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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第3章  研究活動の推進
第3節  組織別の研究活動
3.  大学等における研究活動


 科学技術振興の基礎となる学術研究は,研究者の自由な発想と研究意欲を源泉として創造性豊かな新しい知見を生み出すことを本質としている。大学等は,学術研究の中心として,我が国の学問的基盤の確保と水準の向上を図ることを基本的な使命の一つとしている。その主な特色は,人文科学,社会科学及び自然科学の広範な領域にわたる学問の発展をめざしていること,研究者の自主性の尊重がその発展にとって不可欠であること,研究と教育が総合的に推進されていることなどである。


(1) 学術研究活動を支える文部省関係経費

 全国の国公私立大学の大学院・学部,附置研究所,大学共同利用機関等における学術研究活動を支える文部省関係経費は,大学等における教育・研究活動が不可分一体なるものとして展開されているため,厳格にこれを取り出すことは困難であるが,あえてこれを分類すれば,経常的・基盤的研究費と,研究内容及びその必要に応じ特別に積算される研究費や特定の事業的研究費等に分けることができる。また,研究施設,設備を整備するための経費も大きな比重を占めている。

 このうち,経常的な研究費は,研究者の自由な研究の基盤を形成するための経費であり,国立大学等においては,教職員の人件費のほか,教官当積算校費,教官研究旅費などの経費が積算されている。また,私立大学に対しては,経常費補助や教育研究装置補助等により,人件費をはじめ教育研究活動全般に対する助成措置が取られている。


(2) 科学研究費補助金による学術研究の推進

 特別の研究費にも各種の経費があるが,その一つに優れた学術研究を格段に発展させることを目的とし,我が国の学術の振興に寄与するための研究助成費として,文部省科学研究費補助金がある。科学研究費補助金は,大学等の研究者又は研究者グループが自発的に計画する研究のうち,学術動向に即して特に重要なものを取り上げて研究費を助成し,優れた研究成果を期待するものである。この科学研究費補助金は,これまで数多くの創造的,革新的な知見を生み出し,優れた研究者を育て,新しい研究領域を開拓するなど,我が国の第一線の学術研究の推進を図る上で極めて重要な役割を果たす基幹的な研究費として,学術研究の進展に大きく貢献している。この補助金については,研究者の多様な研究ニーズにこたえるため,研究の目的・性格等に応じ, 第3-3-23表 のような申請区分を設けており,学術審議会の審査を経て配分される。平成8年度の予算額は初めて1,000億円を超え,1,018億円(対前年度94億円,10.2%増),申請課題数は約9万4,000件,採択課題数は約3万5,000件である。

第3-3-23表 科学研究費補助金の研究種目

 また,この制度については,国内外の研究動向等を踏まえて改善を図っており,平成8年度は,研究種目「基盤研究」,「萌芽的研究」を創設したほか,一部の研究種目で不採択とした理由を開示するとともに,審査員全員の氏名を審査終了後に公表するなど,審査に関する情報の提供を推進する等の改善を行っている。


(3) 未来開拓学術研究推進事業

 文部省においては,平成8年5月に日本学術振興会法を改正し,日本学術振興会の業務に「学術の応用に関する研究を行う」をことを新たに加えるとともに,同会への政府の出資制度を設けて,110億円を出資し,我が国の未来の開拓につながる知的資産の形成が期待される学術研究を,大学などの学術研究機関の研究機能を活用しながら重点的に推進する「未来開拓学術研究推進事業」を創設した。この事業は,日本学術振興会が自ら又は大学などに委託して応用的な学術研究を行うものであり,同会に置かれる事業委員会が研究分野や研究プロジェクトなどを選定して行うこととしている。

 平成8年度は,1プロジェクトあたり平均1億円で110プロジェクトを推進している。また,その研究分野は,理工領域から次世代人工物質・材料,知能情報など8分野,生命科学領域からヒトゲノム,脳機能など6分野,自然科学と人文科学の複合領域から生命情報など3分野となっている。研究プロジェクトは原則5年間実施することとしているが,研究開始後2年経過時に中間評価を行うこととしている。


