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第1部   開かれた研究社会の創造をめざして
第2章  これまでの取組と研究者や民間の意識
第1節  開かれた研究社会へ向けての取組
1.  研究交流の促進への取組


 研究交流とは,研究者間あるいは研究機関間で,共同して研究開発を行うこと,研究者の交流により知識の交換や知的触発を促進すること,及び研究施設・設備の相互利用を図ることなどにより研究開発を効率的かつ効果的に進めることである。

 特に,近年では科学技術の発展の結果,研究開発が高度化かつ複雑化し,大型の試験研究施設や機器などが必要になったり,研究開発の規模が大きなものとなるとともに,物理学,化学,生物学などといった既存の学問体系の枠を越えた学際的取組を必要とする研究領域も増えつつある。このため,研究交流を推進することにより,研究資源を効率的かつ効果的に活用するとともに,研究組織や学問分野の枠にとらわれずに創造的な研究開発を進めることが重要となってきている。

(共同研究への取組)

 これまでの取組を概観すると,研究交流の中でも,比較的早くから取組がなされてきたものは共同研究である。我が国の産業界が研究開発を担う力を十分に持っていなかった昭和40年代には,我が国にとって重要な工業技術分野において国の主導により産業界の開発力を結集して研究開発を行い,欧米先進諸国に追いつくことを目標とした通商産業省による大型工業技術研究開発制度(平成5年に産業科学技術研究開発制度に統合)のような共同研究施策が中心であった。しかし,昭和48年の石油危機を契機に我が国の社会・経済が知識集約型の産業を指向し,科学技術がエネルギー問題への対応や生活の質の向上に果たす役割が重視されるようになると,共同研究も,産学官の研究能力を結集して我が国が直面する課題に対応することや産学官の連携を図り創造性の豊かな科学技術を推進することを目的とした取組が多くなってきた。そうした取組の例としては,昭和49年に発足した新エネルギー技術研究開発制度(通商産業省),昭和53年に発足した省エネルギー技術研究開発制度(通商産業省),昭和56年度に創設された創造科学技術推進制度(新技術開発事業団,現在の科学技術振興事業団),次世代産業基盤技術研究開発制度(平成5年に産業科学技術研究開発制度に統合)(通商産業省),昭和58年度創設の国立大学等と民間等との共同研究制度(文部省)や昭和61年に発足した官民特定共同研究制度(科学技術庁)や昭和63年度創設の超電導材料研究マルチコアプロジェクト(科学技術庁)などが挙げられる。

(研究交流を進めるための制度の整備)

 前述のように共同研究が進められたことに伴い,各省庁で共同研究規程が順次整備されるなど,制度面での条件整備も進められた。しかしながら,共同研究をはじめとする研究交流の推進に際し,国の財産管理制度や国立試験研究機関や国立大学の研究者が国家公務員であることに由来する制約により,国の研究者・研究機関と国以外の研究者との研究交流は必ずしも円滑に行われてはいなかった。このため,昭和61年11月に研究交流促進法が施行されるとともに,昭和62年3月には,「産学官及び外国との研究交流の促進に関連する諸制度の運用に関する基本方針について」が閣議決定され,制度上のあい路の改善が図られた。

 具体的には,{1}研究者の交流促進のため,国の研究者の研究集会への参加に際しての職務専念義務の免除や国の研究者が共同研究の相手先に出向する際の退職手当上の不利益の改善,{2}共同の研究の促進のため,官民での共同の研究の実施に際して民間の研究者が国立試験研究機関内で活動できるようにするための規程等の整備,{3}国の研究施設・設備の外部への公開を進めるため,これらの廉価使用に関する法的制度の整備などが進められた。

(研究者の交流)

 研究者の交流については,科学技術庁をはじめとする各省庁で外部の研究者を国の試験研究機関に受け入れる流動研究員制度,客員研究官制度,共同研究員制度,依頼研究員制度などや国の研究者を他機関に派遣する流動研究員制度や国内留学制度により推進されている。このほか,科学技術振興事業団では,異分野研究者交流事業などの研究交流促進事業により研究者の交流を推進している。また,研究交流促進法施行以前は,国の研究者の学会などへの出席に際しては,公務として出張として参加する研究集会の場合以外には休暇を使用する必要があったが,同法により,出席に際し,研究者の国家公務員としての職務専念義務を免除することも可能となった。本制度による派遣は 第1-2-1図 のように推移しており,同法施行以来の平成8年7月までで約3万件にのぼっている。

第1-2-1図 職務専念義務の免除による研究公務員の研究集会参加人数の推移

(研究施設等の共同利用)

 研究施設等の共同利用を進めることは,研究交流の推進や研究施設等の効果的・効率的活用といった面から研究開発の効率的推進のために重要である。

 かつては国有試験研究施設は外部の研究者には廉価で使用することができず,これら施設の共同利用促進の妨げとなっていたが,研究交流促進法の制定等によりこれが可能とされた。

 また,科学技術の高度化に伴い,大型施設や高価な機器類を必要とする研究開発も増加しており,国が所有するこれら施設等を外部の利用に供し,あるいは大型施設を整備することも進められてきた。例えば,平成9年度の供用開始に向け,理化学研究所と原子力研究所が共同で整備を進めてきた大型放射光施設(SPring-8)については,平成6年の「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」の制定をはじめ,施設を内外の研究者に幅広く公開するための準備が進められている。

 学術研究の進展とともに,昭和46年以降,大学共同利用機関も順次整備されてきており,各機関の特色ある施設・設備や資料を用いて国公私立大学の研究者による共同研究等が個別の大学の枠を越えて進められている。

(性格の異なる研究機関間の協力)

 これまで述べてきた共同研究や施設の共用とは異なるものの,性格の異なる研究機関間がお互いの長所を相補う協力も進められている。

 大学院と研究機関が互いに補い合いつつ協力を進めている連携大学院はそういった一例である。連携大学院は大学院生に大学の研究室で研究を行う代わりに産官の研究機関でその機関の研究者の指導の下で研究を行うことを可能とするものであり,大学院生の側には研究機関の最新の研究環境を利用して研究を進められる利点が,研究機関の側には若手の研究者の参加により研究を活性化させる利点があるため,現在では16の国立及び私立大学と10省庁の研究機関との間で多くの連携が進められている。


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