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第1部   開かれた研究社会の創造をめざして
第3章  国際的に開かれた研究社会へ
第1節  研究社会を国際的により開くための取組


 科学技術分野での国際交流や協力において,我が国の研究社会を国際的に開くことが重視されはじめたのは,石油ショック後,エレクトロニクスを中心とするハイテク産業が成長を遂げ,我が国と欧米諸外国との間の科学技術格差が著しく縮小したと認識されはじめた頃からである。昭和50年代半ば過ぎには,我が国が基礎研究にただ乗りしているとの欧米先進国からの批判が高まったこともあり,国においても基礎的研究の強化や研究開発基盤の整備などにより,先端分野における国際的に評価される水準の研究開発の推進,国内諸制度の国際化や多様な国際共同研究の充実などが取り組まれてきた。

(研究者の交流を進める取組)

 こういった流れの中で,我が国の研究社会を国際的に開き研究者の交流を進めるためにとられた制度的な措置としては,まず,昭和61年11月に施行された研究交流促進法が挙げられる。同法により,外国人を国立試験研究機関の研究部長,研究室長クラスにまで任用することが可能となり,外国人が我が国での研究においてリーダーシップを発揮する途が開かれた。また,外国の政府や公共的団体または国際機関と共同研究を進める際,国の特許権等を無償あるいは廉価で使用させることや,共同研究に係る損害賠償請求権を放棄することも可能となり国際共同研究を進める際の一助となった。

 研究交流促進法の下では,平成8年7月までに延べ7省庁25研究所で68名の外国人の研究公務員が任用されてきた。さらに,昭和63年には科学技術庁フェローシップ制度や文部省の日本学術振興会外国人特別研究員制度が創設されたことをはじめ,農林水産省,通商産業省が各種制度を設けるなど,海外の研究者に我が国の研究機関を開く努力が行われてきている( 第1-3-1図 )。また,外国人研究者に受入れが可能な民間企業を斡旋する事業も行われている。

第1-3-1図

 さらに,我が国が研究者を受け入れる際の大きな問題点となっている住環境をはじめとする生活環境を整備する取組も進められている。平成2年に新技術事業団(当時,現在の科学技術振興事業団)により筑波研究学園都市に外国の研究者のための宿舎である「竹園ハウス」が,平成7年には通商産業省の研究協力センターに外国人研究者向け交流施設が設置されるなど施設面での整備が進められているとともに,外国人研究者向けに,日本語研修や生活情報の提供を行う事業も進められつつある。

(国際共同研究を進める取組)

 また,我が国のイニシアティブにより,世界の研究者に広く開かれた国際共同研究プログラムも進められつつある。ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムは国際的な枠組みの下で生体の持つ優れた機能解明のための基礎研究を推進しようとするプログラムで,昭和62年のベネチアサミットで我が国が提唱して創設されたものであり,研究グラント事業(国際共同研究チームへの研究費の助成),フェローシップ事業(国外で研究を行うための旅費,滞在費の助成),ワークショップ事業(国際的な研究集会開催の助成)が進められている。

 昭和61年に理化学研究所に設けられたフロンティア研究システムは,国際的に開かれた体制により,従来の研究組織,体制や国境を越えて多分野の優れた研究者を結集し,21世紀の根幹となるような新たな知見を産み出すことをめざして設けられたものである。同システムでは,研究者間の言語による障壁を取り除くため,研究活動に際しては英語を使用するといった努力も行われている。これまでにのべ347人・年の外国人研究者が参加しており,これは総参加研究者の21.2%を占めている。

 この他,個別重要国際共同研究や従来から実施されてきた重点国際交流,個別重要国際共同研究,グローバルリサーチネットワークを平成8年度に発展的に改組した国際共同研究総合推進制度をはじめとする科学技術振興調整費の下の各種制度や各省庁の事業・制度により,国際共同研究が進められている。

(国際的な研究拠点をめざして)

 国内外を問わず優秀な研究者が我が国に進んで集い,活発な研究開発が展開されるためには,我が国の研究社会を制度的に開くばかりでなく,内外に開かれ,世界最高水準の研究環境を整えた研究拠点(センター・オブ・エクセレンス=COE)の整備も重要である。例えば, 第2章第1節 で言及した大型放射光施設(SPring-8)は放射光 (注) を発生する施設としては世界最大規模のものであり,開かれた運営体制と相まって,COEとして多くの研究者に活用されることが期待されている。関西文化学術研究都市に平成5年に開所した国際高等研究所ではノーベル賞級の研究者が集い理論生物科学や数理科学などを自由に研究することが期待されている。

 また,平成5年度からは,国立試験研究機関等のCOE化を目指し,科学技術振興調整費による中核的研究機関(COE)育成制度も進められている。本制度は,開放的かつ流動的な研究体制を整備しつつ特定の研究領域の水準を世界最高レベルまで引き上げることによりCOEとなることをめざしている機関に科学技術振興調整費を重点的に充当するものであり,これまで科学技術庁無機材質研究所(超常環境を利用した先端材料研究),農林水産省農業生物資源研究所(植物ゲノム機能研究),通商産業省工業技術院電子技術総合研究所(新情報処理パラダイムに基づく技術分野)など5省庁9機関がこの対象となっている。文部省では学術審議会等の建議を受けて,平成7年度より創造性豊かな世界の最先端の学術研究を推進するため,卓越した研究拠点(COE)をめざして自ら努力を行っている研究機関や研究組織に対する研究費等の重点的な支援等の施策を実施している。


(注):放射光とは,光速近くにまで加速された電子や陽子が磁場を通過し,その方向を変える際に発生する強い光。放射光には非常に明るい,指向性がよいといった特長があり,材料,ライフサイエンスをはじめ,幅広い先端科学技術分野での活用が期待されている。

(科学技術基本計画での取組)

 平成7年5月には,冷戦構造の崩壊,経済のグローバル化,アジア諸国の経済成長や地球規模問題の顕在化といった国際情勢の変化を背景に,科学技術会議政策委員会国際問題懇談会が「21世紀に向けた我が国の科学技術政策の国際的展開について」を取りまとめた。同報告では,我が国は国際的視点に立ってその知的創造力を強化するとともに国際社会において先駆的役割を果たすべきであるという認識の下,我が国の研究社会を国際的により開くことに関しては,{1}世界に向けて優れた研究成果を発信する中核的研究拠点の育成,{2}研究者の交流の推進,拡充,{3}研究分野の情報化,といった施策が打ち出されている。これらの内容は, 第1-3-2表 に示されたように,科学技術基本計画にも反映されており,我が国が一層その研究社会を開き,科学技術の国際交流を主体的に進めていく方針が示されている。

第1-3-2表 科学技術基本計画における国際交流の推進施策等


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