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第1部   変革の時代において
第3章  どのような取組が重要か-変革の実現に向けた研究社会の取組強化-
第3節  「活かす」-研究成果の社会への還元-
2.  研究成果の社会還元に対する取組の強化


(産学官の連携・交流)

 優れた研究成果の創出と成果の社会への還元という両面の重要性を考えた時,産学官の研究者,研究機関間における連携・交流の推進強化が求められる。

 「先端科学技術研究者調査」では産学官の共同研究に対する研究者の意識を調査している。同調査によると,約66%の研究者が自身の研究成果を上げるため産学官の共同研究は重要であるとしているが,3年前と比較して共同研究の機会が増加したか聞いたところ,増加したとの回答は約40%であったのに対し,変わらないとの回答は約47%であった( 第1-3-43図 )。このことは,産学官の連携・交流機会の増加に向けた取組の強化が必要であることを示している。

第1-3-43図 産学官共同研究の重要性と機会の増加

 真の交流成果を上げるためには,何より,研究者自身が積極的に他の研究者と交流しようとする意欲を持ち,コミュニケーションを深めていく努力をすることが重要である。こうした研究者の意欲を高め,努力を促すための取組の強化が求められる。

(国研や大学の研究成果の社会への還元)

 国研や大学における研究成果を特許権等知的財産権として確保し,企業化を意図する者に円滑に移転していくことは,新産業の創出等を促進するとともに,研究者へのインセンティブの付与等を通じて研究の活力確保に寄与するものであり,積極的な取組が求められる。

 国研や大学の研究成果を民間に円滑に移転するための環境整備について見てみると,各省庁において,研究者個人に特許権等の帰属を可能にするための職務発明規程の改正や,共同研究や委託研究の相手先機関への特許権等の優先実施権付与や優先的実施期間の延長などのための規程整備が進められている。

 また,特許出願や企業への実施権付与などについて研究者を支援し円滑な成果の移転を促進させるためのリエゾン機能(民間企業との橋渡し機能)の整備,研究成果の技術データベースの整備,産学官の連携・交流を促進し国の研究成果の円滑な民間への移転を図るための法令整備などの取組が進められている。

 こうした状況の中,研究者は自身の研究成果の特許化についてどのように考えているのであろうか。「先端科学技術研究者調査」において,国研,大学の研究者に対し,個人帰属を目的とした特許出願を行いたいか聞いたところ,特許出願を行いたいとの回答は,国研で約29%,大学で約36%に留まり,国研,大学とも分からないとした回答が最も多かった( 第1-3-44図 )。このことは,特許化促進に向けた研究者へのインセンティブ付与や支援体制の整備などが重要であることを示唆している。

第1-3-44図 個人帰属を目的とした特許出願

 米国において特許出願件数の多い上位20大学のノーベル賞受賞者数を見てみると(自然科学部門の受賞者),ハーバード大学の24人,カリフォルニア大学の18人,スタンフォード大学の13人など,12大学で102人もの受賞者を輩出している。また,これら20大学のうち19大学では,研究成果の権利化や民間への成果移転のための業務を行う技術移転事務所を有している( 第1-3-45表 )。これらから見られるように,米国では優れた研究成果を上げている大学や研究機関は,基礎研究などの研究活動のみに閉じることなく積極的に研究成果の特許化の促進や民間への成果移転に努めていることが見てとれる。こうした取組は,成果移転を受ける側のみならず,大学や研究機関にとっても特許権等の運用収入などの面において利益をもたらすものである。

第1-3-45表 米国の特許出願数の上位20大学のノーベル賞受賞者数,技術移転事務所の有無

 今後,基礎的,先端的研究の一層の強化とともに,産学官の共同研究等産学官連携・交流の促進,研究者の特許化意識の醸成,特許化や実施権付与などの面における研究者・研究者所属機関への支援体制や研究成果に関する情報を企業に提供する体制の整備,関連法令の整備など,研究成果を社会に還元する取組を一層強化していくことが求められる。

 また,例えば,地球環境の観測・監視データなど最終的に民間活動に委ねることが難しいものについては,国民,さらには国際社会が成果を容易に入手・利用できるように,積極的な情報発信が求められる。


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