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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第2章  総合的かつ計画的な施策の展開
第2節  研究開発基盤の整備・充実
2.  研究分野の情報化と科学技術情報流通の促進


 21世紀をにらみ,新たな社会革命ともいわれる高度情報通信社会の構築に向けた動きが始まる中,資源に乏しい我が国が,将来にわたり持続的な経済発展を遂げていくためには,科学技術振興のための基盤を「未来への発展基盤」として整備していくことが重要である。このためには,研究分野の情報化を推進することにより研究開発環境を整備・維持することの必要性が指摘されている。

 また,科学技術情報は,高度の知識と多額の研究投資が集約された研究開発の成果であるとともに,科学技術の振興を支える重要な基盤の一つでもある。年々増え続ける科学技術情報の中から的確な情報を迅速に入手するため,情報を収集・整理して,検索しやすい形に加工した上,個々の利用者の要求に応じて適切な形で提供するという情報流通の促進の重要性がますます高まっている。

 このため,高度情報通信社会に対応し研究開発活動の高度化を図るとともに,研究開発活動の現状や成果等を広く内外に発信していくため,各研究開発機関における情報通信基盤の整備,大学間,国立試験研究機関間等の情報ネットワークの整備,科学技術に関するデータベースの整備等を進めている。また,研究開発活動や研究の企画立案,評価等に活用できる研究者及び研究資源に関する案内情報のデータベース化を促進する必要がある。


(1) 研究分野の情報化の促進

 近年,研究開発活動の学際化や国際化が著しく,その内容や手段が急速に高度化していることから,今後とも我が国の研究開発活動を国際レベルで展開していくためには,21世紀に向けての「先行投資」として研究分野の情報化の推進を図ることが不可欠である。

 研究分野の情報化は,時間・空間の制約,所属・専門分野の枠を越え,世界規模での知的資源の効率的利用,国際協力活動の効果的な展開等を可能にするとともに,新たな研究領域や研究手法の創造,研究活動の質的な変革をもたらすものである。

 また,研究情報ネットワークとして米国から始まったインターネットが,その後様々な分野における利用へと発展したように,高度情報化における研究者の先駆的活動は,社会全般の情報化を促進し,高度情報通信社会を実現するための先導的役割を果たすことが期待されている。

 国際的には,米国のCIC計画,欧州のESPRIT計画等,国際的競争力を念頭においた情報科学技術分野の開発が進められている。我が国においても,平成9年7月,内閣総理大臣より科学技術会議に対し,諮問第25号「未来を拓く情報科学技術の戦略的な推進方策の在り方について」が諮られ,情報科学技術部会において今後の情報科学技術政策について調査審議されている。

 我が国では,研究機関,省庁,国の枠を越えた研究機関間を結ぶ研究情報ネットワーク等の効率的・効果的な整備の推進に資するため,平成6年度から平成8年度にかけて科学技術振興調整費の「研究情報整備・省際研究情報ネットワーク推進制度」を設けて取り組んできたが,1997年(平成9年)1月より科学技術振興事業団において「省際研究情報ネットワーク(IMnet)」の本格的運営を行う等研究情報基盤整備への取組が近年強化されつつある。しかしながら,今後はさらなる研究情報の流通の拡大が予想され,これに対応するためには,研究情報基盤の恒久的な整備を進めることが必要とされている。

 また,データベース等の情報資源(コンテンツ)についても,これを質的に高度化し,量的にも充実していくとともに,ネットワークを介した高性能コンピュータの利用技術の高度化等の計算科学技術を推進するなど,ハードとソフトのバランスのとれた発展を図っていくことも重要である。

 特に,ネットワークを流通するデータベースやソフトウェア等の情報資源については,欧米に依存する状況であり,我が国の科学技術情報を積極的に国際発信する観点からも早急に整備を進める必要がある。

 研究分野の情報化を推進するための方策の検討については,科学技術会議政策委員会の下に置かれている研究情報高度化小委員会(平成8年5月発足)で,平成9年6月に「最先端の研究を効果的に遂行しうる情報システムの在り方について」を取りまとめ,研究情報ネットワークとそのネットワークを流通する研究情報資源(アプリケーション,データベース等)の総合的推進方策について提言している。

