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第3部   我が国の科学技術政策の展開
第4章  研究活動の推進
第3節  科学技術振興基盤の強化
6.  研究分野の情報化と科学技術情報の流通


21世紀をにらみ,新たな社会革命ともいわれる高度情報通信社会の構築に向けた動きが始まる中,エネルギー資源に乏しい我が国が,将来にわたり持続的な経済発展を遂げていくためには,科学技術振興のための基盤を「未来への発展基盤」として整備していくことが重要である。このためには,研究分野の情報化を推進することにより世界最高レベルの研究開発環境を整備・維持し,常に研究水準の向上を図ることの必要性が指摘されている。

また,こうした活動に伴い生産される科学技術情報は,高度の知識と多額の研究投資が集約された研究開発の成果であるとともに,科学技術の振興を支える重要な基盤の一つでもある。年々増え続ける科学技術情報の中から的確な情報を迅速に入手するため,情報を収集・整理して,検索しやすい形に加工した上,個々の利用者の要求に応じて適切な形で提供するという情報流通の促進の重要性が高まっている。


(1) 研究分野の情報化の促進

近年,研究開発活動の学際化や国際化が著しく,その内容や手段が急速に高度化していることから,今後とも我が国の研究開発活動を国際レベルで展開していくためには,21世紀に向けての「先行投資」として研究分野の情報化の促進を図ることが不可欠である。

研究分野の情報化は,時間・空間の制約,所属・専門分野の枠を越え,世界規模での知的資源の効率的利用,国際協力活動の効果的な展開等を可能にするとともに,新たな研究領域や研究手法の創造,研究活動の質的な変革をもたらすものである。

また,研究情報ネットワークとして米国から始まったインターネットが,その後様々な分野における利用へと発展したように,高度情報化における研究者の先駆的活動は,社会全般の情報化を促進し,高度情報通信社会を実現するための先導的役割を果たすことが期待されている。

国際的にも,1994年7月のナポリサミットでの提案を受け,本年2月ブラッセルでG7「情報社会に関する関係閣僚会合」が開催され先進7か国を中心として国際的な協調の下に,グローバルな情報通信社会の実現を目指したGII(世界情報インフラ構想)実現のための取り組みが始まっている。

我が国では,研究機関,省庁,国の枠を超えた研究機関間を結ぶ研究情報ネットワーク等の効率的・効果的な整備の推進に資するため,1994年度から科学技術振興調整費に「研究情報整備・省際研究情報ネットワーク推進制度」が創設されるなど,研究情報基盤整備への取り組みが近年強化されつつある。しかしながら,今後はさらなる研究情報の流通の拡大が予想され,これに対応するためには,研究情報基盤の恒久的な整備を進めることが必要とされている。

また,データベース等のネットワークを流通する情報資源(コンテンツ)についても,これを質的に高度化し,量的にも充実していくとともに,ネットワークを介した高性能コンピュータの利用技術の高度化等の計算科学技術を推進するなど,ハードとソフトのバランスのとれた発展を図っていくことも重要である。

特に,ネットワークを流通するデータベースやソフトウェア等の情報資源については,欧米に依存する状況であり,我が国の科学技術情報を積極的に国際発信する観点からも早急に整備を進める必要がある。研究分野の情報化を推進するための方策の検討については,これまで科学技術会議政策委員会の下に置かれている研究情報ネットワーク懇談会(1993年6月発足)を中心に行っている。同懇談会では,1994年6月に「研究情報ネットワークに関する当面の進め方について」を取りまとめ,研究情報基盤とそれを利用する研究開発活動との関係を 第3-4-23図 に示すような重層構造として捉えて,当面の施策展開の方向として,

1)研究情報ネットワークの整備の推進
2)研究情報ネットワークの利用(アプリケーション)の推進
3)研究情報の整備と流通の推進
4)研究情報ネットワークに係る支援体制の整備
5)海外との協力の推進
6)研究情報の自由な流通の実現と制度面の検討

の6つの施策について提言している。また,研究情報基盤の整備と利用の推進は,教育,医療,産業等社会全般に情報化を定着させ,高度情報化社会を先導するものであり,社会資本充実のための施策の一つであると位置付けている。さらに,関係省庁が一体となって総合的かつ計画的に進めることにより我が国全体の研究ポテンシャルの向上,研究開発の一層の推進を図ることの必要性が強調されている。

第3-4-24表 に1994年度における研究情報基盤関連施策の概要を示す。

第3-4-23図 研究情報基盤とそれを利用する研究開発活動の位置付け

第3-4-24表 主な研究情報基盤関連施策の概要(1994年度)



