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第1部   変革の時代において
第1章  求められるもの-変革に向けて対応が求められる内外の諸課題-
第1節  閉塞状況の打破と生活者の要請への対応
1.  従来の日本型経済社会システムの行き詰まり・閉塞感の打破


 これまでの「追いつき,追い越せ」型の我が国経済社会システムは,経済大国の実現と物質的な豊かさをもたらした。しかし,経済のグローバル化や少子高齢化の急速な進展などの中,戦後我が国を支えてきた経済社会システムは深刻な限界を見せ,将来に対する不透明感,不確実性は増大し,社会全体に閉塞感をもたらしている。我が国を取り巻く経済社会環境は大きく変化してきており,早急に抜本的な対応策の構築が求められている。

(国際的な大競争時代の到来と産業空洞化への懸念)

 アジア諸国の発展,情報通信技術の革新等を背景に,経済のグローバル化が進み,企業が立地する国を選ぶような国際的な大競争時代(メガコンペティション)が到来している。

 世界の貿易に占める主要国・地域の割合を見てみると,近年,先進諸国の割合が減少しているのに対し,東アジア地域及び中南米地域は増加しており,特に東アジア地域は,輸出,輸入とも世界全体の17〜18%を占めるに至っている( 第1-1-1図 )。このことは,これら地域の経済発展や世界経済への進出が進んでいることを示している。

第1-1-1図 主要国・地域の世界輸出入に占める割合

 このような新しい地域・国の世界経済への進出により,国際的な経済競争は一層激しくなってきている。一部のアジア諸国では,昨年後半以降厳しい経済状況に直面し,世界経済への影響も懸念されている。これら諸国は大競争時代の到来に影響をもたらした諸国であるが,こうした国々の厳しい経済状況からも,経済のグローバル化の進展と国際的な経済競争の激化が見てとれる。

 国際的な競争激化の中,我が国経済の活力の維持・確保が喫緊の課題となっている。我が国製造業における海外生産比率を見てみると,製造業全体では近年上昇し続けており( 第1-1-2図 ),国内産業の空洞化の更なる進展が懸念されている。同時に,雇用の空洞化も懸念されている。

第1-1-2図 製造業の海外生産比率の動向

 産業と雇用の空洞化の懸念を克服し,活力ある経済社会を実現していくためには,新産業の創出やそのための環境整備,高コスト構造の是正などを通じた国際的に魅力のある事業環境の創出など,構造転換が強く求められている。

 (少子高齢化の進展と社会活力低下,労働力人口減少への懸念)

 近年,我が国の出生率は急激に低下しており,厚生省の「人口動態統計」によると,平成8年における我が国の出生数は121万人で,1人の女性が一生の間に生む平均の子供の数(合計特殊出産率)は,現在の人口を維持するのに必要な2.08を大きく下回る1.43となっている。

 我が国においては,平均寿命の伸長とこうした少子化の進行により,21世紀半ばには国民約3人に1人が65歳以上という超高齢化社会が到来し,平成7年まで過去一貫して増加し続けていた生産年齢人口(15歳〜64歳)は,今後は減少し続けるものと予測されている( 第1-1-3図 )。

第1-1-3図 年齢区分別人口の推移

 こうした中,労働力不足,ひいては社会全体の活力の低下が強く懸念されており,これまでの雇用機会の確保の視点に加え,高齢者や女性の潜在力の発掘と活用を含め,社会の活力低下や労働力不足を回避するための経済社会の構造改革が求められている。

(高度情報通信社会への取組の遅れへの懸念)

 情報通信分野の技術革新は,グローバル化の進展,ネットワーク型社会の到来という形で,産業,社会構造,企業活動等に大きな影響を与えるようになってきている。情報通信技術の発展は,企業間,産業間,更に人と人とのコミュニケーションの在り方を変貌させ,経済社会システムの変革を可能にする。この意味で,高度情報通信社会の実現は,我が国経済社会の行き詰まり・閉塞状況の打破や社会,日常生活への活力付与に大きく寄与するものと期待されている。

 産業の情報化という面における一例として,インターネットでの電子商取引の状況を見てみると,我が国における市場規模は,平成7年度の7億円(推定)から平成8年度の約285億円と急成長を遂げ,全世界の市場規模の約8%を占めるに至っているものの,約77%の米国には大きく引き離されている( 第1-1-4図 )。

第1-1-4図 電子商取引の市場規模

 また,総務庁統計局の「科学技術研究調査報告」によると,情報通信分野の重要な担い手である通信・電子・電気計測器工業の技術貿易収支は,入超状態が続いており,特に,北米に対しては,大幅な入超状態の拡大傾向が見られる( 第1-1-5図 )。

 さらに,近年,アジアNIEs(韓国,台湾,香港,シンガポール)を中心として情報通信分野における技術力の向上が見られる。

 こうした状況の下,我が国は高度情報通信社会の実現に向け一層の取組強化が求められている。

第1-1-5図 通信・電子・電子計測器工業の技術貿易収支

(国民・子供達に夢と希望を与える活動の積極的展開)

 これまで見てきたように,国際的な大競争時代の到来,競争激化の中での産業空洞化への強い懸念,少子高齢化の進行による社会全体の活力低下や労働力不足への懸念,高度情報通信社会への取組の遅れなど我が国経済社会を取り巻く環境は厳しい。

 このように閉塞状況の打破が求められている時代だからこそ,国民・特に次代を担う子供達が現在や将来に夢と希望を抱き,また知的欲求を満たすことのできる社会を築いていくことが重要である。この点から,例えば,基礎科学による新たな知見の拡大や宇宙開発など,多くの人々に夢と希望を与え,また知的欲求を満たすような活動の積極的展開が求められる。

 また,国民・子供達の夢や希望が努力次第で実現できる社会,即ち創造性とチャレンジ精神を存分に発揮でき,それにより活力に満ちた経済社会を構築していくことが強く求められている。


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