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第1部   戦後50年の科学技術
第1章  指標で見る戦後50年の科学技術活動
1.  研究投資


研究費は研究活動の社会からの入力の指標としてみることができる。

ここでは,研究費の観点から社会における科学技術活動の状況等を概観していくこととする。

(研究費総額)

総務庁統計局「科学技術研究調査報告」(1953年より総理府統計局「研究機関基本統計調査」として調査を開始し,1960年より会社等の調査が研究機関単位から企業単位となり,ほぼ現在の調査方法となる)によると,我が国の研究費総額は,調査を開始した1950年代から一貫して高い伸びを続けた (第1-1-1(1)図)

1960年度に1,844億円であったものが,1970年度には1兆1,953億円(1960年度の6.5倍),1980年度には4兆6,838億円(1960年度の25.4倍),1990年度には12兆896億円(1960年度の65.6倍)と研究費は1980年代までは年々拡大の一途をたどった。

1990年代になり,バブル崩壊に伴う景気低迷の長期化,円高の進行等厳しい状況の中で,会社等の研究費は1992年度,1993年度と2年連続して減少し,これにより1993年度の研究費総額も調査開始以来初めての減少を記録した。


注)1.本書では,我が国の研究活動を述べる場合,原則として人文・社会科学を除く自然科学の研究活動に限ることとし,人文・社会科学を含む場合はその旨注記している。人文・社会科学と自然科学の区分は,研究実施機関(大学の場合は学部)を単位として区分している。

第1-1-1(1)図 研究費総額の推移

主な研究実施主体である会社等,大学,政府研究機関(国営研究機関,公営研究機関,特殊法人研究機関)にっいて,使用研究費の増加状況をみると,1980年度頃までは組織別に大きな違いはなく,1980年度時点で1960年度の22.9〜26.9倍となっていた (第1-1-1(2)図) 。1980年代に入り,会社等が引き続き大きな伸びを示し,1990年度には1960年度の74,5倍となったのに対し,大学及び政府研究機関は伸び率が低下して1990年度には大学は1960年度の45.9倍,政府研究機関は1960年度の36.2倍となった。1990年代になると,会社等の研究費が減少しているのに対し,大学及び政府研究機関は研究費を大きく増加させている。

第1-1-1(2)図 組織別の使用研究費の増加状況

(研究費の対国民総生産比)

研究費の国民総生産に対する比率の推移をみると,1960年度は1.11%であったものが1970年度には1.59%と大きく拡大した (第1-1-2図) 。1970年代は,第1次石油危機(1973年)から第2次石油危機(1979年)の時期にかけて横ばいが続いたが,1970年代末より再び大きな増加に転じ,1980年度の1.91%から1990年度には2.78%となった。

1990年代になり,研究投資の低迷により研究費の対国民総生産比も減少し,1993年度は2.66%となっている。

研究費の対国民総生産比を,経済活動の中での科学技術活動への努力の程度を表す指標としてみると,我が国の研究活動は着実に経済活動における比重を高めてきたと考えることができる。

研究費の対国民総生産比の推移を負担源別にみると,民間負担の研究費の対国民総生産比は,1960年度0.83%から1970年度1.19%,1980年度1.41%,1990年度2.32%と着実に増加してきている。特に1980年代の伸びが大きく,これにより国全体の研究費の対国民総生産比も大きく増加している。

一方,政府負担の研究費の対国民総生産比は,1960年度0.28%,1970年度0.40%,1980年度0.49%,1990年度0.46%と大きな変化はなく,概ね経済の成長に応じて研究投資を増加してきたとみることができる。

第1-1-2図 研究費の対国民総生産比の推移(負担源別)

(研究費の対国民総生産比の国際比較)

研究費の対国民総生産比を先進主要国と比較することにより,我が国の研究投資の拡大の状況をみる(各国との比較のため人文・社会科学を含めた研究費を用いている) (第1-1-3図)。

1960年代は先進主要国に遅れをとっていたが,1970年度には1.80%と先進主要国の中では低い水準ではあるがフランスの1.88%との差を縮めた。1970年代以降も,我が国が着実に増加を続けたのに対し,先進主要国はいずれも伸び悩み,1972年度にはフランスを上回り,1983年度にはイギリス,1987年度には米国,1989年度にはドイツをも上回り,世界でも最も高い水準となった。その後,民間の研究投資の低迷により,1993年度には2.91%と減少してきている。

第1-1-3図 主要国における研究費の対国民総生産比の推移

(研究費の組織別負担割合の推移)