 また,平成6年8月には内閣に高度情報通信社会推進本部(本部長:内閣総理大臣,全閣僚が本部員)が設置された。同推進本部では,高度情報通信社会の実現に向けて,公共分野の情報化を推進する際の課題と対応等を取りまとめ「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」(平成7年2月)を策定した。同基本方針には,公共分野の各分野ごとに実施指針を策定し,それに沿って情報化を推進すべきことが盛り込まれており,研究分野については平成7年8月,研究情報基盤関係省庁連絡会議において「研究開発活動の情報化実施指針」が取りまとめられた。その後,そのフォローアップを実施し,研究分野の情報化の推進に努めている。


(2) 研究情報資源の充実

 研究情報のオンラインでの流通は,急速に増加しており,ネットワーク上に提供できる研究情報資源(コンテンツ)の充実の必要性はますます高くなっている。特に,

{1}質・量の双方の面から見た研究情報資源(コンテンツ)の一層の充実
{2}公開・流通のための体制の整備
{3}円滑かつ効率的な情報流通体制の整備
{4}我が国研究情報資源の積極的な国際発信
{5}国民生活に身近な科学技術情報の充実とその提供

が従来より指摘されている。

 このうち,コンテンツの一層の充実のための施策として,ネットワークに対応した機能性の高いデータベースの構築が有効であり,科学技術振興事業団において,研究者の優秀なアシスタントとしての高度な知的機能を有するデータベース(高機能基盤データベース)の開発を行っている。さらに,国立試験研究機関等に蓄積されているデータをデータベース化し,ネットワーク上に公開することにより,貴重な知的ストックとしての研究情報を広く流通させる研究情報データベース化支援事業を同事業団で実施している。今後とも,各種研究活動に共通するような基盤的,分野横断的なデータベースについては,公的機関が中心となってその整備を図ることが重要である。

 また,ネットワーク上に独立に発信され,流通している情報の利用を促進するため,目的別に有用情報を案内する機能や複数の関連データベースの同時検索技術の開発及び研究開発活動の評価の指標に資するデータベースの整備も重要である。

  第3-2-3表 に平成9年度における研究情報基盤関連施策の概要を示す。

第3-2-3表 主な研究情報基盤関連施策の概要(平成9年度)


(3) その他の科学技術情報活動

{1} 一次情報サービス

 閲覧・複写・貸出等による一次情報(論文等の原文献)の提供サービスは,図書館のほか,様々な情報サービス機関で行われている。国立国会図書館には,納本制度によって我が国で発行されるすべての出版物が納本されることになっており,収集・保管資料に関するデータベースが作成され,オンラインで提供されている。文部省では,学術情報センターが,全国の国公私立大学等の協力を得て,大学図書館が所蔵している学術図書・雑誌の目録所在情報データベースを作成・提供している。農林水産省においても,農林水産省の試験研究機関などで所蔵している図書資料類の所在情報データベース(NCAT)を作成・提供している。

{2} 二次情報サービス

 情報をコンピュータを利用して編集し,データベース化することにより,増大する情報の迅速,正確かつ容易な検索が可能となった。科学技術振興事業団においては,世界50数か国より科学技術全分野に関する資料を収集し,科学技術文献データベースを構築(年間71万件)し,JICSTオンライン情報システム(JOIS)を通じて提供している。平成9年度からは,インターネットからJOISへのアクセスを可能にし,より多くの人に使いやすいシステムとした。学術情報センターにおいては,学術研究に関するデータベースを作成し,全国の国公私立大学等を結ぶ学術情報ネットワークを通じて提供している。このほか,(財)日本特許情報機構では,特許情報をデータベース化し,オンライン(PATOLIS)で提供するなど様々なデータベースが作成・提供されている。農林水産省では,農学全般,動・植物学,林学,水産学,食品関係などの分野に関する文献情報の我が国における入力センターとして,国際機関及び世界各国と協力してデータベースAGRISを共同構築・提供している。

{3} クリアリングサービス

 研究課題についての情報を提供するクリアリングサービスについては,科学技術振興事業団が,公共試験研究機関における研究課題情報を今後インターネットで提供し,また,学術情報センターが,科学研究費補助金により行われた研究の研究成果報告概要のデータベースを作成し,オンライン(NACSIS-IR)で提供している。

