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第3部  科学技術の振興に関して講じた施策
第2章  総合的かつ計画的な施策の展開
第1節  研究者等の養成・確保と研究開発システムの整備等



1. 研究者及び研究支援者の養成・確保

優れた研究者の養成・確保を図るためには,大学院等の教育研究の充実,フェローシップ制度の拡大充実や,大学・高等専門学校等における教育の改善・充実を進める必要がある。また,欧米に比べて手薄なポストドクトラル研究者層を充実・強化し,その研究歴を研究者のキャリア・パス(専門的な知識や技術,能力を身につけていく過程としての職歴,経歴)として確立することに努め,もって,研究者の能力かん養と,これらの研究者層が研究開発の重要な一翼を担う体制の実現を図る必要がある。さらに,研究者が研究開発活動に専念できるようにするため,研究開発を支援する人材を養成・確保するとともに,外部の支援機能を活用し得る制度を整備する必要がある。

(人材の養成)

科学技術系人材の養成については,次のような施策が講じられている。

1)大学院に重点を置いた人材の育成

近年の急速な技術革新,産業構造の変化に伴い,これまで以上に先端科学技術の分野を中心に,独創的で高度な教育研究の推進が求められており,特に,大学院に重点を置いて人材の養成に努めていくことが重要である。理工系の大学院については,国立大学が大きな役割を果たしており,平成10年度においては4大学で4研究科を,14大学で25専攻を新たに設置した。また,大学院生数は着実に増加しており,平成10年5月1日現在の在学者総数は178,901人にのぼる。( 第3-2-1図 )

第3-2-1図  大学院在学者数の推移

2)創造的な理工系人材の育成

現代社会の諸問題を解決し,豊かな未来社会を切り開いていくため,我が国は「科学技術創造立国」を目指し発展していく必要がある。このためには,研究面において新しい科学技術を創出していくとともに,これを支える理工系の優れた人材の養成が極めて重要である。

一方,若者の理工系離れ,理工系人材における創造性の不足などの問題が指摘されている。

このため,文部省では,平成6年と8年に大学の理工系分野の魅力向上及び創造的人材育成に関する報告書を取りまとめるとともに,理工系学部,大学院の新設など理工系教育の充実を図っている。

また,平成10年度予算においては,新たに,理工系学部における実験実習設備の高度化・現代化を推進するための予算(理工系教育高度化設備費8億円)を計上した。

3)理工系教育の改善・充実

現在進行中の大学改革においても,理工系の学部について教養教育と専門教育を有機的に関連させた教育課程を編成したり,総合的な判断力,ものの見方を養う学際的,総合的科目を開設するなどの改善が行われている。

また文部省では,科学技術の高度化,学際化に対応した教育研究体制を整備するため,国立大学の学部・学科の整備を進めており,平成10年度においては,15大学において学科の改組を行った。

今後も,社会のニーズを的確に把握し,それに対応した人材の養成に努めることとしている。

また,中学校卒業後から5年間一貫で実験実習を重視した教育を行うことにより,発想力豊かな実践的技術者を養成することを目的とする高等専門学校においても,科学技術の進展等に対応するため学科の新設,改組や専攻科の設置などの整備を進めている。平成10年度は,2校(旭川,北九州)の学科改組及び3校(宮城,福井,呉)の専攻科設置を行い,公立では神戸市立工業高等専門学校に専攻科が設置された。

4)リフレッシュ教育の推進

近年,技術革新の進展や産業構造の変化の中,職業人が大学院などの高等教育機関において継続的な教育(リフレッシュ教育)を受け,生涯にわたり最新かつ高度の知識・技術を修得することが重要になってきている。

このため,文部省ではリフレッシュ教育の積極的な推進を図っており,様々な制度改正を行うとともに,以下のような施策を実施している。

ア.リフレッシュ教育対応講座の新設

職業人の受け入れを推進し,教育研究条件を整備するため,リフレッシュ教育に対応した講座の新設を行っている。平成10年度においては広島大学工学研究科をはじめ4大学院において講座の新設を行った。

イ.情報提供体制

文部省は,リフレッシュ教育に関するパンフレット,PRビデオ等で啓発に努めるとともに,全国の大学・大学院等のリフレッシュ教育に関するガイドブックを発行している。また,企業から大学等への職業人の派遣状況や,企業のニーズ等について調査し,大学等へ情報を提供している。

