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第3部   科学技術の振興に関して講じた施策
第2章  総合的かつ計画的な施策の展開
第1節  研究者等の養成・確保と研究開発システムの整備等
1.  研究者及び研究支援者の養成・確保


 優れた研究者の養成・確保を図るためには,大学院等の教育研究の充実,フェローシップ制度の拡大充実や,大学・高等専門学校等における自然科学系教育の改善・充実を進める必要がある。また,欧米に比べて手薄なポストドクトラル研究者層を充実・強化し,その研究歴を研究者のキャリア・パス(専門的な知識や技術,能力を身につけていく過程としての職歴,経歴)として確立することに努め,もって,研究者の能力かん養と,これらの研究者層が研究開発の重要な一翼を担う体制の実現を図る必要がある。さらに,研究者が研究開発活動に専念できるようにするため,研究開発を支援する人材を養成・確保するとともに,外部の支援機能を活用し得る制度を整備する必要がある。

(人材の養成)

 科学技術系人材の養成については,次のような施策が講じられている。

{1} 大学院に重点を置いた人材の育成

 学術研究の進展の動向,人材の養成に対する社会的要請等を踏まえ,学生数の規模の拡充を図るとともに,教育研究機能の質的強化など,大学院を中心とした教員組織,施設・設備の充実を推進する必要がある。理工系の大学院については,特に国立大学が大きな役割を果たしており,平成8年度においても6大学で6研究科を,また11大学で16専攻を新たに設置した。

 大学院における理工系教育に関しては,修士課程では入学者数が入学定員を上回っているのに対し,博士課程では定員に満たない状況が続いているが,定員充足率は特に国立大学を中心に年々改善されつつある。

 今後とも,大学の教育研究環境の飛躍的な整備・充実,大学院学生の処遇の改善に努めていくこととしている。

{2} 創造的な理工系人材の育成

 我が国が今後とも活力ある社会を維持し,世界に積極的に貢献していくためには,先導性や独創性を一層発揮する方向へ転換を図ることが必要であり,これからの科学技術を支える,創造性豊かな理工系人材の育成が求められている。

 このため文部省では,平成7年3月から,大学及び産業界の関係者による「大学の理工系分野における創造的人材の育成のための産学懇談会」を開催し,8年3月に報告書を取りまとめた。

 これを受けて平成8年度においては,(ア)大学・高等専門学校における創造教育プログラムの開発・実施,(イ)創造教育実践事例集の作成・配布,(ウ)教育設備のハイテク化・高度化等の施策を進めている。

{3} 理工系教育の改善・充実

 現在進行中の大学改革においても,理工系の学部について一般教育と専門教育を有機的に関連させた教育課程を編成したり,幅広い視野や総合的な判断力,ものの見方を養う学際的,総合的科目を開設するなどの改善が行われている。

 また文部省では,科学技術の高度化,学際化に対応した教育研究体制を整備するため,国立大学の学部・学科の新設・改組を進めており,平成8年度においては,16大学において学科の改組を行うとともに,弘前大学,香川大学における工科系学部の創設準備を行うための経費を措置した。

 今後も,社会のニーズを的確に把握し,それに対応した人材の養成に努めることとしている。

 また,中学校卒業後から5年間一貫で実験実習を重視した教育を行うことにより,発想力豊かな実践的技術者を養成することを目的とする高等専門学校においても,科学技術の進展等に対応するため学科の新設,改組や専攻科の設置などの整備を進めている。平成8年度においては,1学科を設置したほか,6校において工業科学科を物質工学科等へ,土木工学科を環境都市工学科等へ改組を行った。さらに,科学技術の高度化等に対応するため,4校に専攻科を設置した。

{4} リフレッシュ教育の推進

 近年の急速な技術革新の進展等の産業構造の変化に伴い,職業人を対象として大学等の高等教育機関が職業上の知識・技術のリフレッシュや新たな修得を目的として行う教育(リフレッシュ教育)の積極的な推進が求められている。

 このため,文部省では,大学の履修形態,修業年限等の制度の弾力化を図るとともに,平成8年度において,大学・高等専門学校等と産業界の関係者が意見交換を行う協議会の開催,大学等や企業におけるリフレッシュ教育の実態調査及び大学等への情報提供,国立大学におけるリフレッシュ教育に対応するための講座の整備などの施策を実施した。

