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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第2章  総合的かつ計画的な施策の展開
第1節  研究者等の養成・確保と研究開発システムの整備等
2.  研究開発システムの整備


 研究者の創造性の発揮などをめざした柔軟かつ競争的で開かれた研究開発環境の実現に向けては,任期付任用制度や外部人材の採用といった人材流動化のための施策,産学官の連携や交流の促進施策,研究組織の運営の柔軟化を促進する施策が進められている。


(1) 任期付任用制度

 創造的な研究活動の基礎となる柔軟で競争的な研究開発環境を実現するためには,研究者の流動化を促進させることが必要である。このため,平成9年6月に「一般職の任期付研究員の採用,給与及び勤務時間の特例に関する法律」を公布,施行し,国立試験研究機関が特に優れた研究者を採用するための「招へい型」と,高い資質を有する研究者を採用し,創造的な研究能力をかん養するための「若手育成型」の2種類の任期付任用制度を含む任期付任用制度を導入した。

 また,国立試験研究機関における任期付任用制度の導入を促進するため,任期付研究員が限られた期間内に密度の高い研究活動を行うための経費を措置する流動促進研究制度(科学技術振興調整費)を平成9年度に創設した。

 大学教員等については,大学審議会が,平成8年10月に「大学教員の任期制について」の答申を行っている。同答申においては,各大学等の判断により教員等に任期を定めることができることとする選択的任期制の導入を提言した。これを踏まえて,平成9年6月には「大学の教員等の任期に関する法律」が公布され,8月から施行された。各大学等においては,任期制の導入を含めて,教員等の流動性向上に向けた一層の取組が期待される。


(2) 外部人材の登用

 外部の人材を活用した研究活動の活性化を図るため,外部人材の登用について,各関係機関が取り組んでいる。

 国立試験研究機関にあっては,組織の活性化を図るばかりではなく,学会,産業界との連携を深めること等の見地から,所長に大学教授を迎える例が多くなっている。科学技術庁金属材料技術研究所の部長相当職である特別研究官には,ドイツ人の研究者を迎えている。また,通商産業省産業技術融合領域研究所長には,東京大学先端科学技術センター長を迎えている。

 大学にあっては,教員の採用方法として,人事の流動性を高め,優れた人材を確保するため,公募制をとる大学が増えている。また,社会人や外国人の採用を促進し,国立試験研究機関,民間企業の研究者をはじめとする大学外の人材が積極的に登用されている。

 また,民間事業者との契約を活用した研究支援者の確保については,労働者派遣法施行令の一部改正が行われて,平成8年12月以降,研究開発業務についても労働者派遣事業が可能な業務とされている。


(3) 産学官連携・交流の推進

(人的交流等の促進)

 産学官の連携・交流等の促進については,任期付任用制度の実現のほか,共同研究の推進など人的交流も促進する観点から円滑な運用が図られるよう積極的な取組が行われている。

 国立試験研究機関にあっては,民間等との共同研究を一層推進することとしているが,その際,国立試験研究機関に関する共同研究等休職制度を活用することとしている。

 各省庁において,共同研究の推進により産学官の連携が図られている。例えば,科学技術振興調整費による総合研究等,農林水産省におけるバイオテクノロジー先端技術開発研究,通商産業省におけるエネルギー・環境領域総合技術開発推進計画(ニューサンシャイン計画),産業科学技術研究開発,中小企業地域産学官共同研究事業,官民連帯共同研究事業,郵政省における電気通信フロンティア研究開発,通信・放送機構を実施法人とした先導的研究開発などの制度により産学官の連携による総合的なプロジェクト研究が推進されている。また,各大学が国立試験研究機関等の産官の研究機関と連携を図る連携大学院の推進,科学技術振興調整費により,国立試験研究機関の優秀なリーダーを中心に省庁の枠を越え,国際的にも人材を結集し創造的な基礎研究を推進する省際基礎研究に加え,平成9年度より,任期付研究員が限られた任期中に特に密度の高い研究活動を効果的に行い,成果を上げることが可能となるよう必要な経費を措置し,国立試験研究機関における研究者の流動的かつ独創的な研究活動を推進する流動促進研究制度等により研究者の流動化の促進が図られている。

