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第3部   我が国の科学技術政策の展開
第4章  研究活動の推進
第4節  科学技術国際交流
2.  多国間における協力



(1) 主要国首脳会議(サミット)に基づく国際協力

1982年6月に開催された第8回主要国首脳会議(ヴエルサイユ・サミット)において,ミッテラン仏大統領の提唱の下に,初めて科学技術が話題として取り上げられて以来,科学技術に関する話題は毎年のように取り上げられている。

近年,特に関心の高まっている地球環境問題については,1989年のアルシュ・サミットを契機とし,常に重要な課題に位置付けられており,地球的規模での観測とモニターの強化,地球の気候に関する科学調査,エネルギー・環境技術の開発と普及等について一層の努力が要請されている。

1992年7月のミュンヘン・サミットにおいては,地球環境問題で世界各国が先進7カ国とともに行動をとることが要請され,また,旧ソ連の科学者・技術者の頭脳流出問題については,国際科学技術センターを設立することにより,大量破壊兵器製造等に係る科学者及び技術者を平和目的のために方向転換するよう支援することが確認された。

1993年7月の東京サミットにおいては,核不拡散,旧ソ連型原子力発電所の安全性を高めるための支援等について各国の協力の必要性が再確認されたとともに,先進7カ国の政策課題の中で地球環境問題が引き続き高い優先度を有することが確認された。

1994年7月のナポリ・サミットにおいでは,政治問題として地域紛争問題,核不拡散体制の強化等が,経済問題として対口支援問題,雇用と成長問題等が議論された。その結果,議長声明には核不拡散条約延長の支持が,経済宣言には世界情報インフラの整備を含む技術革新及び新技術の普及問題,原子力安全支援問題等が盛り込まれた。


(2) 国際連合における協力

国際連合においては,各種委員会,機関等を通じ,全地球的視野で解決に当たる必要がある天然資源,エネルギー,食糧,気候,環境,自然災害等に関する諸問題に対しての活動が積極的に展開されている。

特に,これらの諸問題に最も深刻に直面している開発途上国の科学技術力の強化を図ることにより,長期的展望に立って,南北問題の解決に貢献するための努力が行われている。

また,近年の地球環境問題に関する世界的な関心の高まりを背景に,1992年6月,ブラジルのリオ・デ・ジャネイロにおいて,約180カ国が参加し,環境と開発に関する国連会議(UNCED:地球サミット)が開催された。地球サミットでは,21世紀に向けての国家と個人の行動原則である「環境と開発に関するリオ宣言」,同宣言の具体的な行動計画である「アジェンダ21」及び「森林に関する原則声明」が採択されたほか,「気候変動に関する国際連合枠組条約」及び「生物の多様性に関する条約」に150カ国以上の国が署名するなど多くの成果が得られた。また,第47回国連総会においては,地球サミットのフォローアップについて議論され,「持続可能な開発委員会」及び「砂漠化防止条約策定のための政府間交渉委員会」を設立すること等の決議が採択された。

この国連での決議を受け,1993年2月に「持続可能な開発委員会」が設立され,同年6月に第1回会合及び1994年5月に第2回会合が開催された。また1994年6月に砂漠化防止条約がパリで開催された政府間交渉委員会第5回会合において採択された。


(3) 経済協力開発機構(OECD)における協力

経済協力開発機構における科学技術に関する活動は,科学技術政策委員会(CSTP),情報コンピュータ通信政策委員会(ICCP),工業委員会,環境政策委員会,原子力機関(NEA),国際エネルギー機関(IEA)等を通じて,加盟国間の意見・経験等の交換,情報及び人材の交流,統計資料等の作成,共同研究の実施等が行われている。

最近では,メガサイエンスについて計画の早い段階から,意見交換,情報交換を行うとともに,メガサイエンスに係る国際協力のあり方について共通の認識を得るため,CSTPの下にメガサイエンスフォーラムが設置されている。メガサイエンスフォーラムは,これまで5回の会合が開催されたほか,天文学,深部掘削,地球変動研究,海洋科学,放射光・中性子源,素粒子物理学の各分野における専門家会合が開催され,個別分野のレビュー等が行われている。

また,欧州統合,北米やアジア太平洋地域の連携強化等の国際情勢の変化に伴う国際的な科学協力のあり方を把握するとともに,それが各国の科学システムに与える影響及びその有効な活用方策について検討を行うため,CSTPに「科学シ又テムグループ」が新たに設置され,これまで2回の会合が開催されている。さらに,技術革新プロセスの相互依存や科学技術の国際化による技術摩擦を回避し,技術政策の国際的な調和を図るため,科学技術の成果を生産性や雇用の増大に反映させるメカニズムの解明,国際技術協力の促進等の検討を行うため,CSTPに「イノベーション・技術政策ワーキンググループ」が新たに設置され,これまで3回の会合が開催されている。

このほか,1994年3月に米国デトロイトで開催されたG7雇用ハイレベル会合において,「生産性,雇用創出と技術(特に情報技術)の関係及び雇用創出と喪失に関するデータ分析」を行うようOECDに対して要請があったことから,OECDのCSTP,工業委員会,情報コンピュータ通信政策委員会の3委員会による専門家会合等が開催され,検討が進められている。


