで提供されている。文部省では,学術情報センターが,全国の国公私立大学等の協力を得て,大学図書館が所蔵している学術図書・雑誌の目録所在情報データベースを作成・提供している。農林水産省においても,農林水産省の試験研究機関などで所蔵している図書資料類の所在情報データベース(農林水産省試験研究機関総合目録)を作成・提供している。

また,我が国の情報発信機能を強化するため,科学技術振興事業団は,学術情報センターと連携して研究成果論文等,最先端の科学技術情報をオンラインで集積,整備,発信するシステムを平成10年度に構築した。今後,電子ジャーナル,予稿集等の編集・発行等の研究情報発信を通した一次情報サービスを実施する。

2)二次情報サービス

情報をコンピュータを利用して編集し,データベース化することにより,増大する情報の迅速,正確かつ容易な検索が可能となった。科学技術振興事業団においては,世界50数か国より科学技術全分野に関する資料を収集し,科学技術文献データベースを構築(年間71万件)し,JICSTオンライン情報システム(JOIS)を通じて提供している。平成9年度からは,インターネットからJOISへのアクセスを可能にし,より多くの人に使いやすいシステムとした。学術情報センターにおいては,学術研究に関するデータベースを作成し,全国の国公私立大学等を結ぶ学術情報ネットワークを通じて提供している。このほか,(財)日本特許情報機構では,特許情報をデータベース化し,オンライン(PATOLIS)で提供するなど様々なデータベースが作成・提供されている。農林水産省では,国際連合食料農業機関(FAO)が作成している国際科学技術情報システム(AGRIS)の我が国における入カセンターとして,農学全般,動・植物学,林学,水産学,食品関係などの分野に関する文献情報を共同構築・提供している。

3)クリアリングサービス

研究課題についての情報を提供するクリアリングサービスについては,科学技術振興事業団が,公共試験研究機関の研究機関,研究課題,研究者,研究資源情報をインターネットで提供し,また,学術情報センターが,科学研究費補助金により行われた研究の研究成果報告概要のデータベースを作成し,オンライン(NACSIS-IR)で提供している。

4)研究開発分野の情報化の促進

科学技術振興事業団では,平成10年度から,欧米に比して立ち遅れているといわれる研究開発における情報学的手法の活用を促進するため,高速ネットワーク等の情報基盤を活用し,計算科学技術の活用または大量データ転送・解析を伴う研究開発を公募により推進する「計算科学技術活用型特定研究開発推進制度」を開始した。

5)科学技術情報の国際流通

我が国の科学技術の発展に伴って,科学技術情報分野での国際協力が重要になってきている。このような協力をより推進し,海外からの日本情報発信の要望に応えるとともに,我が国の科学技術情報の積極的な国際流通を図るため,科学技術振興事業団は,米国のケミカル・アブストラクツ・サービス(CAS),ドイツのFIZ-カールスルーエとの間で1987年(昭和62年)に構築した国際科学技術情報ネットワーク(STN International)を年々拡充し,現在200種以上のデータベースをサービスしている。また,米国との協力については1996年(平成8年)5月より米国の商務省と協力し,科学技術日本文献機械翻訳センターを米国に開設し,日英機械翻訳システムの運用を行っている。一方,対アジア協力の促進のため,1997年(平成9年)2月に,マレーシア事業所を開設し,科学技術情報の国際流通促進をめざした協力業務を展開している。さらに,日本,韓国,オーストラリア共同提案でAPECプロジェクト「科学技術情報流通促進」を進めており,APEC域内においてインターネットによる各国の研究情報に関するディレクトリーの作成や,研究情報のCD-ROMによる提供等を,日本の科学技術振興事業団,韓国の韓国科学技術研究院附設研究開発情報センター(KORDIC)及びオーストラリアの産業科学観光省国際科学技術課の3者を中心に行っている。学術情報センターではインターネットを経由して,海外の研究機関等との情報交換,情報検索サービスの提供を行うなど,学術情報の国際的な流通の促進を図っている。

6)科学技術情報に関する研究開発の進展

科学技術振興調整費「研究情報整備・省際ネットワーク推進制度」により構築された省際研究情報ネットワーク(IMnet)を,1997年(平成9年)1月から科学技術振興事業団で運用・管理している。接続されているのは,14省庁にわたる国立試験研究機関を中心に99機関であり,さらに米国,韓国と接続して研究情報流通のバックボーンとなっている。

