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第1部   開かれた研究社会の創造をめざして
第3章  国際的に開かれた研究社会へ
第2節  国際的に見た我が国の研究社会
1.  科学技術の交流の観点から


 これまで述べてきたように,我が国では基礎研究の推進や研究者の交流,共同研究の推進などを通じ,米国や欧州とともに科学技術のフロントランナーの一員として先駆的役割を果たすべく努力を重ねてきた。我が国の研究者も外国の研究者を受け入れることにより,日本人研究者が触発された,あるいは,その研究者の出身機関との連携が緊密になったといった良いことがあったと評価するとともに,国際交流は今後とも増加するのではないかと考えている( 第1-3-3図 , 第1-3-4図 )。

第1-3-3図 外国人研究者を受け入れて良かった点

第1-3-4図 海外との国際交流は今後増加すると思うか

 しかし,科学技術の交流の観点から日本は科学技術のフロントランナーとしてのパートナーたり得ているのだろうか。


(1) 技術貿易と日本の位置付け

 まず,我が国の技術貿易については,我が国の輸出入全体では,年々貿易規模が拡大しつつあると同時に,収支も改善の傾向にあって,総務庁統計局の「科学技術研究調査」によれば輸出超過が拡大の傾向に,日本銀行の「国際収支統計月報」によれば,収支均衡に近づく傾向にある( 第2-3-13図 )。この傾向は,収支比(輸出/輸入)の動向を国別に見ると一層明確になり,対欧米主要国(米国,ドイツ,フランス,イギリス)では,1980年代半ばにかけて技術貿易収支の改善が見られる( 第2-3-17図 )。平成7年度の技術貿易比ではこれらの国のうち,対米国が最も輸入超過で0.58となっているが,対ドイツ,フランスは0.8程度の輸入超過に,対イギリスでは輸出超過になっている。

 さらに,これら各国に対する産業毎の技術貿易比は 第1-3-5表 のようになるが,先端産業である通信電子産業では対米国で,精密機械工業では対米国,対イギリスで大幅な輸入超過となっている。

第1-3-5表 産業別対主要先進国技術輸出/輸入比

 これら技術貿易比の数値は,主に産業技術の交流を反映するものであることから,科学技術の成果の交流とは異なる面もあるものの,我が国の欧米主要国との技術成果の交流が対等なものに近づきつつあることの一面を示しているものといえる。しかしながら,ハイテク分野である通信電子産業や精密機械工業分野での対米国の技術貿易比では大幅な輸入超過となっていることと,我が国の研究者が我が国の基礎科学技術水準は欧米に遅れを取っていると考えていることとを考え合わせると,特に創造的科学技術分野での先進各国と対等な交流に向け,我が国はこれら分野に一層力を入れる必要があるといえよう。


(2) 研究者の交流

 研究者の交流も年々拡大している。研究技術者の我が国からの出国数,我が国への入国者数ともに1980年代初めから急激に増加し,平成7年には出国者数は我が国の自然科学系研究者の5割弱にあたる27万人に,入国者数は我が国の自然科学系研究者の3割弱にあたる16万人にのぼっている( 第1-3-6図 )。

第1-3-6図 研究技術者の出入国者数の推移

 これらのうち,入国者ではアジアからの研究者が最も多く全体82%を占めている一方,出国者では北米及び欧州への出国者が全体の73%を占めている。近年の傾向としては,1990年代に入ってから出国者及び入国者の増加が若干鈍化したことが挙げられる。我が国からの出国者については,長引いた不況の中で,民間を中心に研究開発投資の伸びが鈍った傾向と機を一にするものと考えられる。我が国への入国者の伸びの鈍化には,アジアからの入国者の伸びの鈍化が大きく影響している。

 また,研究技術者の入国/出国者数比では,入国者数,出国者数の総数の比は1980年代初頭に増加し,それ以前より高い水準となっている。対北米の入国/出国者数比は長期的な減少傾向にあるが,近年,やや増加が見られる( 第1-3-7図 )。

第1-3-7図 研究技術者の入国/出国者数比の推移

 研究者の交流の構造を,さらに,ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)の長期フェローシップを授与された研究者が研究国をどのように選択しているかについて見ると,日本人の研究者は72%が米国またはカナダ,26%が欧州を選択しているが,国外の研究者が日本を研究先として選んでいる割合は1〜2%と極めて低くなっている。米国・カナダの研究者は70%が欧州,28%が域内(米国・カナダ)を,欧州の研究者は78%が米国・カナダを,20%が域内(欧州)を選択しており,3極以外のロシア,イスラエル,オーストラリア,韓国などからの研究者も60%が米国・カナダを,38%が欧州を選択している( 第1-3-8図 )。

第1-3-8図 HFSP長期フェローシップによる研究国の選択

 出入国管理統計の結果は,日本から欧米に学びに出る研究者が多いという一方通行の研究者の交流の傾向が依然続いており,特に長期的に見れば対米国では拡大していること,また,近年,アジアから日本に学びに来る研究者数の伸びも鈍っていることを示している。また,HFSPの結果については,もともと研究分野が日本があまり強くない分野に限られているといった問題点もあるものの,一定レベル以上の創造性の高い海外の研究者で日本を研究の場に選ぶ割合が少ないことを示している。

 これらの結果から,日本は米国,欧州と比べると海外の研究者から研究の場として選ばれにくい現状が依然続いているということができる。海外の研究者が日本を選びにくかった理由としては,日本では研究者としての適当なポストが与えられないといった制度やその運用に起因する制約とそもそも研究を行う場としての日本の魅力が不十分であるといった理由などが考えられる。前者の問題点については既に日本の研究社会を開く努力が進められていることを概観したが,引き続き一層の努力が必要である。また,後者の問題については,以下でさらに詳しく議論する。


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