 国立大学が,民間等との共同研究を行う場合に,企業の施設内で共同研究する場合を拡大するよう,文部省は平成9年3月に,規程の見直しを図った。また,国立大学等の教員が共同研究等のために休職する場合に退職手当算定上の不利益の解消を図るための法律案を第140回通常国会に提出し,平成9年4月に成立公布した。

 また,国立試験研究機関の研究者が,民間等の研究に係る活動を行うことは,産学官連携による我が国の科学技術振興に資するとともに,国の研究者自らの能力をかん養し発揮する機会となることから,国の研究者の勤務時間外の民間等での研究,指導等への従事に係る兼業の許可については,円滑な運用に努める必要がある。従来は,兼業は私立大学の講師などが少数例認められている程度であったため,平成8年度から順次,通商産業省,科学技術庁,厚生省,農林水産省,郵政省及び運輸省は,勤務時間外の兼業について,兼業先との間に許認可や補助金の交付等のかかわりがなく,かつ,職務の遂行に支障がない場合には,原則として許可できることを明確化した。併せてこれらの省庁は,国の研究者の発明に係る特許権や実用新案権等の知的財産権は,従来国に帰属させていたことに関し,権利を国と研究者の共有とすることなどに改めている。なお,国立大学等の教員の発明については,原則として発明した教員個人に帰属するシステムとなっている。このような措置は,上述の兼業の許可とあいまって,国の研究者と民間企業等との人材交流を促して研究開発の活性化や,国立試験研究機関の研究成果の製品化等を促進させるものである。

 国立大学等の教員が,勤務時間外に営利企業において研究開発等に従事する場合の兼業については,原則として許可することなど,文部省では,平成8年12月に関係通知を改正し,平成9年度から実施している。

 文部省では,国立大学等と民間との共同研究を推進するため,大学の研究者と民間の研究者とが共通の研究課題に取り組む民間等との共同研究制度,民間等からの研究を受託する受託研究制度,企業等に在籍する研究者に国立大学や大学共同利用機関が研究指導を行う受託研究員制度及び国立大学に設置して共同研究や受託研究を実施する場であるばかりではなく,企業等の技術者に対する研修や研究開発の技術相談を行い,産業界と連携・協力していく共同研究センターの設置等を行っている。

 大学側の受入れ体制の整備にともない,大学施設内にハイテクベンチャー・ビジネスの育成につながる研究や教育を目的とした専門施設の整備も進められており,文部省では国立大学のベンチャー・ビジネス・ラボラトリーの整備,私立大学に対してハイテク・リサーチ・センター整備事業や学術フロンティア推進事業等の助成を行い,通商産業省ではリサーチ・オン・キャンパスの助成を行っている。

 一方,大学,国立試験研究機関及び企業等が互いに補い合いつつ,人的交流の促進に貢献しているのが,産官の研究機関と大学院が連携を図る連携大学院制度である。

 近年の研究開発は,高度化かつ複雑化し,境界領域,複合領域に拡大してきており,今後,創造的な科学技術の振興を図るためには,研究組織の枠を越えた人的・物的研究交流及びそれを可能とする体制の整備を積極的に推進し,限られた研究資源の効率的かつ効果的な活用を図ることが重要である。

 国が行う研究開発については,国家公務員制度,財産管理制度等の制約があり,民間や外国等の国以外の者との研究交流の促進を図る上での条件が十分に整っていなかった。このため,法制度上のあい路を改善すべく,昭和61年11月に研究交流促進法が施行されるとともに,運用上のあい路を改善するため,昭和62年3月に「産学官及び外国との研究交流の促進に関連する諸制度の運用に関する基本方針について」が閣議決定された。

 研究交流促進法については,科学技術面での国際貢献の必要性が高まるとともに,基礎的・創造的研究の推進が内外から強く求められてきている状況の下,国の研究活動を取り巻く種々の制度的制約を一層緩和するために,平成4年7月に同法の一部改正法が施行された。また,産学官それぞれの研究セクターがそれぞれの特色を活かしつつ,密接な連携の下で効果的かつ迅速に研究開発を進めていくための産学官連携による研究開発環境の整備に向けた施策の一環として,国立大学・国立試験研究機関等の敷地内に国以外のものによる共同研究施設が整備され,共同研究が促進されるよう当該敷地の廉価使用を可能とするべく同法の一部改正法案が第142通常国会に提出された。