{4} 科学技術情報の国際流通

 我が国の科学技術の発展に伴って,科学技術情報分野での国際協力が重要になってきている。このような協力をより推進し,海外からの日本情報発信の要望に応えるとともに,我が国の科学技術情報の積極的な国際流通を図るため,科学技術振興事業団は,米国のケミカル・アブストラクツ・サービス(CAS),ドイツのFIZ-カールスルーエとの間で1987年(昭和62年)に構築した国際科学技術情報ネットワーク(STN International)を年々拡充し,現在200種以上のデータベースをサービスしている。また,米国との協力については1996年(平成8年)5月,米国の商務省と協力し,科学技術日本文献機械翻訳センターを米国に開設し,日英機械翻訳システムの運用を行った。一方,対アジア協力の促進のため,1997年(平成9年)2月に,マレーシア事業所を開設し,科学技術情報の国際流通促進をめざした協力業務を展開している。さらに,日韓豪共同提案でAPECプロジェクト「科学技術情報流通促進」を進めており,APEC域内においてインターネットによる各国の研究情報に関するディレクトリーの作成や,研究情報のCD-ROMによる提供等を,日本の科学技術振興事業団,韓国の韓国科学技術研究院附設研究開発情報センター(KORDIC)及びオーストラリアの産業科学観光省国際科学技術課の3者を中心に行っている。学術情報センターではインターネットを経由して,海外の研究機関等との情報交換,情報検索サービスの提供を行うなど,学術情報の国際的な流通の促進を図っている。また,JSTでは,我が国の科学技術情報の海外での普及を促進する事業を行っており,1996年(平成8年)8月には,インド(ニューデリー,バンガロール)において日本の科学技術情報に関するセミナーを開催した。

{5} 科学技術情報に関する研究開発の進展

 科学技術振興調整費「研究情報整備・省際ネットワーク推進制度」により構築された省際研究情報ネットワーク(IMnet)を,1997年(平成9年)1月から科学技術振興事業団で運用・管理している。接続されているのは,14省庁にわたる国立試験研究機関を中心に65機関であり,さらに米国,韓国と接続して研究情報流通のバックボーンとなっている。また,平成6年度から「物質関連データ(生体影響,食品成分,表面分析)のデータベース化に関する調査研究」,「地球観測データのデータベース化に関する研究」が実施され,1997年(平成9年)3月をもって第I期が終了し,現在第2期に入っている。また,平成7年度から実施された「省際ネットワークを利用した医療研究支援アプリケーションの調査研究」が,1998年(平成10年)3月をもって終了した。さらに,平成8年度からは「広域高速ネットワークを利用した生活工学アプリケーションの調査研究」,平成9年度から「生物系研究資材のデータベース化及びネットワークシステム構築のための基盤的研究開発」が実施されている。

 農林水産省でも,「作物育種情報管理システム(ファクトデータベース)」の開発研究を行っている。通商産業省においては,平成7年度に創設された研究情報基盤整備研究開発制度(RING-Program)により研究情報ネットワーク利用基盤技術及び研究資源を活用したアプリケーション技術に係る研究開発を進めている。

{6} 学術情報の収集と提供

 文部省では,全国の国公私立大学の参加の下に,学術情報センター,大学図書館,大型計算機センターや情報処理センター等をコンピュータと通信網で結合し,大学等の研究者が必要とする学術情報を迅速・的確に提供する学術情報システムの整備を積極的に進めている。

1) 学術情報ネットワークの高速化による学術情報流通の促進

 学術情報システムの一環として学術情報センターでは国公私立大学等を相互に接続する学術情報ネットワークを構築・運営している。これは,学術情報流通のためのネットワークで,研究情報やコンピュータの共同利用を可能とするものである。このネットワークに参加している機関は,平成9年3月現在で,大学364(国立89,公立38,私立237),その他機関249となっている。

 また国内外の学術情報流通を促進するため回線速度の高速化を図っており,国際接続については,米国,タイ,英国となっている。

2) キャンパス情報ネットワーク(学内LAN)の高度化

 大学等の学内の各種コンピュータ間を接続する,キャンパス情報ネットワーク(学内LAN)の整備は移転予定のある一部の大学等を除き,すべての国立大学・大学共同利用機関で整備されており,現在,マルチメディア情報の円滑な流通に対応するため,ATM(非同期転送モード)化を進めている(現在58大学に整備済み)。ATM化により音声や画像を高品位で伝送することができる。

 また,私立大学等に対しては,平成7年度から学内LANの整備に必要な経費について助成を行っている。

3)通信衛星による大学間ネットワークの促進

 大学等を結ぶネットワークとして,通信衛星の活用も積極的に進められている。メディア教育開発センターでは,大学等を通信衛星で結ぶスペース・コラボレーション・システム事業(衛星通信大学間ネットワーク構築事業)を平成8年10月から実施している。

 また,私立大学等についても,平成9年度から衛星通信ネットワークを活用したモデル的な教育研究事業に対する助成を行う私立大学ジョイント・サテライト事業(私立大学衛星通信ネットワーク構築事業)を実施している。


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