(4) 特別研究員制度による若手研究者の養成・確保

 また,学術研究の基盤強化とその発展にとって,新しい研究の展開に柔軟に対応できる創造性に富んだ若手研究者を幅広く養成・確保することは,最も重要な事柄である。このため,文部省では,昭和60年度に大学院博士課程在学者及び大学院博士課程修了者等を自由な発想のもとに主体的に研究に専念させる本格的なフェローシップ制度である「特別研究員制度」を日本学術振興会の事業として創設し,年々その拡充に努めてきている。平成8年度においては,採用人数の大幅な拡充と研究奨励金の充実を図り,総採用者を3,100人としたところであり,本制度は「ポストドクター等1万人支援計画」の中心的な制度である。

 また,若い優秀な研究者を海外に派遣する「海外特別研究員制度」及び海外からの若手研究者を受け入れる「外国人特別研究員制度」のほか,がん研究の推進,新プログラム方式による研究,卓越した研究拠点(COE)の形成のための「特別研究員制度」を実施している。

 加えて平成8年度からは,新しく創設された出資金によって推進する,未来開拓学術研究推進事業において研究プロジェクトに若手研究者が参画する共同研究員制度を開始している。

 以上のほか,国立大学や大学共同利用機関が行う優れた研究等に大学院博士課程修了者が非常勤研究員として参画するための事業等を平成8年度から開始している。

 これらを合わせ,平成8年度は「ポストドクター等1万人支援計画」全体のおおむね8割程度が文部省関係事業によって支援されており,同計画の推進に大きな役割を果たしている。


(5) 研究支援体制の整備

 研究の高度化を図り,創造性豊かな学術研究を推進していくためには,優れた研究者の養成・確保とともに,研究支援体制の充実・強化,特に研究支援者の確保が極めて重要な課題となっている。

 このため,国立大学や大学共同利用機関が行う研究プロジェクト等の効果的な促進を図る上で,不可欠な研究支援策として,平成8年度国立学校特別会計予算において,{1}リサーチ・アシスタント(RA)経費,{2}研究支援推進経費が創設されたところである。


(6) 私立大学における研究の充実

 我が国の研究開発水準の向上のためには,我が国の高等教育機関の約8割を占める私立大学が,他の研究機関との連携,交流等を積極的に推進しつつ,多様で高度な研究を実施できるようにすることが重要である。

 このため,文部省では,次のような施策を実施している。

 経常費に対する補助としては,教育研究機能の高度化や情報化の推進など社会的要請の高い研究等の実施について着目し,一般補助に上乗せして補助する特別補助の充実に努めており,平成8年度は,「特別補助」に603億円を計上し,{1}大学院の充実やリサーチ・アシスタント,ポストドクターへの支援等研究機能の高度化,{2}教育学術情報ネットワーク等高度情報化の推進などの拡充を図っている。

 平成8年度の新規事業として,私立大学ハイテク・リサーチ・センター整備事業を創設し,大学院研究科・研究所における最先端の研究開発プロジェクトの実施に必要な研究施設,研究装置・設備,研究費・研究スタッフに対する総合的な支援を行うこととしている。平成8年度予算としては,関連補助金として約47億円を計上している。

 このほか,私立の大学・大学院等の学術研究及び情報処理教育等の振興活性化のために必要な大型の研究装置・教育装置の整備に必要な経費並びに基礎的な研究に必要な機械・器具である研究設備及び情報処理関係設備の整備に必要な経費等についても助成が行われている。