5)インターンシップの推進

インターンシップ(学生が在学中に自らの専攻,将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと)については,従来から理工系の大学等を中心として一部の大学等において実施されてきたが,大学改革の一環としての教育内容・方法の改善充実,学生の高い職業意識の育成,時代の変化に柔軟に対応できる人材の育成などの観点から,各方面よりその重要性が指摘されている。

このため,「経済構造の変革と創造のための行動計画」等に基づき,文部省,通商産業省,労働省の関係省庁が連携を図りつつ,総合的な推進を図っている。平成10年度においては,インターンシップを実施する大学等に対する財政的支援やガイドブックの作成配布などの予算措置を講じたところである。また,平成9年度から行われている一部地域等における試行的取組の成果等を踏まえ,各地域におけるインターンシップへの取組が全国的に展開していくよう,モデル事業の実施,全国連絡会議やシンポジウムの開催等を行っている。さらに,大学等と産業界との連携を強化しつつ,インターンシップに関する情報の収集・提供体制の整備や全国の学生職業センター等における制度導入の促進のための支援事業の実施を通じ,インターンシップの本格的な取組を促した。

6)大学院及び学生に対する支援

文部省では,大学院に対する支援として,教育研究の高度化を重点的に推進するための高度化推進特別経費などの予算措置の充実を図っている。また,学生に対する支援については,優れた大学院学生が安心して進学できる環境の整備のため,研究奨励金を支給する日本学術振興会特別研究員制度や,日本育英会育英奨学事業,ティーチング・アシスタント(TA)経費などの充実に努めている。

日本育英会の育英奨学事業は,平成10年度には,時代を担う優れた若手研究者の育成及び高度の専門的知識・能力を有する職業人等の養成の観点から,大学院の貸与人員について,博士課程900人,修士課程2,500人,合計約3,000人以上の増員を図ることとした( 第3-2-2図 )。

第3-2-2図 日本育英会奨学金貸与人員総数(大学院生)の推移

(若手研究者の支援)

若手研究者の支援については,平成7年度から「ポストドクター等1万人支援計画」を掲げ,ポストドクター等の若手研究者層の育成,拡充等を図ってきている。平成10年度においても,科学技術基本計画で示されているとおり,平成12年度までに同支援計画を達成することをめざして,科学技術庁,文部省,厚生省,農林水産省及び通商産業省において,関連施策の拡充を図り,補正予算分を含めて計9,811人のポストドクター等を支援・活動する措置を講じた( 第3-2-3図 )。

第3-2-3図 ポストドクター等1万人支援計画の進捗状況

科学技術庁においては,創造性豊かな若手研究者を国立試験研究機関等に派遣する科学技術特別研究員制度で405人,独創性に富む若手研究者に理化学研究所において自発的かつ主体的に研究できる場を提供する基礎科学特別研究員制度で230人を受け入れるなど,関連施策を拡充し,補正予算分を含めて計1,927人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。

文部省においては,日本学術振興会による特別研究員制度等により,創造性豊かな優れた若手研究者4,420人への支援を行ったほか,出資金を活用した基礎研究推進制度である未来開拓学術研究推進事業において計718人の若手研究者を活用するなど,補正予算分を含めて計6,898人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。厚生省では,厚生科学研究推進事業により,計254人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。

農林水産省では,出資金を活用した基礎研究推進制度である新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業において,180人の若手研究者の活用を含め,計202人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。

通商産業省では,産業技術フェローシップ制度,AISTフェローシップ制度,ITIT特別研究員制度等により,補正予算分を含めて計530人のポストドクター等を支援・活用する措置を講じた。

(研究支援者)

研究開発活動の活性化を図るためには,研究者が研究開発活動に専念できるよう研究支援体制を充実することが不可欠である。科学技術基本計画策定以降の研究者1人当たりの研究者支援者数の推移は 第3-2一4表 のとおりである。

第3-2-4表 研究者1人当たりの研究支援者数の推移

このため,国立試験研究機関に関しては,科学技術振興事業団において,重点研究支援協力員制度を実施しており,国立試験研究機関を対象として,研究内容や研究者のニーズに合わせて,研究活動を支援する高度な知識・技術を有する者を手当することにより,研究支援体制の整備を図り,基礎的試験研究の効率的,効果的推進に努めている。平成10年度に対象とした国立試験研究機関は 第3-2-5表 のとおりである。