{5} 大学院及び学生に対する支援

 文部省では,大学院に対する支援として,教育研究の高度化を重点的に推進するための高度化推進特別経費や,教育研究条件の飛躍的充実を図るための大学院最先端設備費などの予算措置の充実を図っている。また,学生に対する支援については,優れた大学院学生が安心して進学できる環境の整備のため,研究奨励金を支給する日本学術振興会特別研究員制度や,日本育英会育英奨学事業,ティーチング・アシスタント(TA)経費及びリサーチ・アシスタント(RA)経費の充実などに努めている。

 日本育英会の育英奨学事業は,平成8年度には,時代を担う優れた若手研究者の育成及び高度の専門的知識・能力を有する職業人等の養成の観点から,大学院の貸与人員について,博士課程200人,修士課程2,100人,合計2,300人増員した。

(若手研究者の支援)

 若手研究者の支援については,平成7年度から「ポストドクター等1万人支援計画」を掲げ,ポストドクター等の若手研究者層の育成,拡充等を図ってきている。平成8年度においても,科学技術基本計画で示されているとおり,平成12年度までに同支援計画を達成することをめざして,科学技術庁,文部省,農林水産省及び通商産業省において,関連施策の拡充を図った。

 科学技術庁においては,創造性豊かな若手研究者を国立試験研究機関等に受け入れる科学技術特別研究員制度で315人,独創性に富む若手研究者に理化学研究所において自発的かつ主体的に研究できる場を提供する基礎科学特別研究員制度で165人を受け入れるなど,関連施策を拡充し,計1,168人を支援・活用した。

 文部省においては,日本学術振興会による特別研究員制度により,創造性豊かな優れた若手研究者3,170人への支援を行ったほか,出資金を活用した基礎研究推進制度である未来開拓学術研究推進事業において計440人の若手研究者を活用するなど,計4,556人の研究者を支援した。

 農林水産省では,出資金を活用した基礎研究推進制度である新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業において,80人の若手研究者の活用を含め,計90人の研究者を支援・活用する措置を講じた。

 通商産業省では,産業技術フェローシップ制度,AISTフェローシップ制度,ITIT特別研究員制度等により,計214人の研究者を支援・活用した。

 また,科学技術庁においては,かねてより海外留学及び国内留学制度を設け,国立試験研究機関の活性化と併せて研究者の資質向上を図るなど,人材養成に努めている。

(研究支援者)

 研究開発活動の活性化を図るためには,研究者が研究開発活動に専念できるよう研究支援体制を充実することが不可欠である。

 このため,国立試験研究機関に関しては,科学技術庁において,平成7年度から,科学技術振興調整費を活用した重点研究支援協力員制度を実施しており,国立試験研究機関を対象として,研究内容や研究者のニーズに合わせて研究協力者を手当することにより的確な研究支援体制の整備に努めている。平成8年度に対象としていた国立試験研究機関は 第3-2-1表 のとおりである。

第3-2-1表 重点研究支援協力員制度の対象機関


 国立大学や大学共同利用機関に関しては,質の高い知的資産の形成,新たな研究開発を推進していくためには,最先端の研究を支える創造性豊かな若手研究者の養成・確保とともに研究支援体制の充実が不可欠であるとの認識の下で,平成8年度から新たに,国立大学や大学共同利用機関が行う研究プロジェクト等に,優秀な大学院後期博士課程在学者がリサーチ・アシスタント(RA)として,また,特殊な技能や熟練した技術を有する外部人材が研究支援推進員として参画できるよう,研究支援者の確保のための事業を開始するとともに,7年度に創設した高度な研究能力を持つ若手研究者を参画させる非常勤研究員制度を拡充している。

 また,これまで給与勧告に当たっては,国立試験研究機関の優秀な若手研究員の処遇に配慮した改善が行われている。

 このほか,科学技術庁では,科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画,研究,設計,分析,試験,評価,又はこれらに関する指導を行う技術士及び将来,技術士となることをめざして技術士の指導を受けながら技術士の業務を補助する技術士補について,毎年試験を行っている。平成8年度は,技術士については2,118名が,技術士補については692名が合格した。また,平成8年度に技術士登録,技術士補登録を行ったものは,それぞれ1,779名,301名であった。

 また,技術士審議会において,技術者の資格承認に係る国際的な動き等に関連した検討が行われている。


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