ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   開かれた研究社会の創造をめざして
第4章  国民に開かれた研究社会へ
第3節  双方向に開かれた研究社会へ


 これまで述べたような国民の意識等を踏まえて,科学技術が社会の支持を得ていくためには,まず科学技術の内容を国民に理解してもらうことが必要である。それとともに,国民の要望に応えた研究開発を進めて成果をあげていくことが重要である。また,科学技術行政は国民の意見や要望を十分反映するべく,その改革・改善を進めていかなければならない。

 さらに,科学技術が国民に直接的な影響を及ぼす可能性のある倫理との関係や安全に関わる問題については,国民に対して的確な情報発信を行い,その理解と信頼を得ていく必要がある。

(科学技術を国民にわかりやすくする努力)

 科学技術が高度化,複雑化することによって,社会から支持を得るどころか,その内容を十分に理解してもらうことさえ,ますます難しくなってきている。

 このため,行政や研究者においては,まず,科学技術を国民にわかりやすいものとする一層の努力が望まれる。

 総理府の「科学技術と社会に関する世論調査」によれば,約56%の国民は科学技術に関心があり,約63%の国民は「科学技術に関する知識はわかりやすく説明されれば理解できる」と考えている。また,約56%の者が「科学者や技術者の話を聞いてみたい」と答えている。さらに,科学技術に対して比較的関心の薄い若年層の女性においても,約71%の者が「科学技術に関する知識はわかりやすく説明されれば大抵の人は理解できる」としており,約48%の者が「科学者や技術者の話を聞いてみたい」と答えている。

 すなわち,多くの国民は科学技術に関する情報や研究者等との交流を求めていると言える( 第1-4-10図 )。

第1-4-10図 国民の意識 科学技術に対する関心と理解

 一方,「先端科学技術研究者調査」によると,研究者の側では,青少年に対して科学技術に興味を持たせるために重要なこととしては,「教育制度や授業の改善」(約61%)を挙げた者が最も多く,「処遇改善等による研究者のイメージアップ」(約39%)がこれについでいる。また,社会の理解を得るための研究者自身の活動については,「講演や市民大学等の授業を受け持つ」(約31%),「一般向け雑誌への執筆活動」(約20%)などが比較的多いものの,「特にない」(約47%)が最も多くなっている。このように,社会の理解を得るための取組は必ずしも活発であるとは言えない( 第1-4-11図 )。

第1-4-11図

 国としては,「科学技術週間」行事として,施設の一般公開,科学技術実験教室,講演会などを行うとともに,青少年が研究者等から講義を受けたり,研究現場等を実体験する「サイエンスキャンプ」,大学・高等専門学校における体験入学事業,第一線の研究に取り組む研究者や「サイエンス・ボランティア」として登録された協力者による講演・実験などの実施により,科学技術に親しむ多様な機会の提供を進めてきているところである。

 今後とも,このような科学技術に親しむ機会の提供の充実を図っていく必要があるが,研究者も国民との交流をより積極的に行うよう努めていくことが望まれる。

(科学技術と国民の要望)

 このように科学技術の内容を国民に伝える努力は重要であるが,そもそも科学技術は社会に貢献しているといえるのだろうか。

 「先端科学技術研究者調査」によれば,研究者の約89%が「自分の研究は社会に貢献している」と考えている。その貢献の内容としては,「暮らしの利便性・快適性の向上」(約43%)が一番多く,ついで「学術・文化の発展」(約38%),「技術蓄積や利益向上」(約32%)の順となっている。また,約75%の者が「自分の研究は社会に対してインパクトがある」としている( 第1-4-12図 )。

第1-4-12図

 一方,国民はどのように考えているのだろうか。総理府の「科学技術と社会に関する世論調査」によれば,科学技術が貢献すべき分野としては,「地球環境や自然環境の保全」を挙げた者が約68%と一番多く,以下,「エネルギーの開発や有効利用」(約62%),「資源の開発やリサイクル」(約58%),「廃棄物の処理・処分」(約57%),「防災や安全対策」(約54%)の順となっている( 第1-4-13図 )。

第1-4-13図 国民の意識 科学技術が貢献すべき分野

 また,科学技術庁科学技術政策研究所の「生活関連科学技術課題に関する意識調査」によれば,生活関連科学技術課題(191課題)のうち国民の早期実現期待度の高い上位30課題の内訳は地震予知など防災分野が10課題,がん予防薬など医療・福祉分野が9課題,重油汚染海域修復など環境保全分野が9課題,その他2課題となっており,安全・安心を求める分野の課題に対する要望が強いことがわかる( 第1-4-14図 )。

第1-4-14図 早期実現期待度の高い生活関連科学技術課題(上位30課題)