平成10年5月,各省庁の持つネットワークの相互作用により,米国をはじめAPEC地域を接続する,アジア太平洋高度研究情報ネットワーク(APAN)が設置された。また,平成8年度からは「広域高速ネットワークを利用した生活工学アプリケーションの調査研究」,平成9年度から「生物系研究資材のデータベース化及びネットワークシステム構築のための基盤的研究開発」,平成10年度から「大容量情報の超高速伝送・処理の実現」が実施されている。

農林水産省でも,「有用植物の病害診断システム(ファクトデータベース)」等の研究開発を行っている。

郵政省では,通信・放送機構への出資により,全国規模の超高速光ファイバ通信網及び共同利用型研究開発施設等からなる「研究開発用ギガビットネットワーク(JGN)」を整備している。これを,平成15年度末までの間,ネットワークの高度化のために必要な技術や,高速なネットワークを活用するアプリケーションに関する研究開発のためのテストベッドとして活用することとしている。

○省際研究情報ネットワーク(IMnet)の整備状況(平成7年度→10年度)

・既存回線の高速化

東京-米国:2Mbps→70Mbps1
東京-筑波:45Mbps→155Mbps1
東京-大阪:3Mbps→45Mbps

・ IMnetの全国展開

筑波-東京-大阪→札幌-仙台-筑波-東京-大阪-福岡

○研究開発用ギガビットネットワークの整備(平成10年度)

・超高速光ファイバ回線(ギガビット/秒級)アクセスポイント45箇所
・共同利用型研究開発施設:5箇所

7)学術情報の収集と提供

文部省では,全国の国公私立大学の参加の下に,学術情報センター,大学図書館,大型計算機センターや情報処理センター等をコンピュータと通信網で結合し,大学等の研究者が必要とする学術情報を迅速・的確に提供する学術情報システムの整備を積極的に進めている。

ア.学術情報ネットワーク

学術情報システムの一環として学術情報センターでは国公私立大学等を相互に接続する学術情報ネットワークを構築・運営している。これは,学術情報流通のためのネットワークで,研究情報やコンピュータの共同利用を可能とするものである。このネットワークに参加している機関は,平成10年3月現在で,大学406,その他機関315の計721機関となり,前年比108機関の増となっている。

また,学術情報ネットワークの回線速度の高速化,国際接続の拡充を進めてきており,平成10年度は主要幹線の一部を高速化するとともに,ノード(接続拠点)を29機関から32機関に増設することとしている。また,米国との国際接続を45Mbpsから150Mbpsへ高速化するほか,新たに民間等ネットワークとの相互接続を45Mbpsで行うこととしている。

○学術情報ネットワーク(SINET)の整備状況(平成7年度→10年度)

・国内回線:接続拠点29ノード→32ノード50(3ノード),6(15ノード),1(11ノード)Mbps→150(7ノード),50(8ノード),6(17ノード)Mbps
・国際回線:対米国6Mbps→150Mbsp
・接続機関数:479機関(平成8年3月現在)→721機関(平成10年3月現在)

○省際研究情報ネットワークと学術情報ネットワークとの接続強化

(平成7年度→10年度):6Mbps lOOMbps

イ.キャンパス情報ネットワーク(学内LAN)

大学等の学内の各種コンピュータ間を接続する,キャンパス情報ネットワーク(学内LAN)の整備を進めている。現在,通信機器の増強等キャンパス情報ネットワークの拡充を図るとともに,音声や動画などのマルチメディア情報の円滑な流通に対応するため,ATM(非同期転送モード)交換機の導入によるキャンパス情報ネットワークの高度化を進めており,これまでに76大学等に導入している。

また,私立大学等に対しては,平成7年度から学内LANの整備に必要な経費について助成を行っている。

ウ.通信衛星による大学間ネットワーク

大学等を結ぶネットワークとして,通信衛星の活用も積極的に進められている。メディア教育開発センターでは,大学等を通信衛星で結ぶことにより,合同授業等の遠隔教育を行うスペース・コラボレーション・システム事業(衛星通信大学間ネットワーク構築事業)を平成8年10月から実施している。

また,私立大学等についても,平成9年度から衛星通信ネットワークを活用したモデル的な教育研究事業に対する助成を行う私立大学ジョイント・サテライト事業(私立大学衛星通信ネットワーク構築事業)を実施している。


3. 知的基盤の整備

研究開発等の効率的な推進のためには,試験・計測・調査法等の改良・標準化,計量標準,研究開発に用いる材料の質・量両面での安定供給及び安全性・信頼性の確保等が必要である。このため,各種計量標準・試験評価方法の充実整備,生物遺伝資源,遺伝子資源等の研究材料の円滑な供給を図る等研究開発に係る知的基盤の整備を推進する必要がある。研究用材料の供給体制については,科学技術庁において理化学研究所がライフサイエンス研究に必要な動植物の培養細胞・遺伝子の収集・保存・供給を行うジーンバンク事業,微生物の系統保存・分譲事業を行っているほか日本原子力研究所においてRI(放射性核種)の供給を行っている。また,産学官の連携の下,知的基盤の整備に資する研究開発を一体的かつ体系的に実施するため,科学技術振興調整費を活用して,平成9年度より知的基盤整備推進制度を実施している。知的基盤整備推進制度の予算額の推移を 第3-2-23図 に示す。