(2) 我が国の科学技術情報活動

科学技術情報流通に関する基本的な政策は,1969年10月に,科学技術会議第4号答申「科学技術情報の流通に関する基本的方策について」において示された「科学技術情報の全国的流通システム(NIST)」の構想に基づいている。

また,科学技術会議は,1989年12月に第16号答申「科学技術振興基盤の整備に関する基本指針について」を取りまとめ,科学技術情報をはじめとする振興基盤の整備の重要性を指摘した。科学技術情報に関しては,提供情報の充実,情報利用者の利便性に主体を置いた情報流通体制の整備,情報の国際流通の促進と地方展開,情報収集の強化・充実,情報提供機能の高度化を進めるべきこどが指摘されている。さらに,1992年1月に取りまとめた第18号答申「新世紀に向けてとるべき科学技術の総合的基本方策について」の中で科学技術情報に関して,文献情報の流通促進,ファクトデータベースの構築及びその利用促進のための情報流通体制の整備,国際的な情報の相互流通機能の強化,科学技術情報ネットワークの地域展開等が指摘されている。

これらを受けて,政府が1992年4月に改正した科学技術政策大綱では,科学技術情報の生産及び国内外での流通の拡大並びに科学技術情報ネットワークの地域展開を図ることが定められている。

上記の他,我が国では以下のような施策を実施している。

1) 一次情報サービス

閲覧・複写・貸出等による一次情報(論文等の原文献)の提供サービスは,図書館のほか,様々な情報サービス機関で行われている。国立国会図書館には,納本制度によって我が国で発行されるすべての出版物が納本されることになっており,収集・保管資料に関するデータベースが作成され,オンラインで提供されている。文部省では,学術情報センターが,全国の国公私立大学等の協力を得て,大学図書館が所蔵している学術図書・雑誌の目録所在情報データベースを作成・提供している。

2) 二次情報サービス

情報をコンピュータを利用して編集し,データベース化することにより,増大する情報の迅速,正確かつ容易な検索が可能となった。科学技術分野において,このようなデータベースの生産と利用は,世界的に急激に伸長している。日本科学技術情報センター(JICST)においては,世界50数カ国より科学技術全分野に関する資料を収集し,科学技術文献データベースを構築(年間71万件)し,JICSTオンライン情報システム(JOIS)を通じて提供している。学術情報センターにおいては,学術研究に関するデータベースを作成し,全国の国公私立大学等を結ぶ学術情報ネットワークを通じて提供している。このほか,(財)日本特許情報機構では,特許情報をデータベース化し,オンライン(PATOLIS)で提供するなど様々なデータベースが作成・提供されている。

3) クリアリングサービス

研究課題についての情報を提供するクリアリングサービスについては,JICSTが,公共試験研究機関における研究課題情報をオンライン(JOIS)で提供し,また,学術情報センターが,科学研究費補助金により行われた研究の研究成果報告概要のデータベースを作成し,オンライン(NACSIS-IR)で提供している。

4) 科学技術情報の国際流通

我が国の科学技術の発展に伴って,海外からの我が国の科学技術情報に対する需要が高まってきている。このような要望に応え,我が国の科学技術情報の積極的な国際流通を図るため,1987年11月に国際科学技術情報ネットワーク(STN International)がJICST,米国のケミカルアブストラクツサービス(CAS),ドイツのFIZ-カーノレスルーエの三者間で開設され,現在百数十種のデータベースをサービスしている。学術情報センターでは,インターネットを経由して,海外の研究機関等との情報交換,情報検索サービスの提供を行うなど,学術情報の国際的な流通の促進を図っている。また,1990年度から,JICSTは,欧米等諸外国から要望が強いが入手が困難とされている科学技術分野の政府関係資料の流通等我が国科学技術情報の海外での普及を促進する事業を行っており,1993年6月にはパリで,1994年7月には米国(ボストン)において,日本の科学技術情報に関する説明会を開催した。

5) 科学技術情報に関する研究開発の進展

科学技術振興調整費総合研究により,研究者の創造的研究開発を支援するため,「創造的研究開発支援のための自己組織型情報ベースシステムの構築に関する研究」が1990年度より実施されており,1994年度は,個々の要素技術の高度化及びシステム統合化に向けた検討が行われた。また,1994年度に創設された科学技術振興調整費「研究情報整備・省際ネットワーク推進制度」により,「省際ネットワーク整備・運用に係わる基盤技術の調査研究」,「物質関連データ(生休影響,食品成分,表面分析)のデータベース化に関する調査研究」,「地球観測データのデータベース化に関する研究」が開始されている。


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