(7) 社会との協力・連携の推進

 さらに,文部省では,大学の学術研究に対し,産業界等社会の各方面から多様な期待と要請が寄せられていることにかんがみ,大学の主体性の下に,可能な限り社会の諸要請に適切に対応し,協力していくための諸施策を推進している。なお,平成8年2月から「産学の連携・協力の在り方に関する調査研究協力者会議」を開催し,産学の連携・協力の一層の推進を検討するとともに,平成8年7月策定の科学技術基本計画で検討することとされた,国立大学等の教官が民間企業等で共同研究のできる範囲の拡大などについて検討を行い,平成9年3月にそのまとめを行った。昭和58年度には国立大学等に民間等から研究者と研究経費等を受け入れ,国立大学等の研究者と共通の研究課題について対等の立場で共同して研究する「民間等との共同研究」制度を発足させた。この制度に対する大学内外の研究者の関心は高く,材料開発,機器開発,土木・建築等の分野を中心に平成7年度には1,704件の共同研究が実施された。また,このような共同研究をはじめとする産業界等との研究協力をより積極的に推進するための場として,昭和62年度から国立大学に「共同研究センター」の整備を進めており,これまでに40都道府県で47の国立大学に設置している。こうした取組を促進するため,大学等と民間企業との共同研究について,相手方民間企業が負担した一定の試験研究費の6%相当額が法人税から控除される制度が平成7年度から実施された。このほか,国立大学等での受託研究及び受託研究員の受入れの推進などによる民間等の研究者の積極的な参加の促進,さらには日本学術振興会における総合研究連絡会議等産学協力事業の充実を図っている。

 平成8年度には東京大学に,諸外国との共同研究を含めた研究協力推進の場として「国際・産学協同研究センター」を設置したほか,3大学(北海道大学,帯広畜産大学,島根大学)に共同研究センターを設置した。


(8) 学術研究の国際交流の推進

 学術研究は,真理の探求をめざす普遍的な知的活動であり,その発展のためには国境を越えた研究者の自由な交流・協力が必要不可欠である。また,資源・エネルギー問題,地球環境問題のように全地球的な立場から取り組む必要のある分野や,高エネルギー物理学,核融合研究等大型の設備・装置を必要とするため一国では対応し難い分野が増加しつつある。このような観点からも学術研究の国際交流の重要性が高まっている。このため,文部省では,日本学術振興会の事業である外国人特別研究員制度等による諸外国の研究者招へい及び外国人研究者受入れのための条件や体制の整備・充実,我が国の研究者の海外派遣,諸外国との共同研究等を行うことによって学術研究の国際交流を推進している。このほかにも,特定の国との政府間協定及び取極並びに機関間取り決めに基づく大型の国際共同研究のほか,国際学術連合会議(ICSU)や国連教育科学文化機関(UNESCO)等の国際機関が提唱する多国間協力事業への参加,日本学術振興会の行っているアジア諸国等との拠点大学方式による交流などにより多様な国際共同研究が実施されている。


(9) 学術審議会の答申及び建議

 近年の学術研究を取り巻く諸状況の著しい変化等に対応するため,平成4年7月,学術審議会から「21世紀を展望した学術研究の総合的推進方策について」答申が行われた。この答申においては,今後の学術研究推進の基本的考え方として,{1}人類共通の知的創造活動としての学術研究,{2}学術研究の動向に配慮した研究基盤の形成,{3}研究者の自主性の尊重と社会的貢献への要請,{4}研究と教育の総合的推進の4つを掲げている。

 また,近年の学術研究の国際交流の必要性と重要性が増加しつつある状況に対応するため,平成6年7月,学術審議会から「学術国際交流の推進について」(建議)が提出された。この建議において{1}国際的に高度な水準を有する国内研究基盤の整備,{2}外国人研究者受入れ体制の整備・充実,{3}発信型の学術国際交流の推進が提言された。平成7年4月には,学術審議会において,総合的・学際的な地球環境科学の推進のため,中核的研究機関の設置をはじめとする「地球環境科学の推進について」,また,同年7月には「卓越した研究拠点(センター・オブ・エクセレンス)の形成について」建議が行われた。

 さらに,平成8年7月には,大学図書館資料の電子化の推進等を提言した「大学図書館における電子図書館的機能の充実・強化について」及び特別研究員制度の拡充等に言及した「21世紀に向けての研究者の養成・確保について」の建議がなされた。

 文部省では,これらの答申・建議等を踏まえ,我が国の学術研究基盤の計画的・重点的な整備を図るとともに,学術研究の進展に柔軟に対応できる世界に開かれた学術研究体制の整備を図るため,研究費の充実,大学の研究施設・設備の改善,若手研究者の養成・確保,基礎研究の重点的推進,卓越した研究拠点(COE)の形成など総合的な施策を積極的に展開している。


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