(4) ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)の推進

本プログラムは,生体の持つ優れた機能の解明のための基礎研究を国際協力を通じて推進しようとするものである。我が国が科学技術の分野においてその経済力にふさわしい国際貢献を図るとともに,基礎研究の推進による国際公共財を創出し,広く人類全体の利益に供するとの意向の下に,1987年6月のベネチア・サミットにおいて提唱したもので,我が国のイニシアティブについて国際的に高い評価を得ているプログラムである。1989年10月には,ストラスブール(フランス)に実施主体として国際ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム推進機構(HFSPO)が設置された。

本プログラムの事業内容としては,国際共同研究チームへの研究費助成(研究グラント),若手研究者が国外で研究を行うための旅費,滞在費等の助成(長期フェローシップ,短期フェローシップ),国際的な研究集会の開催助成(ワークショップ)を公募により実施している。また,助成対象分野は,参加各国の有識者で構成される国際科学者会合における検討の結果に基づいて関係国間の合意により決定されており,脳機能の解明,生休機能の分子論的アプローチによる解明の2分野における基礎研究を対象領域としている。1992年1月にHFSP関係国等の政府代表者により,1992年4月から事業が本格段階として継続することについて合意が得られた。1994年3月には,HFSPOにおいて合計333名の第5事業年度の助成対象者が決定されている。


(5) アジア科学協力連合(ASCA)における協力

1970年11月に設立が合意されたアジア科学協力連合(ASCA)は,アジア地域の科学技術政策,研究開発計画等についての情報交換,共通関心領域の明確化,域内各国間の科学技術協カプロジェクトの推進方策の検討等を行い,域内諸国間の科学技術協力の推進強化を図ることを目的とし,各国の科学技術担当の大臣等が一同に会し,現在までに12回の会合が開催されている。1992年11月の第12回会合及び1993年3月に東京で開催された高級事務レベル会合においては,アジア太平洋地域における協力方策,ASCA会合及び活動の将来の拡充方策について検討を行い,今後,情報交換及び人材育成等を通じ,ASCAにおける協力の強化を図ることが合意された。我が国は,全体会議に毎回代表を送るほか,ASCA諸国の関心の高いテーマについてセミナーを行っている。1994年3月に「アジアにおける微生物の利用と制御に関するASCAセミナー」,「科学技術と地域技術革新に関するASCAセミナー」を開催した。また,1980年より我が国の科学技術情報をASCA諸国に提供するASCA科学技術情報協力事業を実施している。


(6) アジア太平洋経済協力(APEC)における協力

アジア太平洋地域の経済協力のための政府間公式協議体として,1989年に発足したアジア太平洋経済協力(APEC)は,開かれた地域協力を掲げ,貿易投資促進,人材育成,統計整備等の経済分野で協力を進めてきた。近年では,1993年11月の第5回閣僚会議(米・シアトル)に合わせて非公式首脳会合を開催するなど,一層の機能強化が図られ,活発な活動を展開している。

具体的な協力については,高級事務レベル会合のもとに10のワーキンググループをおき,貿易・投資データレビュー,貿易促進,産業科学技術,人材育成,域内エネルギー協力,電気通信等について協力方策の検討を行っている。特に,産業科学技術ワーキンググループにおいては,1993年より産業科学技術特別会合を設置し,産業科学技術協力方策を検討している。1994年6月開催の第2回会合では,インダストリアル・パーク等について,また1994年9月開催の第3回特別会合では,裾野産業育成支援技術情報データベース,情報ネットワーク等について議論された。


(7) 太平洋経済協力会議(PECC)における協力

太平洋経済協力会議(PECC)は,アジア太平洋地域における経済的繁栄,安定を確保していくための協力促進を目的とした国際組織であり,官・財・学の三者構成を特徴とする。1980年9月オーストラリア・キャンベラの第1回PECC総会以来,貿易政策,エネルギー問題,技術移転,資本移動などの分野における協力について検討されてきた。

現在,貿易政策,運輸・通信・観光,鉱産物・エネルギー,科学技術,人材育成等の小委員会の下で,各分野における地域協力方策について議論がなされている。1994年3月にマレーシア・クアラルンプールで開催された第10回総会では,「クアラルンプール・コンコード(合意)」を採択,PECCの開かれた地域主義の重要性を確認した。

我が国においては,科学技術日本小委員会において,技術移転問題,科学技術指標整備,人材育成について調査・分析・研究を推進するなど協力を行っている。


(8) 国際科学技術センター(lSTC)における協力

旧ソ連邦諸国の大量破壊兵器等に関連のある科学者及び技術者に対しその才能を平和的活動に向け直す機会を与え,旧ソ連邦諸国国内的及び国際的な技術問題の解決に寄与することを目的として,1992年11月に,日,米,EC,ロの四極は「国際科学技術センター(ISTC)を設立する協定」に署名し,1993年12月「本協定を暫定的に適用する議定書」の著名を経て,1994年3月同センターが設立された。同月に開催された第1回理事会においては,同センターの目的を達するための1160万ドル分23件の,また,1994年6月の第2回理事会においては,1840万ドル分31件の具体的活動の開始が承認された。

我が国としては人的貢献を含め,これまでの実績を生かして積極的に協力する方針であり,今後とも,本センターの活動が円滑に進み,実効性のあるものとして展開されるよう協力していくところである。

また設立後,フィンランド,グルジア,スウエーデンの加入手続きが完了し,アルメニア,ベラルーシ,カナダ,カザフスタンが参加する見込みである。


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