第3-2-5表 重点支援協力員制度平成10年度新規対象機関

国立大学や大学共同利用機関に関しては,質の高い知的資産の形成,新たな研究開発等を推進していくためには,最先端の研究を支える創造性豊かな研究者の養成・確保とともに,研究支援体制の整備が不可欠であるとの認識の下で,平成8年度から,国立大学や大学共同利用機関が行う研究プロジェクト等に,優れた大学院博士後期課程在学者をリサーチ・アシスタント(RA)として参画させ,研究遂行能力を確保し,研究プロジェクト等の効果的な推進を図っている。また,特殊技能等を有する外部人材が研究支援推進員として参画できるよう,研究支援者の確保のための事業を開始するとともに,平成7年度に創設したポスドク・レベルの若手研究者を参画させる非常勤研究員制度を拡充している。

このほか,科学技術庁では,科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画,研究,設計,分析,試験,評価,又はこれらに関する指導を行う技術士及び将来,技術士となることをめざして技術士の指導を受けながら技術士の業務を補助する技術士補について,毎年試験を行っている。平成10年度は,技術士については,2,577名が,技術士補については1,161名が合格した。また,平成10年度に技術士登録,技術士補登録を行ったものは,それぞれ1,500名,790名であった。

また,APECの場で,技術者資格の相互承認を目指したプロジェクトが進められており,我が国は科学技術庁を中心に各省庁連携してこれに対応してきている。この対応の一環として科学技術庁では「技術者資格問題懇談会」において,国際化に対応する技術者資格の在り方について検討を進めてきているとともに,技術士審議会において,国際化に対応した技術士資格の改善方策につき検討を進めている。さらに,文部省及び通商産業省の支援により,「国際的に通用するエンジニア教育検討委員会」((社)日本工学会,(社)日本工学教育協会)において,我が国の技術者が国際的に通用する上で必要な教育を担保するため,日本の大学の理工系学部等における技術者教育のアクレディテーション・システムの導入について検討している。


2. 研究開発システムの整備

研究者の創造性の発揮などをめざした柔軟かつ競争的で開かれた研究開発環境の実現に向けては,任期付任用制度や外部人材の採用といった人材流動化のための施策,産学官の連携や交流の促進施策,研究組織の運営の柔軟化を促進する施策が進められている。


(1) 任期付任用制度

創造的な研究活動の基礎となる柔軟で競争的な研究開発環境を実現するためには,研究者の流動化を促進させることが必要である。このため,平成9年6月に「一般職の任期付研究員の採用,給与及び勤務時間の特例に関する法律」を公布,施行し,国立試験研究機関が特に優れた研究者を円滑に結集・採用するための「招へい型」と,高い資質を有する研究者を採用し,創造的な研究能力をかん養するための「若手育成型」の2種類の任期付任用制度を導入した。平成11年3月末までの採用実績を 第3-2-6図 に示す。

第3-2-6図 国立試験研究機関における任期付研究員採用件数

また,国立試験研究機関における任期付任用制度の導入を促進するため,任期付研究員が限られた期間内に密度の高い研究活動を行うための経費を措置する流動促進研究制度(科学技術振興調整費)を平成9年度に創設した。

大学教員については,各大学の判断により選択的任期制の導入を可能とする「大学の教員等の任期に関する法律」が平成9年8月に施行された。各大学においては,任期制の導入を含めて,教員の流動性向上に向けた一層の取組が期待される。


(2) 外部人材の登用

外部の人材を活用した研究活動の活性化を図るため,外部人材の登用について,各関係機関が取り組んでいる。

国立試験研究機関にあっては,組織の活性化を図るばかりではなく,学会,産業界との連携を深めること等の見地から,所長に大学教授を迎える例が多くなっている。

大学にあっては,教員の採用方法として,人事の流動性を高め,優れた人材を確保するため,公募制をとる大学が増えている。また,多様な経歴・経験を持つ優れた人材を確保するため,社会人や外国人の採用を促進し,国立試験研究機関,民間企業の研究者をはじめとする大学外の人材が積極的に登用されている。

なお,平成10年10月の大学審議会答申においては,教員の採用については,大学・学部の理念・目標や将来構想に応じた選考を行うことが必要との観点から,教育面への配慮など選考基準をより実質化すること,全学的な人事の方針・基準を定めるに当たって,必要に応じて学長が大所高所からの方向性を示すことなどが適当であると提言されている。

