ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   変革の時代において
第1章  求められるもの-変革に向けて対応が求められる内外の諸課題-
第2節  地球的,かつ人類的な課題の解決


 平成9年12月に開催された気候変動に関する国際連合枠組条約第3回締約国会議(以下,「地球温暖化防止京都会議」という。)は,地球環境問題が地球,人類の将来に大きな影響を及ぼすことを改めて示した。地球環境問題をはじめ,エネルギー,食料,感染症など,21世紀における人類の生存基盤確立のため全世界の英知を結集し対応していかなければならない課題は多い。これら課題に対し,我が国も積極的な取組が求められている。

(地球環境の保全・回復)

 地球温暖化問題は,異常気象,海面上昇による影響,健康への影響,自然環境への影響,食料生産への影響等その予想される影響の範囲,大きさの観点から,人類の生存基盤に関わる最も重要な環境問題の一つであり,全世界的な真剣な取組が不可欠である。

 総理府の「地球温暖化問題に関する世論調査」(平成9年6月調査)によれば,地球温暖化問題を心配しているとする回答者は8割を超えている( 第1-1-12図 )。また,地球温暖化の原因については,産業活動が大きく関わっているとする者が多いが,国民一人一人の生活が主な原因であるとする者も約40%に上っており,地球温暖化問題が,経済活動,ライフスタイルなど経済社会全般の活動と深く関わる問題であり,広範,かつ複雑な対応が求められることを,国民の意識からも知ることができる。( 第1-1-13図 )

第1-1-12図 地球温暖化問題への心配

第1-1-13図 地球温暖化問題の原因

 地球温暖化防止京都会議では,世界各国の複雑な利害関係が絡み合う中,参加者の精力的な努力の結果,先進国における温室効果ガス排出削減目標を盛り込んだ議定書が採択された。

 我が国は,将来の世代に大きな負担を課さず,地球環境の恵みと繁栄を次代に着実に引き継ぐため,議定書の円滑な実施や長期的・継続的な温室効果ガスの排出削減等に向け,国全体としての総合的,計画的な取組が求められている。

 このほか,オゾン層破壊問題,森林の保護・破壊防止,酸性雨対策についても世界的な取組が求められている。

(エネルギー,食料問題)

 国際エネルギー機関(IEA)の見通しによれば,2010年における世界のエネルギー需要は,1993年(平成5年)に比べ34〜46%増加すると見込まれており,一次エネルギー源別シェアでは化石エネルギーが現在と同じ約90%を維持すると予測されている( 第1-1-14図 )。

第1-1-14図 世界の一次エネルギー需要見通し

 近年,エネルギー価格は比較的低位で安定し,国際エネルギー情勢は平穏に推移している。しかし,中長期的視点からは,エネルギー需要面ではアジアを中心とする発展途上国における消費が増加することが見込まれ,供給面では世界の石油供給に占めるOPEC(石油輸出国機構)のシェアが将来上昇すると見込まれる中,エネルギー需給が逼迫する可能性がある。更に,地球環境問題の深刻化がエネルギーを巡る問題を一層複雑にしている。

 こうした状況において,今後のエネルギー需給逼迫の可能性,地球環境の保全の視点を踏まえ,エネルギー問題への全地球的かつ長期的な取組が強く求められている。

 世界の食料需給について見てみると,国連食糧農業機関(FAO)によれば,2050年の食料需要は1995年(平成7年)の2.25倍と大幅増加すると予測されている( 第1-1-15表 )。耕地面積の拡大には限界があり,また砂漠化の進行などの影響も考慮すれば,中長期的には食料需給の不安定な局面が現れることが強く懸念されている。

第1-1-15表 2050年における食料需要量

 また,FAOによれば,世界全体の栄養不足人口は,今後改善するものの,2010年においてもなお,アフリカを中心として6億4千万人が栄養不足の状況にあるとの予測がなされている。

 こうした状況に対応し,単位面積あたりの生産量増加への努力等に関し,世界的な取組が求められている。

(資源循環型社会の構築)

 現在の我が国の経済社会システムは,大量生産,大量消費,大量廃棄型であるといえるが,地球環境問題,エネルギー問題,更には,前節でも触れた廃棄物問題を考えた時,資源循環型社会の構築をめざした長期的観点からの取組の重要性が増大している。

 資源循環型社会の構築は,経済活動のみならずライフスタイルにも関わるため多大の努力と時間を要するものと考えられるが,こうした社会は我が国及び世界の長期にわたる持続的な発展を可能にするとの観点から,取組の強化が求められる。

(感染症への対応)

 世界には様々な病原体があり,国際的な人的,物的交流が拡大している中,瞬時に拡散する危険性が増大している。この25年間に発見された主な新興感染症としては,エボラ出血熱,後天性免疫不全症候群(エイズ),牛海綿状脳症(狂牛病),C型肝炎などがあり( 第1-1-16表 ),治療方法の開発などの努力が行われているが,感染症対策は,その広がりから考え,一国の問題としてではなく地球的規模での対応が求められている。

第1-1-16表 この25年間に発見された主な新興感染症

 一方,過去に克服したと思われる感染症が,最近,世界的に勢いを取り戻しつつある。結核による死者は,平成7年には全世界で310万人を超え,過去最高となった。これは,発展途上国による人口増加とエイズ流行,多剤薬剤耐性結核の出現及び結核対策の軽視が主な要因とされる。

 また,最近では,MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)など抗生物質に耐性を持った細菌が生まれ,院内感染の原因となるなど大きな問題となっている。マラリアは依然として熱帯地域を中心に流行しているが,薬剤に対する抵抗力をつけたマラリア原虫が出てきており,また,地球温暖化により発生地域の広がりが懸念されている。インフルエンザは毎年世界各地で流行しているが,これまでにない新型インフルエンザが登場した場合には世界中で大流行が起きる可能性がある。このため,WHO(世界保健機関)を中心とした国際的な連携・協調の下,発生動向調査,ワクチンの開発などの対策を迅速に講じていくことが必要である。

 これらの感染症に対して今後,一層の取組の強化が求められる。

(環境ホルモン)

 体内に取り込まれると少量でもホルモンに似た働きをする化学物質は外因性内分泌かく乱化学物質と総称され,一般には,環境ホルモンと呼ばれる。環境ホルモンは生物の生殖や発育等に悪影響を及ぼすことが指摘されており,新たな環境汚染物質として大きな問題になりつつある。このため,環境ホルモンの人体への影響の解明,疫学的実態データの把握などこの問題に対する国内のみならず,国際的な対応強化が求められている。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