研究費の政府及び民間による負担割合についてみると,年度によって増減はあるものの1960年代は政府の負担割合が25.3%〜32.0%,民間の負担割合が67.9%〜74.6%,1970年代は政府の負担割合が25.2%〜28.0%,民間の負担割合が71.9%〜74.7%とほぼ安定して推移した (第1-1-4図)。 しかしながら,1980年代になっても民間負担の研究費が毎年10%以上の安定した増加を続ける中で,政府負担の研究費は低い伸びにとどまり,政府負担割合は1980年度の25.8%から1990年度には16.5%に低下した。

第1-1-4図 研究費の組織別負担割合の推移

1990年代になると,民間の研究投資が減少する一方で,政府負担研究費が着実に増加してきたため,1993年度には政府負担割合が20.4%と9年振りに20%を上回った。

(会社等の研究費の推移)

1) 研究費

1960年度から1990年度までの30年間の10年毎の業種別の研究費のシェア及び順位から業種別の研究活動の変遷をみる (第1-1-5表)。 化学工業(医薬品工業を除く)は,1960年度にはシェアが19.0%と全業種の中で1位であったが,シェアを減らし続け1990年度には9.7%となり,全業種の中でも4位にまで順位を下げた。鉄鋼業も1960年度には7.1%と全業種の中で4位と高い順位にあったが,シェアを減らし続け1990年度には3.3%となり,9位にまで順位を下げた。

第1-1-5表 業種別の研究資のシェア及び順位の推移


一方,通信・電子・電気計測器工業は1960年度には研究費のシェアは12.6%と2位であったが,シェアを拡大し続け,1970年度には15.8と化学工業を上回り1位となり,その後も年々シェアを拡大し,1990年度には23.2%と他の業種を大きく上回り1位を続けている。また,1960年度には研究費シェア4.9%と全業種の中で8位であった自動車工業は,1970年度には9.5%(4位),1980年度には13.4%(2位)と大幅にシェアを拡大した。このほかにも医薬品工業,精密機械工業,建設業が30年の間にシェアを拡大してきている。

業種別研究費の増加状況を,各業種の1960年度の研究費を1とした時の相対値の推移からみてみる (第1-1-6図)。

主要業種の業種別の増加状況をみると,30年間の増加率が特に大きい業種としては,建設業(314.6倍),自動車工業(214.9倍),精密機械工業(182.3倍),医薬品工業(139.6倍),通信・電子・電気計測器工業(138.8倍)があげられる。これらはいずれも30年間に研究費が100倍以上となっている。これらは,通信・電子・電気計測器工業を除くと,1960年度の研究費は全業種の中で大きい方ではなく,特にこの30年間に研究活動を拡大してきた業種といえるだろう。これに対し,通信・電子・電気計測器工業は,1960年度において全業種の中で研究費が2番目に大きく,これをさらに拡大し続けていることが注目される。

第1-1-6図 主な業種の研究費の拡大の推移

一方,電気機械器具工業(79.2倍),機械工業(76.0倍),化学工業(40.0倍),鉄鋼業(35.0倍),その他輸送用機械工業(23.7倍)等の1960年度において既に研究費が大きかった業種については,その後も増加を続けているものの,通信・電子・電気計測器工業等と比べると増加状況は大きく差が開いている。

2) 売上高比

研究費の大きい業種について,研究費の売上高に対する比率の推移をみる (第1-1-7図)

医薬品工業は,1960年度は2.40%,1970年度は4.13%,1980年度は5.45%,1990年度は8.02%と各年代を通じて増加を続けた。

通信・電子・電気計測器工業は,1965年度から1974年度にかけて2.45%から4.28%と大きく増加し,1970年代後半は停滞し1980年度に3.94%となった後,1980年代に入ってから1991年度まで大きく増加を続け1991年度には6.63%となった。

第1-1-7図 研究費の売上高に対する比率の推移(産業別)

電気機械器具工業も通信・電子・電気計測器工業と似た増加状況を示しており,1963年度から1973年度にかけて1.81%から3.22%と増加し,1970年代後半は停滞し1979年度に3.19%となった後,1980年代に入ってから1993年度まで増加を続け1993年度には5.81%となった。

一方,鉄鋼業,化学工業(医薬品工業を除く)は,1980年度までは概ね横ばいを続けた後(鉄鋼業:1960年度0.72%,1979年度1.04%,化学工業:1960年度1.88%,1979年度1.95%),1980年代以降に大きく増加している(鉄鋼業:1993年度2.72%,化学工業:1993年度4.43%)。

いずれの業種とも1980年代に研究費の売上高に対する比率を大きく増加させており,1980年代は会社の活動における研究活動の比重が増加した時期といえるだろう。


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