また,民間事業者との契約を活用した研究支援者の確保については,労働者派遣法施行令の一部改正が行われて,平成8年12月以降,研究開発業務についても労働者派遣事業が可能な業務とされている。


(3) 産学官連携・交流の推進

(人的交流等の促進)

近年の研究開発は,高度化かつ複雑化し,境界領域,複合領域に拡大してきており,今後,創造的な科学技術の振興を図るためには,研究組織の枠を越えた人的・物的研究交流及びそれを可能とする体制の整備を積極的に推進し,限られた研究資源の効率的かつ効果的な活用を図ることが重要である。

産学官の連携・交流等の促進については,任期付任用制度の実現のほか,共同研究の推進など人的交流も促進する観点から円滑な運用が図られるよう積極的な取組が行われている。

国立大学,国立試験研究機関では,民間等との共同研究を一層推進することとしているが,その際,共同研究等休職制度を活用することとしている。

各省庁における産学官の連携による共同研究の推進については,例えば,科学技術振興調整費による総合研究等,農林水産省におけるバイオテクノロジー先端技術開発研究,通商産業省におけるエネルギー・環境領域総合技術開発推進計画(ニューサンシャイン計画),産業科学技術研究開発,中小企業地域産学官共同研究事業,官民連帯共同研究事業,郵政省における情報通信ブレークスルー基礎研究21,通信・放送機構を実施法人とした先導的研究開発などの制度により産学官の連携による総合的なプロジェクト研究が推進されている。また,各大学が国立試験研究機関等の産官の研究機関と連携を図る連携大学院の推進,科学技術振興調整費により,国立試験研究機関の優秀なリーダーを中心に省庁の枠を越え,国際的にも人材を結集し創造的な基礎研究を推進する省際基礎研究に加え,平成9年度より,任期付研究員が限られた任期中に特に密度の高い研究活動を効果的に行い,成果を上げることが可能となるよう必要な経費を措置し,国立試験研究機関における研究者の流動的かつ独創的な研究活動を推進する流動促進研究制度等により研究者の流動化の促進が図られている。

国が行う研究開発については,国家公務員制度,財産管理制度等の制約があり,民間や外国等の国以外の者との研究交流の促進を図る上での条件が十分に整っていなかった。このため,法制度上のあい路を改善すべく,昭和61年11月に研究交流促進法が施行されるとともに,運用上のあい路を改善するため,昭和62年3月に「産学官及び外国との研究交流の促進に関連する諸制度の運用に関する基本方針について」が閣議決定された。

研究交流促進法は,科学技術面での国際貢献の必要性が高まるとともに,基礎的・創造的研究の推進が内外から強く求められてきている状況の下,国の研究活動を取り巻く種々の制度的制約を一層緩和するために,適宜改正を行ってきた。平成10年度には,産学官それぞれの研究セクターがそれぞれの特色を活かしつつ,密接な連携の下で効果的かつ迅速に研究開発を進めていくための産学官連携による研究開発環境の整備に向けた施策の一環として,国立大学・国立試験研究機関等の敷地内に国以外のものによる共同研究施設が整備され,共同研究が促進されるよう当該敷地の廉価使用を可能とするべく同法の一部改正を行い,平成10年8月に施行された。

さらに,科学技術振興事業団では,産学官の研究者を結集した基礎的研究の実施等について豊富な経験を有することから,平成5年10月に研究者の交流の促進に関する業務等を追加し,研究交流を総合的に促進するための体制の整備を図った。

現在,研究者の交流に関する制度としては,各省庁の客員研究官制度や流動研究員制度等により,外部の研究者が国の試験研究機関において研究に参加しているほか,科学技術振興事業団の異分野研究者交流促進事業をはじめとする研究交流促進事業により,研究者の交流が推進されている。

また,産学官の研究交流の促進を図るため,各省庁において共同研究制度等が実施されているが,科学技術庁では,科学技術振興調整費を活用して国立試験研究機関,大学,地方自治体及び民間の有機的連携による研究開発を総合的に推進している。このほか,各省庁の受託研究制度により,国立試験研究機関において,産業界等外部からの委託を受けて受託研究が行われているところである。

国立大学が,民間等との共同研究を行う場合に,企業の施設内で共同研究する場合を拡大するよう,文部省は平成9年3月に,規程の見直しを図っており,国立大学等と民間等との共同研究の実施件数は着実に増えている( 第3-2-7図 )。

