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第1部   開かれた研究社会の創造をめざして
第2章  これまでの取組と研究者や民間の意識
第2節  研究者や民間企業はこう考える
2.  産学官の研究開発と研究交流について



(1) 開かれた研究社会での産学官の研究開発について

 前述のように,開かれた研究社会は,創造的な研究開発の推進に効果的であるが,研究社会をより開き,産学官のセクター間の交流がより活発になると,各セクターがそれぞれの特徴を活かしつつ他機関との協力の下に効果的に研究開発を進めることが重要になる。

(産学官での研究開発についての研究者の認識)

 我が国の民間企業,大学,国立試験研究機関等の先端科学技術研究者に対して平成8年度に科学技術庁が行った調査(以下「先端科学技術研究者調査」という。)によれば,基礎研究,応用研究,開発研究を大学,国立試験研究機関等,民間企業のいずれが担うべきかについて「こだわらない」と答えた研究者は基礎研究については36%,応用研究については45%,開発研究については30%にのぼっているものの,基礎研究については,大学を挙げた回答が46%と最も多く,これに国立試験研究機関等が続き(17%),民間企業を挙げた回答はほとんどない。応用研究では民間企業を挙げた回答が31%であり,国立試験研究機関等,大学の順でこれに続き,開発研究では民間企業を挙げた割合が65%と他機関を挙げた割合よりも格段に高くなっている( 第1-2-8図 )。官民の役割分担の観点から,国の研究機関の役割は,基礎研究等民間では対応が困難な分野を中心に国が取り組むべき課題を中核となって推進していくことにあると考えられるが,この結果から,研究者は,国立試験研究機関等については基礎研究及び応用研究を,大学については基礎研究を担うことが適当と認識していることがわかる。また,民間については応用研究と開発研究,とりわけ開発研究を担うことが適当であると考えられていることがわかる。

第1-2-8図 研究開発における産学官の役割を研究者はどう考えるか(1)

 同じ調査で人材の育成,施設の提供,試験評価といった機能をどのセクターが担うことが適当かについて調査した結果では,人材育成については大学への期待が,研究開発施設の提供及び試験評価については国立試験研究機関等への期待が最も多い( 第1-2-9図 )。

第1-2-9図 研究開発における産学官の役割を研究者はどう考えるか(2)


(2) 研究者と共同研究

(共同研究の目的と相手先への期待)

 国立試験研究機関等,大学,民間企業の各セクターの研究者が共同研究に求めるものについて「先端科学技術研究者調査」で調査した結果は 第1-2-10図 のようになる。その内容には科学技術の進歩などに伴う共同研究へのニーズとともに,これまで述べた各研究機関への期待などとの密接な関連を見ることができる。

第1-2-10図 国内共同研究の目的

 まず,どのセクターにおいても比較的高い割合の研究者が共同研究の目的として挙げた項目としては,研究開発の効率化及び異分野,不得意分野の補足である。また,国立試験研究機関,大学の研究者がともに高い割合で挙げた項目は学際的な研究テーマへの対応である。これらの結果からは,セクター間の壁を越えた共同研究には研究開発能力の結集や効率的な研究開発の推進が期待されていること,また,科学技術の進歩にともなって生じてきた学際的分野への取組に際しては共同研究に期待が寄せられていることが示されている。

 これに対し,大学の研究者の間では,施設・設備の利用,研究費の分担の面から,国立試験研究機関の研究者の間では人材の確保の面から共同研究に寄せられる期待も大きい。

 このような共同研究に際しての期待と産学官での研究開発についての研究者の認識から,大学には人材の育成や基礎研究における強みを活かした役割が期待されているといえる。また,国立試験研究機関には,研究開発の幅の広さやその研究施設を活かし,民間では対応することが困難な研究開発を推進する役割,社会的・経済的ニーズに対応して,基礎研究及び応用研究を中心とした研究開発を進める場としての役割などが期待されていると言える。

(共同研究の相手先と問題点)

 「先端科学技術研究者調査」の結果によれば,大学を共同研究の相手先としている研究者は国立試験研究機関等,大学,民間企業ともに有効回答者の8割強,民間を相手先としている研究者は各セクターともに約7割強となっている。国立試験研究機関等を共同研究の相手先としていると回答した研究者については,国立試験研究機関等の研究者の中では77%に上っているが,大学,民間企業の研究者では6割程度にとどまっている( 第1-2-11図 )。

第1-2-11図 国内での共同研究の相手先

 同様の傾向は,過去5年間の共同研究の増減に関する同調査での回答にも表れている。 第1-2-12図 は,ここ5年間に共同研究が増加したという研究者と減少したという研究者の割合の差を示したものであり,全般的に共同研究は増加傾向にあると言える。しかし,共同研究の相手先別に見ると,大学の研究者,民間企業の研究者ともに国立試験研究機関等との共同研究が増加したと答えた割合は三つの相手先の中では最も低くなっている。一方,国立試験研究機関等の研究者の「共同研究が増加」との回答は他の二セクターに比べ概して高く,特に,国立試験研究機関等の研究者で大学との共同研究が増加したという回答が多くなっている。