 国民の科学技術への夢と希望をはぐくみ,一層の信頼を得ていくには,科学技術が広く国民の要望を反映したものであることが重要である。国民の要望の把握にあたっては,科学技術行政が努力を重ねること,とりわけ,地球環境問題の解決に資する科学技術,災害の防止に関する科学技術など国民の要望が民間における研究開発に直ちに反映されないような分野について,行政が国民の要望を的確に把握し,戦略的に研究開発を進めていくことが必要である。また,研究者や研究機関においても国民の要望を踏まえて積極的に研究開発を進めていくことが必要である。

(科学技術行政と国民)

 今日,行政は多くの改革・改善を求められている。まず第一に,行政の結果やその形成過程をわかりやすい形で国民に説明することが求められている。次に,政策の形成過程において国民の意見や要望を十分反映することが求められている。さらに,行政が社会の要請に合致し,効率的であることが求められている。このような諸点について改革・改善を進めていくことは行政に対する国民の信頼を得ていくうえで必須のことがらである。

 科学技術行政においても同様の改革・改善を進めていかなければならない。特に,科学技術行政は国民や社会の要請を研究開発に結び付ける役割を担っている。また,科学技術そのものが,国民にとってわかりにくい側面を有する以上,他の分野にも増して国民の信頼をかちえていく努力を重ねていかなければならない。

(科学技術行政の透明化の推進)

 このため,従来にも増して,国民に対して開かれた,より透明な科学技術行政が求められている。

 原子力行政においては,平成7年に発生した高速増殖原型炉「もんじゅ」の2次系ナトリウムの漏えい事故を契機とした国民の原子力に対する不安感の高まりを踏まえて,原子力委員会の原子力政策円卓会議における議論など国民の原子力に関する理解を得るための努力が進められてきたところである。

 また,科学技術会議においては,評価の実施方法の在り方についての大綱的指針の策定に際して,国政モニターの意見を求めるなどの試みを進めてきたところである。

 今後とも,原子力はもとより他の分野においても科学技術行政に関する意思決定過程の一層の透明化を進め,国民が納得できるものとする努力を重ねていかなければならない。行政が社会や国民の要望をいかに把握し,これにどのように対応することが適切と判断したか,メリットとデメリットをどのように比較考量したのかということについて,その過程と結果を国民に明示し,国民の理解と信頼を得るようにしていかなければならない。

(科学技術と倫理に関する議論)

 英国における羊の体細胞を用いたクローン羊の誕生は,科学技術と生命倫理の問題を世界的に引き起こしている。このような問題は,広く国民各般の意見を踏まえて議論すべきものである。

 そのためには,研究開発の最前線にいる研究者が,研究開発の現状と今後の見通しについて,わかりやすい言葉で国民に対して情報を発信する必要がある。

 また,科学技術行政も,研究者からの情報発信を推進するとともに,このような科学技術と倫理に関する問題について,研究者と国民との双方の意見を踏まえて,議論を進めていかなければならない。

(安全に係る情報の適切かつ迅速な提供)

 現代の我々は,高層ビル,航空機,新幹線,原子力発電所など科学技術の成果を結集した巨大な構造物やシステムとともに生活している。

 科学技術がこれらの巨大な構造物やシステムの安全性の確保に貢献していくべきことはもちろんであるが,国民がこれらに抱いている不安や疑問に,わかりやすくかつ的確に答えていくことも必要である。

 特に,国民の安全に直接かかわることがらに関しては,適切かつ迅速な情報の提供が求められている。

 平成9年3月11日,動力炉・核燃料開発事業団東海事業所のアスファルト固化処理施設で火災爆発事故が発生し,施設外に放射性物質が放出されるという事態となった。また,その際の事故対応のまずさ,国,地方公共団体や住民への情報連絡に関する対応が不十分であったことなどが強く指摘されているところである。さらに,その後,同事故に関して虚偽の報告がなされたことが明らかになり,科学技術庁の告発を受けて,現在,警察当局の捜査が進められているところである。また,同年4月14日の新型転換炉「ふげん」発電所に係る重水の微少漏えいに関する国,地方公共団体への通報連絡が1日以上も経ってから行われたことが明らかになったことから,4月15日,「ふげん」は運転を停止し,情報伝達体制の改善を行っているところである。今後,事故の原因の徹底的な究明と再発防止のための万全の対策を講じていくべきことはもちろんであるが,安全に係る情報の関係者や住民に対する適切かつ迅速な提供等積極的な情報の公開を進め,国民の信頼を回復すべく努力を重ねていかなければならない。さらに,同事業団の体質及び組織・体制については,聖域を設けず徹底的に第三者的なチェックを行い,ゼロから出直す覚悟で,抜本的な改革を図るため,科学技術庁の「動燃改革検討委員会」で検討が行われているところである。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