第3-2-7図 国立大学等と民間等との共同研究の実施件数の推移

また,国立試験研究機関の研究者が,民間等の研究に係る活動を行うことは,産学官連携による我が国の科学技術振興に資するとともに,国の研究者自らの能力をかん養し発揮する機会となることから,国の研究者の勤務時間外の民間等での研究,指導等への従事に係る兼業の許可については,円滑な運用に努める必要がある。従来は,兼業は私立大学の講師などが少数例認められている程度であったため,平成8年度から順次,通商産業省,科学技術庁,厚生省,農林水産省,郵政省及び運輸省は,勤務時間外の兼業について,兼業先との間に許認可や補助金の交付等のかかわりがなく,かつ,職務の遂行に支障がない場合には,原則として許可できることを明確化した。平成8年度から平成10年11月末までの兼業許可件数は累積で400件を越える( 第3-2-8図 )。また,国立大学等の教員が,勤務時間外に営利企業において研究開発等に従事する場合の兼業については,原則として許可することなど,文部省では,平成8年12月に関係通知を改正し,平成9年度から実施している( 第3-2-9図 )。

第3-2-8図 国立試験研究機関における兼業許可件数の推移

第3-2-9図 国立大学における兼業許可件数の推移

併せてこれらの省庁及び環境庁は,従来国に帰属させていた国の研究者の発明に係る特許権や実用新案権等の知的財産権に関し,権利を国と研究者の共有とすることなどに改めている。なお,国立大学等の教員の発明については,原則として発明した教員個人に帰属することとなっている。

このような措置は,上述の兼業の許可とあいまって,国の研究者と民間企業等との人材交流を促して研究開発の活性化や,国立試験研究機関の研究成果の製品化等を促進させるものである。

文部省では,国立大学等と民間との共同研究を推進するため,大学の研究者と民間の研究者とが共通の研究課題に取り組む民間等との共同研究制度,民間等からの研究を受託する受託研究制度,企業等に在籍する研究者に国立大学や大学共同利用機関が研究指導を行う受託研究員制度及び国立大学に設置して共同研究や受託研究を実施する場であるばかりではなく,企業等の技術者に対する研修や研究開発の技術相談を行い,産業界と連携・協力していく共同研究センターの設置等を行っている。共同研究センターは,国立大学における産業界等との研究協力・連携の全学的な推進を図るための場として,昭和62年度から整備しているものであり,平成10年度までに52大学に設置されている( 第3-2-10図 )。

第3-2-10図 共同研究センターを設置している大学数の累計

大学側の受入れ体制の整備にともない,大学施設内にハイテクベンチャー・ビジネスの育成につながる研究や教育を目的とした専門施設の整備も進められており,文部省では国立大学のベンチャー・ビジネス・ラボラトリーの整備,私立大学に対してハイテク・リサーチ・センター整備事業や学術フロンティア推進事業等の助成を行い,通商産業省ではリサーチ・オン・キャンパスの助成を行っている。

一方,大学,国立試験研究機関及び企業等が互いに補い合いつつ,人的交流の促進に貢献しているのが,産官の研究機関と大学院が連携を図る連携大学院制度であり,最近では,この制度の活用も広がってきている( 第3-2-11図 )。

第3-2-11図 連携大学院制度の活用状況

(研究施設等の共同利用の促進)

国立大学,国立試験研究機関,特殊法人における先端的かつ高度な研究開発施設等を外部の利用者の共同利用に供することは,研究交流の促進ばかりでなく,施設等の効率的利用の観点からも重要である。

科学技術庁では,日本原子力研究所と理化学研究所の共同事業として整備を進めている大型放射光施設(SPring-8)が平成9年10月に供用を開始した。SPring-8は,基礎研究をはじめ,広範な分野の研究に重要な成果をもたらすものであり,研究者の期待が大きい。このため,これを国内外の研究者に広く開放し,その利用の促進を図るため,平成6年6月に「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」が制定された。

また,平成8年3月,航空・電子等技術審議会において取りまとめられた「大型放射光施設(SPring-8)の効果的な利用・運営の在り方について」(諮問第20号)を受け,SPring-8の利用促進,施設利用の高度化,施設の適切な管理運営等について本施設の効果的な利用・運営に向けた施策を推進している。