 さらに,科学技術振興事業団では,産学官の研究者を結集した基礎的研究の実施等について豊富な経験を有することから,平成5年10月に研究者の交流の促進に関する業務等を追加し,研究交流を総合的に促進するための体制の整備を図った。

 現在,研究者の交流に関する制度としては,各省庁の客員研究官制度や流動研究員制度等により,外部の研究者が国の試験研究機関において研究に参加しているほか,科学技術振興事業団の異分野研究者交流促進事業をはじめとする研究交流促進事業により,研究者の交流が推進されている。

 さらに,産学官の研究交流の促進を図るため,各省庁において共同研究制度等が実施されているが,科学技術庁では,平成8年度において,科学技術振興調整費の活用による国立試験研究機関,大学,地方自治体及び民間の有機的連携により,生活の質の向上及び地域の発展に資する目的指向的な研究開発を総合的に推進する「生活・社会基盤研究」及び個別の研究機関のみでは実施できないような共通の研究目標に対して,産学官の研究能力を結集しその有機的連携の下で基礎的・先導的科学技術分野等の研究を推進する「総合研究」の拡充を図った。このほか,各省庁の受託研究制度により,国立試験研究機関において,産業界等外部からの委託を受けて受託研究が行われているところである。

(研究施設等の共同利用の促進)

 国立大学,国立試験研究機関,特殊法人における先端的かつ高度な研究開発施設等を外部の利用者の共同利用に供することは,研究交流の促進ばかりでなく,施設等の効率的利用の観点からも重要である。

 科学技術庁では,日本原子力研究所と理化学研究所の共同事業として整備を進めている大型放射光施設(SPring-8)が平成9年10月に供用を開始した。SPring-8は,基礎研究をはじめ,広範な分野の研究に重要な成果をもたらすものであり,研究者の期待が大きい。このため,これを国内外の研究者に広く開放し,その利用の促進を図るため,平成6年6月に「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」が制定された。

 また,平成8年3月,航空・電子等技術審議会においてとりまとめられた「大型放射光施設(SPring-8)の効果的な利用・運営のあり方について」(諮問第20号)を受け,SPring-8の利用促進,施設利用の高度化,施設の適切な管理運営等について本施設の効果的な利用・運営に向けた施策を推進している。

 平成9年度においては,国内外の研究者による利用研究が開始されるとともに,放射光利用研究促進機構が,国内外のあらゆる利用者,すべての研究分野に対して,公平な利用機会を提供することを基本として,平成10年度の利用研究課題についての募集・選定を行った。

 文部省では,学術研究の進展に伴い,個別の大学の枠を越え,全国的観点に立った研究者の結集や共同研究の実施が可能な場として,高エネルギー物理学研究所(昭和46年創設,平成9年度に高エネルギー加速器研究機構に改組)をはじめとする「大学共同利用機関」を順次整備してきた。各大学共同利用機関においては,特色ある施設整備や資料を用いて,国公私立大学等の研究者による共同研究が進められている。


(4) 組織運営の柔軟化及び資金の効果的使用

 組織運営の柔軟化及び資金の効果的使用も研究開発の進展や変化に対応するためには重要である。このため,国立試験研究機関においては,研究実績に応じて所長等の裁量で予算を重点配分すること,研究課題に応じた研究者の配置と研究期間の設定等,研究開発の進展や変化に対応するため,機関内の措置により機動的,弾力的に改変できる組織形態を活用する取組が開始されている。

 文部省では,平成7年9月の大学審議会答申「大学運営の円滑化について」において,学長・学部長等のリーダーシップの発揮と教授会の円滑な運営のための条件整備等が提言されたことから,平成7年12月に,各大学の判断により,教授会の委任に基づき審議・議決を行う「代議員会」等を置くことができることを明確化した。今後,この制度を積極的に活用しつつ,組織運営の活性化に向けた主体的な取組が進められることが期待されている。


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