第3-2-23図 知的基盤整備推進制度予算額の推移

(環境庁)

環境庁においては,環境汚染の指標,環境浄化機能を有する微生物及び遺伝子操作技術で開発された新微生物の収集・保存・提供を行っている。

(文部省)

文部省では,学術資料の整備のため,次のような事業を実施している。

学術標本を活用した教育・研究実績,学術標本の保有・整理状況及び地域性等を考慮しながら,大学等における学術研究活動により収集された動植物,化石等の学術標本を整理・保存,展示・公開するとともに,これら学術標本を対象に組織的に独自の研究・教育を行い,さらに,「社会に開かれた大学」の窓口として展示や講演会等を通じて人々の様々な学習ニーズに応えることができる施設として,ユニバーシティ・ミュージアムの整備を推進している。

近年のバイオサイエンスの著しい発展に伴い,生物学,医学,薬学,農学等の諸分野の研究推進に有用な生物遺伝資源の確保・保存体制の整備が必要となってきている。このため,大学等においては,研究上必要な各種生物系統の確保・保存等に努め,研究者の利用に役立てている。

医学,薬学,生物学等の研究においては,精度の高い動物実験が必要とされている。このため,文部省とおいては実験動物の研究開発や動物実験施設の整備を進めるとともに,科学的にはもとより,動物福祉にも配慮しつつ適切な動物実験が実施されるよう,大学等に要請している。

また,平成9年7月に学術審議会学術資料部会が取りまとめた「遺伝子操作動物の保存と供給について(報告)」を踏まえ,10年度に熊本大学に遺伝子操作動物に関する保存・供給・開発等を行うセンターを整備した。

(厚生省)

厚生省においては,ライフサイエンス,特に医学,薬学分野における研究に必要なヒト及び動物由来の培養細胞及び遺伝子の収集・保存を行うマスターバンクを国立医薬品食品衛生研究所及び国立感染症研究所に設置するとともに,(財)ヒューマンサイエンス振興財団を通じ研究者等に対する供給を行っている。

(農林水産省)

農林水産省においては,農林水産業等に係る植物,動物,微生物,林木,水産生物等の生物遺伝資源について,分類・同定,特性評価,増殖及び保存を行うとともに,生物遺伝資源及び生物遺伝資源情報を国立試験研究機関,民間,大学等に提供する農林水産ジーンバンク事業を進めているほか,ゲノム研究等遺伝子レベルの研究成果であるDNA及びDNA情報を収集,蓄積,提供するDNAバンク事業を行っている。

(通商産業省)

通商産業省においては,以下の整備を行っている。

計量標準・試験評価基盤の整備については,平成10年3月開所の「計量標準センター」も活用しつつ,国家計量標準種類の大幅拡充を図るとともに,物理標準,標準物質等の開発・設定に関する16テーマの研究を実施(既に2テーマが終了)し,平成12年度までに計量法JCSS制度に基づく計量標準供給につなげる予定(一部供給済み)である。また,「国際計量標準センター(仮称)」,「標準物質センター(仮称)」を建設し,計量標準整備基盤を強化する。

生物資源情報基盤の整備としては,海洋微生物(40種),極限環境微生物(150種)の資源保存,産業有用微生物のDNA解析,蛋白質解析,生物資源情報データベースのシステム開発を行うとともに,「生物資源情報解析センター」の整備に着手している。また,工業技術院生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センターにおいて特許に係る微生物の寄託,分譲等のほか,動植物細胞の保存技術の研究を行っている。

化学物質安全管理基盤の整備としては,化学物質のハザード(危険有害性)データの収集・整理,それらの安全性評価の実施,生分解性予測システム等の簡易・代替試験方法,内分泌かく乱物質のスクリーニング試験系等の開発を行っている。

その他,人間特性評価,材料試験評価等の研究,データベース整備の一部着手を行っている。

計量標準については,このほか,郵政省において,周波数,時間及び時刻の国家標準を定め,通報するための施設の整備を行っている。

なお,各省庁による知的基盤の保存・供給施設の整備状況については 第3-2-24表 のとおりである。

第3-2-24表 知的基盤の保存・供給施設の整備状況


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