平成10年度においては,国内外のあらゆる利用者,すべての研究分野に対して,公平な利用機会を提供することを基本として,放射光利用研究促進機構が利用研究課題の募集・選定を行った。平成10年度に実施される利用研究課題として,約300件の課題を採択し,幅広い分野の利用研究を推進した。

文部省では,学術研究の進展に伴い,個別の大学の枠を越え,全国的観点に立った研究者の結集や共同研究の実施が可能な場として,高エネルギー物理学研究所(昭和46年創設,平成9年度に高エネルギー加速器研究機構に改組)をはじめとする「大学共同利用機関」を順次準備してきた。各大学共同利用機関におい丁は,特色ある施設設備や資料を用いて,国公私立大学等の研究者による共同研究が進められている。


(4) 組織運営の柔軟化及び資金の効果的使用

組織運営の柔軟化及び資金の効果的使用も研究開発の進展や変化に対応子るためには重要である。このため,国立試験研究機関においては,研究実績に応じて所長等の裁量で予算を重点配分すること,研究課題に応じた研究者の配置と研究期間の設定等,研究開発の進展や変化に対応するため,機関内の措置により機動的,弾力的に改変できる組織形態を活用する取組が開始されている。

文部省では,平成10年10月の大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」において,学長のリーダーシップの下に適時適切な意思決定を行い実行できる組織運営システムの確立が提言されたのを受け,制度改正をはじめとしてその具体化に取り組んでいるところである。

また,科学技術庁では,科学技術振興調整費を活用して,複数の研究機関がその壁を取り払って,人材面,資金面,設備面で融合した研究グループを形成し,そこに国内外の優秀な研究者を開放的に結集させ,研究総括責任者の統一的なマネジメントにより,研究者の適正な配置,研究資金の統一的な活用,研究施設の共同使用などにより一体となった体制で,学際的な研究を遂行する「開放的融合研究推進制度」を平成10年度に創設した( 第3-2-12表 )。

さらに,文部省においては,平成10年度より,国立大学等の教官が企業等外部から委託された研究等を行う場合において,研究の進展や研究計画の変更に伴う費目の変更に柔軟に対応するため,従来3つに分かれていた費目を統合した新たな費目((目)産学連携等研究費)を創設した。これにより,資金の効果的活用が促進されるとともに,国立大学等における研究活動の更なる進展が期待されている。

第3-2-12表 開放的融合研究対象課題


3. 研究活動の評価

研究開発活動の効率化・活性化を図り,より優れた成果を上げていくためには,研究者の業績等を適切に評価するとともに,研究開発課題及び研究開発機関について厳正な評価を実施することが必要である。

平成8年7月に閣議決定された科学技術基本計画を受けて,科学技術会議の意見具申に基づき,平成9年8月「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」が内閣総理大臣決定され,同指針に沿って関係省庁において研究開発の評価が進められている。

科学技術会議政策委員会においては,平成10年7月から10月にかけて,関係省庁における評価の取組が同指針に沿った適切なものであるかの確認,問題点の把握等のために調査を実施し,以下の見解を取りまとめた。

(評価の実施状況)

・評価のための要領・規定等の整備については,研究開発機関や主要な研究開発制度等の大半で整備済み。
・評価の実施状況については,広範に評価が行われているが,中間,事後評価の実施数が少ない。
・大半が外部評価を導入。また,全体の1/3が何らかの形で外部有識者(非専門家)も参画。国民意見の反映のため,インターネットでの意見募集等を実施。
・評価結果については,研究者レベルではまだ実感するまでには至っていない。

(今後の取組への留意事項)

・評価が定着することが必要であり,経験の蓄積とともに軽減される部分もあるが,厳正に評価を行いつつ,評価に伴う過重な負担の回避も必要。
・研究開発の性格に応じた適切な評価(評価項目・基準)の実施が期待。
・評価結果を実効的に活用し,研究開発に反映していくことが重要。

また,関係15省庁からなる[研究開発の評価の推進に関する関係省庁連絡会議」を開催し,幅広く情報交換を行うとともに,平成11年1月に同指針に基づきなされている研究開発の評価の現状を一括して取りまとめた「研究開発の評価の現状」を作成し,公表した。平成10年度の関係省庁における評価の取組状況は 第3-2-13表 のとおりである。

第3-2-13表 関係省庁における評価の取組状況


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