第1-2-12図 国内での共同研究の増加(相手先別)

 民間企業,大学,国立試験研究機関における研究者数は大きく異なり,国立試験研究機関の研究者数の割合は比較的小さいことから,単純な比較はできないが,これらの結果から,国立試験研究機関等の相互間では共同研究は盛んなものの,国立試験研究機関等を大学,民間企業にとって,さらに開かれたものとしていく余地があるという見方もできるのではないかと考えられる。


(3) 民間企業と研究協力

(民間企業はなぜ研究協力を行うのか)

 民間企業の研究協力からは,民間企業から産学官各セクターへの期待もうかがわれる。科学技術庁が民間企業を対象として平成8年度に行った調査(以下,「民間企業研究活動調査」という)によれば,民間企業が研究協力を行う理由として,相手先に関係なく挙げている項目は,「自社にない研究開発のノウハウを求める」こととなっている。また,大学,研究機関との研究協力に共通して挙げられている理由は「自社にない研究テーマを求める」というものである。その他の理由については,「製品開発のスピードアップのため」は他企業との研究協力の場合に,「自社の研究人材不足を補う」は大学との協力の場合に,「自社にない研究施設を求める」が研究機関との協力の場合に比較的高い割合で挙げられている( 第1-2-13図 )。

第1-2-13図 民間企業が国内研究協力を行う理由

(研究協力の内容)

 これらの理由は民間企業の研究協力の内容にも反映されている。「民間企業研究活動調査」において,民間企業の国内の他企業,他機関との研究協力について調査した結果(複数回答)によれば,民間企業の国内の他企業との研究協力として,75%の企業が「共同研究」を回答している。これに対し,大学との研究協力では共同研究と研究委託がともに約4割の回答を得ており,情報交換(33%),研究指導(24%)が続いている。国内の研究機関との協力については,共同研究(32%),情報交換(24%),施設の使用(18%)が主な内容であるが,研究協力は行われていないという回答が45%に上っている。また,大学や国内の研究機関との研究協力については,成果の譲り受けを挙げた割合は低く,それぞれ9%,7%となっている( 第1-2-14図 )。

第1-2-14図 国内の他企業,他機関との研究協力(その1)

 以上の結果から,民間企業は,一般的に研究協力に自社にない研究開発のノウハウを求めているが,さらに他企業には製品開発スピードアップなどの開発研究を,大学や研究機関には自社にない研究テーマなどのシーズを求めているということができる。また,大学には人材の供給も,研究機関には研究施設等の提供を求めていることも示されている。しかし,研究機関との協力については,研究機関が研究開発に占めるウェートが比較的少ないため一概には言えないものの,「施設の使用が行われている」という割合が「自社にない施設を求める」という研究協力の理由が挙げられた割合に比べると低くなっていること,研究協力が行われていないという回答が最も多いことが特徴となっており,研究機関を民間企業に対して開かれたものとする余地がまだ残っている,あるいは民間企業にとっては必ずしも魅力のある協力相手たり得ていないことが示唆されている。

 また,大学や国内の研究機関との研究協力については,成果の譲り受けを挙げた民間企業の割合が少ないことに注目する必要がある。このことは,大学や研究機関で得られた研究成果が民間企業等で十分に活用されていないことを示している。国の研究成果の流通の円滑化のための施策を進めることとともに,研究機関や大学の研究に際し,それぞれの役割に応じ,社会のニーズ等に対応する努力が必要である。

(研究協力を進める際の問題)

 民間企業の研究協力の現状からは例えば研究機関を民間企業に対し開かれたものとする余地がまだ残っているといった課題が示唆されるが,民間企業は研究協力を進めるにあたっては,具体的にどのような問題点に直面しているのだろうか。

 「民間企業研究活動調査」によれば,研究協力に際し「特に問題はない」と答えた民間企業は,対民間企業,対大学,対研究機関ともに約4割にのぼっている。研究協力を行う上での問題点として比較的回答が多かった項目としては,「目的等の違いによる研究方針の違い」(他企業,大学,国研のすべてに対して),「研究成果の帰属に関する問題」(対他企業,研究機関),「研究開発のスピードの違い」(対大学,研究機関),「相手機関との意思疎通」及び「研究開発の進め方の違い」(対他企業)が挙げられる。また,対大学,研究機関では,法令等に基づく規制も挙げられているが,回答の割合は5%と必ずしも高くはない( 第1-2-15図 )。

第1-2-15図 研究協力を行う上での問題点

 これらの問題点の中には,研究成果の帰属など制度の整備により対応可能なものもあるが,研究開発のスピードの違いや相手機関との意思疎通の問題など,共同研究に際しての各機関の「考え方」に関係した項目もある。研究協力に際しては相手機関の長所に期待するとともに,相互に特長について理解し合いつつ連携を図ることが重要である。


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